グッドルーザーズ!! ~球磨川禊と鬼人正邪による反逆の学園生活!~   作:ゼロん

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第8話 『混沌より這い寄る転校生』

『週刊少年ジャンプから二次創作サイトに転校してきた球磨川禊でーす! みんなよろしく仲良くしてください!』

 

「ぷっ……」

 

 転校生。学校ではありがちのイベントの一つ。いつ来るかもわからず、クラスの誰にも予想できないイベントの一つである。

 

 二週間が経ち、この学校と外の世界と両方についてを知ることができた正邪(せいじゃ)にとっては程よい刺激なのかもしれない。

 

 

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 慶賀野(けがの)の話によると、この世界には大きく分けて四種類の人間がいるとのこと。

 超平凡の通常(ノーマル)、秀才の特例(スペシャル)。そして……異常な能力をもつ異常(アブノーマル)

 

 これが四種類のうちの三種類らしい。

 

 アブノーマルは何かしらの超常的な能力、スキルを持っている。『異常な殺人衝動』であったり『電磁波を操る』ものであったりと多彩だ。

 

 ……もっとも、自他かかわらず被害が甚大で、理解不能なスキルを持つ人種は()()()()に分類されるのだが。

 

 

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 ーーおそらく、ここにいるモブたちは普通(ノーマル)。全土たちのほとんどは異常(アブノーマル)の部類に入るのだろう。余計に全土達が気に食わない。

 

 今日、転校してきたのは黒髪以外に外見的に目立った特徴のない普通の少年に見えた。

 

 ある一人の生徒曰く、彼の着ている黒い学ランはすでに廃校となった名門学校、水槽(すいそう)学園の物らしいが……

 

 ここは制服無指定なのであまりたいしたことではない。

 

 少し奇妙なのが……この少年の言葉には心がこもっていないように聞こえること。

 普通、人間の言葉には感情が乗る。喜び、悲しみ、怒り、安らぎなど様々だ。

 

 この少年の言葉からはそういった感情はない。どこか()()()()()()染みている。

 

 --まぁどうでもいいことだが。

 

「はっはっはっ! おいおい、また変な奴が入学してきたなぁ?」「ていうか可愛くね?」「ジャンプ好きなのかな?」

 

 D組の教室が笑い声であふれる。笑う中にはほくそ笑むものも、鼻で笑う奴もいる。

 

 --私は無論、笑うこともなく、つまらなそうに頬杖をつくだけだったが。

 

 つまらない人間の授業を受けてもう疲れているのだ。ホームルームが終わったらやっと帰れるのでさっさと自己紹介など終わらせてほしい。

 

 それが正直な感想だった。

 

 針妙丸は疲れて正邪のポケットの中で寝ている。慶賀野(けがの)はというと……

 

「なんか……また面白いのが来ちゃいましたね……」

 

 新しき変人に苦笑していた。頬が引きつっている。

 

 --人間の苦労する表情はいつ見ても飽きないな。けどやっぱり眠い。

 

 あくびをし、ポケットの中にいる針妙丸を起こしてからかう直前--

 

 

『笑うな。』

 

 

 --すさまじい殺気が目の前から迫ってきた。

 

「……ッ!!『ひっくり返れッッ!!』」

 

 目前に迫る冷たい気配に反応し、自分の位置と座っていた椅子の位置を『ひっくり返す』。

 自分の上に乗っかった椅子に先端の尖った()()()が当たり、教室の端に吹っ飛ぶ。

 

 --螺子(ねじ)だ。

 

 正邪が反射的に慶賀野の机の方を見る。

 ……慶賀野は死んでいた。全身を先ほどの螺子に貫かれて。

 

「な……!!」

 

 よく見ると慶賀野だけではない。桜街を含めクラスにいた生徒全員が無数の螺子に貫かれ、絶命している。

 

 血が四散し、教室はどす黒い赤一色だ。

 

 ーーまさか……こいつの仕業か……!?

 

 正邪は新しく来た転校生……球磨川 禊(くまがわ  みそぎ)の方を振り返る。

 

『全く人の冗談を笑うなんて……人として最低だぞお前たち! 恥ずかしくないのかっ!!』

 

 真剣な顔で怒る球磨川は正邪を見てポカンとした表情になる。首を傾げて『ん~?』と言っている。

 

『あれ? 君大丈夫だったかい? 悪いね、僕としては結構つまんない冗談だったんだけど。みんなの笑いの沸点があまりにも低かったみたいだ』

 

 ハハッ、とこの惨状を些細なことのようにその転校生は笑い飛ばす。この光景を作った張本人だというのに、だ。

 

 彼の薄気味悪い笑みに、その態度にゾッとした。背筋に怖気が走り、冷や汗が止まらない。

 

『おっと、勘違いしないでくれよ? 僕が自己紹介して、ジョークを言った瞬間にどこからともなく螺子(ネジ)が飛んで来たんだ』

 

 転校生は三日月のような笑みを口元に浮かべながら、めちゃくちゃな理論を口走る。

 下手くそな探偵小説の犯人でもこんな言い訳は絶対にしないだろう。

 

『決して……僕が投げたわけじゃないんだよ? たまたま不幸にも彼らが死んでしまって……たまたま、幸運にも僕らは助かった。どとのところつまり……』

 

 暴論の次は被害者面……責任転嫁……些細なことであればまだいい。だがこの転校生は殺害という外道行為そのものを正当化しようとしている。微笑みを浮かべながら、()()()()()()()()()

 

 正邪はこの少年から人間、いや妖怪以上の不気味さを感じた。今まで会った中でも最低な……ナニカの片鱗を味わった。

 

 気づけば足が……震えている。

 自分でも理解できない不快感に自分の肩を抑える。

 

 --震えるな、止まれ。ビビるな。怖くない、武者震いだ。これは武者震いなんだ……! しかしなんだ……!? この人間は……? 狂っているとか、歪んでいるとかそんな言葉じゃあ足りない……!

 

『僕は悪くない』

 

 人間の負の面、そのものであると鬼人正邪は転校生--球磨川禊をそう評価した。

 

「好き勝手いいやがって……消去法でどう考えてもお前しかいねぇだろ、犯人」

 

『いや、僕じゃないよ? それに生存者の中に犯人がいるのなら、君も含まれるでしょ? えーと……ちょっと痛い人……さん』

 

「お前、コメントに困ったからって私を馬鹿にするんじゃねぇよ」

 

 ーーなんで揃いも揃って私をコスプレ好きの痛いヤツ呼ばわりするんだか。

 

『まぁ気にすることないよ! それも君の少ない個性なんだから! 周りよりも自分を大事にしていこうよ! それにほら、コスプレって着ている人が可愛いければ何でもいいじゃん?』

 

「おい、やめろ! 色々な意味で! おまえ何に喧嘩売っているんだ!?」

 

『それにしても……へぇ〜。すごいね、この角。つるっとしつつザラっとしてて……いったいどんな素材使ってるの?』

 

「!? さ、触るな!」

 

 横に振るわれた腕を避け『わ、怒られちった』と後ろに下がる球磨川。

 

 ーーこいつ、いつの間に後ろに回り込んだんだ!?

 

 自分の角を触られ顔を赤くする正邪。少し彼女と距離をおいた球磨川は人懐っこい笑みを浮かべながら再び正邪の方に近づいてくる。

 

「なに勝手に角に触っているんだよ! くすぐったいだろうが!」

 

『すごいや! こんな細かいところまでこだわっているとか、どんだけ自分の建てた設定にこだわってるの? 今の君も十分魅力的だけど、僕はそんな君の素の姿も見てみたいなぁ』

 

「コレが素だよ……で? お前は私に何をしようとしているんだ?」

『え?』

 

 急に飛びかかってきた球磨川の腹を蹴りつけ、教室の端に蹴り飛ばす。ドアが外れ、ボーリング玉のように教室の外に転がっていく球磨川。

 

 蹴り飛ばされ、よほど驚いたのか手を頰にあてワタワタと慌てる。

 

『ぶ、ぶったな! 親父にもぶたれたことがないのに!!』

「うるせぇ。あんな殺気を放っておいて被害者面とはな。何をしようとした?』

『……別に? あいさつ代わりに顔を引きはがそうとしただけだけど?』

 

 予想もしなかった返答にびっくりどころの話ではなかった。何のために彼女の顔を引きはがそうとしたのか……

 

「……一応聞いておくけど、なぜやろうとした?」

『だってぇ、もしかしたら僕が君のことを好きなのはその顔だけかもしれないでしょ? 体つきとか言葉遣いだとか全部じゃなくて』

 

 --何ということだ。こいつ正真正銘のシリアルキラーか? いや……こいつは……

 

『だから確かめたかったんだ! 君の顔を引きはがしてもなお、僕は君のことが可愛いって言えるのかをね』

 

 ……それ以下だ。こいつはすでに人間として終わっている。

 

「冗談じゃないぜ……聞かない方がよかったかもな」

『そうだ! まだ君の名前を聞いてなかったね? よかったら聞かせてくれると嬉しいな!』

 

 先程までの自分の発言を当然のごとく流す球磨川。

 

 正邪は逃げずにこの男に話しかけたことを今さら後悔し、顔を手で抑える。

 

 --付き合ってられるかってーの……

 

正邪(せいじゃ)だ。鬼人正邪(きじんせいじゃ)

 

『正邪ちゃんか……うん! クラス一番の女子が話しかけてくれたんだ! 僕の方からも自己紹介をしなくっちゃね!』

 

「勝手にちゃん付けすんじゃねぇよ」

 

 球磨川は手に持っていた螺子をしまう。いや、突然消えたといった方が正しい。

 

『【混沌より這いよる過負荷(マイナス)】球磨川禊。僕の名前だぜ。……よろしくね! 正邪ちゃん!』

 

 シリアス調からまた一変。すぐにまたのほほんとした笑みを浮かべる。

 

 とことんまでマイペースな男だ。周りに溶け込めないほど絶望的に。

 

 --なるほど、これが慶賀野の言っていた四種類の人間の四種類目--過負荷(かふか)

 

『……あれ? ノーリアクション? ばっちり決まったと思ったんだけどな~』

 

 生まれつき異常な才能をもつ異常と違い、環境などが原因で性格が歪み後天的に超能力(スキル)を得た者達。

 

 他人の害にしかならない能力を持つことが多い。仮に得たソレがプラスに働く能力であっても、自分が幸せになるためには決して使おうとはしない。

 

 またの名を過負荷(マイナス)

 

 加えて、過負荷のほとんどは社会不適合者または人格破綻者だ。

 他人も自分と同じくらい不幸になることを何とも思っていない。

 

 プラスの異常。マイナスの過負荷。頂上から下を見下す(プラス)。底辺から上を忌避する(マイナス)

 

 全くの正反対だ。

 

 この男、球磨川禊は過負荷(マイナス)の代表であり、極めつけだろう。

 

「おまえ、その制服の学校、水槽学園は廃校になったって聞いたんだが……」

 

『え? 正邪ちゃん。何で僕を疑念の目で見てるの? なんてこったい、正邪ちゃんが僕みたいな善良な一般市民を疑うなんて……!! 友達を疑うなんて最低だよ!』

 

 ーー私がいつお前と友達になったよ? そんな日、絶対に来るか。

 

『全国一の名門校が、生徒会長や全校生徒を螺子(ねじ)伏せられたからって廃校になんかなるわけないじゃないか!』

 

 --やっぱりこいつの仕業か。安心院がこいつは厄介という理由がうなずける。

 

『せっかく同じ学校にいるんだ。仲良くしようよ、正邪ちゃん。あと……そこに隠れているお友達も一緒にさ』

 

「……ッッ!!」

 

 正邪のポケットのふくらみを見つめ、全身を凍り付かせるような薄気味の悪い笑みを浮かべる。

 

 球磨川の鋭い指摘に正邪は確信した。

 

 --やっぱりこいつ、ただのクレイジーじゃねぇ……!!

 

 

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