グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~   作:ゼロん

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お待たせしましたーっ!!
U -NEXTでカイジ見てたらモチベ一時的に回復しました!

全土が話してる場面を書いているときに聴いてるBGMはキルラキルのOSTから『Ki tsu9=kell』、『Ne Llna Ki9』。

次回がいつになるかわかんねぇ……



第41話 小槌の代償

 

「──黒神めだかは箱庭の方へ届けたか?」

 

 角明学園最上階。

 ガラスの下を見ればすぐに学園全てを見下ろせる頂きに、学園の支配者は君臨していた。

 

 大多羅全土(おおだら ぜんど)は優雅に紅茶を飲み、彼の背後にいるA組生徒に話しかける。

 

 

「はい、全土さま。記憶消去……もとい改ざんは無事成功。球磨川との当学院での接触はさっぱり忘れています」

 

「確認の際に球磨川の名前は出していないな?」

 

 全土は次なる紅茶を口に含む前に問う。

 

「まさか」

 

 A組の生徒は苦笑する。

 

「それよりもよろしかったのですか? 完全にしくじった堂々千太郎への処罰は?」

 

 全土はつい先日の件について脳内で振り返る。

 

 *****

 

 ちょうど、それは今……全土がいる場所と同じところで起こったことだった。

 

『も、申し訳ないでありますっ!! じ、自分としたことが……完全なる失態!! 生徒会の名に泥を……!!』

 

『……』

 

『アルカナを……生徒会を脱会させられた自分に、戦車の称号など不要……死を!! 死をもって……』

 

 ふっ、と小さく全土は銀髪を揺らして笑う。

 

『神井くんは厳しいな。たった()()()、それも()()()失敗でそんなに厳しい処罰を命じたのかな?』

 

『ぜ、全土さま……!?』

 

 思いもよらぬ言葉に堂々は驚愕するなか、全土は堂々に歩み寄る。

 

『君は死を恐れずに俺の前に謝罪を述べるためだけに現れた。それは……何よりの忠誠の証だ』

 

『ぜ、全土さま……!!』

 

『むしろ俺としては君のことを誉めてあげたいくらいだ。堂々くん、君は球磨川と……もう一人、名前はなんだったかな? あのコスプレ小娘との戦いで俺に大きな利をもたらしてくれた』

 

 全土はいつも浮かべる獰猛な笑みではなく、満足そうな表情をしていた。

 

 堂々は震えながら顔を下げたままだ。

 

『生徒会は除名になっても、これからも『戦車』として学園の()()を維持してくれ。神井くんには俺から言っておくから、引き続き協力してくれたまえ』

 

『は、はは……っ!!』

 

 

 堂々は頭を下げたまま後ろへ下がるという奇異な動作をしながらドアへと向かう。

 

『もったいない言葉!! これからも……これからも尽くさせていただくであります!!』

 

 あまりの感動によくわからない動きをしてしまっているのに気づいていないのだろう。

 

『あぁ、そうだ。堂々くん』

 

『はっ!!』

 

『剣道の大会は一ヶ月後だったね。がんばってくれ』

 

『ふ、粉骨砕身の努力を尽くすでありますっ!!』

 

 ******

 

「────役に立たないのなら、消してしまった方が……」

 

「そして自分が『戦車』の座を、と?」

 

「!?」

 

 おや図星だったかな、と全土は笑みを浮かべる。

 

「なにも後ろめたいことではないだろう。むしろ、向上心があることはいいことだよ」

 

「────」

 

 A組の生徒は一瞬絶句した後、すぐに表情を戻す。

 

「堂々くんの件ね。かまわないさ。彼は自分の行動が裏目に出ることは多いが、何も殺すことはない。私のために意欲的に動いている者を無為に消すのはあまりに早計だ」

 

「おっしゃる通りです……」

 

「それに彼は私に害を与えるどころが、何も()()を起こしてもいないし、利益しか与えていないよ」

 

「益……ですか?」

 

 A組生徒は不思議そうに尋ねる。

 

「それで、球磨川の件は? 美紀はうまくやっているかな? それとも、圧勝してもう終わってしまったのかな?」

 

 カップの紅茶を揺らしながらA組生徒へと尋ねる。

 

「い、いえ……まだ決着は」

 

「そうか───美紀の戦況は芳しくないようだな」

 

「!?」

 

 動揺するA組生徒をよそに、全土は揺らしていたカップをテーブルへと置く。

 

「あ、あの……そ、その」

 

「表情と声色でわかるさ。隠さなくてもな」

 

 A組生徒の額に大量の汗が浮かぶ。

 

「も、申し訳ありません!!」

 

「美紀から伏せられていたということだろう? まぁ、君の立場からすればそうするしかないだろうからな。美紀には君に厳しくはするな、と伝えておくよ」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

「少し退室してもらっていいかな?」

 

 A組生徒はすぐさまに部屋を出る。

 全土はテーブルの端にある携帯に手を伸ばし、ある番号へと電話をかける。

 

「もしもし? 美紀(みき)、全土だ。聞こえているか?」

 

『全土さま!! も、申し訳ありません! まだ反乱分子の処分とかは、』

 

「鬼人正邪は捕縛。しかし球磨川の抵抗で『悪魔』の手子生が敗北寸前。残る手札は自身と捕虜の慶賀野功名(けがの こうみょう)。それと『死神』の次木(つぎき)というところかな?」

 

『……はい』

 

 電話越しに諦めるような声が聞こえてくる。

 

「そう気を落とすな。責めようというわけじゃない。俺は激励しに声をかけたんだ」

 

『全土さまが……私様に!?』

 

「焦ることはない。君のあの二つの能力が健在ならば、お前の勝利は揺るがない。そうだろう?」

 

『は、はい!! それはもちろん!! 私様が負けることなどありません!!』

 

 意気込んで張り切る美紀の姿が目に浮かぶ。

 

「それとも───俺の手助けがいるかな?」

 

『その必要はありません!! 私様が絶対の絶対に! あの負け犬反乱分子を駆逐してみせます!!』

 

「そうか。なら任せる」

 

 全土は電話を切る。

 

「失礼します、全土さま」

 

 次の瞬間ノックをして入ってきたのは白い制服に身を包む男だった。

 

 それは角明学園生徒会に所属する人間ならば絶対に見たことはある顔で、

 

「……美紀には後で責任を取らせます。あんなカス如きに手こずるなど、学園の生徒会私刑執行部の面汚しです」

 

神井(かのい)生徒会長。君はもう少し心に余裕をもちたまえ。部下のちょっとした失敗ですぐに怒り殺そうとするなんて、アニメの二流悪役のすることだ」

 

「はっ! こ、心がけます!!」

 

 全土は再び紅茶のカップを手に取って学園全体を見下ろす。

 

「新生徒会か。ふっ……ふっふっふっ……」

 

「全土さま?」

 

「いいや。滑稽だなと思ってね」

 

 全土は獰猛な笑みを浮かべて、今正邪たちがいるであろう多目的館を眺める。

 

「球磨川禊。鬼人正邪。実に滑稽だな。お前たちが生徒会と正面きって戦っている時点で、お前たちは俺に圧倒的に敗北しているというのに……はっはっは……」

 

 笑う全土に息を呑む神井。

 当然だ。

 

 

「神井くん。後学のために君も見ておかないか? きっとためになるはずだぞ?」

 

 ────美紀のいる多目的館には密偵や監視カメラはない。

 

 しかしどういうわけか、携帯の画面に某動画サイトの配信のように垂れ流される映像。

 

 そこに映っているのは逃げる鬼人正邪と、『悪魔』の手子生と死闘を繰り広げる球磨川。

 

「……はい。私も一緒させてよろしいでしょうか」

 

 こんなものなど……彼の能力の一端に過ぎないのだろう。

 

 神井の目に映るのは自分の想像を遥かに超えている全土の『世界(スキル)』だった。

 

 

 *******

 

 

 突如、扉の音がして目が覚める。

 

 

「──────はっ!?」

 

 手は……鎖で縛られ、足も柱に固定されている。

 まるで囚人のようではないか。

 

「いいザマでありますな。鬼人正邪」

 

 入ってきた人物。道具の殺傷力を高める元能力者『戦車』────百々千太郎。

 

 今は球磨川に能力を無かったことにされている筈だ。

 

「ドードー鳥か」

 

「誰が絶滅動物でありますかっ!! どうどうだ、百々!!」

 

「伸ばしたらそう聞こえんだろ」

 

「伸ばすなであります、鬼人正邪!!」

 

 手足は……手錠、鎖などでガッチガッチに拘束されている。関節を外して抜けるなんていう方法もありそうだが、目の前の竹刀男がいてはそれもできなさそうだ。

 

「……なるほどね。私は今とらわれの身ってわけだ」

 

「くっく……貴様も大胆なことをしたでありますなぁ。生徒会に表立って牙を剥くとは。潜むべきを潜まず。とんだ天邪鬼でありますな」

 

 百々は憎たらしい笑みを浮かべながら正邪へと近づく。

 

「お生憎様、こっちは生まれつき身も心も天邪鬼だよ……そっちこそ。球磨川にやられて能力を無くされたせいで生徒会からハブられてねーか心配してたぜ」

 

「……きっさま………まぁいいであります。これからたっぷり憂さを晴らすであります」

 

 確か体が石になっていたはずだが……今は生身。

 そうか、あの石化小僧の能力には時間制限でもあるのか。

 

 そうとくれば脱出を。

 

 チラリと百々が入ってきた扉を見る。

 見るからに頑丈そうで内から蹴り倒そうとしても並の力ではびくともしないだろう。

 

「結構頑丈そうじゃあないか」

 

「この部屋は独房としても使われるであります。あんまりにも行儀の悪い生徒はここに閉じ込めて苦痛の毎日を過ごしてもらうでありますよ」

 

 よく見ると部屋の隅に血の跡がある。

 一体どんなことがおこなわれているのか。

 

 少し鳥肌が立ちそうだが悟られるのもなんか悔しい。正邪は挑発的な態度は崩さない。

 

「おぉ怖い怖い」

 

「まさか最初に来るのがお前とはな……ちょっと運を感じるぞ。お前にとっては──悪運だが」

 

「────それはどうでありますかな?」

 

 ここに自分が何をしに来たか知ってるでありますか? と手に持った鞭をしならせる。

 

「────がっ!?」

 

「貴様に苦痛を……終わりない苦痛を与え、たっぷり後悔させてからこいつで楽にしてやるであります」

 

 何度か鞭をしならせ、正邪の身体に傷をつける。

 足に綺麗な一筋が入り、血の滝ができる。

 

「はっはっはは!! どうでありますかな? じゃあ次はこれで────骨をぶちおってやるであります!!」

 

 百々は手に持った木刀を振り上げる。

 

「全土さまに泥を塗らせた恨みを────!!」

 

「思ったけどさ……お前────結構馬鹿なのな」

 

「あ?」

 

 ニマッと笑う。

 

「リバースイデオロギー────私とお前の位置を入れ替える」

 

 すると、鎖で繋がっているのは百々。鞭を握っているのが正邪となる。

 

「じゃ、SMプレイは終わりだ。ついでに財布ももらっとくぜ」

 

 正邪はスッと百々から財布をくすね、鞭を投げ捨てる。

 

「本当は何回か仕返ししてやりたいが……時間もなさそうなのでな。じゃな!」

 

「きっっさあああまああああああああっ!!」

 

「おっと長くは持たんようだ」

 

 頑丈そうな扉が音を立てて軋む。スキルを実質失ったとはいえ、彼自身も強かったようだ。

 

「ふんっ!!!」

 

 扉を蹴飛ばし百々が姿を現す。

 

「!?」

 

「……やっぱり竹刀は携帯しておくべきでありますな」

 

 鎖を自力でぶったぎり、扉をぶち破ってきたようだ。

 

「お前本当に人間かよ……」

 

 人外が言うことではないが。

 

「物の位置の反転……そういえば最初に使っていたのも、その芸当でありましたな」

 

 百々はゴキリゴキリと肩を鳴らす。

 

「まさかミイラ取りをミイラにするような特性まであるとは………やはりお前は生かしておいてはならんであります。『死神』は実に甘いであります」

 

「能力も無くしてるってのに、なんて脳筋っだよ……!」

 

「逃がさん……絶対に逃さぬ……この不手際、貴様の首で償わせて全土さまに……!!」

 

 ぐりゅっと百々の目が正邪の方へ向く。

 

 その瞳は年相応の少年のものではない。凄まじい殺気を秘めた殺し屋のような目つきだった。

 

 正邪は全力でその場から逃走した。

 

「たぶん、もうありゃあ油断なんかしねぇな。追い詰められすぎて逆にクールになってやがる……!」

 

 油断もない。情もない。遊びもない。

 本気で殺しにかかってきた時の強者の目は実に恐ろしい。

 

「うおわっ!? コウジ!?」

 

「お、っととと!! 姉御!! ここにいたんですか! 探しました……」

 

 廊下の曲がり角で桜街と鉢合わせるが、あまり嬉しい状況ではない。

 

 もうすぐ後ろにまで殺人鬼が迫ってきている。

 

「おう、いいとこに来たな舎弟、囮になれ」

 

「は、えぇぇ!?」

 

「お前らまとめて死ねぇァァァァァ!!!!」

 

 二人とも同時に身体を真っ二つにしそうな勢いで百々が迫ってくる。

 

「いやどういう状況!?」

 

「憎しみを餌にバカが釣れたってとこ」

 

「いや意味わかんないっす!!」

 

 逃げつつ話している間に百々は徐々に距離を詰めてくる。

 

「だてに喧嘩やってないだろ? あれぐらい抑えられるだろ。私より力あったりするんじゃないか?」

 

「そ、そんな無茶な……!」

 

「ほれ、やってみ?」

 

 じゃなきゃ殺されるから……!

 

「おぁぁぁぁぁ死ねぇぇぇぇぇ!!!」

 

 正邪はコウジを前に押し出す。

 

「打ち合わせ通りに頼むぞ!」

 

「してない!! ひっ……やっけくっそだ、おらぁぁぁぁ!!!!」

 

 百々の殺人級の速さを乗せた()()をすんでのところで受け止めようとする桜街。

 

 ────バカめ!! 受け止められるものか! そのままミンチにしてやる!!

 

 百々は狂笑を浮かべて竹刀を振り下ろす。

 

「リバー────」

 

「────それで自分の『剛力』を『非力』にでも変えるつもりだったでありますか? 鬼人正邪」

 

 ────無意識からの奇襲。

 

「んなっ────っ!?!?」

 

 正邪の顎に向かって鋭い突き。

 

「!? げ、な……」

 

 瞬きの間に正邪の後頭部は床に叩きつけられる。

 正邪は気を失いかける。

 

「やべ、あ、死ぬ……しぬ」

 

 百々は片手で竹刀を。

 先ほど突き出されたもう片方の手には────木刀が握られていた。

 

「あ、姉御……!! て、てめぇ……オレの方には手を抜きやがったな!!」

 

 コウジの方へは竹刀。それも利き腕ではない。

 

「……ふむ。やはり今までスキルに頼った弊害でありますか。本来なら二人とも────なんなら鬼人正邪は頭が吹き飛んでいてもおかしくなかったであります」

 

 

「う、ぁ……りょ、りょうとう」

 

 

「囮を使っての時間稼ぎ────そして再び『反転』の能力を自分に使ってくることなど百も承知。故に、桜街一年には多少本気で────正邪には本気の一撃を打ち込んだ。それだけの次第であります」

 

「てんめ────」

 

「そしてお前は二撃目で卒倒するであります」

 

 桜街の後頭部に木刀の柄を叩き込む。

 

「うっ!? が────」

 

「舎弟……! くそ……」

 

「しかし意識すら失わないとは大したものであります鬼人正邪。────次はその喉を突く」

 

 百々は木刀を振り上げ突きの構えを────

 

「……? 木刀が……消え────」

 

 それは突然のことだった。

 

 百々の木刀がまるで意思を持ったかのように、彼の頭に一撃食らわせたのだ。

 

「が────!? な、なにがっ!? そ、そんなばか────!?」

 

 一人でに動き始めた木刀は荒れ狂うように所有者である百々を何度も打ちつける。

 

「こ、これは……針妙丸の……打ち出の小槌の副作用……!」

 

 以前、幻想郷にて針妙丸を騙し打ち出の小槌を使わせた時に同じ現象が起こった。

 

 突如、普段使っていた道具が、意思をもった付喪神へと昇華する現象────!

 

 ポルターガイストに似たものが勝手に動き出す現象。それが百々の木刀に起こったのだ。

 

 これはラッキー!

 

「自分の────ぐほっ!? ぼ、木刀がなぜ……!? ぐぉぉぉ、貴様の仕業か鬼人正邪ぁ……! あぐか!?」

 

「さ、さぁな……どうやら私の悪運もまだまだ尽きてないみたいだな……! 行くぞ舎弟!」

 

 ぶぉ────。

 

 謎の悪寒が目の前に迫る。

 

 

 ────これは死だ。

 

 

 反射的に身をかわすと、自分の頭があった場所に何者かの手が突き出される。

 

 

「……お、おしい……ボ、ボクの手で、も、もう一回、石像にできたと、お、思ったのに……」

 

「ちぃぃぃ!! またお前かよ……!」

 

 

『死神』次木(つぎき)。────たしか片手に触れられた対象を石にできる奴だ。

 

「ちょ、ちょうどいい……挟み撃ちにするであります『死神』の!」

 

 百々は付喪神と化した木刀を捕まえて叫ぶ。

 

 ────しかし次の瞬間、次木が飛びかかったのは百々の方だった。

 

「なっ!?」

 

 触れて石化させる手とは『反対』。

 もう片方の手を伸ばす次木。

 

『!?』

 

 避けた百々の代わりに掴まれた木刀は突如霧散。砂となって床に落ちる。

 

「き、きさま……どういうつもりでありますか!!」

 

「どういうつもりはこっちだよ! よくも……よくも……っ」

 

 逆ギレされて困惑する百々。

 

「よくも正邪ちゃんに傷を!!」

 

 次木は正邪の太ももや頬あたりに残った傷跡を指差す。

 

「? いや、敵だから傷つけて何が……」

 

「また石にしたときに傷が残るじゃないか!! それじゃあダメなんだ!!」

 

「……自分、耳がおかしくなったみたいでありますな。ちょっと何を言っているのでありますか、次木二年生……?」

 

 百々は理解もしたくないと言いたげに顔がひきつっている。

 

「なんでわからないんだ!! 美しく整っているツルツルとした石の肌を感じたいんだ!! 頬擦りしてスーッ、スーッて!!」

 

 次木は頬に手を当てる。まるで自分の欲望をシミュレートするかのように。すりすりと。

 

「傷が残ったまま石にしたら一部分だけ感触が違うだ────」

 

「────ああああ!! もうてめぇ喋んな気持ち悪りぃ!!」

 

 正邪はつい大声で次木のスピーチに割り込む。

 

「なぁ、あんた……なんでこんなのが仲間なんだ?」

 

「……自分もなんで寒井美紀がこんなのを頼りにしてるか理解に苦しむであります」

 

 自分も同じアルカナ持ち(ホルダー)として扱われるの嫌だなー、と顔をコウジから逸らす百々。

 

「次木二年生!! 何をボヤボヤっとしてるでありますか!! 鬼人正邪は治療して渡すから、とにかくやつの手足と口を封じて……!!」

 

「……わ……た」

 

「はぁ?」

 

「嫌……われた!! 正邪ちゃんにきら、嫌われたぁ!!」

 

 急に次木は泣き出してしまう。

 

「な、なんでありますかマジでこいつ……情緒不安定すぎるであります」

 

「あぁ……うわぁぁ……ぁ」

 

 次木はその場でうずくまって泣き出してしまう。

 

「正邪の姉御、今チャンスじゃないですかね? な、なんで後ろに下がるんですか」

 

「……いいか、コウジ。ああいうのはな……」

 

 正邪が続きを言おうとした矢先、

 

 

「────お前のせいだ、竹刀野郎!!」

 

「え」

 

 次木が百々の体に『右手』で触れる。

 正邪を石にしたのは左手。

 

 故に。

 

 ────ばさぁ……

 

 

 あっけない音を立てて、百々の身体が砂と化した。

 

「ああいう危ない奴とは距離を取るのが正解なんだよ、コウジ。何をしてくるかわかったもんじゃない」

 

「な、なるほど……」

 

「おかげでよーくわかった。百々のやつが生贄になってくれたおかげでな。あいつの能力は……」

 

 

 次木はニタニタと壊れた笑みを向けてくる。

 

 

「嫌われるくらいなら……一緒に石になろう。それか死のう。一緒に死のう。それでずっとずっと一緒だ……よね?」

 

 

『死神』のアルカナ持ち(ホルダー)次木要二(つぎき ようじ)

 

 能力名『死神(アーストゥアース(earth to earth))。

 

 右手で触れたものを砂に変える。

 左手で触れたものを石化する。

 

「────とにかく、ヤバい」

 

 焦りのあまり、正邪は語彙力を失っていた。

 





大アルカナ『死神』
正位置の意味:強制終了、中止、破局、終焉、停止
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