IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第114話

 

 

 

「はぁッ・・・はぁッ・・・!!」

 

選手の控室となった出撃ピットで、対複合装甲用薙刀を手にした簪は大きく肩を上下させて荒々しく息を吐く。

そんな彼女の足元には、脊髄反射の様に未だピクピク体を震わせる残骸と成り果てた鋼の乙女が転がっていた。

 

ゴーレムⅢの襲撃直後、一体のゴーレムが彼女のいるピットへ強襲をかけた。

余りの突然の出来事へ対し、簪は咄嗟に反応する事が出来ずに萬力の力で首を掴まれてしまう。

しかし、ギョロギョロと無機質な眼で自分を見つめるゴーレムに彼女は臆する事が無かった。

簪は腕への部分展開と共に渾身の力を込めてグサリッとゴーレムの胸を貫く。そして、其のまま彼女は一心不乱に何度も何度もゴーレムの身体に刃を突き立て・・・正気を取り戻した頃には手はゴーレムの体液で濡れていた。

 

《ッ・・・・・―――・・・!》

 

それでも尚、自分に対して手を伸ばそうとするゴーレムへ簪は「・・・ごめんね」と云った呟きと共に背中へ展開した荷電粒子砲『春雷』で引導を渡す。

 

「さ・・・更識、さん・・・?」

 

一足遅く現場へと駆けつけた一夏が彼女へ動揺の声と戸惑いの視線を向けるのも束の間。レーダーに新たな機影が映り、ロックオンアラートがけたたましく鳴り響いた。

 

「・・・行くよ、織斑君」

 

「は、はい!」

 

簪から放たれる謎の気迫に圧倒されつつ、二人は専用機に身を包んで更なる激闘が待っているであろうアリーナ場内へシールドを斬り破って飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

「撃てぇ―――ッ!!」

 

アリーナ場内は敵味方入り乱れての闘いが繰り広げられていた。

アリーナシールドを突き破って侵入して来たゴーレムⅢ、其の数ざっと二十機。

其れを中央に周囲の観客席からは、何処かの飲兵衛が予め生徒会の名を行使して配置して置いた戦闘教員部隊と私設部隊であるワルキューレ隊が急拵えの防護壁の間から発砲する。

されど相手は第三世代型クラスの機体。彼女らが駆る第二世代型量産機の通常武装では倒すどころか、機体表面に傷を付ける事も出来ない。

 

《ッ!?》

 

だが、容易に此の包囲網を突破できると予測していた鋼の乙女達は想定外の足止めを喰らっていた。

此の理由を述べるのであれば、IS学園側勢力の使う武装弾頭が特殊であった事が挙げられる。

 

「アリーナ北側の氷結弾奏が尽きそうだぞ!」

「西側もです!」

「急いで持ってけ!! あのアル中野郎と専用機持ち共が来るまで持ちこたえろッ!」

 

特殊弾頭『十一式氷結特殊炸裂榴弾・改』、通称『氷結弾』。

『銀の福音事件』時に戦果を挙げた為に今回の襲撃事件を予期したウワバミによって外部から運ばれて来た。

けれども、まさか此れを持って来た自分達が補給部隊の役割を担う事になるとはIS統合対策部の面々は思いもよらなっただろうが。

しかし、其の御蔭で襲撃者達の足止めをスムーズに行う事が出来。加えて、氷結弾と通常弾のコンボでゴーレムⅢの武装を破壊する事に成功していた。

 

「テメーらもいつまでも震えてないで手伝えや、ボケェッ!!」

 

「ひぃッ!?」

「クソッ、こんな事になるなら篝火主任について行けばよかった!」

 

前線補給部隊の鬼軍曹宜しく、突然の襲撃に慌てふためく倉持技研からのバックアップチームに渇を入れる芹沢。

そんな彼の「行け行け行け行け行け!」と荒々しい声が響く中で防衛勢力に弾薬補給が行われているのであるが・・・・・

 

「ヤバいなッ・・・もう無いぞ。売り切れ御免だ」

 

「なに、冷静な事を言ってるんですか壬生室長!!」

 

あれ程持って来た筈の弾薬が先程の補給で綺麗サッパリ無くなってしまった。

其れも其の筈、行使する弾薬数と襲って来るゴーレムⅢの数が釣り合わないのである。

一応は万事を備えて出来るだけ多くの氷結弾を持って来た筈なのだが、此の状況は想定外であった。

 

「さっき北と西に持って行ったので最後です。もう逆さになっても鼻血も出ません!!」

「どうしますッ? 補給に向かわせた連中が帰投しだい俺達だけでも奥に退却しますか? 倉持技研さん達も青い顔して逃げたそうですし」

「馬鹿言え。俺は少年を信じて此処に来たんだ。こうなりゃ、一蓮托生よ!」

「あ~ぁ、始まってしまいましたよ。室長の悪い癖がッ」

「なら、お前だけでも逃げたらどうだ?」

「冗談言わないでください。『踊る阿呆に見る阿呆』です、私も残る!」

 

「そうかそうか、この馬鹿どもめ! はっはっはっはっは!」・・・と口端を吊り上げ、此の異常な状況下を楽しんでいるかの様にケラケラ笑い声を響かせるIS統合対策部の壬生達を見て、倉持技研の面々は信じられないものでも見るかの様に顔を青くする。

 

ドォオオッン!!

『『『!!?』』』

 

調度其の時、またもや地を揺らす轟音が戦場へ響き渡る。

ゴーレムⅢ共の増援かと防衛勢力に緊張が奔る中、今まで泣きそうな顔をしていた倉持技研の一人がニヤリと口を三日月に歪めた。

 

「織斑選手だ!! あと、更識選手も!」

「やった! これで勝てるぞ!!」

 

アリーナ場内へ飛び出して来た一夏と簪に借りて来た猫状態だった面々が万歳三唱で騒ぎ立てる。

彼等には二人が自分達を救いに来てくれた騎士に見えたのだろうか。何処か鼻につく満足げな表情を自分達を足蹴にしていた芹沢たちへ向けた。

加えて、反対側のピットからも紅と水色の二機のISが飛び出してくる。紅椿を駆る箒とミステリアス・レイディを纏う楯無だ。

其の双方の背後には、防衛部隊の攻撃に耐えたゴーレムⅢが猛追を仕掛ける。

 

「・・・解き放てッ『山嵐』・・・!」

 

しかし、そんな鋼の乙女達に向けて、打鉄弐式へ搭載された高性能独立型誘導八連装ミサイル『山嵐』から一斉にミサイルが前後に飛び出す。

其のミサイル達は双方を追撃するゴーレムへと直撃。氷結弾の効能である凍結状態も相俟って、其の体躯を砂糖菓子の様にバラバラに砕いた。

 

「流石ね、簪ちゃん。見ない間に腕を上げて・・・お姉ちゃん、嬉しいわ!」

 

「えへへ・・・ッ」

 

「楯無さん、簪。団欒の時間は後にしてくれ」

 

箒の云う通り、アリーナ中央に集まった新参者の四人へゴーレムⅢ達の熱い視線が注がれる。

 

「皆・・・気をつけるのよ。この数相手にすべてを対応できるとは思えないから」

 

「なら、ここは一番適性の高いペアで動くべきだな」

 

「むぅ。せっかくお姉ちゃんたちを倒す作戦作って来たのに・・・残念」

 

「言ってる場合かよ。皆っ、来るぞ!!」

 

『『『《ッ!!》』』』

 

四人を囲んでいたゴーレムⅢ達が功を競う様に襲い掛かって来た。

其れを合図に四人は二手に別れて刃を振り上げる。

 

「うおぉおおッ!!」

 

ガギンッ!と歪な甲高い音と共にゴーレムのブレードを受け止めた一夏は単一能力である零落白夜を発動させ、其のまま一気に押し斬ろうと力を籠める。

 

《ッ―――!》

 

しかして斬撃の瞬間。周囲を浮遊していた可変シールドが身代わりとなってゴーレムは難を逃れたではないか。

そして、ゴーレムはひらりひらりと風を舞う花弁の様に駆動したかと思えば、超高密度圧縮熱線を放たんと彼に左腕砲手を差し向ける。

・・・けれども此れが一夏の狙いであった。

 

「もらったぁああッ!!」

 

《ッ!!?》

 

零落白夜で張り倒したエネルギーシールドの間を縫い、彼はゴーレムの顔の顔へ第二形態左腕部多用途武装である『雪羅』を突き立てて引き金を絞った。

ドグォッンと云った爆発音で鋼の体躯が大きく仰け反るや否や、ひゅーっと気の抜けた音と共にゴーレムは地面へと其の身を墜とす。

「やった!」と思わず掌を握っては緩める一夏であったが、其の背後から右腕ブレードを振り上げたゴーレムが迫る。

 

「ッ、せやぁあああああッ!!」

 

《!!?》

 

そうはさせまいと箒は両肩の展開装甲をクロスボウ状に変形させたブラスターライフル『穿千』を発現させ、ゴーレムを圧縮された二本のエネルギービームで後方彼方へ吹き飛ばした。

 

「一夏ッ、この程度で浮かれるな!」

 

「わ、悪い。ありがとうな、箒!」

 

「礼なら後にしろ! 今はとにかく攻撃の手を休めない事だ!!」

 

早々に会話を切り上げ、二人は敵を一掃せんとゴーレムの群れの中へと飛び込む。

しかして武装に元から備わっているエネルギーを使う楯無や簪とは違って、箒は兎も角としても一夏はエネルギーの消費速度が他の機体と比べて凄まじい事になっている。

されど、其の事を誰よりも良く知っているのも一夏であった。

成功率は未だ低いままであるが、彼は箒の紅椿が持っているエネルギー回復能力『絢爛舞踏』を頼りにするしかないのが現状である。

 

《―――ッ!》

《!!》

 

其れを知ってか知らずか。ゴーレムⅢ達は単独で動く事を止め、連携した動きで二人を追撃する。

 

《ッ―――――!!》

 

「ぐッ! 小癪な!!」

 

先程、穿千の攻撃でアリーナ壁に叩き付けられたゴーレムが特にだ。

鋼の乙女は瞬時加速で箒に迫るや否や、其のまま一夏との別離を謀るかの様に彼女を後方へと追いやった。

 

「箒! こんのぉお!!」

 

《―――!》

 

箒を心配し、追いかけようとする一夏の前へゴーレムが並び立つ。

無人機でありながら何ともいやらしい戦い方をするものだ。

 

 

 

 

 

 

「え―――いッ!」

 

「せやぁあああああ!!」

 

一方の簪と楯無も一夏達と同じ様に複数のゴーレムを相手に戦いを繰り広げていた。

 

「ッ、お姉ちゃん!」

「任せて、簪ちゃん!」

 

《!?》

 

ゴーレム達からの射撃や斬撃を簪は打鉄弐式のシールドパッケージ『不動岩山』で受け止めて態勢を崩すや否や、楯無が其れを利用して『クリア・パッション』や『蒼流旋』で機体を後方彼方へ吹き飛ばす。

そんな即席のコンビでありながらも姉妹ならではの抜群のコンビネーションを取る二人にゴーレムⅢ達は手を焼いた。

しかも・・・

 

「撃て撃て撃てッ!」

「生徒会長や織斑君達を助けるのよ!!」

 

周囲の観客席からは、支援攻撃をする教師部隊とワルキューレ隊が居る為、実に煩わしい。

加えて彼女らが使っている特殊氷結弾頭は機体を凍らせて動きを鈍くするだけでなく、凍結させた部分を脆くする効能を持っていた。実にウザい。

 

《!!》

 

「・・・え?」

 

其処でゴーレム達はまず此の煩わしい支援部隊から叩き潰す事にしたのである。

ターゲットを簪と楯無の二人から四方を囲む防衛部隊へ変え、左腕砲手の砲口を向けた次の瞬間。オレンジ色の高圧縮熱線による一斉斉射が行われた。

 

『『『きゃぁあああああ!!?』』』

 

「ッ・・・みんな!!」

 

放たれた熱線は電子レンジで熱せられたチーズの様にドロドロに溶かされた後、火鉢で焼いた餅が膨らむ様にズッドォオ―――ッン!!と大爆発を引き起こす。

其の余りの衝撃に思わず簪の注意が逸れる。

 

《ッ―――!!》

 

其れを高性能レーダーを有すゴーレムが見逃す筈がない。

簪の動揺に気付いた一体のゴーレムが氷結弾で凍り付いた左腕を熱線の高熱で素早く融かすと凄腕のスナイパーの如き精密射撃をぶっ放した。

 

「ッ、ぐぅう・・・!?」

 

放たれた熱線は、今まで受け応えた来た射撃とは違う鎧の隙間を縫う様にシールドパッケージの間を縫って本体へと到達。

華奢な身体からは聞こえてはならない生々しい音が聞こえ、後方へと吹き飛ばされる簪。

 

「簪ちゃん!!」

 

()()()()()()

 

自身の溺愛する妹が撃墜された事に注意が逸れた楯無へ二体のゴーレムが襲い掛かる。

普段の彼女ならば、この様な攻撃など屁とも思わないのだが、簪の負傷に動揺を奔らせた為に対応が遅れた。

 

『『『《!!》』』』

 

「くぅううッ・・・!!」

 

ゴーレム二体から次々繰り出される射撃と斬撃のコンビネーションに最初は持ち堪えたものの、足し算の要領で周囲の機体が二体のゴーレムへ加勢。

其のあまりの猛攻に耐え兼ねて、遂に後方へと蹴り飛ばされてしまった。

 

「会長!!」

 

楯無と簪が劣勢を強いられている姿を目の当たりにした一夏はすぐさま助けに向かおうとするのだが、其の彼の前にわらわらとゴーレムⅢ共が集う。

 

「くそッ・・・そこを退けぇええッ!!」

 

喚き散らす様に雪片を振るうが、徒に白式のエネルギーを減らすばかりで徐々に徐々に彼は窮地へ追い詰められる。

エネルギー補給の為に箒と合流したいが、其の彼女も四方をゴーレムⅢに囲まれて身動きが取れない状態となっていた。

 

()()()()()()()()()()

 

「ぐふァあッ!!?」

 

其の内に一夏はゴーレム達から集団リンチの如く殴られ蹴られていき、最後は斬撃を雪片と雪羅で受け止めた衝撃によってアリーナ壁面へとぶつけられた。

 

「はぁッ・・・はぁッ・・・だ、大丈夫、織斑君?」

 

「あ・・・当たり前ですッ、まだ俺は―――――」

 

調度隣で荒い息を漏らす楯無の返答を紡ぐ前に漸う立とうとする一夏にゴーレムⅢ達から放り投げられた箒が衝突し、「グえッ!?」と潰れた蛙の様な断末魔を短く上げる。

 

「す、すまん! 大丈夫か、一夏?!!」

 

「だ、大丈夫・・・だ、箒。お、お前こそ大丈夫か?」

 

「あ、あぁ!」と肯定の言葉を聞いて、一夏は再び立ち上がるとゴーレムⅢ達を睨みながら掠れた大声でこう叫んだ。

 

「どうした、ゴーレム共?! 俺はここだぞ、さぁ来てみろ!!」

 

彼は一歩ずつ前へ前へと歩むと後ろの三人を守る様に雪片を構える一夏。

 

「そう・・・織斑君の言う通り・・・・・まだ私達は・・・負けて、ない!」

 

其の雄たけびに呼応する様に並び立つゴーレム共に刃を向けたのは、意外にも簪であった。

未だダメージが残っているのか、震える手で掴んだ薙刀の切先を高々く掲げる。

 

「まだ・・・まだ私達は戦える! 本当の”覚悟”は・・・ここからッ!」

 

「簪・・・!」

 

「フッ、フフフ・・・アハハハッ!」

 

簪の咆哮に一夏と箒が呆気にとられる隣で楯無が実に愉快そうに朗らかな笑い声をアリーナ場内へ響かせた。

 

「本当・・・本当に成長したわね、簪ちゃん! さぁ、来てみなさい!! 本気になった私達は手強いわよ、ゴーレムさん達!!」

 

『『『《・・・・・―――――ッッ!!》』』』

 

此の咆哮にゴーレムⅢ達は下ろしていた武装を構え直し、酷くノイズの混じった機械音を轟かせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――だが、其れよりももっと大きく恐ろしい獣の様な唸り声が聞こえて来た。

 

ヴぇろぅう”オ”おぁあ”あ”阿”あ”あ”あ”ッ!!

 

『『『!!?』』』

 

そんな猛獣の声と共にアリーナ会場の入場ゲートが木っ端微塵に吹き飛ばされるや否や、其処からライフルの肩当でゴーレムⅢの電脳頭部を潰しながら白銀の鎧を纏った飛竜が現れたではないか。

 

「なッ・・・なんだ、あれ・・・?」と突如として現れた銀飛竜に安全地帯でモニターを見守っていた倉持技研の面々は驚嘆の余り目を見開いてポカーンと口を開けて呆け、其の隣ではIS統合対策部の面々が「あぁ・・・もう台無しだ」と少々苦笑い気味に口端を引き攣らせている。

対するアリーナ場内では、反応が大きく二つに分かれていた。

一つは驚きと興奮の感嘆詞。もう一つは焦燥と忌々しさの籠った恨み節に近い呟き。

 

グルルルルル・・・ッ・・・!

 

そんな周囲の声など御構い無しにギョロギョロと金色の四ツ目で辺りを見回した後、腕を大きく振り上げて雄叫びを上げた。

 

全軍、突撃ィイイッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆

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