グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~ 作:ゼロん
誤字訂正の報告もぼちぼち送ってくださる読者には本当に感謝です!(^^)!
第24話 似た者同士のベッドトーク
革命学園生徒会『庶務』、
「
「うん」
驚愕を露わにして正邪に迫る針妙丸。怯むこともなく正邪は無表情だ。
「なんで!?」
「なんでも」
「あんなに警告したのに!?」
「知ったこっちゃない」
『あ”ぁ”もぉッッ~!!』と薄紫の髪を掻きまわし、悶える針妙丸。
そんな彼女を無視して正邪はコンビニで買ったジャンプを広げる。
――――幻想郷にいた時はあのガラクタ屋に置いてあった古本しか読んでなかったな。
「意外と面白いのやってるじゃねぇか。『〇魂』はもう終わるけどよ。まだ『僕の○ー○ーアカデミア』とかはやってんだろ?」
「ちょっと! なに漫画雑誌、読んでんのよ! こっち向け!」
針妙丸は正邪の顔からジャンプをどけ、にらみつける。
正邪はため息をつき、つまらなそうに針妙丸を見つめる。
「なんだよ。今『ネガ倉くん』いいとこなのに」
「あんな血も涙もない球磨川くんと手を組むなんてどうかしてるって言ってんの!!」
針妙丸の怒号にジャンプから手を離し、正邪は両手で耳を塞ぐ。
「本当に人間かも怪しい奴なのに……」
「私達だって人間じゃねぇって忘れてねぇか、姫様」
正邪はちょんちょんと自分の角を指でつつく。
「それによ、球磨川にだって感情はあるんだぜ」
「けどあんな……。ぶっ飛んだ奴の感情なんて――――」
「それだよ」
「えっ……?」
正邪は唖然とする針妙丸に指をさす。彼女に指をさしている正邪の表情は真剣そのものだ。
「そうやってお前が球磨川を不快だと思い込んでいるうちは、真の意味で球磨川には勝てない」
「そ、そんなこと……」
「断言してやる。今のお前じゃ百年かけてもアイツを止めることなんてできやしない」
正邪はクルリとジャンプを拾い、再び読み始める。
「まぁ、お前にガッツがあることだけは認めてやるよ。悔しいけどな」
「……どうすればいいの」
――――素直に聞こうとする分、ほんといじり甲斐あるな。こいつ。
正邪はケケケと笑いながら針妙丸の方をチラ見する。
「
正邪は口を開きながら『ネガ倉くん』を読み進めていく。
「きったねぇ部分も綺麗な部分も。紛れもない『自分』なんだって。そうすりゃ何か見えてくるんじゃねぇか?」
「汚い……部分……?」
――――ま、ご本人様はまだ気づいちゃいないが。
『知りたいか? 教えてなんてやーらない』と正邪はクッションを下にして横になる。針妙丸に背を向ける形だ。
「……。私、百々君のところに行ってくる」
「おぉ。帰ったら夕飯よろしく」
「今日は正邪が当番でしょ!!」
「ちっ」
針妙丸が扉から歩き去った後、正邪はお茶をコップに入れ再び横になる。
『いつも通り、仲良さそうだね』
「やめろ。マジで反吐が出る」
正邪は声のした方向に身体を向ける。球磨川はいて当然かのようにその場に立っていた。
「それとお前、窓から入ってくるのはやめろ。不気味すぎる」
『ははは、いやちょっと正邪ちゃんの部屋に興味があってさ』
「頼むからドアから入れ」
球磨川はキョロキョロと正邪達の部屋を見回す。
『へぇ……でもちょっと汚いな。ダメだよ。女の子なんだからもっと部屋は清潔にしないと』
球磨川は部屋の端にあるゴミをちりとりで集め、ゴミ箱へ捨てる。
「で、今日のお前はハウスクリーニングに来ただけか? それだけなら早く帰れよ」
『いや~掃除以外にも確認したいことがあってさ』
球磨川はいつになく真剣な表情で正邪の方へ向き直る。
『君のスキルのことについてなんだけどさ……』
ピクッと正邪は目尻をあげる。
「ほう、私の何でもひっくり返す能力。『
『そう言われるとやってって……言いたくならないな。僕も嫌だしそんな世界』
『裸エプロンは恥じらいがあるからいいんだ』と変態染みた発言をして球磨川は目を閉じる。
『そんなんじゃないさ。君のスキルはそんな下品なことに使うもんじゃない。君の「
いつものようにそらそらしい口調で球磨川は正邪に語りかける。
『全てをひっくり返せるってことは……君は女子のスカートをひっくり返せるってことだろう……?』
『ってことは、女子のパンツが見放題じゃないか!!』
この後、右頬を真っ赤に腫らした球磨川が泣く泣く正邪の部屋を出ていく姿が目撃されたという。
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「……。」
「あ~……ダメ。精神的な方の傷はどうしようもないや」
保険棟のベッドから起き上がった
「だからわたし嫌なのに……こんなとこの担当医なんて……」
目が虚ろになってしまっている百々に呆れ、人首は目をそらす。
「因果応報ってやつなのかな……。百々が今まで散々他の生徒を精神的にもぶっ壊してきたツケが回ってきた、か……」
『もう聞こえてもいないだろう』と人首は独り言をつぶやく。
その直後、針妙丸が扉を開けて診察室に入ってくる。今の針妙丸は物憂げで元気がない様子だ。
「……失礼します。ツナギさん」
「あ、うん……あんまり元気がないね、少名さん。バナナ……いる?」
「いいえ。結構です」
バナナを差し出してくる人首に針妙丸は断りをいれ、人首は『あっそ』と言って片手に持ったバナナの皮をむき、食す。
「なんかあったの……? またコスプレちゃんとケンカした……?」
口に入ったバナナをモゴモゴと口に入れながら話す人首。
――――コスプレちゃん……? 正邪のことだろうか?
人首ののんびりとした口調につい苦笑してしまう針妙丸。
「話なら付き合うよ……? ちょうど精神面での看護もしたいなぁって思ってたしね……。こいつの容態は私にはハイレベルすぎてさ」
そう言って人首は放心状態の百々に親指をさす。
「いいんですか?」
「精神ケアはまず初級レベルから……。これも仕事だから」
少しためらったものの針妙丸は人首の気遣いに甘え、素直に話し始める。
「実は……正邪ちゃんと彼女にできた友達のことで口論になっちゃって」
「ほほ~……青春だねぇ~。それで?」
「彼女の友達と私はどうしてもソリが合わなくって……。私個人の感情の問題なのかもしれないけど……その友達、すっごい性格が悪くって……」
「正邪ちゃんも十分性格悪いところあると思うけどねぇ……。誰なの? 彼女の新しい友達って」
「球磨川くんのことなんですけど……」
「ぶっっ!!」
人首は椅子から床へ転がり落ちる。
「ぅぁが、ぁがが……」
どうやらバナナをのどに詰まらせたようだ。しばらく悶えた後、針妙丸が人首の背をさすり、彼女はゆっくりと立ち上がる。
「……ふぅ、ありがと。そりゃ少名さんが悩むわけだ……解決の難易度が初級じゃなくて最上級レベルだね……」
「でしょ?」
「で、正邪ちゃんはなんて言ってたの……?」
針妙丸は少し時間を置いた後、冴えない顔でつぶやいた。
「
『ふむ』と人首は考えるそぶりを見せた後、針妙丸にもの柔らかに語りかける。
「たぶんさ……。少名さんの悪い面のことを言ってるんじゃないかな……?」
「悪い……?」
「そう、誰にだっていい面と悪い面があるでしょ? 例えば、わたしみたいに怠け者なところとか……」
『自覚……あったんですね』と針妙丸は苦笑している。
『まぁね~……』と新しいバナナを取り出して皮をむき、口の中へ運んでいく。
「たぶんね。少名さんの心のどっかで抑え込んでる部分があるんじゃないかな?」
「な、なんでそう思うんですか……?」
「だって少名さん、いい子過ぎるもん」
虚を突かれ、動揺する針妙丸。開いた口が塞がらない。
「え、だ、ダメなんですか……?」
「いんやぁ。ダメじゃないよ。 けど、いい薬でも過剰摂取は毒だなって思っただけ」
『人間、素が楽だよ』と言い終えた後、人首は椅子に座りなおし、たまった書類を片付け始める。
「わたしも数回彼に会ったからわかるけどさ、球磨川くんは人の弱みにすごく敏感なのさ」
「人の……よわみ?」
「そう。人の負感情、ストレスとか。無意識の内にある負の側面にあの子はすごく鋭い」
人首は近くにあったゴミ箱にバナナの皮を放り投げ、針妙丸の方へ向き直る。
「自分を理解してあげること。『嫌な部分を見つけて受け入れてあげること。それが他人のマイナスにも向き合えることにもなる』。そう言いたかったんじゃないかな? 正邪ちゃんは」
「……」
『まぁ、そんなすぐに見つかるもんじゃないさ』とクスクス笑い、人首は針妙丸の頭をなでる。くすぐったそうだ。
「他人の
「!!」
針妙丸が診察室のベッドの方を振り返る。百々が醜悪な笑みを浮かべ、針妙丸の方を見ている。
「ど、百々さん」
「やれやれ、やっとお目覚めね……よく寝れた?」
「ぐっすりと。おかげで解任通知の現実を何度も夢で突きつけられたでありますよ」
『神井会長、切り捨てんの早いねぇ~……』と人首は明後日の方向を見ながらぼやく。
「言っておくでありますよ、少名針妙丸。……誰にも他人の負の面なんて受け入れられはしない」
百々は重みの乗った言葉を口から吐き出していく。
「見られたくない趣味性癖、歪んだ性根。他人の汚い部分を好き好んで『いいんだよ、よしよし』なんて。そんなの受け入れられる人間なんかいない」
『いるとしてもこの世に球磨川ぐらいであります』と付け加え、百々はベッドの横にあった愛用の木刀を手に取る。
――――!!
「さぁて。ここで貴様だけでも腹いせにボコボコにしてやるでありますかっと」
「百々さん、もうあなたの能力は」
「わかっているでありますよ? ……だがなめるな。能力がなくても貴様の四肢の骨を粉々にすることぐらいはできる」
百々はその場で数回素振りをし体の調子を確認。しかし額に青筋を浮かばせ、もう彼は冷静ではなくなっている。
「そんなことをしても、全土達はあなたを……」
「うっせぇなてめぇ……。言ったでありましょ? は・ら・い・せだって、なぁッッ!!」
針妙丸が輝針剣を取り出すよりも早く、百々の木刀が無防備な針妙丸の頭蓋に襲い掛かる。
「女にてぇあげるなゴラァ!!」
「――――ッッ!!」
百々が木刀を振り下ろす直前、見慣れた改造制服の少年が百々の頭に蹴りをいれる。
蹴られた衝撃で百々はベッドの手すりにぶつかる。頭をさすって彼を蹴った男、
「こ、コウジ君!」
「おう、少名さん! 無事で何より……いでででぇ!!」
「安静にしてろって……言った」
陽気に手を振る桜街の頬を人首が引っ張る。人首は少し苛ついているようで、頬を風船のように膨らませている。
「お前も。病室でケガ人を出すな。仕事が増える……」
「あがっあがががっが!!」
忘れずに人首は百々にも制裁(ほっぺつねり)を加える。
桜街は人首に罰されるのを不可解だと抗議する。
「いででで!! なんであんた、少名さんを庇わなかったんだよぉ!? わざわざ療養中の俺が蹴りを入れるまでもなかったろうが!」
「バカ……。わたしが怪我して重傷負ったら誰が少名さんの怪我とあんたらの怪我を治すの……? 言っとくけど自分の怪我は直せないからね。わたしのスキル」
「あ、そっ……ででで!!」
人首はさらに力を込めて桜街の頬をつねる。彼の歯茎が見えるくらい引っ張っているため、すごく痛そうだ。
――――人首さん、自分に能力は使えないんだ……。
「百々さん……。少し、話したいことがあるの」
人首の頬つねりを振りほどき、百々は針妙丸をにらみつける。
「あぁ? 話したいことぉ? 貴様と話したいことなんて砂粒の一つもないであります」
「私もあなたと同じような嫌な能力を持っているの」
ピタリと百々は動きを止め、針妙丸の話を黙って聞く。
「『なんでも願いが叶う秘宝を操る』能力。正確には打ち出の小槌って言うんだけど」
「……それがどうした? 字面だけ聞けば、不便しなそうな能力でありますが?」
「……ちがうの」
『何がだ』と百々は眉間にしわをよせる。
「色んな人が私の元に来た。幸せになりたい人、憎い人を呪いたい人、世界を支配したい人、不老不死を手に入れたい人。……私のところに来るのはとんでもない奴らばっかりだった」
針妙丸は思い出したくもないと顔を伏せる。『でもね』と針妙丸は続ける。
「もう誰とも関わりたくもないって思い始めた時に現れたのが……正邪だったの」
針妙丸は顔を上げて穏やかな笑みを浮かべる。
「もちろん正邪も悪い人だったけど……。なんでかな、それこそ彼女は他の人とは違うって、そう思えたの」
『泣き虫姫』と罵りながらも、自分の世話をやきながら笑ってくれた
百々の目つきが険しくなるが、桜街が百々を警戒してくれていた。
「なぜ自分にその話をしたでありますか」
「……私も実はよくわからない。たぶん百々さんと私、どこか似てるところがあるんだと思うの。ただ、もし私が出会った人が全土だったなら……たぶん、あなたと同じことをしてるんじゃないかなぁって。そう思ったの」
『それは幸運だったでありますな』と皮肉って百々は針妙丸に背を向け、ベッドに横になる。
「自分は全土様に会ったことを後悔なんてこれっぽちもしてないでありますよ。唯一の後悔は……鬼人正邪と球磨川禊、……そして特にお前と関わったことであります」
『シッシッ』と百々は虫を払いのけるように手を振り、針妙丸に帰るよう促す。
針妙丸は大人しく診察室を後にする。診察室の扉をくぐる前に扉に手を当て、百々の方を淵帰る。
「その……百々さん。ごめんなさい。迷惑、かけちゃって」
「謝るぐらいならここで切腹して死ねであります。さっさとその面を病室の外へもっていけであります」
冷たい一言を受けた後、針妙丸は苦笑し歩き去って行った。診察室には人首と百々、桜街が残される。
――――『百々さんにも……理由が……!』
百々の意識の片隅に残っていた針妙丸の悲痛の叫びが彼の頭に響く。百々はベッドのシーツを力強く握る。彼の座るベッドに大きなしわができる。
「くそ偽善者が……ッッ!!」
百々は自らの行いに対する報復は覚悟していた。全土に促されたからではない。自分の意志で、『やりたい、正しい』と彼が心から思ってやっていたからなのだと。
「なんで……なんで今さら……」
だが百々は赤の他人に、しかも自分の被害者に心配されるなど彼は考えもしていなかった。
もし……もしもの話。自分が彼女ともっと早く出会っていたなら……自分にもっと素直になれていたのだろうか、と。彼は思わずにはいられなかった。