「なぁ、鈴・・・あのISって何かおかしくないか?」
「はぁッ?」
不意に一夏が鈴にそう言葉をかけた。
二人が対峙している全身装甲の所属不明機・・・仮に名称を『ゴーレム』としよう。
「こんな時に何のよ。お喋りできる状態じゃないでしょうが」
「いや、何て言うか・・・あのIS、機械的って言うか・・・本当に人が乗ってんのか?」
「はぁッ?」
一夏はゴーレムが見せる攻撃や動作に何らかの違和感を感じていた。それは動きの一つ一つがプログラムされたロボットのような動きをしていたからだ。
「いや一夏、そもそも人が乗らなきゃISは動か―――――・・・・・そう言えば、私達が会話してる時は確かあんまり攻撃してこないわね」
「だろ?」
鈴も少し考えた後、一夏の考察に同意する。
「でも、無人機だからなんだって言うのよ?」
「ああ・・・人が乗ってないなら遠慮なく『零落白夜』で攻撃出来るからな」
「その攻撃が当たらないから苦戦してるんじゃない!」
そうだ。
鈴の言う通り、例えゴーレムの中身が空っぽの機械であろうと攻撃が当たらなければ、意味がない。
「・・・大丈夫、次は当てるッ!!」
「根拠ゼロじゃない・・・」
「ヤレヤレ」と溜息を吐く鈴。だが、この状況では白式の零落白夜に頼るほかない。
・・・乗り手が例え、考えなしの猪武者であろうとだ。
「なに、ちゃんと俺に考え―――――『一夏ぁあアアッ!!』―――――って、え!!?」
突如として、アリーナに響き渡る聞き馴染んだ声に振り返って驚く一夏。
彼が驚くのも無理はない。視線の先にあるガラス窓の放送室には、逃げた筈であろう幼馴染の姿があったのだ。
「ほっ、箒!?」
「アイツ、何やってんのよ!!?」
『男なら・・・男なら、そのくらいの敵に勝てなくて―――――『なにやっとんじゃ、この糞ボケッ!!』―――――ッ!!?』
「「き、清瀬ッ!!?」」
再び吃驚する二人。
それもその筈、一夏に何かを伝えようとする箒の後ろに春樹が鬼の形相で立っていたのだから。
『なにをこねーな所でチンタラやっとんのじゃ! 早う逃げぇや!!』
『邪魔をするな清瀬! 私にはやらねばならん事があるんだ!!』
『阿呆うな事言うな、このおわんごがッ!!』
ギギギ・・・と放送室から聞こえる怒号に反応するゴーレム。
そのままゴーレムはビーム兵器を放送室へ向けた。
「ッ!! 鈴、やれッ!!」
「ちょ、やれって何をよ?!!」
「いいからッ、俺の背中ごと撃て!!」
「はぁ!? あぁッもう、知らないわよ!!」
ドォウンッ!と訳も解らず、一夏の背中に衝撃砲を撃つ鈴。
至近距離からの射撃に身体は大きく前へとのめり、その衝撃を利用してそのまま一夏はゴーレム目掛けて突貫する。
「ウォオオオオオーッ!!」
振り下ろされる雪片。
ザギィンッと金属を叩き切る音がアリーナ内に響き渡る。
ドゴオッン!
「ぐわァッ!!?」
だが、彼の斬撃は急ごしらえと正確さに欠けた為にゴーレムの左腕を斬り落としただけに過ぎず、途端に足蹴を喰らい吹き飛ばされる。
そして、無慈悲にもゴーレムのビーム砲撃が二人のいる放送室に向かって放たれた。
―――――――
「おいッ、大丈夫か篠ノ之さん?!!」
「痛つつ・・・ッ!!? な、なにをするか清瀬!!?」
「へぶしッ!!?」
ガラガラと建物が崩れる中、俺は押し倒した篠ノ之さんに向かって叫ぶ。
別に押し倒したゆーても、エロい意味じゃと違うで。よーわからんISがビーム撃ってきたけん、咄嗟に俺は彼女を庇うたんじゃ。
・・・まぁ、なにを勘違いしたんか。篠ノ之さんにビンタを喰ろうたがのぉ。
「あッ、わ・・・悪い、清瀬」
「痛~・・・んなのええけん、早う逃げるがじゃ!!」
ビームを撃つ前に織斑の野郎がISを斬ったおかげで、直撃はなんとか避けれた。
なんじゃけど、ビームの威力強すぎと違うか? すぐにでもここ、崩落しそうなんじゃが。
「わ、わかった・・・って、き、清瀬ッ!!?」
「今度はなんじゃい?!!」
「あ、頭が・・・!」
って、どうした篠ノ之さん。そねぇに青ざめた顔して?
え、頭がどねーかしたんか? つーか、さっきからなんか頭が痛いなぁ・・・・・
「・・・あッ?」
・・・なんじゃ、このペンキ?
なんで俺の頭に赤いペンキがかかっとるんじゃ?
しかもえろー鉄臭いな、このペンキ。
まるでホントの『血』みたいなペンキじゃのぉ。
「・・・・・あ”ッ?」ブツッッ
―――――――
「ほ・・・箒ぃいッ!!」
ゴーレムのビーム射撃よって噴煙をはく放送室。
そして、再びゴーレムはギギギと音を発てて一夏と鈴をメインカメラに収める。
「クソォオ!!」
「一夏ッ!!」
激昂に駈られ、雪片を構えて再びゴーレム目掛けて突貫する一夏。
だが、その動きは余りに直線的でゴーレムのビーム攻撃の格好の的である。
ハイスピードで突撃していく一夏にビーム砲を向けるゴーレム。
その時だった。
「うるぉおおおヲオオッ!!」
ドゴォオッーン!!
「「ッ!!?」」
突貫する一夏よりも早く、背後からゴーレムに体当たりをする者が噴煙立ち上る放送室から飛び出す。
その人物は、そのままゴーレムと共に地面へと衝突。凄まじい土煙を撒き散らした。
「一夏ぁーッ!」
「ほ、箒!?」
「あんた、無事だったの?!」
紛煙からひょっこり顔を覗かせる箒に安心する一夏。
しかし、彼女と共にいた筈の春樹の姿が無い事を問うと箒は指を差す。ゴーレムの墜落地点へ指を差す。
「き、清瀬ッ!?」
「えッ・・・!!」
指を差す方向に視線をやると一夏は驚嘆し、鈴は言葉を失う。
「ヴるらぁあ”阿ア”―――ッ!!」
そこにいたのは、ゴーレムの頭部をライフルの肩当で一心不乱に殴り続ける春樹の姿。
鈍い金属音が何度もアリーナに木魂する。
だが、ゴーレムもただやられているばかりではない。
ビーム砲を春樹に向け、発射しようとする。
「こッの屑鉄野郎がぁあアアッ!!」
だが、そうはさせまいと春樹はゴーレムの腕をへし折る。そして、そのままゴーレムを持ち上げるとアリーナの壁へと叩きつけた。
「お・・・おい、清瀬・・・お前」
「あんた、頭から血が―――」
「この野郎ッ・・・このやろう・・・コノヤロウッッ! うガァアアアアッ!!」
二人の言葉に春樹は雄叫びで答えるとゴーレムに向かって、ライフルを乱射する。
ズガガガッ!と銃口から火を噴きながら、再びゴーレムに近づいて行く春樹。
一方のゴーレムは武装を破壊され、頭部パーツからオイルを垂れ流している。
ガチッガチッ
「チィッ、オラァアアアアアッ!!」
弾倉が空になった事へ舌打ちをし、今度はバットのようにライフルでゴーレムを殴る。
やがて、ライフルが殴打の衝撃に耐えられなくなると今度はナイフで裂き、刺し潰す。
そして、今度はナイフが折れれば、春樹自らの拳で殴打を開始した。
「ヴるぁあヲォオアアぁあアアッ!!」
春樹は右に、左にと殴打を繰り返す。
ゴーレムの装甲はボコボコにひしゃげ、その装甲板までをも引き剥がすと装甲の下に張り巡らされている様々な配線を手探りで引き千切っていく。
「見つけたぁッ、お前の心臓をォオ!!」
そして、ついにゴーレムの機体内から、心臓とも言えるISコアを見つけ・・・
「クタばりやがれ、この屑スクラップ野郎ッ!!!」
バギンッとコアを握り砕いた。
「ハァーッ・・・ハァーッ・・・ハァーッ・・・ッ!!」
「き・・・清瀬?」
「あ”ぁ”ッ、なんじゃボケカスこの野郎?!! オメェがさっさと倒さねぇから、この糞ガキがッ・・・って、あれ・・・!?」
ガルルと野犬のような目つきで一夏を睨む春樹。だが、その怒号と同時に彼の身体はフラッと地面へ倒れる。
ドクドクと頭からは血が流れ、ラファールの装甲を濡らしていた。
「き、清瀬!!」
「救護班、早く救護班を呼んで!!」
視界が真っ赤になり、意識を手放す春樹。
彼が意識を手放す寸前、思った事は唯一つ。『織斑、いつかぶっ飛ばす』であった。
・・・・・・・・・・はい。という訳でリハビリ投稿でした。