グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~   作:ゼロん

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遅くなったのぅ! デュエルリンクスで闇マリクごっこにはまっておったのじゃ!

『絶望性ヒーロー治療薬』を聴きながら執筆。もちろん、『want to be winner』by球磨川もね。





第21話 優しい慟哭

 正邪(せいじゃ)針妙丸(しんみょうまる)がまだ百々(どうどう)と交戦している間。またまた死んでしまった球磨川(くまがわ)君は安心院(あんしんいん)の空間へ。二人で現世の様子を安心院の出したモニターで視聴中だ。

 

『へぇー。百々君がまさかあんな闇を抱えていたなんてね。いいね! 感動的な話だ』

 

 球磨川は感心したように気楽に笑う。

 誰とも仲良くできず友もできずたった一人。百々の話をまとめるとこんな感じだ。

 

「いや、全く笑えないよ? むしろ悲しいお話なんじゃないの?」

 

 球磨川の場違いな笑いに苦笑する安心院。まだこちらの方がまともな反応だろう。

 

『それにしても……彼のスキルが「あらゆる道具の殺傷力を上げる」スキルの持ち主だったとはね。正邪ちゃんもうまく聞き出したもんだよ』

 

「確かにね。言い換えれば「なんでも武器にできる」ってことだからね。暗殺者には喉から手が出るくらい欲しいスキルなんじゃないかな。ま、それでも本人にとっては重すぎるスキルだったのかもね」

 

 百々のスキルは異常性(アブノーマル)というよりも、どちらかと言えば過負荷(マイナス)よりのスキルだ。持つ者を不幸にしかしない不要の長物だ。もっとも、そういったスキルを持たない者には彼の能力の少ない利点にしか目を向けないだろうが。

 

「それよりもさ、球磨川くん。いつになったら君は箱庭(はこにわ)学園に行くんだい? 愛しのめだかちゃんと決着をつけにさ」

 

『……何を言ってるのさ、安心院さん。どのめだかちゃんのことを言ってるんだい? 小学校の頃、僕が飼ってたメダカちゃんの話?』

 

「またまたぁ。中学校の頃に君の部下だった阿久根(あくね)くんをとった上に、当時生徒会長だった君をボコボコにした黒神(くろかみ)めだかちゃんだよ」

 

『思い出した』と言いたげに球磨川は手のひらをポン、と叩く。

 

『あぁ、そっちの。悪いけど僕は彼女には何の興味もないんだ』

「本当かい?」

『別に。ちっともないけれど? ……それがどうかした?』

 

『そっか……』と安心院は横にあったモニターを消し、教卓に頬杖をつく。

 

「そういえばあの侍ボーイがなんか妙なこと言ってたよね。確か……」

『二人。僕がなかったことにしたはずのもう一人の記憶がそのまま百々君の中に残っているんだよ』

 

 球磨川は少々苛ついた声色で安心院の言葉を続ける。彼は彼女に背を向けているので、安心院から顔は見えないが……一体どのような顔をしているのだろう。

 

「そうだね~。ボクが君に貸した、いや課したスキル『手のひら孵し(ハンドレッド・ガントレッド)』を改造した『大嘘憑き(オールフィクション)』。君のそのスキルでなかったことにしたものは()()()()()()()()()はずなのにね」

 

『……。』

「よかったじゃないか球磨川くん。君のスキルを破るほどの人物……もしかしたら、ボクを倒すことのできるスキル所有者(スキルホルダー)角明学園(かくめいがくえん)にいるってことじゃないかな? おめでとう」

 

 球磨川はふっと笑い、微笑む安心院の方へ振り返る。

 

『『大嘘憑き(オールフィクション)』なんて、ただの手品だ。ネタがバレれば大したことのない、危なっかしい過負荷(マイナス)さ』

 

「なーんて言ってぇ、本当は楽しみにしているんじゃないかな?」

 

『まぁ……少なくとも百々(どうどう)くん本人の能力じゃないことは確かだね。殺傷力をなかったことにすれば無力化できるなんて、大したスキルじゃないよ』

 

「辛い評価だなぁ。もしかしたらあの『道具の殺傷力を上げる』スキルだったら……」

 

 安心院は両手を開いて広げ、ニコッと球磨川に笑いかける。

 

「7932兆1354億4152万3222個の異常性(アブノーマル)と、4925兆9165億2611万0643個の過負荷(マイナス)、合わせて1京2858兆0519億6763万3865個のスキルを持つボクに勝てるかもしれないぜ?」

 

『……。お世辞で言っても勝てるとは思えないよ……安心院(あじむ)副会長』

 

 球磨川は再び安心院に背を向け、教室の外へ出ようとする。

 

『じゃあね。近いうちに……また挑戦させてもらうからさ」

「ボクへの挑戦、楽しみにしてるよ……球磨川生徒会長。けど……君、ずっとここに残ってなくてもよかったんじゃないかい?」

 

『あぁ……それね。どんな漫画のポジションのキャラでも、できるなら格好良く登場したいと思うでしょ?』

 

『君らしいね』と安心院は一言を返し、球磨川は再び蘇る。いつものように。

 

 

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「はぁ……はぁ……っつ。百々(どうどう)の野郎……あばら何本か言ったんじゃねぇか? いててて……」

 

 桜街(さくらこうじ)は百々にぶっ飛ばされた後、彼はゆっくりと身を起こし腹を腕で抱えた。そんな彼が横を見ると。

 

「うわぁ!! く、球磨川……なのか? うぶぇ……!!」

 

 彼の横には球磨川の真っ二つの死体があった。見事に身体が割れ、絶対に普段目にすることはないモノが見えてしまっている。

 

 桜街は口元を手で抑え、戻しかけたものを飲み込む。

 

「はぁ、はぁ……もうこの学校、普通じゃねぇな、ほんと」

 

 桜街はゆっくりと立ち上がり、両手を合わせて祈る。

 

球磨川(くまがわ)、安らかに眠れよ……ひでぇ奴だったけど……後できちんと埋めてやるからな」

『ひどいなぁ、僕を勝手に生き埋めにしようとするなんて。度が過ぎるいじめだよぉ」

「……ぇ? うわぁッッ!!」

 

 目を開くと、何もなかったかのように平然とその場に球磨川が立っていた。桜街は震える指で球磨川を指す。

 

「お、おまえおまえ……!? さっきまで、たしかに……!!??」

 

『うん、その反応見飽きちゃったからさ』

 

 球磨川は桜街の胸に螺子を突き立て、その場で釘付けにする。

 

「うぼぁ……かはっ……!」

 

『ごめんね、けど僕は悪くない』

 

 球磨川は軽く身体を伸ばし、ふぅー……と息を吐く。

 

『さて、正邪ちゃん達はあっちかな? さぁ、ショータイムだ』

 

 

 ======================

 

 

「す、すげぇ……あの危なっかしいスキルを持つ百々(どうどう)を……あっさりと……!」

 

 --いや、百々以上に球磨川が危なっかしかったってだけか……。それにしてもなんだよ『すべてを無かったことにする』スキルって!! めちゃくちゃにも程がある!

 

「こんな奴を私に押し付けようとしてたのか……あの女……!!」

『どうしたんだい正邪ちゃん。頭でも痛いの?』

 

 小声でつぶやく正邪を見て不思議そうに首を傾げる球磨川。

 

『良かったよ。二人とも無事で--』

 

 球磨川の頬が手のひらで叩かれ、子気味のいい音が周りに響く。

 

「ひどいよ!! もう百々さんは戦う気なんてなかった! それなのにあなたは……!!」

 

『いやだなぁ、針ちゃんは。あんなの口約束だよ。え? もしかして~本気で信じてたのぉ? バッカでぇ~!』

 

「あなた……!! ふざけるのもいい加減に……!!」

 

 再び手を振り上げようとする針妙丸を、正邪は彼女の脇を腕で挟み羽交い絞めにする。

 

「落ち着け。あんたも学習しないな。アイツに手を出すと倍以上になって返ってくるっていうのがまだわからないのか?」

 

「おちつけ……!? おかしいのは正邪の方だよ!! 人が死んだっていうのに、どうしてそんなに落ち着いていられるの!?」 

 

「どうせアイツも『大嘘憑き(オールフィクション)』で生き返れるんだ。殺されたってどうなろうが、どうせなかったことになるんだ。少しはかんがえ--」

 

 針妙丸は自分を抑えている正邪に頭突きをかまし、拘束から逃れる。正邪は鼻を手で抑えつけてその場でもだえる。

 

「痛ってぇな!! 何しやがる泣き虫姫!」

 

「わかってない……! 正邪は何もわかってない!! 何が『()()()()()()()()()()()()』よ!! 死んだときの痛みは絶対に無くならない!! 死ぬことがどれだけ辛くて苦しいのか、私達が一番よく知っているじゃない!!」

 

「ちっ……!」

 

 正邪は舌打ちをして針妙丸から顔を背ける。

 

球磨川(くまがわ)さん、あなたは百々さんの約束を破っただけじゃない! 無抵抗な人を容赦なく殺したのよ!?」

 

『ふぅ~ん……。で?』

 

 激昂する針妙丸に対し、冷たすぎる態度で当たる球磨川。針妙丸は彼の態度にさらに怒りを爆発させる。

 

「あなたは……! 何も思わないの!? 罪悪感も……何も!!」

『だって僕は人を殺してなんかいない。僕は悪くない』

 

 球磨川は白目を向いて倒れている百々に指をさす。もう螺子も何も刺さっていない。それどころか与えられた傷も全て完治している。

 

 

 しかし針妙丸の憤激は収まりがつかない。

 

「そうやって全部なかったことにして……! 罪の意識も何もなかったことにするんだ……!!」

『そもそもさ~……「罪悪感」って何?』

 

「……えっ」

 

 絶句する針妙丸を前に球磨川はニコニコと何時ものように笑っている。

 

『まぁ確かに僕は無抵抗で何もできない彼にとどめを刺したし、彼との口約束も破ったよ。けど……それが君に何か関係あるの?』

 

「……百々さんは確かに非道なことをしたよ。それもたくさん。けどーー」

 

『関係ないよね。君と百々君は。今の今まで何の接点もなかったよね』

 

「それは……そうだけど……!」

 

 うろたえる針妙丸を目にして、正邪はなぜ彼女が百々に肩入れするのか。その理由を確信した。なぜなら……百々は針妙丸の()()()()()()()()()姿だからだ。

 

『君はただ、彼と自分の共通している部分しか見ていない。彼の自己満足のために大怪我をさせられた人達のことなんて、何も考えちゃいない』

 

「ち、違う! 私は……!! どうどうくんにも……! 理由が……」

『……理由があれば暴力は正当化されるのかい?』

「ぅ……ッッ!!」

 

 針妙丸も元々は『何でも願いのかなう秘宝』を操る力を持っていた。今まで近寄ってくる奴らは正邪を含め、ろくでもない奴らばかりだったのだ。

 

 ただ正邪と全土の利用の仕方に違いがあっただけで、結局は針妙丸と百々は同じ。自身が持つ能力に翻弄され、他人に利用()()()()()()()者なのだ。

 

『そもそも、口約束や交渉なんかしたって結局はみんな、裏で破ってるものなのさ。約束なんて空しいだけ。相手が約束を破っていることなんて……わかっているのに笑って許して……誤魔化していく。そういうものだよ? 針ちゃん』

 

 針妙丸は何も言葉が出なかった。

 

 --なんて……冷え切ってるの……? この人は、世界をどこまでも醜く歪んだものにしか見れないのか。

 

『いや、現実だよ』

「!?」

 

 針妙丸の心の内を見透かすように、球磨川は針妙丸の薄紫色の瞳を黒く濁り切った眼で見つめる。

 

『賢い大人たちはルールって縛りの概念を決めつけて、最終的にはどんなルールだって全部、緊急措置って言って破っているんだ。口約束や交渉事だってルールの一つさ。みんなもそうしてるよね?』

 

『だから、僕は悪くない』『そもそも』『ルールなんて概念を決めつけた奴らが悪いのさ。』

 

「……」

 

 悲痛に歪み切った針妙丸の顔を正邪は見ながら思った。あきらめろ、と。

 

 --お前がどんなにこいつの良心に訴えても意味はない。そういう奴だって……世の中にはごまんといるんだ。

 

「球磨川さん」

 

 針妙丸の小さな声に反応し、ビクッと正邪の体が震える。

 

 --まだわからないのか、針妙丸。お前みたいな幸せ者(プラス)にこいつの心は絶対に理解できない。

 

 しかし針妙丸が口に出した言葉は、正邪も球磨川も予想がつかないものだった。

 

 

「じゃあ何であなたは自分の身をもっと大切にしないの……?」

 

 針妙丸が案じたのは百々だけではない。()()()()、だったのだ。

 

 

『……ん? 僕?』『だって「大嘘憑き(オールフィクション)」があれば僕の死もなかったことになるし--」

 

「私が一番怒ってるのは……『()()』だよ……!!」

 

 針妙丸の沈下したはずだった憤怒は消えてはいなかった。腕を震わせ、目元には涙まで浮かんでいる。

 

「なんであなたは人の命をそこまで軽く見られるの!?」

『……』

 

「他人の命なんてもちろん! 自分の命だって軽くて薄っぺらいものだって、あなたは思ってる!!」

 

 球磨川の笑みがぴたりと止む。

 

「球磨川さん。さっき私の心を読んだよね……だったら私もやってあげる」

 

 針妙丸は息をのみ、震える唇で言葉を紡いだ。

 

 

 

 

「あなたは何で人の人生をそこまで無価値に……無意味に見られるの……!?」

 

 

 

 

 静かな怒りを込め、針妙丸が言った言葉。球磨川はその言葉に対しても笑い一蹴--

 

 

 

五月蠅(うるさ)い」

 

 

 しなかった。

 

 

 正邪は初めて露わにした球磨川の本来の『(マイナス)』に圧倒される。自然と身体が震え、鳥肌が立つ。

 

 

「か、はぁ……っ!」

 

 

 球磨川は針妙丸の心臓に螺子を突き立て、四肢を数本の螺子で穿ち地面にはりつける。

 

『ふぅん、人に心を読まれるのってこんなにも腹が立つものなんだね。覚えておくよ』

 

 球磨川はいつものように……笑っていなかった。

 

「ッッ……!? くま……が、わ……!?」

 

 正邪は驚愕する。球磨川の顔が……確かに笑み以外の感情を示していたが……それはとてつもない『怒り』だったのだ。彼は穏やかそうな丸い目は剣のように鋭く、整った目尻は歪み、口を尖らせていた。

 

「くま、がわ……さん。あなたは……どう、して……」

 

『甘ぇよ。少名針妙丸。僕は君の……そういう所が一番嫌いだ』

 

 針妙丸の腕が力なく地に落ち、首も垂れ下がる。

 

 球磨川は慶賀野のいたところにくるりと向きを変える。

 

『慶賀野さんは……ありゃー気絶してるや。けど、手間が省けて助かるなぁ』

 

 

 球磨川は再び正邪の方へ向き直る。

 

 

『……さて、正邪ちゃん。お話をしよっか! 今度は……お邪魔なしで二人だけで、さ』




なんかピーン、と閃いちゃったので遊戯王の小説(一話完結系)を書こうと思いました。
興味のある方は活動報告にて!


ちなみに主人公は闇マ〇クです。
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