グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~ 作:ゼロん
「はぁ……はぁ……はぁッ……なんで……私が……こいつらを……おぶっていかなきゃいけないんだよ……!!」
「えっと……ありがとうございます
「いいの、いいの。話し込んじゃった私たちが悪いんだから」
「針妙丸、何もしてないお前の手柄みたく言うんじゃない……! お前たちを運んでるのは基本的にこの私なんだよ……!!」
生徒手帳の規則によると、入学式に参加しなければ、入学は認められないらしい。無論、替え玉も聞かないし病気による欠席も認められない。
この学校に入学する人間が普通に歩いて、初見の場所に十分以内にたどり着くことは難しいだろう。人を背負いながら、入り組んだ島の中心まで行くのだから
ただの人間である
しかし……
針妙丸が何とか交渉して、正邪に慶賀野を背負わせ、小さくなった針妙丸が彼女の肩に乗っかる。
そして針妙丸が地図を見て方向を確認し正邪が全速力で走る。といった形に落ち着いた。
--走る本人はすごく嫌そうな顔をしてたが。
「クソッ……!! それにしても何でこんなところに学校なんか……」
「
「へぇ~しかも経営破綻寸前だった学校や企業を吸収してどんどん
「私の背中で雑談とはいい度胸だな、えぇ? ……それより早く降りろ。着いたぞ」
残り三分というところで無事、集合場所に到着。
慶賀野は正邪の背中から降りてペコリと正邪に頭を下げる。
「あの……正邪さん、ありがとうございました。女の子なのにすごく力持ちなんですね」
「気色悪い!! お礼なんて言うんじゃねぇよ! おぇッッ!!」
「ええええッッ!? そこは喜ぶところじゃないんですか!?」
「慶賀野さん、正邪とはまともな会話できないって思っといたほうがいいよ……あ、入学式の会場だって! じゃあここが皇庭なんだ!」
『入学式会場』と大きく書かれた看板のむこうに広大な敷地に広がる芝生が見える。その芝生の上にはパイプ椅子が並べられており、すでにそこには何百人もの生徒が座っていた。おそらくは正邪達以外の角明学園の新入生だろう。
「……そうみたいだな。」
「正邪? どうしたの? あっ、立札の前で人が座ってる……あれ? あの人寝てる?」
「いや……寝息が聞こえない。遅れたやつを入れさせないための見張りか何かか?」
『角明学園 入学式会場』と書かれた看板の真下で、トレンチコートを着た男が目をつぶって椅子に座っている。
怒られるのでは、と心配し慶賀野は正邪の方に目線を向ける。
「だ、大丈夫ですよね……? ギリギリだけど間に合いましたし……」
「あえて……遅れてみるか? 私たちが遅刻した時のアイツの反応も見てみたいもんだな」
座っている男を指で指しニヤリと正邪は意地悪そうな笑みを浮かべる。
「ちょっ! 正邪さん、なんであなたはそんなにひねくれてるんですか!? あえてしなくていいですから、そんなこと!」
慶賀野はあたふたと慌てて正邪の腕を引っ張る。
ここまで来たからには絶対に一緒に入学しますよ、と言いたげだ。
はッ!と正邪は慶賀野の悲鳴を意に介さず、彼女を小馬鹿にしたように笑う。
「それは私が天邪鬼だからだよ」
「アマノジャク……すごいひねくれ者ってことですか? 自覚があるんだったら自制してくださいよ……」
--わかってないな……私のひねくれ具合はそもそも人間のように後天的な物じゃないんだよ……
三人はスタスタと入学式の会場に足を踏み入れる。
入口にいた男は……彼女らに対し、特に何も言わなかった。
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新入生の中には正邪達に負けず劣らずの個性的な者もいた。一番前の席にいる、ジャケットを羽織った金色のリーゼントの男性がその代表だ。
「何ジロジロ見てんだよ」と言われ、慶賀野は悲鳴をあげていたが正邪達は彼を無視して、自分たちの番号が書かれた席に向かった。
皇庭の奥には大きな特設ステージが設置されており、さらにその奥に巨大な塔がそびえたっている。この塔が主に授業で使うことになる教室棟だろう。
『--はじめに
代表生徒によるアナウンスが入り、ステージの横から白いひげが特徴の大柄の老人が出てきた。
「へぇ……あれが
「正邪! 失礼だよ。ああ見えて優しいお爺さんかも……」
「う~ん……あたしには普通のお爺さんに見えるんだけど……」
大多羅校長がゴホン、と咳払いをすると雑談をしていた学生たちが黙り込む。
「え~本日はお日柄もよく…………新入生の皆さんが縁起良く入学できることを心から…………というわけで…………」
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結局のところ、大多羅校長の話は何とも言いようがない『いい天気ですね』とか『君たちはこの学園で色々な経験を』といった普通の話だった。
特別良いことを言うわけでもなく、すごーく普通で長い話なので、まぁ当然……
「すぅ……すぅ……」
「むにゃ……正邪、もう食べられないよう……」
「ってちょっと二人とも! なに寝てるんですか!? 本当にこう行動がマイペースっていうか、独特というか……!」
慶賀野は注意されないように小声で二人に呼びかける。
校長兼理事長の話が始まって十五分ほど。寝ているのは正邪だけではなく、さすがの針妙丸も長い話と睡魔のコンボ攻撃には敵わなかったようだ。
--いくらすごい人とはいえ、普段はあんな感じで普通のお爺さんなのかな……?
慶賀野が想像していたのはもっと……
「ですから……皆さんは今日この日はたいへんめでたい……」
彼女は話しかけても起きない二人をゆすって起こそうとするが……
「親父、貴様の話は終わりだ」
「え?」
突然聞こえた重々しい声に緊張し困惑する慶賀野。
声に反応し、先程まで鼻ちょうちんを浮かべていた正邪が跳ね起きる。
するとステージの裏からえんじ色のトレンチコートを羽織った男が現れる。
--あの服や
正邪は頭の中で今まで会ったことのある人物とステージ上にいる男との照合を開始する。
「む、息子よ……まだ話は途中で……」
「耳が腐ったか? 交代だ、と言ったのだ」
校長はしぶしぶ手に持っていたマイクを『息子』と呼ばれた男に渡す。
男はステージ上に上がり、カーテンで半分ほど隠れていた姿が露わになる。
--間違いない。すぐに忘れるには印象的すぎる
『百獣の王』であるライオンを連想させる逆立った銀髪。見るものをゾッとさせる鋭い目つき。
顔立ちは整っており、体つきも校長以上にたくましいはずなのに、全体的にシュッとした印象だ。
羽織った濃い紅色のトレンチコート。その下から黒いタンクトップがちらりと見える。
そして何よりも……この遠くにいてもわかるほどの威圧感。
実際の大きさよりも……彼がはるかに巨大に見える錯覚を味わった。
--見張りのためにいるただの学生かと思いきや、校長の息子だったとは……
正邪は
「え~……皆さん。息子の全土から君たちに話があるそうです。ありがたく、ためになる話なのでしっかり聞くように」
--なにぃ!? じゃあ……コイツが大多羅 全土……!?
先ほどまでの眠気が完全に吹っ飛び、正邪達は目を見開く。
--確かにびっくりしたが……あの存在感なら納得だ。間違いない。あの男がこの学園の支配者。
全土は校長から差し出されたマイクをとり、ステージの中心に立つ。
「安心しろ。オレは親父のように長ったらしく……ためにならないスピーチをするつもりはない」
ふっと笑う全土の後ろをすたこらサッサと校長が走り去っていく。どうやら自分では役不足と判断したようだ。
「新入生諸君、オレからまず一言言っておこう」
全土の
「貴様らは
そう彼は『断定』した。