IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第102話

 

 

 

キャノボの最中に来よったサイレントちゃんと糞鉄屑スクラップ人形共らぁとのドンパチから一週間と少し・・・最近の俺ぁ、周りから変な目で見られよーる。しかもヒソヒソヒソヒソ人の顔見て噂話をコソコソしょーる始末じゃ。

 

自分でもフツメン黒髪から白髪オッドアイに容姿がガラリと変わってしもうたんは、流石に情報量が多いと思う。

じゃけど・・・やっぱし聞こえるか聞こえんかの微妙な音量でコソコソ言われるんは、昔あったいじめを思い出して気が悪い。

加えてあの目、あの目じゃ。俺をまるで動物園の珍獣でも見る様な”好奇”の目で見て来やがる。四月初めにあったIS学園の入学式を思い出すでよ。

 

まぁ・・・でも、”無礼な豚(ダメバナ野郎)”とのわだかまりで周囲の依怙贔屓共から向けられとった”敵意”の眼よりはマシじゃろう。

其れに人間万事塞翁が馬云う事もあって悪い事ばかりじゃない。

 

一時はどうなる事かと思うとった味覚障害が完治した。

今じゃあガブガブ酒が呑めれる様になったし、御蔭で薬の量も減った。

相変わらずアル中が治らんのは仕方ねぇが、また命の水(ウィスキー)が飲めるようになったんはこの上ない幸いじゃ。

ラウラちゃんとも、あの事件からより一層の仲が深まったと思う。・・・まぁ、之に関しては俺の勝手な思い込みかもしれんけどな。

 

〈そんな事ないわ。あのカッコいい春樹の活躍にラウラはますますゾッコンよ!〉

 

・・・・・・・・そんな相変わらずのジェットコースター学生生活を送っている俺だけれども、勿論のこと悩みの種の一つや二つはある訳じゃ。

ラウラちゃんとの絆は深まった(と思う)けれど、其ん代わりにシャルロットやセシリアさんらぁがヨソヨソしくなった。簪さんに到っては俺をワザっと避けよーる始末じゃ。

 

まぁ解らん事でもない。

アリーナスタジアムの壁から観客席まで、バターをナイフで抉る様に焼き溶かしたあねーな力をまざまざと見てドン引きしない方が無理じゃろう。

・・・ありゃ? そしたら何で相変わらずラウラちゃんは俺に懐きょーるんじゃろうか?

 

〈”愛の力”ってヤツじゃない?〉

 

・・・・・他にも悩みの種はある。

最初に言うた変な目の続きで、あの事件で暴れ回ったドラゴン型ISの正体が俺である事を知っとるミーハー崩れな連中が頻繁に俺に声をかける様になった。

別に挨拶したり、話をするんは構わんんじゃけど・・・言葉を交わす最中にペタペタとボディタッチが多いんは頂けん。

まぁ悪い気はせんのんじゃけど、今まで非モテ男子が長かった俺からすりゃあどう反応すりゃあええか解らんよーになる。

其れに俺を慕ってくれとるラウラちゃんにも何か悪いし。

 

〈大丈夫よ。それに自分の彼氏が他の女にモテてるって自慢になるらしいし〉

 

「・・・・・はぁ・・・ッ」

 

そねーな俺の今最大の悩みの種云うんは、夏目の肩に乗っかったニャンコ先生の様にちょこんと俺の肩へ自分の顎を乗せとる白髪金眼ロリの”幻影”じゃ。

 

〈もう! だから違うって言ってるでしょ!! 私は”あの男”とは違うんだってば!!〉

 

そう言うて俺の背中をポコポコ叩く白髪金眼ロリ。

小さな拳が当たってる気はするが、全然痛うない。

 

〈私はあなたの鎧にして刃。清瀬 春樹の専用IS、NH―00型人型装着装甲騎の『琥珀』ちゃんよ!〉

 

人喰いハンニバル(ハンニバルカニバル)が居らんようになったか思うたら、今度は此れって・・・・・

あぁッ・・・なんて前途多難な人生じゃでよ、まったく。

 

〈あ、もう飲み過ぎだってば!〉

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

自らを春樹専用IS機体『琥珀』の化身と称する白髪金眼の少女。

彼女が現れたのは、キャノンボール・ファスト襲撃事件後にIS統合対策部の研究所で行われた検査終了後の廊下であった。

 

当初、春樹は目の前に現れた彼女の存在をハンニバル・レクターと同じ幻覚だと思っていたのだが・・・・・

 

「むッ。おい、琥珀! くっつき過ぎだぞ!!」

 

〈え~、別に良いじゃない。私は春樹の専用機で、この間やっと”表”に出れるようになったんだからね!〉

 

「しかしだな・・・ッ」

 

〈だったらあれよ、春樹の前に座ったらいいじゃない。そうしたら春樹に抱きしめられるし、春樹はラウラの頭をくんかくんかできるじゃない〉

 

「おお!!」

 

「『おお!!』じゃねぇよッ。くんかくんかとかどっから覚えて来るんだよ」

 

なんと彼女は春樹だけではなく、他の人間にも知覚することが出来たのである。

しかし、他の人間と言っても其れは特殊なハイパーセンサーと琥珀自身が認めた者しか見る事が出来ない。

ラウラは生体型ハイパーセンサーである越界の瞳(ヴォ―ダン・オージェ)に適応している為、人間体となった琥珀を認識することが出来た。

 

〈むふふ~、春樹の頭部体臭~♪〉

 

「春樹の体温が背中に伝わって・・・とても温かいぞ!」

 

「あぁ、そう・・・良かったの」

 

放課後の自室で二人の美少女に挟まれ、彼は半ば呆れたような表情でグラスへ注がれた七杯目の琥珀色を飲み干す。

寒くなる季節にピッタリな体の芯から温まる魔法の飲み物だ。好きな海外ドラマを見ながらは特に。

 

〈だから飲み過ぎだってば!〉

 

「別にエエじゃろうがな。ウィスキーは俺にとっては必要なガソリンじゃからな」

 

〈そのガソリンの入れ過ぎで身体が悪くなってしまうって言ってるのよ、私は! ラウラからも言ってやってよ!!〉

 

「そうだぞ、春樹! 琥珀の言うようにお前は―――――」

 

・・・とラウラが春樹に注意を促そうと振り返るのだが、其の薄紅色の可愛らしい唇を彼は「ちゅっ」と自らの唇で塞ぐ。

勿論、春樹の行為と唇に残ったウィスキーの残り香に驚くラウラだったが、次第に彼の行為を受け入れた。

 

〈・・・ちょっとぉ、私がいるんですけど~?〉

 

「ちゅ・・・ちゅぱ・・・邪魔すんなよ、琥珀ちゃん。今、私達エエ所なんじゃけん」

 

〈良い所ねぇ・・・随分とキスがお好きだ事。それ以上の事はしないくせに〉

 

「むぐ!? おい、琥珀ちゃん!」

 

「ッ、ぷはぁ・・・そ、それ以上って・・・なんだ、春樹ぃ?」

 

〈勿論、それはセッ―――――〉

 

「琥珀ちゃん、口を噤んでいなさい。何でもないからな、ラウラちゃん!」

 

大慌てで琥珀に釘を刺す春樹。

そんな彼の様子に彼女は〈肝心なところでヘタレね〉と呆れたような表情でなんとも随分と人間臭い溜息を吐く。

 

「・・・・・別に・・・」

 

「阿?」

 

「別に・・・私は構わないぞ。私はお前を・・・春樹を受け入れたい。私はお前との―――――」

 

「ラウラちゃん・・・ッ!」

 

蕩け切った灼眼と金眼の恍惚の表情で先走ろうとしたラウラの口を春樹は焦燥漂う人差し指で抑えた。

 

「ラウラちゃん、俺は君を大切にしたい・・・いや、こりゃあ唯の自分勝手じゃろうかな。俺は浮ついた気持ちで君を抱きとうないだけじゃ」

 

「・・・キスは良いのにか?」

 

「いや、キスは俺が・・・その・・・・・ッ、したいからで・・・」

 

「「・・・・・」」

 

互いに顔を真っ赤にする二人に琥珀は再び大きな溜息を吐き、〈人間って面倒くさいわね。生殖活動したいならすればいいのに〉と情緒もヘッタくれもない言葉を並べる。

此れに春樹は「喧しいッ!」と遂に声を荒らげるのに対し、彼女は〈はいはい〉と呆れた表情のまま待機状態である指輪へ身体を粒子化させて入り込む。

 

〈あ、そうそう。早く柾木に新武装の希望書と私の経過報告書を書いて出しなさいよ〉

 

 

 

 

 

 

「―――――なんて、まるで母ちゃんみたいな口調で云うんですよ!」

 

「あぁ、そうなの・・・大変だねぇ・・・」

 

後日、春樹は機体格納庫でIS学園を訪れた壬生に先日あった事を相談(ぐち)するのだが、上の空な壬生の方は春樹から渡された琥珀二次形態移行経過報告書と新武装企画書へ熱心に目を通す。特に前者を。

 

「あの・・・聞いてます、壬生さん? お宅が造り上げた琥珀ちゃんがえろうマセとるんですがね。つーか、いつの間に自立型AIなんて乗せたんですか?」

 

「はぁッ? AIなんて俺達は乗せてないぞ!」

 

「えぇッ、だったら何で琥珀ちゃんが人型になって出て来るんですか?」

 

そう言って春樹は他の作業員達からのメンテナンスを受ける琥珀を指さす。

其れに対し、彼女は彼に笑顔を見せて手を振る。

 

「知らないよッ! 琥珀が二次形態移行したのだって原因不明なのに・・・その琥珀が自意識に目覚めて、表に出て来るって・・・ハイパーセンサースコープで彼女を見なければ、今でも・・・いや、今も信じられないんだけどッ! 我らが刃がリア充している事だけは良くわかったよ!! 本当に君は技術者泣かせのパイロットだな!!」

 

「其りゃあ心外じゃわ、壬生さん! 俺ぁアル中じゃけど、マトモな方じゃあ!!」

 

『『『ッ、何処がだ?!!』』』

「えぇッ!!?」

 

春樹のマトモ発言に其の場にいた全員がツッコミを入れた。

まさか技術者全員からの総ツッコミを受けるとは思わなかった彼は思わず愕然とする。

 

〈まぁまぁ皆、そんなに春樹を責めないであげて〉

 

『『『姫様・・・ッ』』』

 

「えッ、ちょ・・・”姫”って何?! つーか皆、順応早いな!!」

 

ハイパーセンサースコープを付けた技術者全員が崇める様に琥珀へ羨望の視線を送る姿に再び愕然とする春樹。

もうツッコミが追い付かない。

 

「まぁ、琥珀姫の事は置いておいて・・・やっぱり新しい武装は中距離近接系が欲しい?」

 

「はい。単一能力の晴天極夜は必殺技としての威力は申し分ないですが、其れを出すまでの戦闘じゃあ武器が欲しいですね。MVS鉈とは違う他の武器が」

 

「それで君が提案するのが、”槍”かい?」

 

「はい。『槍で百姓三日鍛えれば、武者をも制す』云うぐらいに順応鍛練も早いですし、扱いやすい。攻撃距離も柄の長さに準じて長くなるし」

 

「ふうむ、確かに・・・射撃系統のリクエストはショットガンになっているけれど、アサルトライフルは?」

 

「考えましたけど、俺にゃあこっちが性に合いまさぁ。リボルバーとショットガンの併用が望ましいです」

 

「そうか、解った。なるべく『タッグマッチ』に間に合うようにするよ」

 

壬生の言った『タッグマッチ』とは、先の文化祭襲撃事件やキャノンボール・ファスト襲撃事件を踏まえて行われる事が決まった全学年合同のタッグマッチ戦である。

表向きは、各専用機持ちの為のレベルアップなのであるが・・・・・

 

「そう言えば、我らが刃は更識日本代表候補性とは旧知の仲だったよね?」

 

「はい、そうですけど・・・何か?」

 

「いや、此処だけの話・・・倉持技研の連中が何か企んでるそうなんだよ」

 

「阿ぁ、どういう事で?」

 

「先の事件での君の暴れっぷりが評価されてね。今度の次世代IS量産機体の作成がウチに任せられるかもしれないんだよ」

 

「おおッ、そりゃあ・・・スゲェけど、まだ俺だけでしょ。プロトタイプの琥珀ちゃんだけで、次のISを作ってないじゃないですか」

 

「だから異例なんだよ。プロトタイプしか作ってないチームが次の量産機体の増産を任せられるかもしれない。今年の初めぐらいに出来たばかりの連中に出し抜かれるのを倉持の連中が黙って見ている訳がない・・・って芹沢は言っているが、本当の所は解らない」

 

「チッ、ったく・・・大人の事情には振り回されたくありませんなぁ」

 

「誰のせいだと思ってるの?」と言いたげなジト目の壬生を余所に「ヤレヤレじゃわぁ」とため息を吐いて首を振る春樹。

 

「あッ・・・そう言えば、我らが刃よ。広報の件はどうなったんだい?」

 

「・・・・・」

 

壬生の切り出した内容に先程までヘラヘラしていた春樹の口が一文字に閉じられ、酷く不愛想な表情へと変わる。

彼が気分を悪くした『広報の件』とは、ある出版社の取材を春樹が受けるという事案であった。

先のキャノンボール・ファスト襲撃事件で活躍したドラゴン型ISパイロットとして春樹には数々の取材依頼が山の様に来ていたのだ。

IS技能優秀者は、時として国家公認のアイドル的な立ち位置でタレント活動することもある。組織の上層部としては此れを春樹に受けてもらいたいのだが、当の本人は顔出しNGを理由に断固として拒否していたのであった。

 

「なして俺が掌返し決め込んだ連中のご機嫌伺いせにゃあおえんのんですか? フザケるんじゃねぇでよ!」

 

「でも・・・俺達としても我らが刃の活躍を世間に伝えてもらいたいなぁ。だって、君はこんなにも頑張ってるんだぜ?」

 

「別に俺の頑張りを公表せんでもエエでしょうに。俺の頑張りは、壬生さんらぁや長谷川さんらぁが知ってるだけで十分ですよ」

 

「我らが刃・・・ッ」

 

「其れに・・・どーせ勝手に期待されて、勝手に失望されるんがオチじゃ。マスコミ云うんは持ち上げるだけ持ち上げて、落としますけんね」

 

「・・・良い話だったのに最後捻くれてるね。でも、副本部長の事だから我らが刃を酒で釣るもんだと思っていたんだけどなぁ」

 

「はっはっは!」と笑う壬生だったが、其の彼の言葉に『すんッ』と春樹が目を細めたる。

「・・・まさか?」と眉をひそめた壬生に春樹は遠くの方を見ながら「まさか・・・!」とオウム返しした。

 

「も~・・・君、未成年の学生なのに酒に釣られるなよ!」

 

「じゃって~・・・取材を受けたら後で美味うて高い酒を飲ましてくれるっていうから。勿論、顔出しはNGですぜ」

 

「えッ・・・だったら、どうやって取材を受けるの?」

 

当然の疑問符に春樹は「阿破破ノ破!」と笑ってこう言った。

「ベルギーでの一件で使うた仮面・・・まだ残っとりますよね?」・・・と、相変わらずの企み顔を浮かべたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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