グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~   作:ゼロん

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遅れてすみません、風邪(頭痛)と課題のオンパレードでなかなか進んでいませんでした。他作品もまだ書きかけ……

もうそろそろ治りそうな気配。


第28話 『まぁそんなすぐに足並みが揃うわけないよね。』

「諸君! よく聞け、見て驚け! 早速の依頼だ!!」

 

 正邪が嬉々として腕を『革命ボックス』の中に手を突っ込み、二枚の手紙を取り出す。

 汚かった空き教室、もとい『新生徒会』室にいる針妙丸達はおおっ、と声をあげる。

 

「初の依頼か! こりゃあ、めでたいぜ」

「やったね、慶賀野さん! 仕事の内容って何かなぁ?」

「……」

 

 針妙丸の横にいる慶賀野だが、少しボーっとしている様子。心ここに在らずといった状態だ。針妙丸は気になったのか慶賀野の顔を覗き込む。

 

「慶賀野さん?」

「……あっ。そ、そうですね。なんでしょうかね?」

 

 心配そうな針妙丸の顔を見て我に返る慶賀野。焦って笑みがいつもより引きつっている。さらに針妙丸の顔に慶賀野に対する懸念が浮かぶ。

 

「本当に大丈夫? 朝起きてからずっと調子が良くないみたいだけど……」

「大丈夫です、針妙丸さん。私は大丈夫ですから、ね?」

 

 針妙丸に心配をさせまいと慶賀野は普段のように穏やかな笑みを見せる。『ならいいんだけど』と安堵する針妙丸を後ろで嘲笑う球磨川。

 

『……。へぇ、功名さんが元気で僕もうれしいよ。やっぱり、何よりも元気が一番だからね』

「心配してくださってありがとうございます、球磨川さん」

『それにしても……』

 

 球磨川はちらりと針妙丸の方を向いてから再び慶賀野の方へ視線を戻す。

 

幸せ者(プラス)は楽観的でいいよね。悪意なく人を傷つけるなんてなかなかエグイことを平気でやるから、さ』

 

「あんた……!!」

『別に君のことだなんて言ってない――』

「球磨川さん、黙ってください」

 

 針妙丸が球磨川の挑発的な発言に対し再度口を挟む前に、慶賀野はぴしゃりと言い放つ。

 慶賀野の怒気に当てられた球磨川は『はいはい』と両手を後頭部に回し二人に背を向ける。

 

「おいおい……。空気悪いぜ、一夜でなんでこんなに空気が重くなっちまうんだ?」

「知るか。それよりこっちを見ろ、お前たち。コウジ、一枚目の紙を声に出して読んでみろ」

 

 正邪はほら、と桜街に二枚の依頼書の紙を突き出す。

 

「へぇ、二枚もきたのか」

 

 桜街(さくらこうじ)は正邪から紙を受け取ると、折りたたまれた紙を開き内容を確認する。

 

「どれどれ……。……ッ!? 姉御、すまん。俺には……読めん」

 

 桜街は紙を再び折りたたみ顔を下に下げる。正邪は苛立たし気に彼を見つめる。

 

「あぁ? ついに字も読めなくなったのか?」

「ち、違うそうじゃないんだ! ただ……その……声に出して読める内容じゃないって言うか……」

「もういい、貸せ」

 

 ――ったく、何が読めないだよ。読むのが恥ずかしくなるような内容が書いてあるって言うのか。

 

『じれったい』と結果を急く正邪は桜街の手から紙を奪い取り、中身を確認する。

 

「…………? んん!?」

 

 一瞬だけ見えた依頼書の内容を見間違いかと思い、正邪は手紙を何度か開いて確認する。

 

 ――正邪ちゃんのパンティおくれ。

 

 しかし書いてある内容は変わらずだった。正邪は動揺しているのか顔が赤い。妖怪やって数百年。こんなふざけた内容の手紙を送られたことなど一度としてなかった。まず送る住所すらなかったから手紙なんて来るはずもないが。

 

「に、二枚目は……!?」

 

 ――鬼人正邪の裸エプロン姿が見たい。

 

 二枚目も同様、変態が出した手紙で間違いなかった。が、こんな恥ずかしげもなくセクハラの内容を書いてくる奴など正邪の知っている中では一人しか思いつかない。

 

「……」

『……ドキドキ』

 

 目から光が消えた正邪の横で、球磨川はワクワクと正邪の反応を待っている。『願わくば』と言ったところだろう。

 

「……球磨川」

『ん? どうしたの? どんな内容だったの、正邪ちゃん!』

 

 少し興奮しているのが誤魔化しきれない球磨川。

 正邪は手に持っていた二枚の紙を球磨川に手渡す。そして怒っているはずなのに、ニカッと良い笑顔を球磨川に見せ、

 

「この手紙を『無かったことにしろ』」

『え……!?』

 

 正邪は内面と反して笑顔だ。いっそ不気味に見えるその笑みに球磨川は戦慄する。

 

「どうした? 早くお前の『大嘘憑き(オールフィクション)』でこいつを消せよ。お前なら簡単にできるだろう?」

『……!!』

「早くしろよ。まさか書いた本人がお前なわけないよな? まっさか、できないわけな・い・よ・な?」

 

 語気を強め正邪は球磨川に迫る。球磨川は冷や汗を額に浮かべ、能力を行使することを大いにためらっているのだろう。

 

「球磨川、信じているぞ? お前はそんなことをするはずがないって」

 

 正邪は悪戯気にニヤニヤと笑っている。間違いなく信じていない。

 球磨川は心内で人知れず狼狽しているのか、今までにない焦った表情を見せる。動揺しているのがばれないように何気なく左手で汗を拭き、右手で顔を見せないように抑えている。

 

 正直言ってバレバレである。

 

 よく耳をすますと、小声でブツブツとつぶやいているのが聞こえる。

 

 「……だ、大丈夫。こんな紙、「無かったこと」にするなんて造作もないことだ。自分で書いた字を消しゴムで消すことなんてわけないさ――」

 

 球磨川は紙に伸ばした手を触れる寸前で止め、その場でガクッと膝をつく。

 

『グッ……だめだ。僕には、僕にはできない……!! 自分の欠点(マイナス)をなかったことにするなんて……!!』

「どうやらマヌケは見つかったようだな」

 

 正邪は「入れる場所を間違えたんじゃないか?」と言って球磨川の依頼、もといセクハラペーパーをゴミ箱へ放り投げる。

 球磨川はショックを受け、ゴミ箱へ空しく手を伸ばす。

 正邪は『ああああっ……』と落胆の声をあげる球磨川を見て大いに満足する。

 

 針妙丸と慶賀野の女性陣は言うまでもなく、同じ男性である桜街でさえ、球磨川をフォローしようとはしなかった。むしろ『うわ~……』とあまりにも欲望に正直すぎる球磨川に、若干引き気味だ。

 

オーマイガッ(oh my god)!! 僕の希望がぁぁ!』

「しょぼい希望だな、おい」

「うわ……球磨川くん」

「せ、セクハラです、セクシャルハラスメントです……!」

 

 桜街に続き針妙丸と慶賀野も球磨川にドン引きだ。『僕の願いを「新生徒会」のみんななら叶えてくれると思ったのに』と泣くフリをしてチラチラと正邪の方を見る。

 

 全く懲りていない球磨川に堪忍袋の緒が切れたのか、正邪は先ほど球磨川の手紙を放り投げたゴミ箱へ、重い足取りで近づいていく。

 

「どうやら捨てるだけじゃ足りないらしいな」

 

 正邪はゴミ箱から先ほど放り込んだ手紙を取り出しビリビリに破く。子気味のいい音が『新生徒会』の教室に響く。

 

 字も見えないくらいに無残な姿となった紙を見て、球磨川は両手で頭を抑え込みその場でかがむ。拾ってくれるとでも思っていたのだろうか。

 

『絶望した!! せっかくありったけの勇気を込めて紙を入れたっていうのに!』

 

「なんか、正邪がひどいみたく言ってるけど全部球磨川くんの自業自得だよね」

 

『僕は悪くない』

「おい球磨川、あとでちょっと表出ろ」

 

 球磨川達がぎゃあぎゃあと騒いでいる間に慶賀野が『革命ボックス』の中を覗き込み、もう一枚の紙を取り出す。

 

「あ、正邪ちゃん! もう一枚依頼の紙が入っていましたよ!」

「なんだと! どれどれ……」

 

 正邪は慶賀野から紙をひったくり、広げていく。

 

「『多目的棟が生徒会に占拠されて迷惑しています。立ち去るように言ってきてくれませんか』。へぇ、なかなか面白い依頼を持ってきてくれたもんだな」

 

「多目的棟、ねぇ……」

「コウジ君、何か知ってるの?」

 

 難しそうな顔をする桜街に針妙丸は尋ねる。

 

「あぁ、多目的棟っていうのは文字通り色んな目的で使われる教室を集めた建物だよ」

「中にはどんな教室があるんですか?」

「え? 慶賀野は理科実験室にも行ったことがないのか?」

「ちょ、ちょうどその時はお休みで……」

 

 もじもじと恥ずかしそうにする慶賀野。桜街は後ろ髪を掻く。

 

「しょうがねぇなぁ。多目的棟にあるのはさっき言った通り理科実験室、美術室に大ホール。あとは音楽室に空き教室がいくつかと……昔使われてた体育館ってところか」

 

「何でもいい、早速……ってコウジ、球磨川はどこだ?」

 

「え? アイツならさっき『僕、今日やる気でないからエロ本買いに本屋さんに行ってくる』って……」

 

「あいつ……!! 私が裸エプロンになりゃあやる気出たってか!!」

 

 ――ちくしょう、こいつら三人だけじゃあ戦力不足な上、慶賀野はただの足手まといだ。元々慶賀野は人数合わせだったしな……。やはり球磨川がいなければ生徒会相手にお話にならない。

 

 正邪はちらりと慶賀野の方を見ると、慶賀野がドキッと驚いたような顔をする。

 

「しょうがねぇ、依頼を達成するのは明日だ。今日の所はとりあえず解散!」

 

 

 ==========

 

 

「あぁ……心臓に悪いよ……」

 

 部屋に戻った慶賀野は一息をつき、勉強机の椅子にどっかり腰を下ろす。

 

「……けど本当にバレてないのかなぁ」

「不安なのかな? 慶賀野っち」

「ひゃっ!!」

 

 耳元で突然響いた声に驚き、慶賀野は椅子から転げ落ちる。起き上がった後ゆっくりと声の主の方を振り返る。

 

「お、脅かさないでくださいよ、美紀さん!!」

「ゴメンね、あとこんばんは慶賀野っち」

 

 慶賀野の目の前に立っていた美紀は桃色のツインテールを揺らし、その場でクスクスと笑う。

 

「首尾はどーう? 順調?」

「……はい。美紀さんの指示通り、正邪たちの目安箱に投書しました」

「よろしい。私様(わたくしさま)は大変満足よ」

 

 ふっふっふっ、と美紀は扇子を広げ口元を隠す。

 

「そうだ、慶賀野っち。もうひとつだけ手伝ってほしいことがあるんだけど」

「……なんでしょうか」

「それはね――」

 

 美紀が言い終える前に、慶賀野は突如美紀の横から現れた大男にボディーブローをきめられてしまう。

 

「うっ……!? な、なんで――?」

「くっくっく……これで仕込みはか~んりょう。さぁて、あとは球磨川禊と鬼人正邪がのこのことやってくるのを待つだけね」

 

 そして……翌日、針妙丸が慶賀野の部屋に挨拶に行くも、そこに慶賀野の姿はなかった。

 




現在
レミリア「私、真のラスボスになるわ。」公開中!
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