グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~   作:ゼロん

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第7話 咬ませ犬と過負荷の来襲

「見事な咬ませ犬っぷりだったぞ。おまえ」

「見舞いに来た奴の第一声がそれか! ていうか誰だお前!」

 

 包帯でぐるぐる巻きになり、四肢を吊り上げた桜街(さくらこうじ)は叫ぶ。

 

 怒った桜街を物ともせず正邪はニヤニヤとほくそ笑む。

 

 百々に寮を案内されてから数時間後。正邪は一人で保険棟にいた。もちろん重傷を負った桜街に会うためにだ。

 

「聞きたいか? 私が何者かそりゃ聞きたいよなぁ。よーく聞いておけ。我が名は鬼人正邪(きじんせいじゃ)! 生まれついてのレジスタンスだ!」

 

「は、はぁ……そのレジスタンスさんがこんなところに何の用だよ?」

 

 自己紹介の時のテンションと比べ一気に覇気がなくなった正邪。頬杖をつき、テーブルに置いてあったリンゴをかじる。

 

「別に。ただの暇つぶしだ」

 

「ふ、ふざけてんのかてめぇ!! こっちは全身骨折なんだよ! あまりしゃべらせんな……ぁあああ!! いててえててッッ!!」

 

「おいおい、あんまり興奮すると治りが遅くなるぞ?」

「誰のせいだと思ってやがる……!!」

 

 痛む足を手で抑える事もできず、さらにいら立つ桜街。

 

「…………患者をいじるのやめてもらえる? 傷増えて治す気無くなる」

 

 医務室の扉を開き入ってきた女性はため息を漏らす。

 

 桜街は助けを求めるように女性の方に顔を向ける。

 

「先生、早くこいつを帰らせてくれよ。マジで」

「無理だし、いやだ。しんどい」

「なっ……それでも先生かよ!? ……しかもめんどいって言ったよなぁ!?」

「そういうことだ。好きなだけここにいさせてもらう。まだ果物はあるのか?」

「……たくさん。バナナ……いる?」

 

「なんでこの学園にはまともな奴がいねぇんだ……」

 

 桜街は正邪の医務室追放を断念し、黙って寝ることにした。

 

「で? あんたが全土の言っていた『法王』って奴なのか?」

 

「……ん、そう。名前は人首 繋(ひとかべ けい)。みんなはわたしのことをツナギって呼んでる。まぁその方が読みやすいんだろうけどさ……」

 

 ふぅ……と息を吐きながら白衣を着た女性、人首 繋は明後日の方向を向く。

 

「アルカナだか何だか知らないが、そんな称号が付くってことは……ただの人間じゃないってことなんだろ?」

 

「……そうね。わたしがこの保険棟の主治医を任されているのは『肉体を正常な状態に戻す』って能力のおかげ」

 

「ほう、便利な能力だな」

「……ここではそうでもないよ?」

 

 悲しげな表情を浮かべ人首は目を正邪からそらす。

 

「他にも聞きたいことはある? 新入生」

「二つある。お前は全土の味方なのか? あとアルカナ持ちって一体何なんだ?」

「一つが良かったな……じゃあ簡単に」

 

 人首は適当に近くにあった椅子に座り、ベッドに顔を仰向けに寝かせる。

 

「……私はどっちでもない。中立。ただこの学校に雇われてるってだけ……生徒会みたくアイツに服従はしてない」

 

「あっそ」

 

 人首に聞いたところ、アルカナ持ちとはこの角明学園のなかで規格外の能力を持つ生徒のこと。そしてその異能力者の多くが生徒会に所属しているらしい。

 

「それで……俺のけがは治るのか? 一生ミイラ状態とか死んでもごめんだぞ!?」

「聞いてなかったのか? こいつの能力について」

「う、うるせぇ。寝てたんだよ。で、どうなんだよ先生」

 

 正邪に向かいわめく桜街の方に体を向け、人首は再びため息をつく。

 

「まぁ……普通だったら後遺症が残ってまともに動けないでしょうね……けど、大丈夫。三日あれば完治できる」

 

「三日!? 一瞬では済まないのか? 魔法みたいにパパッとよ」

「どんなファンタジー脳してんだ? おまえ」

 

「ち、ちげぇって! 生徒会がここまで生徒に大けがをさせたんだ。一瞬で治癒できる能力を持ってるやつがいるのかって思っただけだ!」

 

 --なるほど、ただの馬鹿ではなかったか。

 

「はぁ……それで済んだだけでもラッキーよ。なかには『生徒会』に逆らって殺された生徒も数多くいるもの。……たぶんあなたはよっぽど全土に気に入られたのね」

 

「嘘だろ……! そんなの警察や政府が黙っているわけが……」

「……いいえ。黙る。……むしろ黙らざるをえない」

「はぁ!?」

 

 人首は席から立ち上がり、諦観を込めた目で虚空を見つめる。

 

「……この角明学園の卒業生の数十人は政界や報道機関の重役に携わっている。その全てが全土の息がかかった者たち。その影響が卒業後も残らないとは限らない」

 

「う、嘘だろ……?」

 

 ガックリと肩を落とす桜街。チャームポイントのリーゼントも元気をなくしたかのようにうなだれる。

 

「……まぁ怪我の方はわたしのスキルを使えばすぐに治るから。心配しなくてもいいよ」

 

 医務室のドアを開き、去っていく人首。残されたのはバナナを食う正邪と憔悴しきった桜街だけだった。

 

「あぁそうだ。確かお前だったよな? 最初に全土ってやつに飛びかかったのは?」

「……それがどうしたって言うんだ。あっさりやられてこのざまだ。情けねぇ……」

 

 桜街は歯ぎしりをする。腕も足も折れた今彼にできるのはそれだけだ。

 

「……どこが情けないんだ?」

 

「はぁ? 聞いてなかったのかよ。でしゃばって飛び出して……あんな自信があったてぇのに。まじで雑魚みてぇにやられちまって……このざまだ」

 

 桜街は自分の手足を見て、顔を下に向ける。

 

「そうだな。あんなに周りに(うわさ)されておいて、あっさりやられたお前は最高にダサかった。もう、笑っちまいそうだったぜ」

 

「クソッ……言いたいだけ言えよ。どうせ俺は……」

 

「その姿に私は最高に感動したぞ?」

「え……」

 

 正邪は椅子から立ち上がり、桜街の前に立つ。

 

「お前はあの場にいた誰よりも早く行動し、『お前が気に入らない』と怒号を飛ばしたんだ。大したもんだ。お前には私と同じ、反逆者の素質を感じるぞ?」

 

「な、なに言ってんだよ……俺は……あんなかっこ悪い負け方したんだぞ……俺よりも……あの場でじっとしていた他の奴の方が賢いに……」

 

「はぁ!? あんなビビって何もできない奴らが? 賢い? 冗談じゃない、あんなの死んだほうがましだな」

 

 吐き捨てるかのように正邪は怒鳴り、桜街はそんな彼女の姿に困惑する。

 

「で、でもよ……」

 

 しつこく自己嫌悪をやめない桜街に対し、彼の頰を両手で思いっきり叩く。子気味のいい音が医務室に響く。

 

「でももヘチマもなぁーーいッッ!! とにかく! お前はダッッサかったが、人間のくせになかなかやる奴だ! ……私が言いたいのはそれだけだ」

 

「……!」

 

 正邪は桜街に背を向け、医務室から出ていこうとする。

 

「お前確か……コウジだったよな? またクラスで会おう未来の同志よ」

 

 後ろ姿で手を振り、正邪は桜街にしばらくの別れを告げる。

 そして桜街以外に誰もいなくなった医務室は静寂に包まれた。

 

「なかなかやる奴……か。……ありがとよ、正邪の姉御(あねご)

 

 何といえばいいのだろうか。

 残念な負け方をしたのに、その上自分よりも身長の低い少女に気圧されたというのに……先ほどよりも心が自然と軽かった。

 非常にすがすがしい気分を桜街は感じていた。

 

 我に返り彼はハァ〜、とため息をつく。

 

「けどやっぱ、ダサい……か。がんばらなきゃな……」

 

 

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 それから数週間後、生徒会メンバーに目立った動きはなく正邪達は最底辺のクラス、D組に所属することになった。

 

 この学校の新入生は初めは必ずD組から所属することになっており、生徒会から認められたものはC、B、A組の順に昇格が認められ、A組となり一年の単位をとれた者のみが卒業できるという。

 

 つまり、生徒会に認められA組に入れなければ卒業できない。たとえ三年が経ったとしてもだ。

 

 この学園を出られるのは超優秀な者、天才のみ。これが角明学園(かくめいがくえん)の優秀人材の輩出の秘密の一つであり、世間では全く知られていない真実である。

 

 そして……覚えているだろうか。

 

 この学園にやってくる者は正邪達だけではないことを。

 

 

『ここが転校先っと……随分と規模が大きい学園だね』

 

 

 --最悪の転校生がやってくる。

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