IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第121話

 

 

 

IS関連の機体や装備品類において世界シェア三位を誇るフランスの企業、デュノア社。

其の大企業を治める頭目であるアルベール・デュノアについ最近、娘がいる事が解った。

名をシャルロットと云う彼女は当初、表向きは世界初の男性IS適正者をハニートラップに掛けんと男装してIS学園へと編入した。

しかして彼女は其処で、もう一人の男性IS適正者である”蟒蛇”と出会う事となる。

 

蟒蛇は容易にシャルロットの男装を見破ったどころか。VTS事件を皮切りに自らの策を弄する事で、崖っぷちに立たされていたデュノア社の窮地を救う事と相成った。

其の御蔭でシャルロットはわだかまりのあった実父並びに継母と和解する事が出来、少しばかりの混乱はありつつも学園へ留まる事が出来た。

 

さて・・・そんな人の皮を被った蟒蛇へシャルロットは恋情を傾ける様になる。

最初は自分を窮地から救い上げてくれた事に対する情け故の恋心であったろうが、月日を追う度に恩情からではなく心の芯から彼を想う様になった。

 

・・・けれども、彼女と同じ様に其の蟒蛇へ恋情を傾ける物好きが他にも居た。

自身の親友で今のルームメイトでもあるドイツのラウラ・ボーデヴィッヒ其の人である。

彼女は持ち前の無邪気さと無垢さで、蟒蛇の脆弱でありながら強靭な心へ寄り添った。

 

負けじと、シャルロットも蟒蛇との距離を詰めんと時に強硬策を打ち出しては、彼との仲を深めようと精進した。

・・・だが、幾ら追いかけようとも蟒蛇との距離は中々に縮まらない。其れ処か、恋敵であるラウラとの差を見せ付けられる事案が起こった。

 

其の事案とは、先の『キャノンボール・ファスト襲撃事件』である。

此の折、其の身を銀飛竜へと昇華させて襲い掛かる敵を屠った蟒蛇の姿にシャルロットは恐怖心を抱いてしまった。

しかし、対照的にラウラは彼の恐ろしい姿に動じず、いつもの様に接した。

此の行動に感銘を受けた蟒蛇は其の後、自らの蜷局の中へ黒兎を囲っては寵愛を注ぐ様になる。

 

勿論、上記の此れにシャルロットは頬へ不満を溜めた。

遅れを取り戻さんと彼女は蟒蛇へ寄り添おうとするのだが・・・キャノンボール・ファスト襲撃事件で銀飛竜へと至り、其の後に起きた『ゴーレムⅢ事件』で武功を上げた彼の周りには、蟒蛇の持つ金眼四ツ目に魅了された者達が集う様になった。

此れでは容易に近づく事が出来ず、近づいたとしても巻いた蜷局の中には入れず仕舞い。シャルロットはただ指を咥えて蟒蛇と黒兎の戯れを見るばかりである。

・・・・・されど、其の様な状況をひっくり返す好機が彼女へ巡って来た。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「・・・・・阿”ッ?」

 

ゴーレムⅢ事件から数日後のSHR。

大酒飲みの蟒蛇こと、清瀬 春樹は酷く機嫌の悪い低く重い声を漏らす。

其の獣の唸り声にも似た声色に教室に居る大半の生徒が身を強張らせる。しかして春樹をを少しでも知る生徒達は、彼の憤りを当然とばかりに理解できた。

何故に春樹が憤怒の表情を晒すのか。其れは―――――

 

「なして俺まで身体測定の”測定係”なんてせにゃあおえんのじゃ?!」

 

そう。今日は身体測定をする日なのであるが、何故か其の測定係の一人に春樹が抜擢されたのである。

 

「俺は別に必要なかろーがなッ、織斑だけに測定係をやらせりゃあエエじゃろうが!」

 

「お・・・おい、清瀬!」

 

春樹はそう喚きながら席へ項垂れて座る一夏に指を差す。

当初、一組は率先して測定係をやりたがる生徒が居なかった為、女子高特有の其の場のノリと勢いで測定係は男子生徒である一夏に決まった。

勿論、此れに異を唱えた一夏であったが、いつかのクラス代表を決める他薦の状況に似ていた為、容赦なく流されてしまった。

 

其処で彼は自身の此の状況を静かに嘲笑っていた春樹へ目を向けるが、先のゴーレムⅢ事件で起こった謀反行為についての罪悪感があった為、ギョロリと琥珀と鳶色の眼で睨まれた時に思わず目を逸らしてしまう。

そして、此のまま係が一夏だけになるかと思いきや・・・・・意外な人物が声を挙げた。

 

「春樹、私は嫌だぞ」

 

今や春樹と自他共に相思相愛の仲となったラウラである。

無論、春樹も自分の恋人の身体を嫌悪する相手に触らせる程の度量はない。

 

「当り前じゃ。誰が織斑の野郎にラウラちゃんの身体なんぞ触らせるか、ボケェ」

 

・・・されども、此の贔屓によって彼は測定係の任を背負わせられる事となるのであった。

 

「そ、それだったら春樹も測定係をすればいいんじゃないかな?」

 

「ッ、阿”ぁ!?」

 

声を挙げたシャルロットに春樹はギロリと眼を向けるが、彼女は臆する事無く視線を向ける。

 

「そうですわね。春樹さんがラウラさんだけ測定すると言うのは、些か不平等ではなくて?」

 

「そうだぞ、きよせーん!」

 

「なッ!?」

 

其の眼に呼応するかの様に春樹の素顔を知る者達が一斉に食って掛かった。

まさか、この様な事態になるとは思わなかった彼に動揺が走るが、すぐさま体勢を立て直すために弁を論ずる。

 

「破ッ、阿呆な! 確かにラウラちゃんだけを測定するは一見不平等。じゃけど・・・俺が測定係となった所で、一体誰が俺の元で測定をすると言うんじゃ?!」

 

悲しいかな春樹は『自分は学園一の嫌われ者』としての自負があった。

学園入学以来、彼は他生徒から虫でも見るかの様な侮蔑の目に晒されていた為にこの様な捻くれた考えを有していた。

 

・・・本当の事を云えば、恋人でもない嫁入り前の年頃の少女の身体に触れるなど言語道断と春樹は考えていた。

彼の性根は良く言えば、紳士。悪く言えば、ヘタレな本性であったのである。

 

「あら。私は別に構いませんのよ、春樹さん」

 

「私も・・・別に・・・」

 

「はぁッ?! そ、そんな簪さんまで!!」

 

「それじゃあこうしましょ。一夏と春樹の二班に別れて測定すればいいじゃない。別にいいでしょ、ラウラ?」

 

「うむ。別にいいぞ」

 

「良かねーよ!! つーか許しちゃダメじゃろう、ラウラちゃんッ!!」

 

だが、漁色家ではない其の本性は、聡明な見識眼を持つセシリア達に既に見透かされており、恋人のラウラの許しが出た為、尚余計益々劣勢に立たされる春樹。

そんな彼をアワアワ慌てる山田教諭の隣で、此の状況を静かに眺めていた千冬がニタニタと思わず口角を吊り上げる。

正直、其れが春樹には一番ムカついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なぁ、榊原先生ぇ。やっぱり此処の生徒は頭の螺子が一・二本足らんのんじゃねぇんか?」

 

運命の身体測定が行われようとしている放課後の教室。其処で春樹は実に渋い顔をして記録係である榊原教諭に愚痴を垂れる。

 

「つーか、先生が測りゃあよろしいが。そーしましょーやー、先生ェ!!」

 

「くくくッ。だめよ、清瀬。ここは刺激があんまりないから、今だけはみんなの一興に付き合ってあげなさい。”男の子”でしょう? 覚悟決めなさい」

 

「刺激て・・・此の前、あんまりにも刺激的な事件があったでしょうに。あと、先生・・・俺ぁ”男”なんですよ。歌にでもあるでしょう? 『男は”狼”』ってよぉ~。思春期男子の性欲を舐めんでくだせぇよ」

 

「大丈夫。そうならないように織斑先生から麻酔銃を貸し出してもらったから」

 

そう言って榊原教諭は春樹に大型猛獣へ使われる様な麻酔用ライフルを見せ、「だから・・・滅多な事をしないように」とニコリと笑顔を見せた。

此れに彼は「あの女郎ぉ~・・・マジで俺ぁ狼か!」と頭を抱える。

 

「じゃけど・・・”もしも”はあるかもしれんけんなぁ。一応、弾ぁ装填しといて下さい」

 

「えッ・・・ちょ、ちょっと清瀬・・・?」

 

キリリと急にシリアス顔を晒す春樹に榊原教諭は動揺した。

何故なら千冬から麻酔銃を渡された時、其れが彼女なりのユーモアに富んだ冗句だと思ったからである。

しかし、「俺は俺が一番信用できん」と呟く彼に榊原教諭はゴクリと思わず固唾を飲む。

 

「・・・よっしゃぁッ・・・や、やってるぜぇ!!」

 

まるで戦場へ赴く様な武者震いをする春樹に彼女は一抹の不安を覚えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「それではこれより身体測定を始めていきたいと思います。順番に一人ずつ教室へ入ったら、体操服を脱いでくださいね」

 

『『『はい』』』

 

春樹の担当となった教室の外では、彼の予想に反し、一組所属生徒の半数が屯していた。

中には、ティーンエイジャー向け雑誌『インフィニット・ストライプス』や先のキャノンボール・ファスト襲撃事件にゴーレムⅢ事件で春樹の活躍を知ってミーハーと化した生徒も居たが、其のほとんどが彼と共に戦った事のある面々である。

 

「すぅー、はぁ~・・・それでは、このセシリア・オルコットが先陣を切らせて頂きますわ!」

 

話し合いの結果、一番槍を託されたセシリアは、大きく深呼吸をして自らを鼓舞するかの如く声を挙げると意気揚々と教室の扉を開け放つ。

そして、室内に設けられたスペンサーの中でしゅるりしゅるりと身に纏った体操服を脱いでいった。

 

「そ・・・それでは失礼いたしますわ、春樹さん!!」

 

自らの機体のパーソナルカラーと同じ冴え渡るエレガントな青のブラとショーツの姿で測定係の前へ出るセシリアだったのだが・・・・・

 

「えッ・・・・・は・・・春樹、さん?」

 

思わず彼女はギョッと驚いた表情を晒した。

 

「はい、其れではよろしくお願い致しまーす」

 

何故ならば、彼女の前に居たのは、いつかの夏のベルギーに現れた黒いフルフェイスマスクを被った白衣姿の怪人であったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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