大和撫子と復讐の徒   作:蛙先輩

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長い間、放置してすみません。実は携帯を落としてしまい、投稿できずにいました。警察署に届けられていてめちゃくちゃホッとしました。届けてくれた方、そして警察の皆さん、ありがとうございます。
皆さんも携帯には気をつけてください!‥‥‥余計なお世話ですね。
それではどうぞ!


32話

緊張感が僅かに和らいだ畳敷きの一室でμ’s及び、スクールアイドル救出のために第一関門である『箱庭』の位置を真鍋さんに聞いていた。

「『箱庭』は東京から外れた空き地にあって。今現在、多くの記者が『箱庭』を囲む有刺鉄線の前でカメラを持ってどうにか中身を撮ろうと虫のように集っているらしいです」

 

真鍋さんが携帯を机の中央に置いて、地図が表示された液晶画面に四人の顔が映る。施設周辺に設置されている有刺鉄線の外は、森と木々に囲まれている。

「あんな騒動の後なら当然ですね」

 続けて真鍋さんは指で施設周辺を確認していく。そして建物の正門から真反対の方を、右手の二本指で広げて人差し指で小さな円を示す。

 

「ここに別の門らしきものがあります。そこから内部に侵入という形を考えています‥‥‥」

 少なくとも、正門よりは万全にないにしろ警備は存在するはずだ。門があるということは出入りがある‥‥‥僕の脳内に策が浮かんだ。しかし実行しようにも問題がある。まず非常に危険を伴うこと。それとこの三人と説得である。真鍋さんに関しては後の二人より否定的ではなさそうだが、海未に関してはこういう危険を伴うことは避けたがる性分だ。そして娘よりこの作戦に対して憤りを感じるのは間違いなく当主なのだから、しかし今はそんな悠長なことを考えている場合ではない。僕は批判を浴びる覚悟で開口することに決めた。

 

 僕の作戦は裏門の近くでトラックが来るのを待ち、来た時に海未が裏門の前で一人でメンバーを助けに来たふりをしてトラックに存在を示す。降りて来て海未を捕まえそうになった時に、木の陰から僕が奇襲を仕掛け、それに気をとられているうちに海未が他の連中を相手にするというもの。そして衣装を奪って着替えて真鍋さんが運転、僕と海未は荷台に隠れる。

 

 真鍋と海未は呆気にとられているような表情をしている。真鍋さんは最初こそ驚愕していたもののすぐに応じてくれた。しかし当主は眉をひそめて趣でこちらに目を向ける。今からやることは非常に危険なことだ。子を持つ親としては心配するのは無理もない。

 

「悠人くん、本気かね? もう少し作戦を考えてからの方が良いのでは?」

 

「ええ、確かに危険です。だが今こうしてるうちにμ'sのみんなが『逢崎』の手によって矯正されるかもしれない。そして明日にはより多くのスクールアイドル達が捕まります。そして真鍋さんの話を聞いていたなら分かるはずです。あの施設で行われていることはろくなことじゃない」

 当主は先ほどよりは眉間に寄せていた皺が薄くなっているもののやはり覚悟が決まらず躊躇していると、彼の隣から小さなため息が聞こえた。ため息の正体に目を向けると、海未は僕の目を見て静かに首肯した。

 

「海未、やる気なのか?」

 当主は眉間に少しシワを寄せて、彼女に問いかける。

「お父様、危険は承知の上です。ですが戦はもう始まっています。彼の言う通り私も大切な友人達を助け出したいのです」

 娘の強い決意の声に彼が動揺を感じている間に僕も彼の説得に介入する。

 

「当主殿、海未は僕が命に代えても守りますので、ご安心下さい」

 彼は僕の実力がどのようなものかその身で体験している。自負心を持っているわけではないが、少なくとも信用を得ることはできそうだ。

 当主は少しばかり、逡巡を顔に浮かべてた後「娘を頼んだ」と蚊の鳴くような声で呟いた後、立ち上がり部屋を出て戸を閉めた。

 程無くして当主が戸の隙間から顔を覗かせて、僕達に手招きをする。

 彼の背中を追って敷地内を歩いて行くと相変わらず、年気を感じさせる道場の前に立つ。当主がゆっくりと倉の戸を押していくと木の軋む音を出しながら開ける。

 小窓から微かに漏れる夕日が均等な定位置から畳に向かって差し込んでいた。静寂の支配する道場を当主は道場の中に足を踏み入れて、続いて僕達も奥の方に進んで行く。

 

 道場の壁の方まで行くと、壁に掛けている木刀二つを僕と海未に手渡す。

「戦というのであれば、刀を持たねばな‥‥‥」

 僕と海未は顔を合わせて、向き直って当主に頭を下げる。

 

「真鍋殿は木刀は?」

 

「いえ、僕はお世辞にも運動ができるとは言えません。ですのでできる限りお二人の足を引っ張らないように努めます」

 彼が気炎を立てると、当主は静かに頷く。

 当主の運転する車に乗り、僕達は強いと憤りと微かな不安感を胸に抱きながら『箱庭』に向かった。

 道中、人通りの少ない秋葉原が目に入り、その光景に僕達は言葉を詰まらせた。

 UTXの建物の外観は酷い有様で建物の窓硝子が割れて、破片が地面に散らばっている。普段は『A-RISE』の映像が流れているモニターは捕らえられたスクールアイドルとそのメンバーの名前を公開している。

 

 多く存在したスクールアイドルショップも入り口付近や店内の中もひどく荒らされている様子で、店長らしき人物が背中に哀愁を漂わせながら箒で周囲を掃いていた。非日常的な光景が目に入り、拳に力が入る。

 

 

 

 

 

 都心を車で離れて数十分が立った。相変わらず車内を静寂と緊張感が支配している。車が目的地に近づくにつれて、徐々に周囲を先ほどより濃くなった夕闇と木々が窓ガラスを通して目に映る。

 

「ここで止めてください」

 数メートル前方の木を真鍋さんが指差して停車するように当主に告げる。

「何故だ?」

「この先はおそらく相手の目も介入してくる可能性があります。ここからは降りて徒歩で向かった方が得策かと‥‥‥」

 真鍋さんがそう言うと車は徐々に減速して行き、道の脇に停車する。僕達は車のドアから車外に出ると、外風が体に触れて肌寒さを感じながらトランクを開ける。中に入っている木刀入れを二つ取り出して一つを海未に手渡す。

 

「木刀は受け取ったな。悠人くん、海未。すまないが私はどうしても外せない用事があってな、本当にすまない」

「お気になさらないでください。当主殿」

「はい、お父様」

 海未を返事を返すと、当主のすぐそばまで近づいて顔を胸に埋める。

「必ず帰ってきます」

 彼女の言葉に返信するかのように彼は海未の小さな体を抱きしめた。

 

 

 

 

 当主と別れた後、僕と海未は真鍋さんを筆頭に息を殺して草木を搔きわけながら森の中を歩いていた。いつあの黒いマントを纏った連中が出てくるかわからない。緊張感に心を支配されつつしばらく進んでいると遠くの方から人の声が聞こえた。

 

「 二人にもそれを伝えようとしたが、二人とも気づいたのか辺りを見回している。

「悠人、今のって‥‥‥」

「ええ、人の声が‥‥‥」

 

「おそらく正門の方に固まっているマスコミの方々でしょう。裏門までもう少しです」

 声を頼りに薄暗い森の中で静かに裏門を目指す。海未の表情を見ると、緊張しているのかやや強張った顔をしている。乾いた土を踏み進んでいると、先頭にいた真鍋さんが左腕を水平に横に出して、止まるように合図する。

 

 何事かと気になった僕は視線を上げると、そこには薄暗い空を隠すかのように黒い柱のようなものが聳え立っている。その横には目を通すと真鍋さんの言った通り、有刺鉄線が張り巡らされている。

 有刺鉄線に目を向けていくと、微かに後ろの方から地面を荒く踏むエンジン音が聞こえて、そちらの方に目線を向けると木々の間から車のヘッドライトであろう光が見える。

 僕はすかさず二人を小声で呼び、光の方に指を向けると、真鍋さんが暫し、黙念したような表情を見せた後、唇を尖らせて軽く息を吐く。

「それでは作戦に移りたいと思います。園田さん‥‥‥お願いします」

 海未は無言で恐ろしいほどに冷静な態度で首肯した後、僕らの元を去る。僕たち二人もなるべく海未の位置に近い、木々に身を潜める。

 時を待たずして、見覚えのある黒いトラックが僕の視界に姿を表す。僕はトラックの荷台を覆った緑色の布に目を向けて、あの中に怯えながら拉致された少女達がいることを想像し、背に背負った木刀袋に繋がれた持ち手の紐に強く握力をかけた。トラックの進む道の数メートル先には僕らと離れた海未が木刀袋から取り出した木刀を右手に持っている。

 

 トラックのヘッドライトが数メートル先の海未の足首を照らす。するとトラックが止まり、ライトを更に上にあげて彼女の下半身から上を照らす。すると助手席と運転席から黒いマスクをつけて、漆黒のマントを纏った二人組が車内から降りてきた。僕はゆっくりと木刀袋から

傷ひとつない見事な木刀を手に取り、奇襲に備える。

 

 海未は無言で木刀を構えると、二人がマントを靡かせながら駆け足で向かっていく途中で僕は木の陰から飛び出し、二人の頸部分に確実な一撃を叩きつける。

 すると二人は膝から崩れて地面に顔を伏せた。

「やりましたね。悠人」

「さすがですね。あまりに一瞬で目が追いつきませんでした‥‥‥」

 二人が僕の元に駆け寄り、安堵した表情を向ける。そして気絶させた二人のマスクとマント、二人の懐の中にあった門に入る際におそらく必要であろうICカードのようなものをとり、二人を森の木々の陰に隠す。

 真鍋さんと海未に先ほど取ったものを渡して、変装させて僕は荷台の中に隠れることにした。荷台の布の中に首を入れると中では十人近くの少女が黒い布で目隠しされて、結束バンドで手足を拘束されている。今すぐにでも助けてあげたいですが僕らにはやるべきことがある。僕は胸の中での葛藤を沈めながら静かに裏門に近づくトラックに揺られていた。

 




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