グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~   作:ゼロん

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筆が進んだので20話は本日1時半に投稿予定です。
やっぱり外で書くと集中度が違うね!





第19話 「知るかバカ。」 

「……」

 

「やぁ! また会ったね正邪(せいじゃ)ちゃん。ボクのことが恋しくなっちゃったのかい?」

 

 一度見た教室……いや、安心院(あじむ)なじみの部屋ってところか。

 

「別にまた会いたくなってここに来たわけじゃねぇよ。なじみ」

「もう……少しぐらい素直に『嬉しい』とか言ったらどうなんだい?」

 

「本音でも思っちゃいねぇよ。それより、球磨川(くまがわ)はどうした? 同じところに来ているんじゃないのか?」

 

「あぁ、球磨川君なら別の部屋で待機中だよ。それに……ここは君の夢の中のようなものだからね。漫画でも死んだら夢の中で……っていうの。よくあるだろ?」

 

 安心院は穏やかに微笑みながら正邪を見つめる。教卓の上に座っているのは相変わらずだ。

 

「それにしても……また死んじゃったんだね」

「ほとんどお前のせいでな。お前が依頼を果たした私を、さっさと送り返さないからだろ?」

「『私』、じゃなくて『私達』でしょ。君だって、本心ではまだ帰りたいとは思っていないはずだ」

 

 正邪は安心院から目をそらし、苛立たしげに舌打ちをする。

 

「こらこら。女の子が舌打ちなんて、可愛くないぞ?」

「……うるせぇ。御託はいいからさっさと話したらどうだ? ……私達をあの学園に送った本当の目的を」

 

 安心院は『よっと』と言いつつ、教卓を降り正邪と同じ目線で話をする。

 

「なんだ。気づいていたのかい?」

「……お前みたいな目を持った奴が私は一番信用ならねぇ」

「ふーーん……」

 

 --球磨川や私のような濁り切った目でも、針妙丸のように澄んでるわけでもねぇ。妖怪であろうと人間であろうと、全て文房具売り場の消しゴムを見るような目をしてる奴なんかをな。

 

「正邪ちゃん。球磨川君が角明学園(かくめいがくえん)に残っている間……彼の側にいてやってくれないかい?」

「……はぁっ!?」

「じゃないとストーリーが進まないんだよ。この物語の」

 

 物語? ストーリーとは……一体どういった意味なのだろう。正邪は訳が分からないと机から立ち上がり抗議する。

 

「ストーリーだぁ!? 訳の分からねぇこと言ってんじゃねぇよ!! きちんと話せ!!」

 

「球磨川君が箱庭学園に行ってもらわないと、ボクの封印が解けないんだよ。いい加減、他人の夢をうろちょろするのにも飽きちゃったしね。ボクは早く『新しい不可能探し』をしたいんだ」

 

「……ッッ!! わからねぇ。アンタ一体…………何を考えてるんだ……!!」

 

 正邪は目の前にいる『彼女』が、『負』の化身、球磨川 禊よりも不気味で妖怪の賢者 八雲 紫よりも胡散臭く見える。

 正邪は顔を引きつらせ、嫌悪感が態度に現れる。

 

「まぁ、わからなくてもいいよ。この依頼を果たしたら『本当に』君達を幻想郷に送り返してあげるよ。これだけは確かだ。約束するよ」

「……」

 

 選ぶ権利はない。目の前にいる化物は気分次第では死んでいようと生きていまいと、こちらを遠慮なく『消す』ことができるのだから。

 

「よし! じゃあ君をもう一度生き返らせてあげよう! ドラゴン〇ールの神龍みたく一回だけしかっていうのはないからね」

 

「……いいから、早くやってくれ」

「あれ? どうしちゃったんだい? ボクはいつも元気な君の姿も見たいんだぜ?」

「自覚なし、か……どうかしてるぜ、あんた」

 

 もう下の名前で呼ぼうとも思わなかった。

 

「ちょっと萎えさせちゃったみたいだね。そんな君にボクの『とっておき』をあげよう! 一京分の一(いっけいぶん いち)のスキルを使って作ったんだ。これがあればたぶん大丈夫さ。しばらく死なずに済むでしょう」

 

「一京分の一……? はは、冗談きついぜ……」

「じゃあ、いってらっしゃい!」

 

 正邪の意識が再びおぼろげになる。先ほどあった教室が無くなり、辺りには暗闇が広がる。

 

「……正邪ちゃん。球磨川君を頼んだよ?」

 

 不可解だった。いつも誰に対しても『悪平等』な態度なのに、球磨川の名前を出すときは……どうしても不平等で、ひどく優しげで……見た目相応の少女だったのだ。

 

 

「アイツは君同様、超ひねくれ者で嫌な奴だけど……。ボクのかわいい弟みたいなものだからね」

 

「本当になんなんだよ……アンタ」

 

 安心院の心からの笑顔を見た刹那、正邪の意識は暗闇の中へ消えた。

 

 

 

 ======================

 

 

「針妙丸さん!! 正邪ちゃん!!」

「……んだよ。これ……!?」

 

 慶賀野(けがの)桜街(さくらこうじ)が駆け付けた時には、皇庭の周りは見る影もない姿になっていた。

 

 整った芝生はえぐれ地面の土がむき出しになり、校舎の一部には大きな切り傷、辺りにある岩にはきれいな丸型の穴がびっしりとあけられていたのだ。

 

「いや、いやだ……」

 

「あ、おい! 少名(すくな)さんだ!」

「けど、様子が……!! それにあの子が抱えているのって……!!」

 

 二人が駆け付けた時には……頭に大穴を開けられ死体となった正邪にしがみつき、慟哭(どうこく)する針妙丸(しんみょうまる)の姿だった。

 

「あ、あね……ご……!!」

「う、うそ……!!」

 

「正邪の、正邪の馬鹿……!! また私を置いてくの……? まだ私を近くで見てみたいって……一緒にやり直そうって……言ったのに……ッッ!!」

 

 針妙丸は憎々し気に正邪の着ていたワンピースを握りしめる。慶賀野達が駆け付けたことなど……彼女は気づけなかった。

 人目をはばかることなく彼女は嗚咽を漏らす。

 

「なぁに、泣くことはないであります。ご希望なら今すぐにでも同じ場所へ送ってやるでありますよ」

 

 針妙丸が殺気を百々に向ける前に、桜街が百々(どうどう)の前に飛び出した。

 

「ど、百々!! てめぇぇッッ!!」

「ギャーギャーギャーと……やかましいでありますなぁ」

 

 百々は近くにあった小石を掴み、飛びかかる桜街に投げつける。

 

「咬ませ犬は大人しく黙っているでありますよ」

 

 百々が投げた小石は桜街の足を穿つ。

 

「がッッ……!! なんッッの!!これしきぃいぃッッ!!」

「なっ!?」

 

 足の痛みを無視し、桜街はそのまま百々の顔を殴りぬける。殴られた衝撃で百々は地面を転がり、着ていた和服に泥がつく。

 

「あがっ……!!」

 

「どうだ!! こちとら『重力使い』殴りに来てんだ!! 咬ませ犬なめんなよぉ!!」

「コウジ君……最後がなんか決まってないよ……」

 

 苦笑しながら言葉を漏らす慶賀野だったが

 

「う、ぐほぉッッ!!」

「コウジくんッッ!!」

 

 そう簡単にやられる百々ではなかった。どこからか放たれた数個の小石が桜街の残った手足を的確に穿つ。ゆらゆらと百々はその場を立ち上がり、竹刀を構えていた。青筋を浮かべながら。

 

「クリーニング代は後できっちりと払ってもらうであります……!! この劣等生が!!」

 

 瞬時に桜街との間合いを詰め、百々は彼の腹を思いっきり蹴飛ばす。

 

「ぐぁああっっ!!」

 

 正邪達とは別の方へすっ飛んでいく桜街から針妙丸の方へと視線を移す。

 

「……功名(こうみょう)さん。桜街さんを連れて逃げて」

「針妙丸さん……?」

「私が気を引き付けるから。……その間に」

 

 針妙丸は針の形状をした剣、輝針剣(きしんけん)を構え慶賀野の前に立つ。

 

「だ、だめ!! これ以上彼らに逆らわないで!!」

「ごめん。ここで引き下がったら、正邪に怒られちゃうから。だから……行って?」

 

 慶賀野は必死に首を横に振る。ここで逃げたら確実に針妙丸も死体になってしまう。

 

「お願い。もうこれ以上、仲間に……友達に傷ついてほしくないの」

「針妙丸、さん……!!」

 

「また後でね。功名さん」

 

 輝針剣を握り、向かってくる針妙丸に嬉々として百々は竹刀を向ける。

 

「ほう? かたき討ち……というわけでありますか? ま、斬れる相手が増える分、自分には構わないでありますが」

「……どうしてあなたは人を傷つけるの?」

「……あ?」

 

 いら立ちを顔に浮かべる百々に対して、針妙丸は静かに語り掛ける。

 

「人は傷つけられたら悲しむんだよ? その人を想って泣く人だっている。なんであなたは他人の気持ちを分かってあげられないの?」

 

「まるで道徳書にでも書いてありそうな言葉であります。素晴らしい。あー感動した……普通の奴ならでありますが」

 

 百々は皮肉を込めて悪意を針妙丸に叩きつける。

 

「傷つけたくもないのに傷つけてしまった者の気持ちの何がわかるでありますか?」

「……!」

 

「お前は善意で行った行動が……知れず知れず人を殺してしまった者の気持ちがわかるでありますか?」

 

 竹刀を握る手にさらに力が込もり、きしむ音が周りに響く。

 

 底知れぬ百々の感情に、針妙丸と慶賀野は戦慄する。

 

「カッとなって人を殺しかけた人の気持ちがわかるでありますか? 両親からものけ者にされ裏切られた気持ちがわかるでありますか? いるだけで人を殺してしまうこの能力を背負う者の気持ちが……お前に分かるでありますか?」

 

「あなた……」

 

「わからないでありますなぁ!! だってお前は!! お前たちは!! ()()()()()()んだから!!」

 

 百々が言っている言葉は果たして針妙丸に対してなのか……それとも。

 

「自分の気持ちを理解しようとしない連中と理解し合えると思うでありますか? 人間は共通点のある奴ばっかり好きで! 自分と違う奴は遠ざけるか排除しようとするんでありますから」

 

 積年の想いがあふれたのか徐々に百々の語気が強くなっていく。

 

「だけど、全土(ぜんど)様は他の奴らとは違った。ほかの奴と違う自分を受け入れてくれた! 彼の周りの連中もそうだった! そんな彼らの役に立ちたいという気持ちの……どこが悪いのでありますか」

 

 針妙丸が彼に返す言葉はなかった。彼女も……孤独を知っているから。おそらく正邪と出会わなければきっと自分は百々と同じようになっていたかもしれなかったから。

 

「役に……立つって……?」

「貴様ら危険分子の心を折り、学園の不安要素を取り除くこと!! それが自分の使命!! その邪魔をする奴は誰であろうと……」

 

「嘘だ」

 

 針妙丸は怯まず百々に向かい歩き続ける。自分の闇に動じない針妙丸に百々は狼狽する。

 

「な、なにを」

 

「あなたの言っていることは間違ってる。あなたも……本当はそのことに気が付いているんじゃないの?」

 

「だ、だまれ!!」

 

 圧倒的に優位に立っているはずの百々が弱者であるはずの針妙丸に怯えていた。震える手で竹刀を針妙丸に向けている。

 

 --もし彼の言っている全土というのが彼をここまで歪めたのだとしたら……なんと人の心の隙間を突くのがうまい奴なのだろう。

 

「本当は人を傷つけることに罪悪感を感じているはずなのに……それを使命と誤魔化して、あなたは自分をだましてる」

 

 --この人は、自分の能力のせいで人を遠ざけざるをえなかった……とてもかわいそうな人なんだ。

 

「ああああああぁぁぁぁっっ!!!!」

 

 錯乱した百々は竹刀を針妙丸の頭に振り下ろす。対する針妙丸は輝針剣を構えるも、殺傷力が倍にもなった彼の一撃を防げるはずがないことを彼女は悟っていた。

 

 

「いやぁーーッッ!! 針妙丸さぁぁん!!!」

 

 

 --もし……正邪がこの人のこと聞いたら、なんて答えただろうな……。

 

 

 

 

 

「知るか、ばぁーーーッッか!!」

 

 

「かぁっっ!? なにぃぃッッ!?」

 

 

 銃声が響き、百々の竹刀が『何かに』弾き飛ばされる。直撃したのか百々の右腕に力が入らない。

 

「き、貴様は……なぜ!? それに何でありますか……それはぁ!?」

 

 血を流しつつも起き上がった正邪の手には……黒いハンドガンが握られていた。

 

「さぁな、『とっておき』……らしいぜ?」

 

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