35話
僕は真鍋さんから連絡があれば出るように海未に伝えると侵入者と理解できるようにマントをとり、ゆっくりと扉を開けた。素早く敵の位置まで足を走らせて向かう。階段を駆け上がり、廊下に出ると案の定、黒いマントの二人がいた。彼らと目が合い、僕を見るや否や、二人揃って懐から黒い刀を取り出して構える。僕もそれを確認すると背中に背負っていた木刀入れから木刀を抜き取った。静かに構えると、二人が斬りかかるような体勢でこちらに走ってくる。
僕は、右側の壁に向かって素早く飛んで、足で壁を蹴って二人の背後に回り込む。振り返った左側の黒いマスクの手に、木刀を叩きつけると、痛さで声をあげて、刀をその場に落とす。地面に落とした刀を足で踏んで後ろに滑らせる。
その右にいた黒いマスクが横に刀を振ってきたので、腰を下ろして回避する。そしてガラ空きの溝に右手で持った木刀の刃先を強く押し込む。
黒いマスクは壁に背中から激突して白目をむいて背中からゆっくりと床に倒れた。後ろから気配を感じて振り向くと、先ほど痛みで悶えていた黒いマスクが拳を振るいあげた状態で立っていた。
すかさず僕は拳を交わした後に、交わされた反動で低い体勢だった相手の首元に左手で手刀を叩きつける。するとそのまま先客だった自分の仲間の背中にもたれるようにして倒れた。僕は下敷きになっている相手の手から刀を奪う。
僕は二人が気絶しているのを確認すると、目上に取り付けられている監視カメラに目を向ける。すると察したかのように警報がなると、踵を返して四階に向かう。
「侵入者が四階に向かっている。施設内にいる者は対処しろ!」
真鍋さんがマイクで施設内に命令を轟かせると、向かっている途中に向かいの扉が開いて黒いマスクの三人組が出てきた。三人が首を鳴らしたり、指を鳴らした後に懐から棒のようなものを出して、下に強く降る。
棒の先から伸びるように出てきた刀身が僕に向ける。僕も静かに刀を構える。相手の一人が走ってきて、刀を振るあげたのを交わして、壁の方に蹴りつける。続いてきた相手が右手が横に振った刀を腰を下ろして交わすと、相手の懐から黒い刃先が飛びたしてきた。僕は顔に刺さる事は回避できたが、右頬を掠めて一筋の血が流れる。
体勢を立て直して、二刀流となった相手に木刀を構える。先ほど壁にぶつかった相手も立ち上がる。二刀流が左右交互を刀を振る。間合いを取らなければ危険なので後ろに下がりつつ、反撃を好きをうかがう。
二刀流を構えた相手が再びこちらに向かって、走ってくる。僕は左手で懐から先ほど黒いマスクから取った刀を力強く手首を振って相手に投げる。宙を舞っている途中で刀身が出てきて相手は思わず、二刀流で防ぐ。
相手の視界が一箇所に集まった瞬間に空いた溝に木刀の刃先で強く押す。
相手は両手に持っていた刀が手から離れて、背中から壁にぶつかり、首が垂れる。
右と正面から気配を感じて、顔を上げると黒いマスクの二人が刀を振り上げていた。
僕は左手で、足元に落ちていた刀を拾って正面に振ってくる刃を防ぐ。木刀で右の刃を防ぐ相手を払いのけて、後ろに下がる。
左手の刀を刀身を収めて懐に入れる。 右側から黒いマスクが両手で構えた刀を振り上げる。左に身を避けて、振り下ろした際によろめいた隙に頸に弾くように木刀を叩きつける。 糸が切れた人形のように膝から崩れて地面に倒れた。
僕は正面にいる最後の相手に目を向ける。相手は両肩を回した後、刀を両手で構える。
僕は腰を低くして、刃先を後ろに向けて構えをとった。相手は勢いよく踏み出してこちらに走ってくる。そして、間合いに踏み込んだ瞬間、僕も走り出して、瞬時、相手の溝に刀身を叩きつける。すると真後ろで倒れる音がした。
僕は後ろを向いて、地面や壁で伸びている黒いマスク達を確認した後、監視カメラに向かって頷く。
三階の廊下で海未達と合流して、しばらくすると黒いマスクを被った真鍋さんがやって来た。 他のみんなはその姿に怯えていたが、同業者である事を告げると安堵の表情を浮かべた。そして、先頭に僕と真鍋さん、後ろに海未を配置して敵襲にも備えておきながら来た道を静かに辿って、薄暗い非常階段を使って降りる。 すると非常階段の扉の前に立った時、外が何やら騒がしいことに気づく。
ゆっくりと扉を開けると、そこには白と黒の車が数十台、赤いサイレンを鳴らして駐車している。
「警察‥‥‥なんで‥‥‥」
目の前の事実に驚愕していると、見覚えのある着物姿の男性がこちらに向かって来た。
「悠人君! 無事だったか!」
そこにはなんと当主殿がいて、こちらに手を振る。僕はこの状況に対して質問をすると、どうやら当主殿は僕達をあの場所に連れて行った後、東京の警察署に行って『箱庭』と現在、逢崎蓮がいるとされる『逢崎邸』に警察職員を派遣するように抗議したとか、長い抗議の末に、ようやく警察が動いて、今のような状況になったらしい。どうやら他のスクールアイドルを輸送していたトラックも警察によって抑えられたらしい。
アイドル達が扉から生産されるように出て来たので、警察職員の数人は驚愕していた。
多くの警察職員が一斉に『箱庭』の中に突入していく。これでここの施設に囚われた他の子供達も助かるはずだろう。
そして、真鍋さんがスマートフォンで撮影した写真や映像を見せると、警察はそれを本部に送信して、すぐさま『逢崎邸』への強制捜査が始まったらしい。裏門の方にも既にマスコミが回っていた。警察が来たら当然こうなるか‥‥‥
空は見上げると、真っ暗な闇の中にぽつりぽつりと小さな光が見える。 呆然とそれを眺めていると、誰かが僕の右肩に手を添える。
「やりましたね」
海未が僕の横で呟く。不意に吹く夜風で美しい黒髪が宙を舞う。
「ええ、なんとか‥‥‥これではようやく」
僕は何か、心に引っかかりながらもそれを押し殺すように遮り、言葉を喉から引っ張り出す。すると一人の警察官が海未の方に駆け寄って来た。何やら『箱庭』での詳細を聞きたいということらしい。海未は了承して、僕に手を振り、警察官とともにその場を去った。
ふと裏門の方を見ると、ものすごい数のパトカーが黒いマスクの連中達を乗せて、蟻の行列の様に外へ出て行く。
その後すぐに僕も、当主殿と警部に呼ばれて現場の敷地内に建てられた片屋根テントの中に入る。
中には当主殿と茶色のチェスターコートを纏った長身の男性がパイプ椅子に座っていた。どうやらこの人が警部だそうだ。
警部は一度、椅子から腰を上げて、僕と握手をした。用意されたパイプ椅子に座り、警部から黒いマスク達の事について聞かされた。
黒いマスクの連中を調べたところ、どうやら彼らは暴力団組織らしく、昔から『逢崎会』とは古い仲だったようだ。
『逢崎会』にとって都合の悪い事を吹聴しようとした輩を消していた事が明らかになった。そして、数日前に殺害された逢崎宗次郎
を手にかけたのも自分達だと組員の一人が供述したという。理由を聞くと、ある人物の依頼で協力するに当たっての利点を聞かされて元々『逢崎会』が組織に対する扱いが粗末になって来たこともあり、快諾したらしい。
「その人物とは?」
僕は眉間に皺を寄せて、尋ねると一層真剣な声音で一言を放った。
「逢崎蓮‥‥‥」
僕は目を大きく見開きながら自分の耳を疑った。逢崎蓮が実父である逢崎宗次郎を殺した? どういう事だ? 録音機で聞いた時は醜悪な会話内容だったが普通の親子のように思えた。
「問題は何故、息子である逢崎蓮が父を殺したのかだ‥‥‥」
僕と警部、当主殿が項垂れていると、近くに置いてあったスマートフォンが鳴る。
「失礼‥‥‥」
どうやら警部の物らしく、手に取り、耳に近づけて会話を始める。
「わかった」
警部が電話を切ると、僕達の方に向き直る。
「『逢崎邸』をこれまでの組員が言ったような内容がディスクパソコンから見つかったと報告が入りました。だが肝心の逢崎蓮は依然として姿を特定できないままです」
警部が拳を強く握りしめると、屈辱感を浮かべたような表情で歯を食いしばる。
「そう言えば、海未は?」
当主殿は不意に海未の居場所を聞くと、警察官に呼ばれて、正門の方について行ったと話す。
「正門の方?」
警部が眉間に皺を寄せて、腕を組む。その反応は僕の発言に違和感を感じているような感じだった。
「あそこには話を聞くためのテントなどはなかったはずだが‥‥‥」
僕はその時点でとてつもなく、嫌な気がした。いや、まさか‥‥‥不信感が心に巣食おうとした時に、僕の懐に入れてあった携帯が鳴る。着信は海未からだ。
携帯と取ると、携帯の向こうから車の走行音らしき音が聞こえる。そして、それとともに海未が口になにかを押し付けられているようなことが聞こえる。
「海未! 海未! どうしたんですか!海未!」
頭に血を登られて、必死に彼女に問いかけると、向こうから聞き覚えのある声が返ってきた。
「もしもぉ〜し! 海未ちゃんだと思ったぁ?
ざんね〜ん! 逢崎蓮君でしたぁ〜」
電話の向こうで話す彼の声音は、初めて会った時や就任式の際の慇懃な態度ではなく、まるで相手を嘲笑する様な口調だった。
「いや〜また守れませんでしたねぇ〜、村雨悠人くぅぅぅん、いや、園田悠人君」
多くの安堵や安心感で涙する少女達に反して
僕はあまりの怒りに携帯で相手の名前を憎悪を孕んだ声で叫んだ。
閲覧ありがとうございます! 誤字脱字感想その他ご指摘ありましたらご連絡ください!! そろそろこの章も後三話くらいで完結したいと思います。