グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~   作:ゼロん

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球磨川のせいでこの話を投稿する前、ちょっとスランプ入った。
(どうやったら改心前の先輩を描写できるんだぁあああッッ!!)
『僕は悪くない』


第9話 『君は悪くない』

「……正邪(せいじゃ)! 逃げてッッ!!」

 

 正邪のポケットから小さくなっていた針妙丸(しんみょうまる)が飛び出し、球磨川(くまがわ)に突撃する。

 無論、出た瞬間に人間大の大きさになっている。

 

『うわぁ、驚いたな。【体のサイズを変える】スキルかぁ』

「うるさい! みんなに何をした!」

 

 針妙丸の針の剣をよけ、冷静に彼女の能力を分析する球磨川。のほほんとした表情は崩れない。

 その一方で針妙丸の顔には慶賀野達を殺されたことへの憎悪が浮かんでいる。

 

『うわっ、あぶなっ。ケガしたらどうするのさ!』

「いい気味よ!」

 

 針妙丸の針が球磨川の頬をかすめる。

 先ほどまで笑っていた彼が焦りの表情を浮かべているように見える。

 

『落ち着いて! 話せばわかるって! 僕たちは友達になれるはずだよ! 努力・友情・勝利! ジャンプの三大原則の一つじゃないか!!』

「姫! それ以上そいつの相手をするな!! 攻撃をやめて戻ってこい!!」

「うるさいッ!! 黙って!!」

 

 冷静さを失い、怒りに身を任せる針妙丸に誰の声も届かない。

 

「返せっッ!! 功名さんたちを返してッッ!!」

『だから、僕は悪くないって。でもどうしてもって言うんなら……』

 

 突如として球磨川の動きが止まり、そして--

 

「え……?」

 

 針妙丸の針が球磨川の体を貫いた。彼の口元から血があふれ、着ていた黒い学ランに赤いシミが広がり始める。

 

「なんで……なんでよけようとしなかったの……?」

 

 球磨川の行動が理解できずに目を見開く針妙丸。

 

『い、痛い。痛いよぉ……なんで……どうしてこんなことするの……』

「え……? え?」

 

 刺されたときはピクリとも動かなかった球磨川が急に苦しみ始め、目元に涙を浮かべる。しずくが零れ落ち、床に雨のように降り注ぐ。

 

 針妙丸は動揺し、球磨川から針を引き抜いてしまう。

 

 当然、彼は床に倒れ苦悶の表情をさらに濃くする。胸から出た血が床にも広がり始める。

 致命傷を与えたことに困惑し、針妙丸は……

 

『なーんてね、大丈夫だよ。君は何も気にする必要はないんだよ』

「!?」

 

 針に貫かれたまま先ほどと同じ笑みを浮かべている球磨川に怖気をおぼえた。

 

 --うそ。なんでこの人は笑っているの? 死にそうになっているのに、なぜ笑っていられるの?

 

『友達が襲われそうになったら守ろうとするのは当然のことだよ』『君は悪くない』『それに他の友達も酷い目にあった』『だから君は悪くない』『それをやったかもしれない人が目の前にいる。敵意を覚えるのは当たり前だよ』『君は悪くない』『それがたとえその場にいただけの人だとしても』『君は悪くない』『たとえその人を刺殺したとしても』『君は何も悪くないよ!』『だって僕は怪しいんだもの!』『君は何をしたっていいんだ!』『どれだけむごい殺し方をしてもいいんだ!!』『だって……友達を守るためなんだもの!!』

「あ……あぁ……ああ、い、嫌」

 

 球磨川からあふれ出した過負荷に耐え切れず、手に持っていた針の剣を針妙丸は落としてしまった。

 

 針が落ちるのを見た瞬間、彼はさらに笑みを濃くしていく。

 

 壊れた人形が立ち上がるかのように、血を流しながら世にも不気味な動きで【混沌よりも這いよる過負荷(マイナス)】はその場から立ち上がった。

 

 

『あれ? もう痛くないや? これはもう治ったってことかな? いや、もうすでに治療不可能? まさか! 壊死の兆候かもしれないなぁ!』

 

 

 ======================

 

 

 --マズイな。このままだと針妙丸が壊れちまう。

 

 正邪はすぐに教室を出られる範囲から二人の戦いを観察していたが……勝負は圧倒的だった。一瞬で針妙丸の勝ちが決まった。

 

 だがすでに勝敗は問題ではなかった。

 

「針妙丸! どっかいってろ! 余計なことはするな!!」

「あ……ぁ」

『ひどいなぁ。人に致命傷を与えておいて逃走とかー。この人殺し! 恥ずかしくないのか!!』

「お前が言うな!!」

 

 正邪の言葉に反応し、少し目に生気が戻る針妙丸。再び落とした針を拾い、身構える。

 

「そうだ……! あなたはどう考えても部外者なんかじゃない! 人殺しはあんたよ!!」

『だーかーらーやったのは僕じゃないって。まぁ……どうしてもそう言うんだったら、しょうがないなぁ』

「……?」

 

 球磨川は足元に落ちていた螺子を拾い、手の上で弄ぶ。

 

 

『これでおあいこにしようよ。針妙丸ちゃん』

 

 

 そして、自分の頭に躊躇なくその螺子を突き刺した。骨の砕ける鈍い音が周りに響き、彼の頭の横から血がほとばしる。

 

 

「い、いやあああぁあああぁああッッ!!」

 

 

 針妙丸は天を割くような悲鳴を上げる。部屋中に反響し声が消えた後、彼女はその場に崩れ落ち、倒れ伏す。

 

 反対に、球磨川は立ったまま正邪の方を振り返る。

 

 --これが……過負荷の中の過負荷。

 この男にとって勝敗などどうでもいいのだ。ひたすら相手を苦しめ、勝ちを譲り、そして……

 

「……ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。私が悪かった、私が悪いの、私が悪いのは……悪いのは私……」

 

 ……相手の心を壊すのだ。

 

 現に針妙丸は虚ろな目で延々とうわ言をつぶやいている。

 

『今日は転校初日だから疲れちゃった。そうだ! 正邪ちゃん。下校途中の本屋さんでエロ本を買いに行こうと思ったんだけど、一緒に行かない?』

 

「遠慮しとく。誰かさんのせいで用事ができちまった」

 

 正邪は壊れた針妙丸を抱え、教室のドアを開ける。

 

 --とりあえず、針妙丸を部屋で寝かせよう。その後のことはその時になったら考える。

 

 息を吐くように人を傷つけ、その場にいるだけで嫌悪感を抱かせる。

 

 誰もが近づかず、敵対する形でも関わりたくない。そういった気持ちを持たざるを得ない。

 それがこの男、球磨川禊なのだろう。

 

 

 正邪はそんな彼に対して……

 

 

 --なんて素晴らしいんだ。

 

 

 ……かなりの好評価だった。

 

 

『残念! じゃ、また明日とか!』

 

 

 正邪は去り際に教室の方を振り返る。おぶっている針妙丸はいまだにうわ言をつぶやいている。

 

 すると教室の方で、まるで何事もなかったかのように慶賀野達が困惑の声を上げているのが聞こえた。




皆さま沢山の感想、評価、ありがとうございます!
球磨川君をこれからもよろしくお願いします!
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