大和撫子と復讐の徒   作:蛙先輩

8 / 39
8話です。それではどうぞ!!!!



8話

A- RISEの合同ライブから数日後の日曜日。

 

僕は以前、園田海未の稽古に付き合うと約束したので彼女の家に向かって、歩いていた。

 

しばらくして僕は彼女の家の門前に着いて、入り口付近にあったインターホンを鳴らす。

 

「はーい。どちら様でしょうか?」

園田海未の声がインターホン越しに伝わってきた。

 

「村雨悠人です。開けていただけませんか?」

「悠人! すぐに開けます!」

そう言って、彼女はインターホンを切った。

しばらくすると、門の奥から話し声と共に足跡が聞こえてきた。

 

門が静かに開いて、胴着姿に着替えた彼女が出迎えた。

「おはよう、、ございます」

彼女は少し、頬を染めて挨拶をしてきた。

 

「おはようございます。海未」

彼女に挨拶を返すと、僕を門の中へと入れる。

 

彼女の家は古風な屋敷で庭には石で囲まれた小さな池があり、そこには数匹の錦鯉が悠々と泳いでいた。

 

「あら、海未さん。そのお方は?」

声の方を向くと、園田海未によく似た着物姿の女性が立っていた。

 

「彼は村雨悠人君です。本日、私のお稽古に付き合って下さるんです」

「初めまして、村雨悠人と申します」

 

「初めまして、園田海未の母です。なるほど貴方が海未さんの・・・ねぇ?」

 

彼女は僕に挨拶をすると、悪戯な目で園田海未の方を見る。

すると、園田海未の顔が徐々に赤くなっていく。

 

「おっ、お母様! 違います! 私と彼は!」

「はいはい。おほほ」

園田海未の母は着物の裾で口を隠して、笑いながら屋敷の方に戻っていった。

 

「全く・・・では悠人、道場の方に案内します」

 

屋敷から少し離れたところに道場があった。

靴を脱いで道場に入ると、彼女は胴着を渡した。

 

僕は早速、胴着に着替える事にした。

しかし、こうして胴着を着るのも久しぶりだ。しばらくこうやってまともに着て、誰かと組むのは久しぶりだ・・・

 

ふと父と稽古をした時の事を思い出した。

 

 

「どうした悠人、もう限界か?」

「まだまだ!」

僕は頬に傷が付いても必死に父に立ち向かい、どうにか一本取ろうと足掻いた。

 

結果は一本も取れなかったけど・・・

 

 

 

 

 

帯を締め終えて、道場の広間に戻って着た時には彼女は既に真ん中で小窓から入る木漏れ日を手を伸ばして、浴びていた。

 

「あっ、悠人着替えたんですね。大きさはどうですか?」

 

「問題ないですね」

園田海未にそう答えると、ふと僕は彼女の後ろに壁に掛けてあった竹刀に目がいく。

 

「悠人?」

「ああ、すみません。稽古始めましょうか」

 

「そうですね」

 

僕達は互いに見合い、一礼して構える。

「はぁー!」

園田海未が先制を仕掛けてきて、近く手を僕は払う。だが、起点を利かせて何度も仕掛けてくる。

 

これ以上払い続けるのも限界か、、、

「ふん!」

僕は園田海未に手を伸ばして、彼女の左裾を掴んで彼女を引き寄せる。

 

彼女は振りほどこうと、空いている左手で抵抗しようとする。

 

俺も彼女を左手を振り切ってすかさず彼女の襟元を掴んで、足を掛けた。

 

すると彼女は背中から畳に崩れていった。

 

「一本取られましたね・・・」

畳に体を預けて、微笑みながらそう呟く。

 

それから何度か組み手を重ねて遂に・・・

「ハァァ!!!!」

「ぐっ!」

彼女は僕から一本取ったのだ。

 

「やっと・・・とれました」

「とられてしまいました」

僕は彼女から差し出された手を取り、立ち上がる。

 

 

 

二人、道場の壁に持たれて水を飲みながら、顔の汗を拭く。

「しかし、お強いですね。一本しか取れないなんて・・・」

 

「海未もなかなか強いではないですか。起点の利かせ方が凄く上手いです」

 

「そうですか。ありがとうございます。でも悠人、何故あの時の構えではー」

「稽古はどうだ? 海未」

 

彼女が続けて何かを言おうとした時に道場の入口の方から逞しい声がしたので、目を向くと和服姿の中年男性が立っていた。

 

すると海未が立ち上がり、僕もそれに合わせて立ち上がる。

「はいお父様、彼のお陰でいつもより励んでおります」

 

「初めまして、村雨悠人と申します。園田海未さんとはクラスで仲良くさせていただいています」

 

「園田海未の父だ。よろしく」

手を差し出されたので、本心を偽り微笑んで握手を交わす。

 

「海未よ。村雨君の実力はどうかね?」

「正直、私より上かと、先程まで何度か交えてやっと一本取れました」

 

「なんと・・・」

園田海未の父は目を開き、驚いた顔で僕を見る。

「いえいえ、父が多趣味な物でそれで武術を教わっていただけです」

園田海未の父に返すと、彼は顎に手を添えて何か考え事をするような動作をとる。

 

「村雨君・・・良ければ私と一度、組み手を取ってもらえるか?」

 

「お父様が直々に・・・」

 

「分かりました。園田道場の師範と手合わせできるとは」

 

「では始めよう・・・」

 

互いに向かい合い、一礼をして構えを取る。

彼の体から常に放たれている気迫が伝わってきて、鳥肌が立つ。

 

すると、彼は地面を強く蹴り僕の元に駆けていく。僕はいきなりの速度に避けるのに遅れが生じる。

 

僕は掴まれそうになった左裾を後ろに下げて、彼が技をかけられないように間合いを作る。

 

「ほう、今のを避けたか・・・ほどんどの者はあれに捕まって今頃、畳で寝ておるところだ」

 

「はは、僕も危なかったですけどね」

 

どうする。またあの構えを見せれば園田海未ではなく、今度は師範にまで見られる。ここは潔く負けておくか・・・

 

 

そんな事を考えている時に気づけば、彼は目の前まで迫っていて一瞬にして、僕の体は宙を舞った。

 

「私の勝ちだな」

園田海未の父は倒れる僕に、口を開いて歯を見せた。

 

「負けちゃいましたね」

手を差し伸べられて立ち上がると、園田海未が駆け寄ってきた。

 

「海未の言う通り、中々腕が立つな。しかし

対決している時に雑念が入ったのは感心せんな」

考え事がバレてたか・・・

 

「どうやって間合いに入り込もうか、考えていたら一本取られてしまいました」

 

「でも、凄いお父様を前にしてここまで組み手が出来るなんて・・・」

 

「海未も中々ですよ」

「なんとお主達、下の名で呼ぶ仲なのか!」

 

「違います! お父様! 穂乃果達も彼を下の名前で呼んでいるので私もそう呼んでいるだけで決してそんな・・・」

そう言うと、園田海未が顔を赤らめる。

 

「そうか、海未もとうとう・・・」

「だからお父様! 違います!」

父と娘の話は夕陽が射してきた道場をより一層明るくした。

だが、夕陽が射して強くなる分、影も濃くなっていく。僕も同じだ。

 

二人が楽しみ話している事に関して表面上の笑顔とは別に内心では

恐ろしいほどの不快感、おどろおどろしさが蠢いていて、目眩がしそうな程の気持ち悪さが僕を包み込むように襲ってくる。

 

今の自分はちゃんと笑顔で二人を見れているのだろうか? もはや自分の表情すら分からなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、僕はすぐに着替えて、彼女の家を出た。夕食の誘いを受けたが断った。

断った時、園田海未の顔が少し寂しそうな顔をしてたが

気のせいだろう。

それにこれ以上、あの場所にいれば気が狂いそうだったからだ。

 

でも、久しぶりに組み手をしたのは少し楽しかったな。

夕暮れの帰り道、一人そう思う僕だった。

 

 

私は部屋で一人、机に座りながら作詞を考えている時に今日の事を思い出しました。

「悠人との組み手、緊張しました。ですが何故、あの構えをとらなかったのでしょう? もしかしたら見間違いかも知れませんね・・・夕食を一緒に食べたかったな・・・」

 

 

すると私は我に帰り、自分の失言に悶えるのであった。

 

 

 

 

 

 

園田海未の父が部屋の障子を少し開けて、その隙間から月を眺めながら酒を呑んでいた。

 

「海未の友人はなかなかだった。しかしあの動きからして本気すら出していなかった。村雨・・・まさかな・・・」

 

そうひとりでに話して、酒を一人飲むのであった。

 




今回もありがとうございます!!
誤字、脱字、その他のご指摘ありましたらご連絡ください!!!!
ありがとうございました!!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。