グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~   作:ゼロん

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第11話 『僕と友達になろうよ』

 日が沈み、空が赤くなり始める時間帯。

 

 正邪(せいじゃ)はアパートの階段を降り、再び球磨川(くまがわ)と向かい合う。

 

 --針妙丸達には『幻惑を見せる程度』の能力と言ったが……あれほどの過負荷(マイナス)を持つ球磨川の能力がその程度だとは思えない。

 

 あの場で殺した人物を生き返らせることができる程の……とんでもない能力を持っている方がよっぽど納得がいくのだ。

 

『やぁ、正邪ちゃん。針ちゃんの調子はどう?』

「あれだけメンタル破壊しておいてよく言うよ」

 

『嫌だなぁ、彼女の方から襲い掛かってきたんだよ?』『僕は悪くない。』『さっきのは正当防衛ってやつさ』

 

「お前の場合は口撃だけでも過剰防衛って言うんだよ。で……今度は何の用だよ。顔の皮をご所望ならお断りだ」

 

 ははは、と球磨川は仮面に書いたような笑顔を崩さず、笑い声をあげる。

 

 それを怪訝な様子で正邪は見つめる。

 

『大丈夫。正邪ちゃんに僕の方から何かをするつもりはないよ。……僕が用があるのは(しん)ちゃんの方さ』

 

「へぇ、針妙丸(しんみょうまる)にねぇ」

 

 正邪はちらりと針妙丸のいるボロアパートの方を見つめる。

 

「ちょっとアイツは疲れてるらしいからな。布団で寝てるよ」

『それは大変だ! じゃあ、僕が会って元気づけてあげよう!!』

 

 球磨川は善は急げとボロアパートの方へ駆け出す。

 

 --言外に部屋に来るなって言ったんだがな……こいつ、針妙丸にとどめを刺す気か。

 

 彼がアパートの方へ向かっても正邪はびくともせず、ただじっと球磨川をつまらなそうに見つめている。

 

 そんな正邪を不思議に思ったのか、球磨川は階段の手すりに手をかけ彼女の方をゆっくりと振り向く。

 

『……止めないの? 針妙丸ちゃん、精神病院でもお手上げのグロッキー状態になっちゃうかもよ?』

 

「だから?」

 

『えっ? 君ら友達じゃないの?』

 

「他人がどうなろうがどうでもいいだろ? それにお前は私に何かをするつもりもないんだし。ならどうだっていい」

 

 興が冷めたとでも言いたげに腕を頭の後ろに回し、正邪は球磨川に背を向ける。

 

 球磨川は『これは驚いた』と言いたげに目を白黒させる。

 

『意外だね。君はもっと仲間想いかと思ったんだけど』

 

「あれは駒だよ。将棋でいうところのただの歩兵。飛車や銀将みたく優秀で重要な駒じゃないんだ。やられても何の問題もない。むしろ王将である私の身代わりになれてアイツも本望だろうよ」

 

『……』

 

 --所詮、アイツは私の道具。どうなろうがどうでもいい。

 

 球磨川は薄く口元に笑みを浮かべ、正邪の元に向かい歩き始める。

 

『……へぇ。驚いたよ。ここまであっさりと仲間を切り捨てられる人がいるなんてね。僕は感心したよ。正邪ちゃん』

 

「試したのか? 私を」

 

『試すなんて人聞きが悪いなぁ。僕は知りたかったんだ。君がどういう人間なのかを、ね』

「なるほど、趣味が悪い」

 

 --ついでに言うと私は人間じゃなく天邪鬼なんだがな。

 

 球磨川は正邪の前で歩を止めると、ニコッといつものように薄気味の悪い笑みを浮かべる。そして……彼はおもむろに正邪に右手を差し出した。

 

『正邪ちゃん。改めて僕と友達になろうよ』

 

 

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「正邪……」

「針妙丸さん……少し休もう。たぶん、今の状態で私たちが行っても何の意味もないよ……」

 

 正邪と針妙丸の部屋。慶賀野は狼狽しきった針妙丸を和室にしいた布団に寝かせる。

 

 出て行った正邪を見送ってしまった針妙丸、慶賀野、桜街の三人は部屋の和室で正邪の無事を祈るしかなかった。

 

 針妙丸が寝たのを確認した後、二人は和室への扉を閉め、桜街と慶賀野は扉の前で正邪の帰りを待つ。

 

「けどよぉ……不思議なんだよな」

「何がです?」

 

「慶賀野、俺は球磨川に初めて会った時、確かに全身をでかい螺子で串刺しにされた。痛みも確かに感じたし、それ以降は意識もはっきりしてなかった」

 

「……球磨川君の能力のことですか?」

 

 顔色を青くした慶賀野に向かって真剣な顔でうなずく桜街。

 

「姉御に心配かけるのは悪いかと思って、アイツの能力は『幻覚を見せること』だって言っちまったんだけどよ……」

 

「うん……」

 

「もしかしたら……考えたくもないけどよ。アイツの能力って、使い方次第では『人を生き返らせることもできる』とんでもない能力なんじゃないかって思ったんだ」

 

「まさか……そんなむちゃくちゃなスキルの持ち主がいるはずが……」

 

 慌てる慶賀野の反応に桜街は沈黙で返す。

 

「……俺が入学式で全身骨折の大怪我をしたところは見ただろ?」

「あ、はい。あれが何の関係があるんですか?」

 

「あれはおそらく『重力を操る』能力持ちの仕業だ。俺はそいつに復讐するためにこの学校に入ったんだ」

 

「え……? 重力を操る……? そんな非現実的な力が……」

 

『あるはずがない』と現実から目を背けようとする慶賀野に桜街は首を横に振る。

 

「ある。俺は……二回もそれを実体験した。仕組みは意味不明だがそんなスキルを持ってんのはよほどの異常(アブノーマル)か……」

 

 --過負荷(マイナス)。そのどちらか。その過負荷たちが持っているのは、より人に害を及ぼすことに特化した負の過負荷(スキル)

 

 その極めつけであろう彼の過負荷(スキル)は……『重力を操る』より非現実的で、より危険性を秘めたスキル。

 

「う、嘘です……『人を生き返らせる』なんてそんな神様みたいな力……」

 

「ありえなくないって話だ。話によると過負荷ってのは、でたらめで危なすぎる能力持ちがほとんどだ。『人を生き返らせる程度の能力』で済むはずがない……」

 

「そんな……!」

 

 そんな二人の話す姿を--針妙丸は扉をこっそりと開けて覗き込んでいた。

 

 

 ======================

 

 

 

「友達にねぇ……お前は私のどこが気に入ったって言うんだよ。仲間を平然と切り捨てる私の」

 

『うん、それだよ。その冷酷さ。加えて君は誰にも従わず、誰の思うがままにもならない。そんな君が僕は好きになったのさ』

 

「好きな女の趣味まで悪趣味か。お前の言葉や性格全般には『悪』って付くものばっかりだな」

 

『悪? 僕は『(マイナス)』さ。(マイナス)は最低で、それ以上の何者でもないよ。それに……僕は人を人とも思わない過負荷(マイナス)には幸せ者(プラス)のお友達は似合わないと思うんだ』

 

 球磨川は顔の笑みを濃く、その惣闇色(つつやみいろ)の目を細くし、彼女の全てを見透かすかのように正邪の赤眼をのぞき込む。

 

『このまま彼らといても、君の居心地は悪くなるだけだ。(プラス)しかない針ちゃんはいずれ(マイナス)である君を否定する』

 

『そうなったら優しい君は自分を偽って、ずっと幸せ者(プラス)の仮面をつけなければならない。こんなに素敵な欠点(マイナス)を持つ君を否定されるなんて……僕は我慢ならないよ。だから正邪ちゃん』

「……」

 

 --居心地が悪い、と感じていないわけがなかった。

 

 私は……目的のためなら……自分が勝つためならどんな手段も厭わない。

 

 たとえ卑怯でも、どれだけ汚くても、勝てばいい。自分だけが勝てばいい。他人などどうでもいい。

 

 それが私の信条だ。

 

 少名針妙丸、桜街義和、慶賀野功名。

 

 全員、私とは違う。いずれもが私の信条には合わない。犠牲と割り切って捨てるには彼らは正しくすぎて、優しすぎる。

 

 最低な私を受け入れ、普通に彼らは私に接してくるのだ。だからこそ彼らを切り捨てにくくなってしまう。

 

 ……恐ろしい。

 

 優しくされることが恐い。褒められることが恐怖だ。『気に入らない、お前といると気分が悪くなる』と彼らも私を捨て置いてくれればいいのに。

 

 彼らといることで……もし私が私でなくなったら。天邪鬼が天邪鬼でなくなってしまったら……自分は一体何者になってしまうのだろう?

 

『つまんない針妙丸ちゃん達なんか放っておいてさ、僕と友達になろうよ』

「……」

 

 正邪は少しためらいを見せた後、ゆっくりと彼女は自分の左手を球磨川の右手に近づける。

 

『同じ過負荷同士、仲良くしよう』

 




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