IS/Drinker   作:rainバレルーk

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謹賀新年。
明けましておめでとうございます。
元日早々体調を崩した私目ですが、本年もよろしくお願いいたします。



第106話

 

 

 

キャノンボール・ファスト襲撃事件が発生した事により、この度行われる事となった専用機所持者だけによるタッグマッチ戦。

其の第一回戦の対戦表が発表された。

 

第一試合。

織斑 一夏・更識 簪ペア vs 篠ノ之 箒・更識 楯無ペア。

 

第二試合。

フォルテ・サファイア・ダリル・ケイシーペア vs セシリア・オルコット・凰 鈴音ペア

 

第三試合。

シャルロット・デュノア・ラウラ・ボーデヴィッヒペア vs 清瀬 春樹(単独)

 

「・・・解とったけどさぁ。やっぱし俺、一人なのね」

 

放課後の生徒会室。

春樹は渡された対戦表を見ながら、未だ二日酔いで痛む自身の後頭部を氷嚢で冷やす。

 

「それはそうよ。学園にいる専用機持ちは全部で十一人なの。割り算ぐらいはできるでしょう?」

 

「あ~はいはい。どうせ俺ぁ余りもんですよ」

 

ブウをたれる彼を余所に楯無は生徒会長席の机へ置かれた書類に目を通す。

其の彼女の姿に春樹はニヤニヤしながら「老眼鏡はいらんのか?」と茶々を入れ、「私はそこまで年上じゃないわよ!」と楯無はアッカンベーの舌を出す。

そんな二人のやり取りに「ふふふ」と微笑みながら虚は湯気が香る淹れたての紅茶と茶菓子を配膳した。

春樹は其れを待ってましたとばかりに茶菓子として出された色とりどりのマカロンへ噛り付き、何とも美味そうに紅茶をすする。

 

「・・・それで、何の用? 君の方からここへ出向いてくるなんて珍しいじゃない。もしかして、その対戦表の組み合わせへの文句を言いに態々?」

 

「阿ぁ? いや違ぇよ。別に対戦組み合わせに文句はないでよ」

 

「それ本当? 愛しのボーデヴィッヒさんとペアになれなかった事が残念で残念で仕方がないって顔してたけどぉ?」

 

ニヤニヤ揶揄う様な仕草と笑みで問いかけて来る楯無。

此れが一夏相手ならば、彼女好みの反応をしてくれるのだろうが・・・何分と相手は”あの”春樹である。

 

「ありゃぁ、バレてしもうたか。じゃけどラウラちゃんはシャルロットとも相性がエエけん、仕方ないわな。そー言うアンタも簪さんとペアが組めんと残念じゃったのぉ」

 

「・・・本当に可愛くない後輩よね、君って」

 

ジト目で睨む楯無に対し、春樹は「ッ破ン!」と鼻で嘲笑う。

 

「ペアの話で思い出したんじゃけど・・・なして、簪さんがあの鈍感屑豚野郎とペアを組む事になっとるんじゃ? 俺ぁ許可した覚えがないんじゃけど」

 

「相変わらず織斑君に対する罵詈雑言が凄まじいわね。それにペアを作るのにどうして君の許可がいるのよ? 一体誰目線よ?」

 

「”兄”目線じゃけどぉ?」

 

「簪ちゃんの上の子は、実姉の私しかいないわよ!」

 

食い気味に実姉宣言をする楯無にケケケと嘲笑う春樹。

普段は掌の上で人を転がす彼女が良いように揶揄われる姿に虚は思わず吊り上がる口端を手で抑えた。

 

「しかし、なしてよ? なして簪さんがあん豚とペアを組んどるんじゃ? もしかして・・・またアンタが裏で糸を引いとるんか?」

 

「正解!・・・と言いたいところだけど、今回は違うの」

 

「・・・ホントかぁ?」と疑いの視線を向ける春樹に「本当なの!」と念を押す楯無。

話によれば楯無は当初、一夏と簪がペアになる様に画策していたらしい。

 

専用機持ち達の力の差は先のキャノンボール・ファスト襲撃事件でより一層明確なものとなった。

特に一体で専用機持ち達数人を相手取って互角以上の戦いを繰り広げたゴーレムⅡ小隊を容易に殲滅してしまった春樹の扱いは大きな悩みの種だ。其れもあってか、彼は此度のタッグマッチ戦においてソロで戦わされる羽目となる。

あとは相性適性の良いメンバーでペアを作ってゆけば良いのだが、またしても問題が出て来た。

其の問題とは、やはりもう一人の男性IS適正者である『一夏のペアはどうするか』である。

此れに対し、楯無は残った専用機持ち達の能力を鑑みて一夏のペアには簪が適任なのではないかと言う結果に到った。至ったのだが・・・?

 

「簪さんの打鉄弐式ちゃんは、野郎の専用機を作る為に制作放棄されたんじゃろうが。御蔭で簪ちゃんはたった一人で弐式ちゃんを作る羽目になったんじゃぞ。其れなんによりにもよって彼女にあん豚を宛がうとか・・・・・阿呆じゃねぇんか?」

 

「だから私もダメもとで織斑君の方から簪ちゃんを誘うようにお願いしたのよ。そうしたら・・・・・」

 

「予想に反して簪さんは了承したと・・・なんか腑に落ちんのぉ」

 

納得のいっていない春樹は眉をひそめて首を捻る。

其の時、彼の頭にいつか壬生が言っていた「倉持技研が何か企んでいる」と言う事を思い出す。

 

「(何ぞ、”裏”がありそうじゃのぉ)」

 

「・・・ちょっと、何してるの?」

 

春樹が「阿?」と疑問符を浮かべれば、頬杖をついた楯無が「それよ、それッ」と彼の手元を指し示す。

見れば、中身が半分減ったティーカップへスキットルの中のウィスキーを注いでいるではありませんか。

 

「君、二日酔いだって言ってなかったかしら?」

 

「言うたよ。御蔭で勉学に身が入らんでのぉ。其れなのにあのブリュンヒルデ思いっくそ頭を出席簿で叩きよってからに・・・其んせいで外身も中身も痛むわぁ」

 

「自業自得じゃない・・・それなのにまだ飲むの?」

 

「知らんのか? 二日酔いには迎え酒が一番良ー効くんじゃ。其れに此れでアスピリンを飲むと更に良く効く」

 

そう言いながらポケットから取り出した鎮痛剤を紅茶割ウィスキーで一気に煽る。

薬の服用時、アルコールで薬物を服用すると重篤な副作用を及ぼす為に良識のある人間は控えた方が良い。

 

「はぁ~、まったく君って人は・・・・・それで?」

 

「阿? 何なんな?」

 

「「なんなんな?」じゃなくて! 今日は何しに生徒会室へ来たのって聞いてるの!」

 

「何って・・・布仏先輩の美味しい紅茶を飲みに?」

 

「ここはカフェじゃないのッ。あと虚ちゃん、嬉しそうにしない!」

 

あっけらかんと飄々した面持ちでケラケラ笑う春樹に調子を狂わされる楯無だったが、「そうじゃった、そうじゃった」と何を話すか思い出した彼の口から紡がれる言葉を聞いて目の形が変わる。

其の話の内容とは・・・・・

 

「タッグマッチ戦・・・また襲われるんじゃね?」

 

「・・・何ですって?」

 

キャノンボール・ファストでの襲撃事件に引き続き、今度の専用機タッグマッチ戦も襲撃されるのではないかと云う予想であった。

 

「・・・どうしてそう思うのかしら?」

 

「いや、そりゃあそうじゃろうが。イベントがある度に外部からの襲撃が立て続けに巻き起こってんで? 次のタッグマッチ戦でもあろうに」

 

「一応、襲撃がある事を仮定して教師部隊を―――――」

 

「来るよ、絶対来るって。あとさぁ襲撃を想定してもよぉ、事が起こってから教師部隊が来るの遅過ぎね? ゴーレム事件でも、VTS事件でも、キャノンボール・ファスト襲撃事件でも、部隊が来る前に俺らぁが対処したんじゃで。つーかそもそも幾ら経験が生徒よりもある言うても教師部隊が扱ってる機体って量産型の第二世代型じゃがん。あんまり言いたかねぇが、気休めにもならんぞ」

 

「中々声を大にして言えない事をズバッと言うのね、清瀬君。でも、ある人が言っていたわ。「機体の性能の違いが、戦力の決定的差ではない」ってね」

 

「其れを言うてもエエんは『青い瞳のキャスバル』じゃろうが」

 

「何言ってるの清瀬君? これは『赤い彗星』の名言をもじったのよ、知らないの?」

 

「知っとるわ。つーか、其の二人は同一人物じゃし」

 

「えッ、そうなの!? でも・・・簪ちゃんが勧めてくれたアニメにキャスバルなんてキャラ居たかしら?」

 

「ヲタへの道はまだまだじゃな。ってか、簪さんガンダムのファースト勧めたんかい・・・まぁええわ、話戻すぞ。取り合えず教師部隊はアテにならん。じゃけん、事が起こったら部隊には観客の避難に回した方がエエでよ。下手に出て来られると邪魔じゃ」

 

「邪魔って・・・もしかして、また”アイツら”が襲撃をかけると思ってるの?」

 

楯無が”アイツら”と危惧したのは、文化祭襲撃事件やキャノンボール・ファスト襲撃事件を引き起こした過激派組織『ファントム・タスク』が再び襲撃をかけるのではないかという事だ。

 

「『二度あることは三度ある』言うしな。アンタもキャノボの一件で取り逃がしとるし」

 

「ッ・・・嫌な事を思い出させてくれるわね! 本当に可愛くない後輩!!」

 

「阿破破破、ザマぁ」

 

「こ・・・この・・・ッ!」

 

春樹の言葉に楯無はギリッと歯噛みする。

キャノンボール・ファスト襲撃事件において、彼女は眼前で組織の幹部であるスコール・ミューゼルを取り逃がしていたからだ。

 

「ほいじゃけど・・・問題はゴーレムの方じゃろうなぁ」

 

「ゴーレムの方? ゴーレムもヤツらの仕業なんじゃないの?」

 

「さあな、どうじゃったっけなぁ・・・?」

 

「ちょっと含みのある言いしないの!」とプリプリする彼女を余所に春樹は”ある人物”を思い出しながら手の感触を確かめる。

先のキャノンボール・ファスト襲撃事件で現れたゴーレムとゴーレム事件で出現した機体の殴り心地がかなり近かった。

機体の解析結果は公表されていないが、彼の冴えわたる勘はキャノンボール・ファスト襲撃事件の機体はゴーレム事件の機体の後継機だと告げる。そして、其の機体の制作者があのウサ耳カチューシャの・・・・・

 

「俺ぁ”兎”は”黒兎”だけで十分じゃ。俺の山勘はこー言う時だけ当たりよるけんな。”不思議の国のアリス”には引っ込んどいて貰いたいのぉ・・・」

 

呟く様に、祈る様な面持ちで春樹は其れだけ言ってティーカップの中身を全て飲み干す。

 

「其れじゃあ、俺ぁ此処で。布仏先輩、紅茶と氷嚢をありがとうございました」

 

「お粗末様です」

 

「えッ、もう帰っちゃうの!?」

 

「阿、何じゃあ? もうちょっと居って欲しかったんか? かまってちゃんじゃのぉ」

 

「なッ・・・なに言ってるのかしら! 自意識過剰なんじゃないのッ?」

 

「動揺しましたよ、布仏先輩?」

「はい。怪しいですね、清瀬君?」

 

「ちょっと二人とも!!」

 

いつの間にか仲良さそうに自分を揶揄う二人の様子に楯無はプクーと頬を膨らませる。

其の楯無の反応を「阿破破破ッ、蛸じゃ蛸じゃ」と笑いつつ生徒会室を後にしていく春樹だったのだが―――――

 

「あ・・・きよせん」

 

「ありゃあ? よぉ、布仏さん」

 

―――部屋を出てすぐにクラスメイトである本音とばったり出会った。

 

「これから生徒会かい? 布仏さんって意外と真面目じゃのぉ」

 

「意外って、褒めてるの~?」

 

「勿論じゃっちゃ。阿破破破ッ!」

 

他愛もない世間話を相変わらずの奇天烈な声で笑った後、「其んじゃあ、また明日な」と手を振って其の場を跡にしようとした彼の袖を本音はちょっぴり摘まんだ。

 

「ん? どしたんなら布仏さん?」

 

「きよせん・・・この後って、ヒマ?」

 

「・・・・・・・・阿ッ?」

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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