IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第141話

 

 

 

―――――『パトリック・ジェーン

アメリカのCBSで放送され、エミー賞などの功績に輝いたテレビドラマ『The Mentalist』の主人公じゃ。

彼はCBI云う捜査機関で犯罪コンサルタントとして数多くの難事件を解決に導きながら、ニコちゃんマークのシリアルキラー、宿敵『レッド・ジョン』を追い詰めてゆく謂うストーリーなんじゃけども・・・

 

「ん? どうかした?」

 

其の主人公が、何でか知らんが俺の目の前で寝転びながらターコイズブルーのティーカップで紅茶を飲みょーる。

・・・流石は演者がS・ベイカーな事はあらぁ。くるくるって感じのブロンドにディープブルーの瞳と爽やかな笑顔が眩しいでよ。

 

「―――――いや、そうじゃねぇよ!! 何じゃ、此の状況!!?」

「あ、急に立つと・・・」

 

俺は緑色のロッキングチェアから思いっ切り立ち上がろうとした。

・・・・・したんじゃけど・・・

 

「―――――い”ぃ”ッ!!?

 

突如として俺の右脇っ腹に激痛が走りよる。

御蔭で俺ぁバランスを崩して地面に倒れ込んでしもうた。

 

「ほら、だから言ったのに・・・立てるかい?」

 

「お、おう。ありがとうございますだ・・・・・じゃねーよッ!!」

 

俺は思わず此のパトリック・ジェーン”もどき”の手を振り払って、野郎との距離を取る。

 

「誰じゃあ、オメェ? いや、言わんでも解らぁ。鈴さんやセシリア、其れにシャルロットに幻覚を見せた敵じゃろうがな!!」

 

シャルロットの電脳世界で下手こいちもうたが、俺が他の三人と同じ様にやられると思うたら大間違いじゃ!

よりにもよって俺が初めて沼った海外ドラマの主人公に化けよってからに・・・琥珀ちゃんが居らんでも俺ぁラウラちゃんから習ったCQCに我流の徒手空拳を混ぜ込んだ格闘術でブチのめいてやらぁッ!!

 

「おんどりゃぁあッ!!」

 

「うわぁあッ!? ちょっと待ってッ、ちょっと待ってよ!!」

 

「阿”ぁ?」

 

「当方に迎撃用意あり」と構えた途端、ジェーンもどきは目にも止まらん速さで椅子の後ろへササッと隠れて白いハンカチを白旗みてぇに振りよった。

 

「僕が荒っぽい事が苦手なのは知ってるだろう? それに僕は敵じゃないよ」

 

「やかましいッ、此のバッタモン!! 俺はさっさとオメェをブッ飛ばしてラウラちゃんを迎えにいかにゃあおえんのじゃッ!!」

 

「それなら問題ないと思うよ? 彼女の所には”ヤツ”が相応しい”使い”を送ったから」

 

「阿”ぁッ?!!」

 

どういう事じゃ?!

ヤツって誰じゃあッ?!!

使いって何じゃあ、此ん畜生ッ!!

 

「―――――って、ぎぃ”ッ!!?

 

ッッ、糞がぁ・・・!!

さっきから右脇っ腹がジクジクすらぁッ・・・そう言やぁ、火サスよろしくシャルロットに刺されたんじゃったわ。

じゃけどもッ・・・こねーな痛みじゃったけか? 刺された云うより、斬った様な・・・・・

 

「ほらほら、やっぱり”術後”にすぐ動くと痛いだろう?」

 

「じゅ、”術後”って何じゃ―――――って、何じゃぁあこりゃぁああ!!?」

 

『太陽にほえろ!』のジーパンよろしく俺ぁ年甲斐もなく叫んでしもうた。

そりゃそうじゃろう。脇っ腹を捲った先には、綺麗に”縫合”された刺し傷があったんじゃからな。

 

「結構深い傷だったみたい。ナイフの刃が肝臓まで達してた。後、日頃の飲み過ぎで肝臓の一部がダメになってたようだから切除したんだってさ」

 

「ちょっと待てぇい! 何で俺のナイフ傷がちゃんとエエように縫合されとるんじゃ?! 敵の俺を治療するたぁ・・・何を考えとるんじゃ?!! てか、切除ぉお!!?」

 

「だから、敵じゃないって言ってるじゃないか。『テレサ』が居れば、もうちょっと穏やかに出来たかな?」

 

イガる俺にジェーンもどきは「やれやれ」ってワザとらしく溜息を吐きおった。

・・・何かムカつく。よーコイツ、事件の容疑者候補共に殴られとったが・・・今ので理由が解ったわ。

コイツ、癪に障るわぁ。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

不気味な霧が薄っすらとかかった欧風の森の中。

あわや一触即発の状況からパトリック・ジェーンもどき・・・もといジェーンは、混乱する春樹を何とか諫めてロッキングチェアへ座らせ、今の現状を話した。

 

「わ・・・ワールド・パージ?」

 

「そう、それが今回の事件で皆に幻惑を見せていた原因さ。その犯人を”ヤツ”が捕まえて、乗っ取られたシステムを取り返したって訳だよ」

 

春樹は彼のIS学園の中央システムをクラッキングして乗っ取り、意識下へ潜り込んだ犯人をまんまと捕まえた話を顔をしかめながら聞く。

 

「ちょっと待て。犯人が其のワールド・パージ言うヤツを使って、皆に幻想を見せよーたんは解った。じゃけども・・・じゃったら、お前は誰じゃ? ワールド・パージで作られた幻覚じゃないんじゃったら・・・・・」

 

「”ヤツ”と同じ。春樹、僕は君の深層心理の中・・・『記憶の神殿』の住人さ」

 

「其の、さっきから言ってるヤツってのは・・・」

 

「勿論、君が大好きなサイコパスの”彼”だよ」

 

ジェーンの言葉に「おいおい・・・」と彼は顔を両手で覆った。

ジェーンの言う『彼』とは一人しかいない。春樹の記憶の中の神殿に潜む中で最もドス黒い部類の人物だ。

 

「いや、ちょっと待て。其の前に・・・俺って記憶の神殿なんか持っとったんかッ? 初めて聞いたんじゃけど!」

 

「ま、驚くのも無理はないよ。大抵の人間は自分の中に神殿を持っていても、其れを自覚する事はあまりないからね。中でもヤツは特殊な部類だった。主人格とは別の自由意志を持った人格なんてのは特別だ」

 

「・・・は?」

 

「おっとッ」とジェーンは口を噤むと、「話を元に戻すよ」と言って続きを述べていく。

シャルロットの幻想世界で春樹を飲み込、彼の深層心理を乗っ取ろうとしたワールド・パージだったが、其れをヤツ・・・ハンニバル・レクターは逆手にとって犯人を捕らえる事に成功。そして、二人のいる此の森林地帯は、犯人からクラッキングされて奪われていたIS学園中央システムを心象具現化させた場所だと言う。

 

「阿~・・・まるでさっぱり解らん。俺の深層心理がカウンターシステムじゃと? 其れになしてシステムの中央が針葉樹林の森なんじゃ? 独逸の黒い森か?・・・あぁッ! ドイツで思い出した!! 早うラウラちゃんを助けに・・・痛だだだだだッ!!?

 

再び立ち上がろうとし、またしても身悶える春樹。

ジェーンはそんな彼を溜息の後に慈しむ様な表情で眺める。

 

「さっきも言ったと思うけど、彼女の所にはヤツが使いを送ったから。もうすぐここに来るんじゃないかな?」

 

「其の使いってのは誰なんじゃッ? 野郎が送ったとしたら『アビゲイル』か? 其れとも『ウィル・グレアム』かッ?」

 

「さぁね。僕は会った事ないけど、ヤツの話だと肝心な時に眠りこけていた子らしい」

 

「どういうこっちゃッ?」と春樹は表情を歪めたが、今の所、自分に出来る事はないのだという事だけが彼には理解できた。

ジェーンは其の忌々しそうに溜息を漏らす春樹に紅茶を勧めたが、彼はウィスキーを所望。

無論、肝臓の外科手術をしたばかりの患者に酒を与える事をあの執刀医が許可している訳がない。

 

「取り敢えず・・・暇つぶしに僕と話でもしない?」

 

「話ぃ?」

 

「僕一応、君のハマってたドラマの主人公だし、声もキリコ・キュービィーだよ?」

 

「ッ、破破破! メタい事言わんでよ、思わず吹いてしもうた!! ッ、あだででで!!?」

「おいおい、大丈夫?」

 

ジェーンの言葉に思わず春樹は爆笑してしまい、縫合した傷口をまたしても痛ませてしまうのだったが・・・・・

 

「さて・・・じゃあ、話の題材はどうする? そうだッ。君が中々一線を越えようとしない、アルビノの黒兎のお嬢さんについて話そうよ」

 

「・・・・・阿”ぁッ?」

 

話の内容に彼は眉をひそめ、歪んだ口から牙を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

―――――「うんッ、美味いなぁ!!」

 

一夏はテーブルの上へ並べられた豪華で綺麗な料理を次々平らげる。

羊足のサラダ。

鳥のレバームース。

リヨン風血のソーセージ。

豚の腎臓腸詰。

次々と出て来る日常生活ではあまり味わえない珍しい料理はとても美味で、特に彼の舌を唸らせたのは、最初に出て来たすね肉の赤ワイン煮込みだ。

 

「ハンニバル、あんたは自分の事をアメリカの精神科医って言ってたけど・・・本当は有名なシェフなんじゃないのか?」

 

「フフッ・・・お世辞でも嬉しい言葉だよ、一夏」

 

「おいおい、俺はお世辞なんか言わねぇよ。ただな・・・ただちょっと量が少ないな」

 

「フフフッ。確かに育ち盛りの男子には少なかったね。最後のデザートを出す前に何かおかわりはいるかな?」

 

「それじゃあ・・・」とばかりに一夏は一番お気に入りとなったすね肉の赤ワイン煮込みのお代わりを注文した。

其れにハンニバルは薄い笑みを浮かべながら「承りました、王子様」とキッチンの方へ足を向ける。

 

「あぁ、そうだ。一夏?」

 

「ん? 何だよ、ハンニバル?」

 

「言い忘れていたが、此処は現実世界とは時間の流れが違う」

 

「え? なんだそりゃッ? 浦島太郎みたいなもんか?」

 

「うーん。いや、其の逆だな」

 

「逆って?」

 

「此処での一日は、現実世界での一分と考えた方が正しい。此処は時間の進み方がゆっくりだ」

 

「・・・だから?」

 

ハンニバルは言う「だから、思う存分ゆっくりと料理を楽しみながら暇を潰せる」とウィンクをうって部屋を出る。

彼の言葉に一夏は頭の上へ疑問符を浮かべたが、そんなくだらないクエスチョンマークなどすぐに掻き消えて手元にあったソーダ水へ手を伸ばすのだった。

 

 

 

 

 

 

一つの白熱電球が薄暗い調理台のある部屋をユラユラ照らしている。

其の部屋へ意気揚々と入室したハンニバルは、静かな微笑を浮かべながら調理器具とコンロが並んだテーブルの横へ不自然に配置された椅子に手を掛けた。

 

「―――――さて・・・気分は如何かな?」

 

其の椅子には、何処かのアルビノ黒兎の様に流れる銀髪とスレンダーな美脚を有した美少女が座っている。

 

「ァ・・・ッ・・・・・アぁッ・・・!」

 

しかしなれど、少女の様子が何だかおかしい。

声にならない声で口に噛まされた猿轡を震わせ、漆黒の目に金色の瞳を目の前へ立つハンニバルに向けている。

一見、可愛らしい真ん丸お目愛で彼を見ている様に見えるが、其の彼女の眼には真の恐怖が感じられた。

恐ろしい怪物でも見るかの様に、おぞましい化物でも見るかの様に男を見ていたのだ。

そんな彼女に対し、「さてと・・・」と言葉を漏らしながら・・・ハンニバルは”鋸”へ手を伸ばす。

 

「ッ、むグ―――――!! むゥウ―――――ッ!!」

 

其の彼の行動に少女は酷く怯えた声で声帯を震わせる。

だが、ハンニバルは彼女に対して喚く幼女をあやすかの様に「しー・・・ッ」とジェスチャーを見せた。

 

「しょうがないだろう。君の主のお気に入りは、君の”脛肉”をご所望なんだ。君としても彼に”食べられる”事は、本望なんじゃないのか?」

 

そう言いながら彼は慣れた手付きで鋸のギザ刃を少女の足へ向けると―――――

 

「大丈夫。此処は現実世界とは時間の流れが違う。だから、時間のかかる煮込み料理もあっと言う間に出来てしまう。うむ、実に助かる。”彼”も此処に呼んで共に食事をしたかったけれど・・・しょうがない。また次の機会に私の料理を振る舞おう」

 

―――――ハンニバルは優しい朗らかな浮かべて鋸を引いた。

 

ガリガリガリガリガリッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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