グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~   作:ゼロん

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第2話 謎の少女、安心院なじみとの会遇

「あんた……誰だ。見たところただの人間じゃなさそうだが」

「あぁ、自己紹介がまだだったね。ボクは安心院(あじむ)なじみ。親しみを込めて安心院(あんしんいん)さんと呼びなさい」

 

 安心院なじみ。彼女は自らの名を目元にピースサインを決めながらそう名乗った。

 

 特徴的な学生服に肩と太もも近くで結んだ黒髪のロングヘア。ヘッドバンドと黒いソックスを身に着けている。

 

 --そうかそうか。絶対にそう呼んでやらないけどな。

 

「じゃあ、なじみ。ここはどこだ? 確か……私は死んだはずだ」

 

「ボクの言うことを完全無視とは。本当にひねくれものだね……僕の友人と同じくらいのひねくれ具合だよ」

 

「そりゃあどうも」

「……難しく考えないでもいいよ。まぁあの世って考えてもらえればいいさ」

 

 よく見ると腹の傷が無くなっている。血がにじんでいたはずの自分の服も綺麗になっているし、不思議と痛みもない。

 

 --死後の世界っていうのも納得だ。

 

「ほう……やっぱ私は死んだのか。じゃあお前は閻魔様ってところか? もっとお堅いのを想像していたんだがな……」

 

 正邪は安心院を値踏みするように見ると、少しうれしそうな表情を浮かべる。

 

「それにしても格式ばった閻魔への反逆か……なかなかやるなお前」

 

 ほーう、と正邪は感心したようにニヤニヤしながら顎に手を当てる。

 

 勝手な解釈に学生服の少女、安心院は苦笑する。

 

「えーと……なんか勝手に納得しちゃっているけど……ボクは閻魔様じゃないよ? まぁ人間でもないんだけどさ……」

 

 おいしょっ、と安心院と名乗る女性は教卓から飛び降り、正邪の前に着地する。

 

「それはそうと死んだ君にボクからの提案なんだけどさ……」

「やなこった。断る」

 

 安心院が言い終える前にあっかんべーをして即座に断る正邪。

 残念そうに「えぇ~」と彼女は苦笑する。

 

「いやいや、話はまだ始まってないよ?」

「こういうのは面倒な話だっていうのがお決まりなんだ。絶対に断る。ほかの奴をあたってくれ」

 

 あぁ~しんどいしんどい、と言いつつ正邪は適当に近くの机の上で寝そべり、安心院に背中を向ける。頬杖を突き、自分が行くのは地獄か天国かについてを考え中だ。

 

「お願いだよ。君にしかできないことなんだ」

 

「はッ! や~なこった。私はな、人に嫌なことをするのがだ~い好きなんだ。絶対にお前のお願いなんて聞いてやるもんか」

 

「困ったな……これはあの子よりも厄介だ。どうしたものか……」

 

 しばらく顎に手を当て考えた後、そうだ! と安心院は手を打つ。

 

「じゃあいいや。君はこのまま何もできないまま死ぬ、それでいいってことで」

 

 ピクッと正邪の全身が震える。

 

 --よし、食いついた。

 安心院は正邪が後ろを向いているのをいいことにガッツポーズを決める。

 

「ま、ボクの頼みたかったことって君以外の誰にもできることだしね。あ~とびっきりの依頼だったのになぁ……」

 

 ピクピクッとさらに正邪の反応が顕著になる。

 --あと少しだ。

 

「稀にみるレジスタンスであり、革命家であり、あともう少しで弱者の楽園を作れた君になら……って思ったけど……とんだ期待外れだったみたいだ」

 

「ぐっ……!!」

 

「根性なしの負け犬じゃないか……まぁ楽園計画に失敗した君に期待したのが間違いだったのかもね……」

 

 わざとらしく「はぁ……」とため息までいれる安心院。

 

「ぐぐぐ……言わせておけば……ッ!!」

 

 我慢できずに正邪はくるりと彼女の方を振り返る。

 

 そして安心院は明らかな侮蔑と嘲笑でとどめの一発を決める。

 

「まぁ……弱者は所詮、軟弱者。負け犬は負け犬らしく、地べたに這いつくばのがお似合いさ。ずっと遠吠えてれば?」

 

 その瞬間、正邪の中のナニカが音を立ててブチリと切れた。

 一瞬の迷いもなく、一気に距離を詰め、彼女は安心院の胸倉を掴む。

 

「上等だァ!! なんでもきやがれ、なじみ!! 弱者の意地! 思い知らせてやる!!」

 

 唾を飛ばし、馬鹿にされたことへの怒りをあらわにする。

 高く上げたその声は少女のものだったが……それには何とも言えない迫力があった。

 

 さすがの安心院も正邪が激昂することを予測していたとはいえ、これにはびっくりした。

 一度死んだとしてもやはり正邪の弱者への執着は並のものではない。

 

 --やっぱり見込み通り。いや見込み以上だ。これなら彼を……

 

「で? 私に何を頼むつもりだったんだよ? 早く言えよ」

 

 正邪は落ち着いたのか、安心院から手を放す。

 安堵し、安心院は「ほッ……」と胸に手を当て息を吐く。

 

「まずは……そこで寝てる彼女の介抱もしなくちゃね。話はそこからだ」

「え……? ……ッッ!!」

 

 そこには……現世でまだ生きているはずの針妙丸が、机の上ですぅすぅと寝息を立てていた。

 

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