IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第126話

 

 

 

―――――織斑 一夏は今日も今日とて思い悩む。

悩みの議題・・・やはり其れは自分にとって因縁の相手となった”二人目の男”、清瀬 春樹の事である。

先の戦い『ゴーレムⅢ事件』の敵味方入り乱れての戦場と化したアリーナにおいて、一夏は白式の単一能力である零落白夜で彼を背後から奇襲してしまう。

本来なら専用機の没収や退学処分と云う厳罰が下されるが、此れを被害者である春樹が容赦したのに加え、倉持技研とIS統合対策部の取引並びに一夏の姉であり世界最強ブリュンヒルデの名を冠する千冬の計らいによって有耶無耶となった。

 

されど、間近で一夏の未熟さによる暴挙を垣間見ていた教師部隊や学園防衛私設部隊ワルキューレに所属する面々は彼へ冷ややかな視線を刺す。

一方で事件の真相を避難していた為に知らぬ一般生徒達は「”今回も”織斑くんが悪いやつをやっつけてくれた!」と一夏に手放しの賞賛を送った。其のギャップが余計に彼を苦しめる。

 

「はぁ・・・ッ」

 

実は今日、彼は倉持技研から御呼びがかかっていた。

だが、先の事件の影響によって技研へ疑心感を有した一夏は体調不良を言い訳にし、心の靄を払拭せんと一夏は朝から稽古に励んだ。無論、IS禁止令が出ている為に生身によるものであったが、如何せん心の内の霧を晴らすには至らなかった。

 

「おい一夏、いつまで辛気臭い顔してるッ。折角の茶菓子が不味くなるではないか」

 

「わ、悪ぃ箒」

 

そう沈んだ表情の彼に声をかけるのは、最早一夏の引っ付き餅と化した箒である。

彼女は恋敵で親友である鈴が山田教諭に呼ばれて居ないのを良い事に想い人との距離を縮めんと稽古から食堂での小休憩へと付き添う。

しかし、素直になれない乙女心故かどうかは知らぬが、ヤキモキしていた。

 

「・・・もしや、まだ清瀬に雪片を振るった事を悔やんでいるのか?」

 

「いや・・・俺は・・・・・」

 

「あれはもう過ぎた事ではないか。いつまでもクヨクヨして・・・情けない、それでも男か!」

 

「・・・・・」

 

思わず言ってしまった其の一言で押し黙ってしまった一夏に箒は「わ・・・悪い言い過ぎた」と反省の言葉を述べようとした・・・其の時である。

 

バチィッ

「「!!」」

 

突如として室内の電灯が一斉に消えた。其れも至る所全ての電子機器が一瞬にして機能停止したのだ。

最初は唯の停電かと誰もが思った。何故なら先のゴーレムⅢ事件の影響による電気工事が行われており、其の折に計画停電が行われていたからである。

だが―――――

 

「ッ、おい一夏!」

「なッ!?」

 

窓から差す陽の光を遮らんと各フロアの硝子窓に重々しい厳つい防壁シャッターが下りたのである。

御蔭で校内は真っ暗闇に包まれ、周囲から不安の声が木霊した。

 

≪専用機持ち共、聞こえるかッ?≫

 

「千冬姉!」

 

此の状況に合わせて自身のISをローモード起動させると千冬からの通信がインカムに入る。

「何があったんだ?!」と問いかける一夏に彼女は≪話は後だ≫と前置きした上で、各機体にマップを送信する。

 

≪専用機所有者達は地下のオペレーションルームへ集合。防御シャッターが進路を阻む場合は此れを破壊しても構わん≫

 

「わかったぜ、千冬姉! 行こうぜ、箒ッ!」

「言われずとも!」

 

冷静でありながらも強い口調の千冬に一夏は大きく頷くと送信されたマップに従って地下へと急いだ。

途中、進行方向へ重苦しい鉄の扉が行く手を阻むが、千冬の言っていたように其れを手にした雪片で切り開いていった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「皆、揃ったな」

 

IS学園地下にある特別区画オペレーションルーム。

秘密区画故、本来なら生徒は知らされない場所なのだが、緊急事態のため現在学園にいる専用持ち全員が其の場に居た。

室内は校内とは違うシステムで構成している為か、完全に独立された電源でディスプレイは情報を表示している。

 

「それでは山田先生」

 

「は、はい! 現在、IS学園では全てのシステムがダウンしています。恐らく何らかの電子的攻撃、ハッキングを受けているものだと断定します」

 

「ハッキング? もしやまたファントムタスクがッ?!」

 

「そ、それは未だ不明ですが・・・可能性としてはあるでしょう」

 

山田教諭の表情と言葉から伺える硬さに「ヤツらめッ、舌の根の乾かぬ内に・・・!」と箒は渋い顔をした。

 

「今の処、生徒に人的被害は出ていません。防壁によって閉じ込められる事はあっても、命に別状があるような事は無いです。それに教師部隊とワルキューレ部隊の皆さんが生徒達を一か所に集めて警護しているそうです。でも・・・」

 

「問題は、この学園がまたしても外部からの攻撃を受けているという点だ。敵の正体と共に目的も不明。今現在の被害状況は、システムダウンに電波ジャックと言った処だな」

 

静かなれど怒気の籠った千冬の言葉に皆の表情が強張る。

加えて、今日は此の場に居る筈のもう一人の男が居なかった。

 

「山田先生、春樹・・・清瀬くんとの連絡は?」

 

「そ、それは・・・」

 

不安そうな表情で語り掛ける簪に山田教諭の口が縺れる。

そう。こう云った非常事態に半ば狂気の混じった面持ちで先陣切って対処するアル中パイロットが不在なのだ。加えて、彼に連絡を取ろうにもジャミングが張られており、外部への連絡は途絶されている。

此れには共に数々の修羅場を潜り抜け、彼を精神的支えにしていた者にとっては些かな不安の種だ。

 

「フンッ。あんなヤツがいなくとも私達がいれば大丈夫だ! なぁ、一夏!」

 

「お、おう」

 

心配ないと声を挙げる箒に頷く一夏だったが、其の隣では簪が「・・・どーだか」と冷ややかな目をする。

其れが気に喰わなかったのか、「なんだと!」と憤る箒を鈴とセシリアが「まぁまぁ」と仲裁に入った。

 

「それで織斑先生、一体どうされるおつもりなんですの? まさか、このまま手をこまねいているおつもりで?」

 

「ふん・・・言うようになったな、オルコット。お前達、専用機持ちに集まってもらったのは他でもない。ある重要な任務に就いてもらう為だ」

 

「重要な任務?」

 

「はい。これから織斑君、篠ノ之さん、オルコットさん、凰さん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさんはアクセスルームへ移動してもらい、そこでISコア・ネットワークを経由した電脳ダイブをしていただきます。其の時、更識さん・・・簪さんには皆さんのバックアップをお願いします」

 

『電脳ダイブ?』と山田教諭の言葉に皆は顔を見合わせる。

まるでSF映画や漫画の様な話であるが、ISには操縦者個人の意識をISの同調機能とナノマシンの信号伝達により、ISの操縦者保護神経バイパスを通して電脳世界へと仮想可視化して侵入させる事が出来る機能を有している。

此れによって操縦者自身が直接ネットワーク上のシステムに干渉する事が可能となるのだが、電脳世界へ入っている間は操縦者が無防備になる為にあまり活用されていない機能なのだ。

 

「今回の作戦は、電脳ダイブによるシステム侵入者の排除だ。やれるな、お前達?」

 

「でも、千冬姉・・・それは・・・ッ」

 

「今回の男手ではお前一人だ。一夏、お前の手で皆を守ってやれ」

 

前回のゴーレムⅢ事件での失態の事があるのか。浮かない顔をする一夏に千冬はそっと耳打ちをする。

其れに応える様に「ッ・・・あぁ、わかったぜ。俺が皆を守るんだ!」と気を取り直した一夏は皆を連れてアクセスルームへと向かった。

 

「さて・・・更識、お前には別の任務に就いてもらう」

 

「はい。何なりとお申し付けください」

 

一夏達を見送った千冬は側で控えていた楯無に彼等とは別の任務を与える事となる。其れは、学園の防衛システムを停止させた敵とは違う別の敵対勢力の対処だ。

けれども何故に其の様な勢力が襲って来るのか。其れは単衣に先のゴーレムⅢ事件とキャノンボール・ファスト襲撃事件で挙げた戦功が大きく関わって来る。

 

「ヤツらの目的は、この学園に安置されているゴーレムⅡとゴーレムⅢのISコアだろう。何処の国でもISコアは喉から手が出る程の代物だ。こんな機会逃しはせんだろう。厳しい防衛戦になるとは思うが・・・本来ならお前達生徒を戦場に立たせるなど、あってはいけない事だ」

 

「織斑先生、ご心配には及びません♪ 『適材適所』、織斑先生にもやるべき事があるのでしょう? それに・・・」

 

「それに、何だ?」

 

「これぐらい、あのヤンチャな後輩に比べれば大した事ないですから♪」

 

其の言葉を聞いて「確かにそうだな」と千冬は静かに笑みを浮かべた。

確かに今まで色々な敵が此の地に現れた。しかしてそんな襲撃者達よりも暴れ回る輩が学園サイドには居たのである。

敵よりも手を焼かせる味方とは此れ如何に?

 

そんな訳で楯無はオペレーションルームから出ると大きく深呼吸して息を整える。

そして、僅かな足元の非常灯のみが灯る暗闇の中で自らの専用機を蝶が羽を広げる様に展開するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが此の時、此の襲撃事件が今まで起こった事件の中で最も血を流す事になろうとは・・・誰も予想だにはしていなかった。

 

〈さて・・・無礼な”豚”は何処かな?〉

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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