IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第131話

 

 

 

「・・・応ッ、皆無事なようじゃのぉ」

 

「は・・・春樹・・・ッ!!」

 

アクセスルームの自動扉が開くと共に室内へ入って来た春樹に簪は思わず両手で口を覆った。

其の身へ纏った鉛色の鎧は真紅に染まり、隙間からは彼の体液と思われる赤い液体が滴っている。

 

「ッ、清瀬君! 早く手当てを!!」

 

「俺は後でエエわな。其れよりも布仏先輩、此の人の方を先ぃ頼むわぁ。眠っとるんは、ランドスピナーの高速機動でワーワー喚きょうたけん、途中で気絶させたんじゃ。んで、どういう状況?」

 

「はい。先程も言った様に今現在、皆さんはIS学園は何者かのハッキングを受けコントロールを失っています。そこで電脳ダイブにてサーバーのコントロールを奪取しようと試みたのですが・・・」

 

「ですが?」

 

「それがダイブした後、サーバーへと向かう途中にアクシデントが発生。こちらでも異常を感知したのですが、どうにも出来ず・・・」

 

「・・・ほうか」と春樹は自分の腕の中で眠る片手と脇腹を負傷していた楯無を虚へ差し出した。

 

「・・・よっしゃ。其れじゃあ、簪さん。其の電脳世界言う所にはどうやって行きゃあエエんじゃ?」

 

「ッ・・・だ、だめ!」

 

「阿ぁ? 何がおえんのんならな?」

 

「だ、だって・・・!」

 

今にも泣きそうな彼女を余所に春樹は身に纏っていた鎧を脱ぎ落してゆく。

するとどうだろう。転がった鎧は表面に付いた血液で白い床を赤く汚していくではないか。

 

「阿? あぁ、此の怪我か。大丈夫じゃ。殆どが敵の返り血じゃし」

 

「で、でも・・・!」

 

彼はそう言って弁解するが、重々しい装甲版の下から露わになったのは、赤く汚れた生身の身体。

春樹は襲撃者達を撃破する為、身動きを軽くしようと下着一枚で新型EOSを身に纏っていたのである。其の為、襲撃者であるアンネイムド達との接近戦で彼の身体は大きく負傷していた。

至近距離から発射された幾つもの散弾やライフル弾が身体へ食い込み、ナイフによる裂傷や刺傷の跡が生々しい。

 

「い・・・痛くないのッ?」

 

「ドンパチする前に鎮痛剤やら何やらをウィスキーで流し込んだけんな。痛うは・・・ない事もないな。鈍痛がするでよ。こねーな事になるなら、事前にISスーツでも着とくんじゃったな。後ろの方で人間砲台みたいになっとった山田先生が青い顔をしとったわぁ」

 

彼は「阿破破ノ破!」といつもの様に奇天烈な笑い声を響かせるが、並の人間ならば身体を奔る激痛と失血性ショックで今頃卒倒している。

・・・にも拘らず、春樹の気力は未だ衰えてはいなかった。

 

「ま、そねーな事ぁ今はどーでもエエわ。んで、どーやったら其の電脳世界に行けるんならな? 此のベッドに寝ころんだら行けるんか?」

 

「だから、ダメ・・・春樹、いっちゃダメ!」

 

「なんでよ?」

 

「だって・・・だって、そんな状態で行ったら・・・!」

 

目を潤ませて縋り付く様に彼の腕を掴む簪。こんな瞳を潤ませた眼鏡の美少女の腕を振り解く事など誰が出来ようか。

・・・しかし。

 

「・・・大丈夫じゃ」

「・・・ッ・・・」

 

春樹は自分の腕を掴む簪の手を振り解くと兄が妹を慰める様に彼女の頭を撫でる。

 

「電脳世界に行く云う事は、よーする意識だけ向こうに行く云う訳じゃろう? じゃったら大丈夫じゃがん。俺が向こうの世界に行っとる間に治療してくれや」

 

「そ・・・そういう事じゃなくて!」

 

「心配すんなや。早い話、『ソードアートオンライン』とか『ログホライズン』みたいなもんなんじゃろうが、大丈夫じゃ大丈夫。あ、これが電脳世界へ行くマニュアルか?」

 

「あッ、ちょっと清瀬君!?」

 

そう言って彼はベッドチェアへ血に濡れた格好のまま横たわると左腕へ自らの専用機である琥珀を部分展開する。

先のゴーレムⅢ事件以来、休眠状態に入っている琥珀だが、部分展開や武装展開ぐらいは出来るのだ。

そうして心配する彼女等を余所に春樹は琥珀をベットチェアの脇にあるコネクタへ接続し、ソフトウェアを優先処理モードへと変更。そして、「早くしろ」と言わんばかりに虚に学園システムへの接続を急かせる。

「な、ならやりますよ!」と虚は心配そうに彼を見つめる簪に戸惑いながらも春樹を電脳世界へと送り出すスイッチを押した其の瞬間、春樹は落ちる様でいて吸い込まれる様な不思議な感覚に包まれながら意識を奥深く迄沈み込ませていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

『トンネルを抜けると其処は雪国だった』みてーな似たような比喩表現を使うと、『目を開けると其処は一面の星空だった』じゃな。

着とるもんも汚れ地味が目立つIS学園の白制服に早変わりしとるし。

 

「ほぇー、此処が電脳世界かぁ。宇宙を漂ってるみたいじゃわぁ、足場があるけども」

 

≪なに、のんきな事言ってるの?≫

 

「おッ、簪さん。通信の感度は良好じゃぞ、どうぞ」

 

部分展開で左手にはめた手甲から何処か呆れた声の簪さんの声が聞こえて来たけん、俺はそんな彼女の声にシニカルな気持ちで返答した。

 

実を言うと俺、ちぃっとばっかし興奮しとる。じゃってまるで映画や漫画の世界じゃがん。”アイツら”の皮を剥いで骨を圧し折ってやった何十倍も興奮するでよ。

 

「・・・いや、そんな事しょーる場合じゃないわな」

 

≪・・・なに言ってるの?≫

 

「いやいや、こっちの話じゃ。あぁ、そうじゃ簪さん? ちぃっとばっかし聞きたい事あるんじゃけど?」

 

≪どうしたの?≫

 

「『ソードアートオンライン』とかじゃったら、ゲームでの”死”が現実世界の”死”に直結する訳じゃけども・・・其処ん所どーなん?」

 

≪・・・・・≫

 

・・・いや、急に黙らんといてや!

えッ・・・そーなん? 此の電脳世界でゲームオーバー=現実世界でのゲームオーバーなん?!

 

≪わからないの・・・ISを通じての電脳コネクタは未だに謎の部分が多いから・・・・・もしかしたら・・・ッ≫

 

うそーん。

えぇ、どうするで? どうするでよッ?

 

「あぁ、でも・・・別に死ななきゃいんじゃよな。なら、大丈夫じゃろうか」

 

≪・・・春樹・・・なんで、そんなにのんきでいられるの?≫

 

何処か不機嫌そうで怒った感じの簪さんの声が聞こえて来よった。

悪かったな、緊張感のない阿呆みたいな男で。

 

「さぁね。此処最近、変な自信が付きよったからじゃろうか。あぁ、そうじゃ。後、俺の身体の傷、何とかしといてや」

 

≪うん。今、虚さんが春樹の傷を縫ってる≫

≪たまたま裁縫道具を持っていてよかったです≫

 

用意がエエな、布仏先輩。

じゃあ、チクチクチクチクお願いしますでよ。

 

「じゃあ・・・そろそろ行きますかね?」

 

前振りは此処まで。

俺は首を傾げ乍ら目の前にそびえる六つある扉へ目を向けた。

六つ・・・六つ?

一人一つの計算か?

 

≪それぞれの扉へ織斑君、篠ノ之さん、オルコットさん凰さん、ボーデヴィッヒさん、デュノアさんが入って行きました。そして、その扉をくぐった後に皆さんとの通信が途絶しました≫

 

という事は、皆を助けて扉を全て消さないといけない感じ~?

じゃあ味方殺し未遂の織斑と無意識エゴイストの篠ノ之は当然後回しでエエな。つーか助けんで良くね? 大丈夫じゃろ、主人公じゃし。死にゃあせまぁな。

・・・個人的にはアイツらと同じ様に顔を剥いでやりたい。

 

≪・・・清瀬君、くれぐれもですが・・・解ってますね?≫

 

ッチ。

やはり布仏先輩にはバレとるか。

・・・ん? あれッ、ちょっと待てよ。

 

「簪さん。此れって誰がどの扉か解るの?」

 

≪・・・ごめん。わからない≫

 

おっふ・・・マジか、マジなのか。

じゃあ確率的にはアタリか、フツウか、ハズレの三つ・・・いや、ハズレが二人おるけんな。慎重に選ばにゃあな。でも、急がんと。

・・・・・しょうがねぇ、こういう時は此れじゃ!!

 

「・・・ど~れ~に~しようかな♪ かみさまのいうとおり♪」

 

≪・・・春樹?≫

≪清瀬君・・・ッ?≫

 

「てっぽううって、ばんばんばん♪ かきのた・あ・ね♪」

 

そうして俺が指さした扉のドアノブへ俺はゆっくりと手を掛けた。

・・・・・・・・・・・・・・・頼むから、ハズレは勘弁じゃでッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
最後に。今回の章は前半に力を入れた為、後半はぺラくなりそうです。でも自身の性癖は組み込ませたい作者であります。
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