IS/Drinker   作:rainバレルーk

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三升:学年別トーナメント・酒が無くては何の戦か
第14話


 

 

 

「るーらるらるー♪ るーらるらるー♪」

 

最近、気分がええ。

襲撃事件ではえらい目に合うたが・・・、漸くクラスのみんなと馴染めた気がする。聞こえるか、聞こえんかの微妙な音量で囁かれる陰口も少のうなった。

精神的に気分が楽じゃ。いや~、実に酒が美味い。美味すぎて、密輸入酒がもうあとウィスキー一本じゃ。

阿破破破ッ、ゴールデンウイーク中に飲み過ぎたのぉ。・・・やぁばい、どうしょー。

 

「・・・朝から、どうしたんスか?」

 

「あ?」

 

聞き覚えのある声に振り返れば、なんだかフリルの多い制服を着た小まい三つ編み美少女がおった。

 

「誰かと思やぁ、サファイア先輩。おはようございますだ」

 

「おはようッス、清瀬後輩」

 

俺に挨拶をしてくれたのは、フォルテ・サファイア先輩。

あの海馬コーポレーションパイセン・・・略してケイシー先輩の恋人じゃ。

 

「こんな朝から、なに百面相してんスか。不気味ッスよ」

 

「そりゃあ夢のような連休が終わっちまって、またあのイケすかねぇ織斑のボケと同じ教室の空気を吸う事になりますからね・・・ってか、不気味は余計っすよ」

 

「そんな事言うのは清瀬後輩ぐらいッスよ。皆、織斑後輩と何かしらの伝手が欲しいッスからね」

 

「ほぉ~ん。モノ好きが多いっすね、この学校」

 

しかし・・・そうじゃ。俺はまた教室で野郎と授業を受けにゃあならんのじゃ。

・・・あぁ、憂鬱になってきた。酒が飲みてぇでよ。でも一本しかねぇけん、チビチビ飲まんとおえんでよ。

 

「・・・そー言えば、清瀬後輩。先輩となんかあったんッスか?」

 

「・・・・・え?」

 

『先輩』言うんは、十中八九、ケイシー先輩の事じゃろう。

あ・・・そーいやぁ、二人は(ケイシー先輩曰く)秘密の交際をしてたんじゃったのぉ。

バレバレじゃが。

 

「いーえー、(ケイシー先輩に『バレてる』って言った事以外)なにもー」

 

「・・・本当ッスか?」

 

おおっと、サファイア先輩のジト目攻撃。

大方、射撃場での発言で動揺したケイシー先輩がサファイア先輩に対してよそよそしくなったんじゃろう。

・・・ん?

 

「いやいやいや、なに勘違いしてんすか」

 

「・・・なにも言ってないッスけど」

 

「大丈夫ですよ。ケイシー先輩、あんなエロい格好してますけど・・・恋人を裏切るような貞操観念じゃないです(・・・多分)」

 

俺が原因とは言え、流石に間男に誤解されるのはなしじゃ。

百合ップルのすれ違いに巻き込まれて、後ろから刺されとうないけんな。

 

「そ・・・そうッスか。・・・・・ん、恋人?」

 

「・・・さてッ、今日のおススメ朝定食はなんなんじゃろうかのぉ?! 早う食べんと授業に遅れらぁッ!!」

 

「あッ、コラ逃げるなッス!!」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

「諸君、おはよう」

『『『おはようございます!!』』』

 

キンコンカンと始業合図のチャイムが鳴り、千冬の言葉と共にクラス全員が声を張り上げて挨拶する。

全体の雰囲気が引き締まる中、「こないだ見た軍事もの映画にこねぇなシーンあったのー」と相変わらず春樹だけは呆けていた。

 

「さて。ゴールデンウィークも終わりまた今日から授業が始まるわけだが・・・休日気分は今ここで無くせ。今日から本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人、気を引き締めるように」

 

『『『はい!!』』』

 

再び千冬の言葉で、皆が声を張り上げる。

まだ休み気分が取れていなかったクラスの緩い空気がいっきに引き締まった。

・・・ちなみに実戦訓練に使われるISスーツを授業に忘れた生徒は、学校指定の水着で授業をうける事になるそうだ。

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

「は、はい」

 

一通りの文言を言った千冬は山田教諭に引き継ぎをする。

そして相変わらず、自信が持てないのか少しどもる山田教諭から連絡事項が伝えられる。

このまま、いつもと変わらない朝のHRが終わるのかと誰もが思っていた。・・・彼女の口から、次の言葉が出なければ。

 

「ええとですね、今日はなんと皆さんに転校生を紹介します! しかも二人です!!」

 

『『『・・・えええぇぇーッ!!?』』』

「五月蠅ッ!?」

 

まさかの言葉にクラスがどよめく。

ざわざわとクラスに動揺が走る中、お構いなしにと山田教諭は転校生を教室へ招き入れる。

 

最初に教室に入って来たのは、木漏れ日のような金髪を後ろに結んだ”男子用”学生服に身を包んでいる華奢な体型の人物。

 

「『シャルル・デュノア』です。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

そう言ってペコリと頭を下げ、人懐っこい笑顔を浮かべた。

 

「お・・・男?」

 

誰かがそう呟くように言った。

「あ、”また”かい」と春樹は呆れたように耳を塞ぐ。

 

「はい。此方に僕と同じ境遇の方達がいると聞いて本国より転入を―――――」

 

『『『きゃあああああああああああッ!!』』』

 

絵本の中から出て来たような中性的で整った顔立ちの容姿にクラスへ歓喜の叫びが轟く。

 

「え・・・え?」

 

「三人目の男子!」

「しかも美形で守ってあげたくなる系のッ!」

「王子様系の織斑くんや、捻くれ者だけどやるときはやる系の清瀬くんとはまた違ったタイプ!!」

「私、このクラスで本当に良かったぁ!!」

 

『『『いやっふううううううううううッ!!』』』

 

クラスの黄色い悲鳴に戸惑う貴公子を余所に生徒の一人一人が口々に声を上げる。

ちなみに一夏はこの音響攻撃をモロに喰らった。

 

「皆さん、静かに! まだ自己紹介は終わってませんからーッ!」

 

山田教諭の声にクラス全員が視線を向ける。

それを確認した山田教諭は、二人目の転校生を教室へと招き入れた。

 

「・・・おぉッ・・・」

 

次に教室へ入って来た二人目の転校生の姿に、春樹はつい声を漏らしてしまう。

それは他の生徒達も同じだったようで、彼と同じように感嘆の声を無意識に漏らした。

 

「・・・・・」

 

腰まで届くほど新雪のように輝く長い銀髪。体型は小柄だが、左目を覆う黒い眼帯と鋭い灼眼の右目が際立っている。

 

「・・・」

 

「あ・・・あのー・・・?」

 

「・・・」

 

しかし、二人目の転校生は教壇に佇んだまま、何も喋ろうとはしない。

恐る恐る山田教諭が訊ねるも、腕を組んで完全に無視。見向きさえしようとはしなかった。

 

「うぅ・・・ッ」

 

その頑な態度に少し涙目になる山田教諭。

そんな彼女の表情に春樹は心の中で『いいね!』を倍プッシュした。

 

「はぁ・・・挨拶をしろ、ボーデヴィッヒ」

 

「はい、教官」

 

見かねた千冬が声をかけると、漸く彼女は畏まった言葉と敬礼と共に口を開いた。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは先生と呼べ」

 

「承知しました」

 

とても『一般』とはかけ離れた存在感に若干引くクラス。

・・・ともあれ、漸く彼女の自己紹介が始まり―――――

 

「『ラウラ・ボーデヴィッヒ』だ」

 

―――・・・早々に終わった。

 

「あ、あの・・・以上ですか?」

 

「以上だ」

 

「え、えっと・・・ふ、二人ともフランスとドイツの代表候補生なので皆さんも仲良くしてくださいね!」

 

ぶっきらぼうに答えたラウラを精一杯の笑顔でフォローする山田教諭。

・・・隣にいる千冬は溜め息と共に頭を抱えているが。

 

「・・・貴様・・・ッ!」

 

「・・・あ?」

 

早々に自己紹介を終えたラウラは決められた席に向かう途中、何故か座っている春樹の前に立つ。

若干呆けていた春樹は疑問符を浮かべていると・・・

 

バシッ!

「何故ッ!?」

 

彼の頬へビンタを喰らわせるラウラ。乾いた音がクラス鳴り響く。

 

「認めない。貴様が教官の弟などと・・・認めるものか!」

 

「・・・あ”ッ?」

 

「あ、ヤバ・・・」と誰かが呟いた。

多分、ラウラは一夏にビンタを喰らわせたかったのだろう。だが、彼の顔を知らなかった為に間違えて春樹を叩いたしまったのだ。

 

「き、清瀬くん! 落ち着いてください!!」

 

「そうですわ春樹さんッ、ワザとじゃありませんし!!」

 

「なに・・・清瀬?」

 

慌てる山田教諭とセシリアの言葉にラウラは振り返るとユラリと春樹が立ち上がった。

 

「・・・なぁ」

 

「・・・なんだ」

 

小柄なラウラを見下ろす春樹。笑顔を取り繕ってはいるが、その目は見開かれ、完全に笑ってなどいなかった。

一触即発の状況に目を背ける生徒達。

だが・・・

 

「俺は、清瀬 春樹だ。よろしくのぉ、ボーデヴィッヒさん」

 

「キヨセ・・・? まさか、貴様二人目の方の?」

 

「あぁ、そうじゃ」

 

そう彼は穏やかに答えると、そのままゆっくりと一夏がいる席に向かう。

 

「(・・・まさか!?)春樹さん、お待ちになって!」

 

誰もが意外な彼の姿に呆けているが、セシリアが春樹がしようとしている意図に気づくがもう遅い。

 

「おい、織斑」

 

「な、なんだよ清せ―――――「やっぱ、オメェ関連かァ!!」―――――ッぶげェッ!!?」

 

『『『ッ!!?』』』

 

一夏の胸倉を掴み、そのままゴスッ!と彼の顔面にヘッドバッドを喰らわせる春樹。

あまりに突然の彼の行動に愕然とするクラス。

 

「よっしゃーッ、スカッとしたで!!」

 

「なにをしとるか!!」

 

「グぎッ、~~~ッッ!!」

 

達成感に声を上げる春樹に千冬の出席簿が振り下ろされる。

いつもより、酷く重いゴンッッ!という打撃音。春樹は無言で悶絶の絶叫をあげる。

 

「い、いきなり何しやがるんだ清瀬!?」

 

「喧しいッ!! オメェに間違えられてビンタされたんじゃ、当然の報いじゃボケカス!!」

 

ヘッドバッドされた顔面を抑えて喚く一夏に、殴られた頭を抑えて喚き返す春樹。

 

「なんで俺が、いつもいつもオメェの起こすトラブルに巻き込まれにゃあならんのじゃ! あと二発はぶちのめしてやったらぁッ!!」

 

「そんなの知るかよッ! 叩いたのはボーデヴィッヒだろうが!!」

 

「それがオメェのせじゃ言うよるんじゃっちゃ!!」

 

「二人ともやめんか!!」

 

バシンッ

「痛ッ!?」

「ッ、痛ぇなこの野郎!!」

 

「春樹さん!」

 

今度は一夏にもと出席簿をおとす千冬。

それでも「ガルルル!」と言わんばかりに敵意剥き出しの春樹をセシリアが抑える。

 

「落ち着いてくださいまし、春樹さん。ここでまた派手に暴れると今までの事が無になりますわよ」

 

「ガルルルッ・・・・・っけ、畜生め」

 

二人の腕を振りほどき、自分の席に戻る春樹。

いつも男子と言うだけで、一夏からしつこく話しかけられている為に溜まったストレスの一部が爆発したのだろうとクラスの何人かが納得した。

 

「だ、大丈夫か一夏!」

 

「あ、あぁ。まったくなんだよ清瀬のヤツ、いきなり頭突きなんてして来て!」

 

ヘッドバッドされたものの、幸い鼻を折る事はなかった一夏。

「自業自得だろうが」と春樹は言いたくなったが、千冬に睨みを利かされ、舌打ちしながら口をつぐむのだった。

 

「さて・・・少し問題は起こったが、これでHRを終わる。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合しろ。では、解散!」

 

彼女の号令で一応の収束をとるHR。

 

「ッケ」

 

「春樹さん!」

 

「悪いがセシリアさん。ちぃとばっか、ほっといてくれんか? 俺、今機嫌が悪いけんのぉ」

 

そう言うと春樹は更衣室へと向かおうと廊下に出る。

廊下には転校生の噂を聞きつけた他クラスの一団が待ち伏せていたのだが・・・

 

「あッ、なんじゃあお前ら? 邪魔なんじゃが」

 

獣のように眉間に皺を寄せた春樹には、素直に道を譲るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・・・・・・はい。という訳でリハビリ投稿でした。
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