魔王を倒したので元の世界に帰ります   作:柚子檸檬

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異文化交流には発見がいっぱい

 城に行くとランダムでとあるイベントが発生してしまう。

 

 そのイベントとは―――

 

「ハールちーん、ひーさーしーぶーりー!」

 

 俺をこの世界に召喚した国王。その一人娘であるシャーロット王女殿下のタックルである。シャーロット王女はスレンダーで女性らしい膨らみは少々欠けるが背が高く、まるでファッションモデルのような美少女だ。普通ならそんな美少女に抱きつかれるのは男としては本望。

 

 それはその破壊力が戦車(チャリオット)級でなければの話だが。

 

 彼女にとっては軽いスキンシップかもしれないが、軽いスキンシップで重症を負うのとなると、こちらとしても必至の覚悟で当たらなければいけない。昔はアイザックと二人がかりで止めていたが、今では一人でもなんとか止められるようになった。

 

 あくまでなんとか止められるようになっただけでキツイ事に変わりはないぞ。しかしよくもまぁ、あんな動きそうなドレス姿で爆走出来るものだ。とりあえず彼女には加減というものを覚えて欲しい。ちなみに追跡(ホーミング)してくるので避けるという選択肢は存在しない。

 

「うぐぉ……!」

 

 相変わらず当たりが強い。身長が俺とさして変わらないこともあってその威力はより強力なものとなる。決して俺が小柄だというわけではない。

 

「お、お久しぶりです王女殿下」

 

「んもー、シャーリーで良いって何度も言ってるのに!」

 

「いや、そういう問題では」

 

「じゃあ王女命令ね、敬語禁止」

 

「はあ……お前も変わらないな……」

 

 奇妙なくらいにフレンドリーな王女様に思わず溜息が出る。

 

「シルちゃんもお久ーってどうしたの? 何かむくれてるけど」

 

「別に……」

 

 シルヴィアはいかにも何かありましたと言わんばかりなくらいわざとらしく不機嫌だ。さっきからあまり喋らないのも不機嫌さを強調するのに一役買っている。

 

「何、痴話喧嘩?」

 

 一概に違うとも言えないので何とも言えない。恋愛に興味無さそうなシャーリーであってもなんとなく察しがついてしまったようだ。あまり深く突っ込まれたくないので話を本題に移すことにした。

 

「ところでジパングの使者はいつ頃来るんだ?」

 

「もう来て席についてるわよ。いやー海の向こうの人達に会うのは初めてだから緊張するわー。ハルちんも会ったら驚くと思うわよ」

 

 はて、驚くとはどういう事だろうか?

 

 シャーリーに案内された先に待っていたのは黒髪黒目の男女達。男性の方は日本でも大昔に見られたみづらのような髪型をして簡素ではあるが気品ある佇まいをしている。女性の方は髪型に多少差異はあれど皆、紅白の巫女衣装に身を包んでいる。

 

 この世界に来て黒髪黒目の見たのは初めてだ。

  

 その中でも特に目を引いたのが小学生くらいの背丈の少女。俺が場に足を踏み入れると真っ先に俺を視たのがその少女だった。その瞬間にこの少女は只者ではないとこの二年間で培った俺の本当が知らせてくれる。シャーリーの言った事はこういう意味だったのか。シルヴィアも気づいたのか、流石に不機嫌そうな顔を止めて真顔に戻ってくれた。

 

「成程、貴方が魔王を倒したこの国の勇者でしたか。強く優しい気に満ち溢れてますね」

 

 その幼い見た目とは裏腹に落ち着いた声色で微笑みかけてくれて何ともアンバランス。もしかしたら見た目通りの年齢ではないかもしれない。しかし褒められて悪い気はしない。

 

「紹介が遅れました。私は神楽と申しま……」

 

 彼女は紹介を言いかけて顔をしかめてた。その目線の先にはシルヴィアがいる」

 

「何故、勇者が妖魔を連れて……?」

 

 俺は耳を疑った。

 

「国王。私は勇者の同席は求めましたが妖魔の同席を求めた覚えはありませんが……」

 

 他のジパングの使者達もシルヴィアを冷ややかな目で見ている。まるでここはお前が来るような場所ではないと言っているようだ。

 

「え、いや……その……」

 

「ちょっと! シルは勇者(ハル)の仲間よ!」

 

 国王も何と言い返したら良いか迷ってるのか言葉を濁している。反対にシャーリーはシルヴィアを魔物扱いしたことに腹を立てて言い返した。

 

「そうでしたか、勇者一行に妖魔の仲間が。品格が問われますね」

 

「何ですって!?」

 

「よせ」

 

 神楽とやらに食ってかかろうとしたシャーリーをシルヴィアが制する。

 

「でも!」

 

「気にするな。差別させるのには慣れっこだ」

 

 慣れているからといって平気なわけじゃないだろうに。

 

 俺はシャーリーが怒りを露わにしているのを見たお陰か思っていた以上に冷静になる事が出来た。俺はまだ20年も生きていない若造だが、自分の感情に任せて外交問題を起こす程子どものつもりはない。

 

 しかし、大切な人をバカにされて黙っていられるほど薄情になるつもりもない。

 

「国王陛下、王女殿下。どうやら俺達はこの場には相応しくない人物だったようで、大変申し訳ありません。すぐに退出させていただきます。後日、また改めて謝罪をさせていただきます」

 

「え? ちょ、ちょっと!?」

 

「あ、ああ……」

 

 俺は頭を深々と下げた後、シルヴィアの手を引いて早歩きでこの場を後にした。後ろでゴチャゴチャやってたが、もうどうでもいい。俺は一刻も早くこの場から離れたかった。

 

 

 

 

「お、おいハル! 何処まで行くつもりだ!?」

 

「え?」

 

 シルヴィアの声で我に返る。気がつけば、とっくに王都から出ていたようだ。それまでずっと彼女の手を引っ張ってたのか。

 

「わ、悪い。痛くなかったか?」

 

「いや、大丈夫だ」

 

 頬が紅潮してるのは歩き疲れたからか、それとも別の理由があるのか。

 

「ハルは、私のために怒ってくれたんだな」

 

「シャーリーのお陰でいくらか冷静になれたけどな」

 

「はは、私には爆発する前に離れたように見えたけどな」

 

「手厳しいなぁ」

 

 苦笑いしながら見上げた空はもう夕焼けが綺麗だった。その後はジパングの使者達は黒髪黒目で俺と似てただの、、国王は相変わらずおどおどしてただのシャーリーはあんなんで嫁の貰い手がいるのかだのとたわいのない雑談に花を咲かせていた。

 

 しかし、今日あった出来事が無くなるわけではない。俺も答えを出さなければ勇気をだした。シルヴィアに失礼だ。

 

 そう思い始めた時、チリンと小気味良い鈴の音色が聞こえた。そこにいたのは先程の巫女、神楽であった。奇妙なことに付き人はおらず一人だ。巫女といえば鈴だなとか考えながらシルヴィアを後ろに下がらせる。

 

「あまり王都から離れていたくて助かりました」

 

「そうですか、それはどうも。それで何故態々追いかけていらしたのですか?」

 

「先程の件は私に非がありましたので謝罪を、それと聞きたいことが」

 

「聞きたいこと?」

 

「貴方は何故妖……いえ、こちらの大陸ではだーくえるふと呼称されてるのでしたか。何故共に在ろうと思えるのですか?」

 

 今回は先程のような侮蔑ではなく純粋に分からないから聞いていうのだろうか。ならこちらもはっきり答えるとしよう。

 

「確かに、俺とシルヴィアは種族は違います。それにダークエルフは魔族に分類されることもある」

 

「ならば何故?」

 

「理解し合えたからです。一緒に話し合って、一緒に飯を食って、一緒に遊んで、一緒に笑って、そうやって理解し合えたんです。だから……」

 

 俺は真っすぐな目で神楽を見た。

 

「俺の大切な人を化け物扱いするのは止めてくれ。シルヴィアはお前らを害するような事はしてないしこれからする気もないんだ」

 

「そうでしたか……その子をよっぽど愛してるんどすなぁ」

 

「え!?」

 

 言われた事にも驚いたが、何よりも突然喋り方が京都弁っぽくなったインパクトの方が強い。それに先程までの落ち着いた態度にいたずらっ子のような無邪気さが加わっている。

 

「かんにんな~こっちが素なんどす。そやさかいそっちも敬語はええどすえ」

 

「か、変わった喋り方だな」

 

「そうどすか?」

 

 シルヴィアはさっきまでの態度が一変したのと、京都弁に全く馴染みがないせいで俺よりも困惑していた。

 

「ええものも見る事出来たし、今回の外交に収穫はあったなぁ」

 

「はぁ……」

 

「お詫びいうのも何どすが、占いでもしまひょか?」

 

「占い?」

 

 そういえばラットの情報によると使節団の巫女の中に過去、現在、未来を見通す巫女がいるという話が合った。それについて聞いてみるか。

 

「うちどすえ」

 

「なぁ、使節団の巫女の中に……はっ?」

 

「せやから、うちが過去、現在、未来を見通す巫女どすえ」

 

 神楽は俺が質問する前に先んじて答えた。国王やシャーリーから聞いた可能性も0とは言い切れないが、二人は俺が使節団の中に例の巫女がいるという情報を持っている事を知らない。ラットだってこの情報は未確定と言っていたのだ。

 

「なんかうちに占うて欲しい事でもあるんどすか?」

 

「……俺が元の世界に帰る方法を知りたい。詳しい詮索は無しで頼む」

 

 それを聞いたシルヴィアが緊張のゴクリと喉を鳴らす。彼女だってここまでくればこうなることくらい想定していただろう。

 

「ちょい待っとってくださいね……」

 

 そう言った彼女は数秒眼を瞑る。次に眼を開けた瞬間、彼女の眼は淡く輝いてなんとも神秘的な光を放っているではないか。まるで自分の身体に神でも降ろしたかのようだ。

 

 そして告げられた。

 

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