あの屑野郎と恋する乙女の凰さんと事件から、一週間と数日・・・ついに決戦の日が訪れた。
「フッ・・・頑張るんじゃで、凰さん」
「なに他人事みたいに言ってるんですの? 行きますわよ、春樹さん」
「え~~~ッ!」
「『え~~~ッ!』じゃありません。さぁ!」
ISを部分展開した右腕で俺の首根っこを引っ張るセシリアさん。
ドナドナでも歌ってやろうか。
因みにじゃが、クラス対抗戦はリーグ形式で行われるそうじゃ。
お互いの実力を肌で感じる事じゃそうなんじゃが・・・皆、優勝賞品のデザートパスしか目に入っとらんじゃろう。
それにしても・・・。
クラス対抗戦・第一試合『織斑 一夏 vs 凰 鈴音』
初戦の第一試合の相手が二組て・・・展開が早いのぉ。いずれ戦うにしても、ちぃとばっかし急過ぎる展開と違うか?
つーか、俺アイツの応援なんてしとーもない。どっちかと言うと凰さんを応援したい。
応援席に行っても、皆から白い目で見られるし・・・部屋でスパロボやってたい。
―――――――
観客席から声援が巻き起こる中。第一試合、一夏と鈴から始まるの戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
先ずはアリーナへと赴く二人。そして、まずは口上戦からなのか。鈴がオープン・チャンネルを開き、一夏に話しかける。
「一夏、今謝るのなら少しくらい痛めつけるレベルを下げてあげても良いのよ?」
「そんなのいらねぇよ、全力で来い!!」
そう啖呵を切り、白式の専用武装である雪片弐型を構えた一夏。
「一応言っておくけどね、ISの絶対防御だって完璧じゃない。シールドエネルギーを突破する攻撃力があれば、本体にダメージを貫通される事は出来る。なにより命は守られても痛みは感じるんだからね」
そして、鈴も戦闘態勢に入る。
睨み合う二人。
何時の間にか、あんなに騒がしかった観客席は静まり返り、固唾を飲む音だけが聞こえる。
『それでは両者・・・試合を開始してください』
『『ッ!!』』
ズアァッと試合開始の号令と共に同時に両者が動き出す。
『ウォオオオッ!!』
まずは一夏が一直線に鈴の元へと突撃する。
しかし、鈴の専用機『甲龍』の浮遊部位の装甲が一部スライド。その進路の途中で何かに当たったかのように一夏が大きく仰け反って止まり、大型スクリーンに映された白式のシールドエネルギーか減少した。
「あれが『衝撃砲』・・・まさか、これ程に厄介なものとは思いませんでしたわ。近接戦闘しか出来ない一夏さんでは、苦戦を強いられますわね」
「しょうげきほー・・・なにそれ~?」
応援席で試合を観覧するセシリアは冷静に分析を行う隣で、本音が疑問符を頭に浮かべる。
「確か・・・空間に圧力を掛けて砲身を形成、その際の余剰で生じる衝撃を砲弾化して撃ち出す第三世代のIS兵器・・・じゃったっけ?」
「おお~!?」
「春樹さん・・・なにか変なモノでも召し上がりましたか?」
「なんじゃい二人とも、その目は? 俺だって勉強ぐらいしとらぁ!」
信じられないものでも見るかのような視線の二人に春樹が文句を言っていると、鈴を真下から攻撃を仕掛けようとする一夏がまた吹き飛ぶ。
このまま一方的な試合展開が行われるかと誰もが思う中・・・
「・・・ッケ、やはり主人公なだけはあるみたいじゃのォ」
「え?」
「見てみぃ・・・徐々にじゃが、野郎は衝撃砲のクセや仕草を無意識に察知して利用していきょーらぁ」
春樹の言う通り・・・徐々にではあるが、一夏は鈴から繰り出される衝撃砲を把握していっていた。
「フンッ、流石は一夏だ。私との特訓が役に立っているな」
「はてさて・・・そう巧くいくかのぉ?」
「なんだと?」
何故かドヤ顔で鼻息を漏らす箒の隣で指摘する春樹。
ジロリと睨む彼女を余所に「見てみろ」と言わんばかりに春樹は指を差す。
『やるじゃない! どんどん行くわよ!』
鈴の荒い声と共に今度は一夏の僅か右の地面がハンマーで叩き付けられたように窪む。
衝撃砲は連射速度と弾の大きさもコントロール出来るようで、小さな窪みを地面を作っては一夏を追い込んでいく。
「なにをやっている一夏ッ! お前の力はそんなものか?!!」
『ッく! ウォオオオオオ!!』
観客席からの箒の応援に答えるように雪片を構え直す一夏。
・・・その時だった。
ズドォォォォオオンッ!!
「おおッ!!?」
「い、一体何事ですの?!!」
耳を劈くような爆音と衝撃と共に空から光の柱がステージ中央に降り、アリーナのシールドを突き破った。
『な、なんだッ?』
『あ・・・あれは・・・!!』
土煙が上がっている中心には何かがいるらしく、近くにいた一夏と鈴は視線を外さない。
その中心に佇んでいたのは、全身装甲に身を固めたISだった。
『試合中止! 織斑、凰はただちに退避しろ!!』
警報が鳴り響く管制室から、千冬の声が通信を通して聞こえて来る。
「なんだ!? 一体何が起こってるんだ!?」
「一夏、試合は中止よ! すぐピットへ戻って!」
いち早く状況を飲み込んだ鈴は一夏に声をかける。
だが、白式からロックオンアラートがガンガン鳴り響いた。
「俺がアイツにロックされているのか?」
「一夏、早く!!」
「鈴はどうするんだよ?!」
「私が時間の稼ぐから、その間に逃げなさい!」
「逃げるって・・・女を置いてそんな事出来るかよッ!」
「バカじゃないの! アンタの方が弱いんだからしょうがないでしょッ!!」
「なにを!!」
『喧嘩しないでください二人とも! 今すぐ脱出してください! すぐに先生たちのISが駆けつけます!!』
こんな状況にも関わらず言い争う二人に管制室から山田教諭逃げるように指示を送る。
しかし、それを素直に聞く程、一夏は素直な性格ではない。
「いや、みんなが逃げるまで食い止めないと!!」
『そ、それはそうですけど・・・でも、危険です!!』
山田教諭が一夏の言葉に否を唱えた次の瞬間、正体不明機が腕を突き出し、そこから出た光の帯で一夏と鈴を貫こうとするも何とか回避に成功。
だが、その光は再びアリーナのシールドを破って空へと消えた。ISに使われているものよりも堅牢なシールドがだ。
『『『キャぁあアアア―――ッ!!?』』』
阿鼻叫喚の大混乱の坩堝となる観客席。
「待ってる場合じゃないッ、行くぞ鈴ッ!!」
「ああッもう! 知らないわよ!!」
痺れを切らした一夏が突っ込み斬りかかり、鈴がそれを衝撃砲で援護する形となった。
―――
「あ、開かない!」
「何でッ、何でよ!?」
一方で正体不明機の攻撃に大混乱となった生徒達は出口へと詰め寄る。
だが、開いていた扉は何故か閉ざされていて一人も逃れられない。叩けど叫べど、扉は動く気配すらない。かなりまずい状況だ。
そんな中・・・
「あ~、参ったねこりゃあ。正にどん詰まりってやつじゃのぉ」
「なにを他人事のように言ってますの?!!」
扉に固まる生徒の群れを冷静に見る男が一人・・・春樹だ。
そんな彼にセシリアがツッコミを入れる。
「いやだって、皆が五月蠅うて・・・逆に冷静になったっていうか」
「ふざけないでくださいまし!!」
「わかっとるって、だからそねーに怒るなや。・・・でも、どーするんよこの状況?」
「そ・・・それはッ・・・取りあえず、管制室にいる織斑先生に連絡をとって避難指示を!」
「通信がジャミングされとるし、待ってる間に圧死者が出そうじゃのォ。・・・しゃーない。セシリアさんや、こういう時はこーいうんが早いでよ」
「えッ・・・?」
春樹はなんとも自然に自分の持っているIS武装であるライフルを取り出し、天井へと銃口を向けた。
ズドンッ
『『『ッ!!?』』』
「は~い皆さん、ご注目~! 今から扉開けるんで・・・そこ退けや」
『『『は、はい!!』』』
ズダダダダダッと開いた射線上にIS専用ライフル弾を連射する春樹。
銃口から放たれた鉛玉は、重くそして固く閉ざされた冷たい扉を木端微塵に粉砕した。
「はい。それじゃあ皆、慌てないで逃げる様に。セシリアさん、俺は向こうの扉壊してくるから、避難誘導頼まぁ」
「は・・・はいッ!」
そうして、呆気に取られる生徒達を尻目にライフルを担いだ春樹は他の塞がれた扉へと急ぐ。
されど、彼の腕は赤く少し腫れていた。
「・・・ッ!!(痛ェエエッ! 生身でIS用のライフルなんて撃つもんじゃねぇな。じゃけど、ISを展開したらあの侵入者が襲ってきそうじゃしのぉ。ガンダールヴ様様じゃあ)」
やせ我慢をしながらも、その後次々と塞がれた扉を破壊する春樹。
彼の腕は更に赤みを帯び、腫れていく。
「きよせ~ん!!」
そんな彼の後ろから聞こえて来るこんな状況には似合わないホワホワした声。
「あ”あッ、 なにしょーるんじゃ布仏さん!? 君、逃げたんと違うんか?!」
「それよりも大変なんだよ~! しののんが皆とは逆方向に走って行っちゃったんだよ~ッ!」
「はぁあッ!!? あんの阿呆ッ・・・どこじゃ、どこに走っていきよった?!!」
「あっちだよ~!」
「わかった! 布仏さんも早う逃げろ、ええな!!」
そう言って、指差された方向に駆けて行く春樹。
だが、彼の腕はもう限界に近づいていた。これ以上、生身の状態でライフル射撃を行えば、確実に脱臼か筋肉断裂は避けられない。
其れでも彼は駆けて行く。それが今この場にいる自分に出来る事と信じて。
・・・・・・・・・・はい。という訳でリハビリ投稿でした。