神様を好きになるのは間違っているだろうか。   作:鯖の缶詰

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第一話

 

「ついた…!」

 

 迷宮都市オラリオ。

 その広大な都市へ今日もまた一人夢を持った少年が入ってくる。活気溢れる街並み、そして堂々と聳え立っている塔を前に少年は人並み以上に興奮していた。

 夢にまで見たオラリオだ。興奮で震えていた少年は固く拳を握りながら、冒険者への一歩を踏み出した。

 

 

「ダメだぁー…全然ファミリアに入れない…」

 

 数時間後、そんな決意とは裏腹に少年は路地にあるベンチで頭を抱えていた。少年は迷宮(ダンジョン)に恐れをなしたわけでも、今日は行かなくてもいいやなどと思ったわけではない。迷宮へと入るにはまず前提としてファミリアというものに入らないといけない。だが少年はその小柄な身体と人畜無害そうな顔でことごとくファミリアに入りたいと志願しても門前払いを受けていた。

 こんなはずじゃなかったのに、と少年は深くため息を吐いた。本当だったら今頃迷宮に潜っている予定だったのに。

 

「はぁ…どうしよう…」

 

 オラリオを照らす太陽はあんなに爛々としているのに、それに比べて少年はどんどん気持ちを沈めていく。着いた当初はあんなにやる気に満ち溢れていた少年はしおらしくその決意すらも捨てようとしていた。

 

 ふと、路地が先程より騒がしくなったことに気づいた。少年は思わず騒がしい方へと顔を向ける。

 

 そこには数人の男女たちがいた。武器や防具などを着ているため冒険者であることが分かる。金髪の美人さんや、獣の耳を生やした柄の悪い男の人などがいる。

 

(みんな美男美女だなぁ…)

 

 これだけ騒がれるのだから、相当有名なファミリアの人たちなのだろう。少年はその団体を羨ましそうに見ていた。

 

(帰ろう…)

 

 もっとも帰る場所なの無いのだが、彼らを見ていると惨めな気持ちになってくる。もう少ししたら日も落ち夜になる。ほぼほぼ一文無しの自分でも泊まれるくらい安い宿を探そうとギルドへ戻ろうとしたその時、少年はまた彼らに目線を戻した。

 また羨ましいと思って見たわけでもない。

 妬みの視線で見たわけでもない。

 

(………何だあの人)

 

 彼らが囲んでいた一人の女性へ目が行ったのだ。少年が見ていたのは赤髪の女性だった。肌をかなり露出した格好をしている一人の女性。

 端的に言えば、少年の好みのドストライクだった。彼の好みのど真ん中を貫いた彼女の容姿は少年の目を彼女へと釘付けにさせた。

 

「うん?何や、ウチに何か用か?」

 

 そして彼女はじっと見ていた少年に気づき、その少年へ思わず声をかけた。少年が住んでいた村には若い女性があまり多くなかった。しかも彼女は少年のドストライク。少年は上手く返事をすることができず、たどたどしく応えた。

 

「あ、あの」

 

「何や?」

 

 寄ってきた彼女からは女性特有のいい匂いがして、軽くパニックに陥っていた頭は完全に混乱してしまった。

 だから少年は言ってしまった。

 

 

「貴方に、ひ、ひと、一目惚れ、しましたっ!」

 

「へ?」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 僕が一目惚れをした女性、名前をロキさんと言うらしい。なんでもロキ・ファミリアの主神であり、そのファミリアは今一番勢いのあるファミリアらしい。

 どうして分かったかと言うと、今僕がそのロキ・ファミリアのホームである黄昏の館にいるからだ。

 あの後ロキさんからウチのファミリアに入らないかと言われ、断る理由もないし、自分からしたら喜んで入りたいレベルだったため、二つ返事で了承して、そのまま彼らについて行った。

 

 館につき、なされるがままにロキさんの部屋まで案内され、今はロキさんと二人きりの状況になっている。正直心臓がバクバク言ってて張り裂けそうだ。

 

「そ、そのウチのこと好きって言うのはほんまなん…?」

 

 少し顔を赤くしたロキさんが疑うような視線でこちらを見てくる。こちらも負けじと顔が赤くなっていくのが分かった。好きな女神(ひと)にじっと見つめられるのはこんなにドキドキするものなのか。

 

「は、はいっ!す、好きですっ…!」

 

 声が上ずってより一層恥ずかしくなるが、それはロキさんも同じようで僕と同じように下を向いて更に顔を赤く染めた。

 

「そ、そうか…嘘をついてるわけではないんやな…」

 

「はい…その、嘘では、ないです…」

 

「何でウチなんや…?惚れるならもっとアイズたんとかおるやろうに…」

 

「神様にこういうのは失礼だと思うんですけど…その、すごくタイプなんです…」

 

「そ、そうなんや」

 

 ロキさんは髪を弄りながらそっぽを向く。というか、ファミリアに入らせてくれるのはありがたいけど僕みたいな軟弱者が大手ファミリアに入っていいのだろうか。

 先程とは別の意味で顔を俯かせると、ロキさんはそれに直ぐに気づいたのか安心させるような声色で、

 

「大丈夫や。みんな最初は弱いんやで?最初から強いやつなんて滅多におらへん。だから安心しいや」

 

 そう言ってくれた。

 やばい、優しさに感動して泣きそうだ。

 

「さ、じゃあ早いとこ神の恩恵(ファルナ)をあげよか」

 

「はい、お願いします」

 

 そうして僕は、ようやく冒険者の一歩を踏み出した。

 

 

 

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