外部からのIS学園襲撃。後に『ゴーレム事件』と呼ばれるであろう当日未明。
IS学園地下深くに併設されている研究施設、その内部に横たわっているスクラップ・・・もとい、侵入者ゴーレム。
その身体はバラバラに引き千切られ、目も当てられない程にひしゃげていた。
「・・・」
侵入者の残骸を片手間にゴーレムとの戦闘シーンを見る千冬。
その目は真剣そのもので、ゴーレムを惨壊させる春樹の姿に釘付けられているようにも見えた。
「・・・すごいですね。まさか、清瀬君があんなにも強かったなんて・・・一番近くで教えていた私にも分かりませんでした」
彼女の近くにいた山田教諭は関心深く、ゴーレムと春樹の戦闘シーンに感嘆を漏らす。
そんな彼女の言葉に千冬は「あぁ、そうだな」と短く返答する。
だが、千冬の頭は様々な思考が駆け巡っていた。
「(・・・おかしい、あまりにも”慣れている”。ゴーレムの攻撃からの放送室直撃後、タイムラグがあるとはいえ、清瀬のIS装着時間は僅か0.1秒にも満たない。加えて、あの連続攻撃・・・本当に数か月前まで一般中学生だった人間が出来るものか?)」
「それに・・・」と考えた処で千冬は首を横に振る。
一人の生徒が起こした有り得ない行動に自分の考えすぎかと溜息を吐き、山田教諭に次の言葉をかける。
「ところで、解析結果は出たのか?」
「はい。・・・やはり、織斑先生の言ったようにあのISは無人機です。清瀬君がコアを粉々に砕いてしまった為に完全な解析は出来ていませんが、どの国にも登録されていないISコアでしょう」
「・・・そうか」
再び短く返答しする千冬。
彼女の頭には、今回の首謀者であろう人物の顔が浮かんでいた。
―――――――
今回の騒動で、俺は驚いた事が”三つ”ある。
”一つ”目は、俺は『平和島 静雄』がするような事を出来てしもうた事じゃ。
今、思い返してみると・・・ホント、俺何やっとるんじゃろうか?
頭から流れた血にブ千切れたところまでは覚えとるんじゃが・・・そこから先の記憶が朧気なんじゃなぁ。
夢遊病の気がある俺には慣れたもんじゃが、自分がやっとる事をモニターで見せられると変な気分になるのぉ。
そいで”二つ”目なんじゃが・・・
「それで君は、ラファールの武装であるアサルトライフルでアリーナ観客席の扉を破壊したのね」
「はい、間違いありません」
ガラス片で切った頭が未だ痛む俺の前に座る先輩の髪の毛の色が”水色”だという事じゃ。しかもこの先輩、この天下御免のIS学園生徒の長・・・つまりは”生徒会長”をやっとるそうじゃと!
横におる眼鏡の先輩の髪色は普通なのに、なんでこの人水色なんじゃ。
いや、山田先生の緑色の髪の毛にも驚いたんじゃが・・・『緑髪』っていう言葉が古文にあるぐらいじゃけん、微妙に慣れたが・・・水色はなかろー。
しかもスカイブルーじゃぞ。あり得なくなくない?
「質問なんだけど、扉を破壊する以外に手立てはあったんじゃないかしら。例えば、管制室にいる教員に連絡するとか」
俺も質問したい。
その髪色は遺伝なんですか?
遺伝だとしたら、そりゃあ劣性遺伝? それとも、優性遺伝?
「(・・・と、言う話は置いといて)いえ、なにぶんと状況が状況でした。確かに管制室へ連絡して指示を仰ぎたかったのですが・・・あの侵入者からと思しき通信障害があり、しかも扉にあまりに多くの生徒が詰めかけていたので」
後で聞いたんじゃが、扉に詰めかけた事で塊の中心におった生徒の何人かが圧迫骨折しそうになっとったらしい。
「・・・確かに、君の言う通りね。あの状況なら・・・まぁ、仕方ないわね」
「ご理解いただけて何よりです、更識 楯無生徒会長閣下殿」
「フルネームに閣下はよしなさいてよ」とニッコリ笑う更識会長。
・・・ちぃとばっかしホッとした。
まさか、壊した扉の修繕費を要求されるんじゃなかろうかと内心冷や汗タラタラじゃったんじゃ。貧血で倒れた後も、細かな診察を勝手にされる前に起きれたし。
・・・案外、血の気が多いのね俺。
「なら、もう俺はここいらで失礼しても?」
「それはまだダメ。あなた、つい数時間前に怪我をしたばかりなのよ。ちゃんと検査を受けてもらうから」
「いやです、お断りします」
「我が侭言わないの」
「いーやーじゃー!!」
だだを捏ねようが何しようが、結局その晩は検査入院する事になった。
ただ俺が危惧していた血液検査がなかったけん、えかった。血中のアルコール濃度がバレんかったけん、幸いじゃ。
しっかし・・・・・あの会長・・・絶対に”カタギ”じゃねぇ気配がしたでよ。髪色ならず正体までマトモな輩はおらんのんか、この学校には?
ちなみに、驚いた事の”三つ”目なんじゃが・・・
「う~む・・・モルヒネって、ええのぉ。金カムの二階堂が夢中になるわけじゃ」
痛み止めの気分のエエこと!
あとで一瓶二瓶拝借しとこう、そうしよう。
「失礼します。大丈夫ですか、春樹さん・・・って!? ちょっと春樹さん、なんですのその怪しい小瓶は?!」
「現行犯だ~!」
げぇッ、セシリアさんに布仏さん何故ここに!!?
―――――――
「あ~、自室療養で休めんかのぉ。それに・・・おのれセシリアさんと布仏さん。見舞いに来てくれたのは勘違いしそうなくらい嬉しいんじゃが、彼女らのせいで鎮痛剤ゲットのチャンスがパァになっちもうた。・・・まぁ、しゃーないか」
翌日。鎮痛剤の不正使用により、ほぼ追い出される形で退院した春樹は、暗い雰囲気で教室を目指していた。
「ふわぁ・・・眠ッ」
ガラリと教室の扉を開け、早々に自分の席に着くと懐から愛読書を取り出す。
そして、いつもの様に陰口をBGMに読書にふける・・・筈だった。
「(・・・あ? なんか、視線が・・・)・・・って!?」
いつもとは違う視線に顔をあげてみると春樹の目の間には数人の生徒が立っていた。
「お・・・おはよう・・・ッ?」
いつもとは違う朝の状況に戸惑う春樹。つい声が上ずってしまう。
すると一番前にいた生徒が「ちょっと、恥ずかしがってないで」と後ろの生徒に急かされ、机の上に可愛らしいリボンで包まれた紙袋を置いた。
「こ・・・こりゃあ、なんね?」
「え・・・えと・・・」
「あぁッもうじれったい。これは昨日のお礼だよ、”清瀬くん”」
「へ?」
恥ずかしいのかモジモジする生徒に業を煮やした背後の生徒がニッコリと口を開いた。
春樹の目の前に置かれた袋の中身はお菓子。しかも手作りだそうな。
このお菓子を作った生徒は襲撃時の混乱の中、春樹に助けられた一人だと言う。
だが、それよりも春樹は別の事で驚いていた。”名前で呼ばれた”のだ。
いつもは『二人目』だの『おまけ』だの『ヘチマ』だのと呼ばれていた為に、どう反応すればいいのか再び戸惑う春樹。
「まさか清瀬君があんな事出来るなんて、見直しちゃった!」
「男らしーよ、ポイント高いね!」
「あの時はありがとうね、清瀬くん!!」
「お・・・おう」
慣れない称賛の声に照れくさいのか、頬を掻く春樹。
幸い、ここにいる皆は避難に夢中であった為、アリーナで鬼神の如き力でゴーレムをスクラップにしたのが春樹だとは知らない。
「あ~。なんか、きよせん顔あか~い」
「ほんとだ、耳まで真っ赤」
「へ~、可愛いとこあるじゃん」
「や、やめて・・・照れるから、何かやめて!!」
やんややんやと照れる春樹をイジりだす面々。
「おはよう皆・・・って、清瀬! お前大丈夫だったのか?!」
「喧しい、野郎はお呼びでねぇんじゃ。とっととその窓から飛び降りて足の骨砕け、ボケカス」
しかし、一夏の登場ですぐに不機嫌な顔になるのだった。
この後、何故かオドオドした箒から謝罪を受けるのだが・・・それはまた別の話である。
・・・・・・・・・・はい。という訳でリハビリ投稿でした。