グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~   作:ゼロん

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もうあっという間に30話かぁ……早いなぁ。
いつも見てくれてありがとうございます。
あ、打ち切るつもりはないから安心してください。

球磨川くんを見るときは、部屋を明るくして、現実から切り離して見てね!


第30話 決別

 

 平日の朝、それは学生にとっては登校の時間。日曜日から月曜日へと変わる最もつらい期間ともとれるこの時間に、ジリリリと目覚まし時計のけたたましい音が鳴り響く。

 

「んん……」

 

 正邪は目覚まし時計に手を伸ばし、

 

「うっさい」

 

 とりあえず外にぶん投げる。

 

「二度寝最高。……すぅ」

 

 そして正邪は再び暖かい布団の中へ。

 

「正邪! 起きて! 起きてってばぁ!」

「……もうこいつと同じ部屋はいやだ」

 

 朝。それは一日の始まりであり、起きる者によっては至福の――

 

「――時なわけねぇだろ!!」

 

 毎朝ゆっくり起きようとしているのに、針妙丸にはいつも変な時間に起こされてしまう。

 幻想郷から外の世界に飛ばされてから静かに起きれた試しがない。

 正邪は布団を両手でつかんだまま、ゆっくりと身体を持ち上げ針妙丸に睨みを利かせる。

 

「あ、やっと起きた! あのね」

「うっせぇ」

 

 安眠妨害をしてくれた針妙丸の頬に全力でビンタを決める。

 神聖なる眠りを邪魔をした者の罪は重い。しかし思ったよりも子気味のいい音がしたので二度寝が非常にはかどりそうだ。

 

「すぅ……」

 

 張り手によって倒された針妙丸を尻目に正邪はゆっくりと自分の身を布団の中へ。

 逃亡中の頃に布団代わりにしていた落ち葉よりも遥かに快適だ。全身がぬくぬくとして気持ちがいい。

 

「う、あぃた……。な、なにも叩かなくたって……」

 

「――ちっ、あれぐらい力を入れてやれば五分は気絶するかと思ったのに」

 

「気絶させるつもりでやったの!? とりあえず早く起きて! 緊急事態なの!」

 

 これ以上うるさくされては敵わないので、正邪は嫌々布団を身体から剥がし身を起こす。

 

「で? この私の目覚めを邪魔をずるとは、一体どういった要件だ、姫様? くだらない用事だったら、許さんぞ」

 

「それが……け、慶賀野さんが部屋にいないの!」

 

「はぁ……どうせトイレだろ?」

「だったら呼ばないよ! いいから来て!!」

 

「その前に洗濯物だ。今たたまないと絶対に後でめんどくさくなるからな」

「もぉ~!! 早くしてよ! 洗濯物より友達じゃないの!?」

 

「悪いな。優先順位ナンバー1は自分のことなんだよ。それと慶賀野は友達じゃない。強いて言うならお前のだ」

 

「――クズ」

「何とでも。むしろ誉め言葉だって」

 

 正邪はどれどれと風呂場に置いてあった洗濯物に手を……

 

『あ、正邪ちゃん。おはよう。洗濯物はたたんでおいたよ』

「――お前、何してんだよ」

 

 伸ばす前に風呂場で球磨川がさも当然のようにいた。

 正邪がたたもう、と思っていた洗濯物は既にたたまれ、かごに入れられている。たたまれた衣服に全くしわもなくひどく丁寧であることから、彼の几帳面な性格が出ている。

 

「いや、そうじゃない。なんでお前がここに――」

「どうしたの正邪……あっ、変態!!」

 

『やぁ針ちゃん。良い朝だね。それと変態呼ばわりはやめてよ』

 

「不法侵入の上に女子の洗濯物を漁ってるやつを、他にどう表現したらいいのよ」

 

 針妙丸がひどくうろたえた様子で震える指を球磨川に向ける。

 

『失礼だなぁ。人がせっかく善意で洗濯物をたたんであげたっていうのに』

「嘘つけ。どうせ私たちの下着目当てだろ。こっち来い、針妙丸。目が腐るぞ」

『ひどっ!!』

 

 汚物を見るような目をしながら正邪の方へ後退する針妙丸に、球磨川はその場で崩れ落ちる。

 

『ひ、ひどい……ひどいよ。僕はただ……二人の神聖なる下着をすごく綺麗に、善意で、しわが全くつかないようにしたっていうのに……うぅ……』

 

 意外と球磨川には綺麗好きなところがある。やるからにはキッチリとやる。普段やる気がない球磨川にしては珍しい行動だ。

 

「……」

「おい欲望駄々洩れじゃねぇか。それになんで下着限定なんだよ」

 

 ――だが二人に泣き落としは通じなかった。

 

 いい加減本音を言え。本音を、と迫る正邪と黙って立ち尽くす針妙丸に、球磨川の動きがピタリと止まる。

 

『……とまぁ、泣いてるふりしても、さすがにもう心配してくれないから』

『正直に言うね』

『――下着を見て何が悪い!!』

 

「全部だ!! なに堂々と言ってんだ、お前!!」

 

 完全にただの逆ギレである。

 

『だって! どうせタダのパンツだろ!? 見て何かを失うわけでもないし、ただの下着のどこに恥ずかしい要素があるって言うのさ!! パンツに失礼だろ!!』

「はぁっ!?」

 

 ――なにいってんだ、こいつ。

 

 全国男子が両手をあげて賛成するぞ、と球磨川は『だから、女子の下着は見てもいいんだ!!』と正論っぽい暴論を展開する。

 

「お前ら男子がいやらしい目で見てくるから、見られる側の女性は嫌なんだよ!! 少しは自重しろ!」

 

『僕は悪くない』『女子のパンツをエロい物と勝手に決めつける、世の中の男性が悪い!!』

 

「だぁぁぁ!! パンツパンツうっせぇ!! とりあえず風呂場出ろ、風呂場!!」

 

 暴論を論破していく正邪に対し、『女子の下着を見るのは罪ではない』と断固として主張を続ける球磨川。

 

「……なに正当化しようとしてんだ、この変態」

 

 加えて、針妙丸が感情のこもってない罵倒を出して来たらいよいよ末期だ。

 

「――あれ。ちょっと待って。ってことは……私の下着も、見た……!?」

 

 さっき飛ばした罵声とはうって代わり、恐る恐る尋ねる針妙丸。球磨川がまともな答えを出すとは心内でわかっているとしても。

 

『うん。綺麗な赤い――』

「いやぁぁぁぁっ!! 言うな言うな言うな言うな言うなァァ!!」

 

 針妙丸は拳を振り上げ、勢いよくパンチを何度も球磨川の顔面に叩きこむ。

 

『グホッ!! ちょ、顔面は、鼻を重点的に狙うのは――グゥ!? やめ、いた――グボァ!!』

 

 女子の馬鹿力は時には侮れない。針妙丸の拳が当たる度に鈍い音が風呂場に響く。

 球磨川を見る針妙丸の目が死んできた上に、状況が混沌としてきたので、正邪はさっさと球磨川を自分達の下着から離した。

 

 球磨川を続けて殴りつけようと、暴走する針妙丸を羽交い絞めにして連れて行くのも忘れずに。

 

 =======

 

 

「ぶち殺してやる変態ぶち殺してやる変態ぶち殺してやる変態ぶち殺してやる」

「どうどう。はやくお前も手掛かりないか調べろよ。慶賀野のことが心配なんだろ?」

「正邪どいて! そいつ殺せない!!」

「あ、ダメだこれ。会話成立してない」

 

 これ以上、正邪達の部屋にいさせるわけにもいかないので、針妙丸だけでなく、ついでに球磨川も連れてきた。かえって火に油を注ぐ形になっているかもしれないが、どうでもいい。

 まぁ、なにかの役には立つだろう。

 

『ていうか何で僕も慶賀野さんの部屋に? ていうか慶賀野さんどこ?』

「それを今探してんだ、よっと。なんだ、これ?」

 

 荒らされた部屋の中にあった机の上には一枚の手紙が残されていた。

 正邪はヒョイと机から手紙を拾い上げ、封を解いた。

 

「え~と……」

『新生徒会の皆様、――あんたらムカつくので適当に仲間の一人を拉致らせてもらいました~! テヘペロ♪』

 

「ストレートに来たな……いい度胸してるじゃないか」

 

『名乗る前に殺されんのも嫌だし、名乗っとくね。私様の名前は寒井美紀(さぶいみき)。役職上、生徒会の会計やってます、はい。一言でいえば、私たちの王様、全土様の腹心って感じかな? 自分で言うのもはずかちい』

 

「だったら書くなよ……」

 

『早い話ぃ、君のお仲間は預かってるから多目的棟まで取りに来てよ。た~くさん歓迎の準備はしてあるから、退屈せずに済むと思うよ~にししし。じゃ! またね~!』

 

 

「……ふざけた手紙だ」

『なんか頭が楽しそうな差出人だね』

 

 正邪は手に持った手紙をクシャクシャにしてポイ捨てする。部屋の中なので環境にも悪影響はない。セーフ。

 

「正邪、行こう。多目的棟……だったよね」

 

 意気込んで正邪の腕を引っ張る針妙丸だが、正邪は動かずじっとしている。

 

「どうしたの? どの道今日多目的棟に行くつもりだったんでしょ?」

「――パスだ」

「……え?」

 

「あからさまに罠だろ、これ。危ないとこに自分から飛び込むとか……バカのすることだよ。あ~やだやだ。頭単純すぎんだから、お姫様はもう。王子様にでもなったつもりか?」

 

 正邪は針妙丸の手を乱暴に振りほどき、腕を回す。

 

「ちょ、ちょっと……?」

「さて、私はもっと骨のある会計候補を探しに行くとするか。……今度は敵にあっさりさらわれない奴で」

「――ふざけないでよ! 慶賀野さんは私たちの仲間なんだよ!?」

 

 正邪のあんまりな態度に憤激する針妙丸。しかしそんな彼女を正邪は鼻で嘲笑う。

 

「ハッ! 仲間ねぇ。()()()()()の間違いじゃないのか?」

「なっ……!?」

 

 冷酷な正邪の発言に面食らう針妙丸。

 あ~スッキリする。その顔が見たかったんだよ。

 

「まーだわからないのか? 元々、私と球磨川以外はほんの人数合わせなんだよ。お前らの替えなんてい~っくらでもある。もちろん、あんたもな」

 

「正邪……それ本気で言ってん、の……?」

 

 いつもなら針妙丸も正邪の発言が嘘のものか本当のものかがわかった。

 だが、針妙丸は今の正邪からは全くその見分けをつけられなかった。

 

「何度も言わせんな。いなくなりゃあ、いなくなったで、そこまで。球磨川さえいてくれりゃあ、新生徒会的には……なんの問題もない」

 

「正邪……アンタどこまで……」

 

 狼狽し、ふらつく針妙丸を後ろから誰かが支える。

 

『オイオイ、そりゃないだろう? 慶賀野さんも僕らの仲間なんだ。助けてあげなきゃかわいそうじゃないか』

 

「くま、がわくん……?」

 

 そんな球磨川を正邪は解せぬと睨む。

 

「……どういうつもりだ。球磨川」

 

『あ! けど、僕は今の発言聞いても「新生徒会」やめるつもりはないから安心してね。ただ僕は……僕の「仲間」を助けに行くだけだからさ』

 

 『いいよね、会長』と球磨川はしばらく正邪を見つめた後、正邪の方から折れた。

 

「けっ! 勝手にしろ。どうせ何言っても聞きやしないんだろ?」

 

『……まぁね。僕は一度決めたことはやる主義なんだ』

 

「気分屋がよく言うよ……とにかく!! 私は行かないからな。罠がある場所なんかに、だぁれが好んで行くかっつーの」

 

 苛立つ正邪を無視し、球磨川は針妙丸の腕を引っ張り、玄関へ歩き始める。

 

『……。うん、じゃあ行こっか針ちゃん!』

「ええっ、ちょっと!?」

 

 球磨川は針妙丸の手を掴み、ムリヤリ扉の外へ走って連れ出していく。

 慶賀野の部屋には――ポツンと正邪のみが一人残された。

 

「……なんだっていうんだよ。どいつもこいつも」

 

 






くぅ……。なぜだ。ストーリーは思いつくのに、なぜすぐに文章にできないんだ……(泣)
次回もがんばります。
みんな愛読ありがとう!!

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