良かったら見ていってください
俺の名前は
そんな俺は現在。
「フハハハハハ! 矮小な人間どもがよくも我の前まで辿り着けたものだ!」
魔王と戦おうとしている。
苦節2年、ここまで来るのに長かった。いや短いのか? 突然異世界に召喚された俺は王様に魔王を倒してくれと頼まれて、強い仲間を集めて、強力な武器や防具を探し、数多くのダンジョンを踏破し、魔王軍幹部をほぼ壊滅させ、ようやくここまで来た。元の世界で武術でも習っておけばよかったと思った回数は数えきれないし、死にそうになった回数は18回目を最後に数えてない。多分同じ事をもう一度最初からやってみろと言われたら泣いて駄々を捏ねる自信がある。それくらい奇跡に奇跡を重ねた結果だった。
そうこうやってるうちに魔王との最終決戦はクライマックスを迎えていた。
「フハハハハハ! 所詮貴様らなど我の足元にも及ばぬ存在よ。さあ、勇者よ。後は貴様だけだぞ?」
「クッ、アイザック……ホリイ……シルヴィア……」
苦楽を共にした三人の仲間は魔王の攻撃を受けたりしてとうとう倒れてしまう。俺もそろそろ体力の限界だ。これ以上長引けば勝機は無い。次の一撃で決めなければ。そう思いながら剣を構えて突撃を始める。
「うおおおおおおお!」
「フハハハハハ! 特攻か、その意気やよし。しかし我にそんなものが通じるとでも……むっ!?」
ここにきて魔王は気づく。倒れていた筈の僧侶、ホリイが這いつくばりながらも呪文の詠唱をしていることに。彼女は最後の魔力を俺の強化に回してくれたのだ。
「猪口才なぁ! 魔の雷を食らうがいい!」
魔王から放たれる魔の雷。攻撃に全ての力を使ってしまっている俺に避ける術は残されていない。
「フハハハハハ! コレで終わァアアアア!?」
魔王の手には飛んできた短剣が刺さって魔の雷がキャンセルされ、足には大剣が刺さって身動きが取れなくなる。アイザックとシルヴィアが最後の力を振り絞って突破口を開いてくれたのだ。俺は3人に報いるべくすべての力を振り絞って更に加速する。
「これで――――終わりだぁああああ!!」
何の工夫も無い我武者羅な突きが魔王を貫き、どってっ腹に大穴を空ける。
「こんな……バカな……」
某特撮の如く魔王は派手に爆発四散して消滅。第2形態なんてものは無く、後には何も残らなかった。
俺達の勝利だ。
◆
「勇者たちよ、よくぞ魔王を倒してくれた。心から礼を言う」
魔王を倒した後、魔王が隠し持っていた秘薬を見つけた俺は自分で試して体力が回復し、傷が治ったのを確認するとすかさず3人にも使用してパーティーは完全回復を果たす。そしてホリイの転移呪文によって王都に帰還した。
民たちは完成を挙げて俺達を迎い入れてくれて、国王も俺達の帰還を確認するなり御前に呼び出して礼を言うのだった。
「なんなりと褒美を取らそう。何でも言ってみよ」
「じゃあ、俺を元の世界に帰してくれませんかね」
「……それ以外で頼む。それ以外だったら本当に何でもいいから」
元の世界に帰して欲しいというのは召喚されたときにも言ったが、王曰く、俺を召喚した魔法では召喚は出来ても送還は出来ないというクソ仕様らしい。
「何だったらうちのお転婆姫を――」
「でしたら王都から離れた場所に家を貰えませんか。そこを拠点にして元の世界に帰る方法を探したいのです」
王様が何か言いかけてたが気にしないことにした。ちなにみ国王の一人娘、すなわちお姫様は栗毛色の髪が綺麗な美しい女性だが、お転婆なのが欠点で城の石壁を素手で破壊しては外に遊びに行って国王も困っているのだ。
一時期無理矢理魔王討伐の旅に付いてきたこともあった。巨大ゴーレムを素手で破壊したり、巨大トロールにアッパーカットを食らわせて昏倒させたり、とある魔王幹部が創った合成魔獣をラッシュで叩きのめしたりと、もう全部あのお姫様だけでいいんじゃないかなと思わせる暴れっぷりを見せてくれた。国王が病で倒れたという知らせが来なかったらきっと魔王戦に彼女が参加してたかもしれない。
そういえば王族は第何王子、第何王女みたいに王位を継ぐ候補が何人もいるイメージがあるのだが、この国は彼女一人だけでいいんだろうか。
その後、アイザックは今後入用になるからと金を、ホリイは自分が育ったオンボロ修道院の建て直しを、シルヴィアは魔王戦で駄目になった武器防具の新調を要求し、無事通ったのだった。俺が要求した拠点についてはゴーレム技師を動員して3日後には完成させると言っている。それまでは今まで通り宿屋暮らしになりそうだ。
「そういえばアイザック、入用って実家に仕送りでもするのか?」
城からの帰り道、ふと気になったことを聞いてみる。魔王城から宝を持ち出したし、今までの成果と合わせれば四等分にしても数十年は遊んで暮らせそうな金額にはなるだろう。
「……そういえばまだ言ってなかったな。ハル、俺が魔王と戦う直前に言った言葉を覚えてるか?」
アイザックは魔王との戦いの直前に「俺、魔王を倒したら故郷に帰って結婚するんだ」と言っていた。何故この局面になって態々死亡フラグを立てるんだよと叫びたい気持ちになった。魔王戦の間もアイザックの事が気になって仕方なかった。
「俺、ホリイと結婚するんだ」
「へ?」
「勇者様、今まで黙ってて申し訳ありません」
「マジかよ……マジかよ……」
知らないうちに仲間二名がリア充になっていたでござる。思い返してみれば最近二人の距離が近いような気がしたし、休暇の日には二人が知らないうちに消えて、シルヴィアと二人で過ごすことが多かったような気がするし、飯を食う時も二人が隣通しだった気がするし。
「それに……」
「ええ……」
二人は二人でしか通じ合えないであろうアイコンタクトで頷いた後、目線をホリイの下腹部へと向ける。
「……えっ、マジで?」
「ああ、まだ間もないがホリイには分かるらしい」
しかも仲間一人が妊娠してたでござる。言いにくいのは分かるけど言ってくれよ、妊婦さんを最終決戦に連れていくとか俺ってとんだ鬼畜野郎じゃないかよ。割と魔王の攻撃食らってた気がするけど、生まれてくる赤ん坊に何かあったら罪悪感で死ねる自信がある。
言いたいことはたくさんあるが、あえて一言言うとしたら。
「おめでとう、二人とも幸せになってくれ」
苦楽を共にした仲間達の幸せを願わずにはいられない。「こちとら必死過ぎて恋愛なんてしてる暇なかったんだが?」とか「清楚金髪巨乳美人をさらっとゲットしたとか羨ま死ね」とか「俺より先にDT卒業しやがってモゲロ」とか決して思っていないから安心して欲しい。
「大丈夫かハル、物凄い邪念を感じるんだが……」
「ナンノコトカナ、シランヨ」
「そ、そうか」
既に二人の世界を築き上げている二人は気づいてなかったが、感のいいシルヴィアはそうでもなかったらしい。それに誤解だから安心して欲しい。親友に邪念を向けるわけないじゃないか。
「それですぐにでも親父とお袋にホリイを紹介したいから今日にでも故郷に向けて出発するつもりだ。式についてはおいおい知らせるから絶対に出てくれよな」
「アア、ワカッタヨ」
「それでは暫しのお暇を頂きます」
「あんまり無理しないでねー」
笑顔で去っていく二人の背中が心なしかいつもより遠く感じる。この気持ちは言葉にするのであれば何て言えばいいんだろうな。
「元気出せ、私がいる。肉でも食いに行こう。向こうに美味いケバブを出す店があるからさあ行こう直ぐに行こう」
「お前はいつも通りだねぇ」
目の前にいるちょっと食いしん坊な銀髪の
いつもは武器、防具、回復ポーションのための節約生活だったがもうその必要はない。今晩くらいは祝勝会兼友人達の結婚祝いと称して飲んで食べて騒いでも罰は当たらないだろう。
ちなみにシルヴィアお勧めのゲバブはタレが絶品で滅茶苦茶美味かった。
文字数って何文字くらいが良いんでしょうね
3000?5000?10000?