IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第142話

 

 

 

「・・・アルビノの黒兎って―――――」

 

「とぼけなくても大丈夫、もしかしなくても彼女さ。ドイツのお嬢さん、『ラウラ・ボーデヴィッヒ』嬢の事だよ。君も隅に置けない男になったね、春樹?」

 

ニタニタニヤニヤ白い歯を見せるジェーンに春樹は「阿ぁ、もうッ・・・!」と歪めた表情を隠す様に両手で覆う。

だが、彼は気を取り成して指の間から琥珀色の眼を覗かせた。

 

「そんで、俺が・・・ラウラちゃんとの一線を中々越えようとしない? いやいや俺はラウラちゃんとはもう、其の・・・キ、キス・・・をじゃな」

 

「キス? 何言ってるの? 僕が言ってるのは、”男女の夜の営み”の事。端的に言えばセックスだよ、セックス。何でまだしないの?」

「ッ、お・・・おい!!?」

 

柄にもなく春樹は目を見開き、頬を紅潮させて勢い良く立ち上がる。硬く握った拳骨を振り上げて。

勿論、ジェーンはすぐさま逃走態勢をとる。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

「待たんわ、阿呆! お、オメェ何を言うとるんじゃ!!」

「だってそうじゃないか! 年頃の両想いの男と女が一つ屋根の下にいるんだよ? それなのに君達は、いちゃつくだけのキスばっかり・・・いつになったら次のステップに進むのさ?」

「つ・・・次のステップって?」

「だから、セック―――――」

 

彼は「喧しいッ!!」と怒鳴り上げ、ジェーンは「理不尽だなぁ」と呟くが、相変わらず癪に障る微笑を浮かべたままだ。

そんな彼に春樹は大きな溜息を吐きつつロッキングチェアへ再び腰を据えた。

 

「はぁ・・・僕はね、いや”僕達”は君達二人のやり取りにとってもヤキモキしているんだよ?・・・で? 彼女とはいつするの?」

 

「知るか!」

 

「僕としては、彼女を見晴らしの良いホテルでディナーをした後に「部屋・・・とってるんだ」って言ったりなんかしてさ」

 

「やめれ!! テメェ、ぶん殴るぞッ!!」

 

彼はギョロリ眼でジェーンを睨むが、ジェーンはケラケラ子供の様に笑う。

春樹は再び溜息を吐き漏らすが、彼もただ黙っているばかりではない。

 

「ジェーン、パトリック・ジェーン! 大体お前だって俺を、”視聴者達”をヤキモキさせたじゃろうがな!」

 

「・・・え?」

 

「とぼけんじゃねぇッ! リズボン、『テレサ・リズボン』との事に決まってるじゃろうがな!!」

 

『テレサ・リズボン』

ジェーンが主人公をやっている海外ドラマ『The Mentalist』のヒロインで、ファーストシーズンから長い間ジェーンに想いを寄せていたものの彼の過去の事もあり気持ちを伝える事が出来ずにいた。

しかし、漸く六シーズン目の最終話でジェーンと両想いとなる。

因みに、此の話が最高視聴率回だ。

 

「何でテレサが出て来るんだい?」

 

「そりゃそうじゃろうがな! 俺が第一シーズンからどんな気持ちでオメェら二人の事を見ていたか!!」

 

春樹は暑苦しい程に『ジェリズ』を熱く語るが、語る程にジェーンは照れ臭い様な渋い顔を晒す。

 

「OK、OK、ありがとう。君がどれ程、僕とテレサの仲に入れ込んでいたのは解ったよ。そして、僕と彼女はありがたい事に結ばれた。・・・まぁ、それは脚本家のおかげとも言えるけどね」

 

「メタい事言うのやめれ」

 

「だから、僕も・・・君達二人には幸せになってもらいたいんだ」

 

「じゃからってプライベートな事に口出しすんじゃねぇよ。そう言う所じゃぞ、ジェーン。オメェ、其れで何回被疑者候補に殴られて来たんじゃ?」

 

「しょうがないだろ、僕は好奇心が旺盛なんだ。後、話をそらさない。今は君とボーデヴィッヒ嬢の事だろ?」

 

「・・・殴りたい此の笑顔」と春樹は再三溜息を漏らすが、相変わらずジェーンのしたり顔は止む事はない。

けれども彼は急にシリアス顔になった。

 

「春樹・・・何で君は彼女との関係を躊躇ってる? 君が奥手な事は知ってるけどね」

 

「俺は・・・俺達は色々あるんじゃ・・・・・解るじゃろ?」

 

「それは・・・元々、君が”この世界”の住人じゃないからか?」

「ッ・・・」

 

其の言葉に春樹は押し黙ってしまう。

其れに対し、ジェーンは静かに微笑みながら彼の表情を伺った。

 

「やめろッ、メンタリスト。俺の感情を読もうとするな」

 

「・・・ごめん、ついクセで。でも、やっぱりそれが関係してるんだよね?」

 

春樹は舌打ちをしつつ「・・・あぁッ、そうじゃ」と忌々しそうに呟く。

 

「ジェーン・・・お前が俺の記憶の神殿、マインドパレスの住人なら俺の苦悩ぐらい解るじゃろうがぁ」

 

「そうだね。知ってるよ、君の苦悩は十二分にね。あぁ、君はこの言葉が嫌いだったね。『君の気持はよく解る』なんてさ」

 

「・・・ワザとだろ、絶対」

 

「うん、勿論!」と頷くジェーンに「な~ぐ~り~てぇ~!」と頭を抱えて塞ぎ込む春樹。

だが、彼の深層心理に住まうジェーンは知っている。此の異常な世界に来た春樹のこれまでの事を。其の苦しみと葛藤を。

 

「ジェーン・・・俺はお前の言う通り、此の世界の人間じゃあない」

 

「些細な事だと思うけどね」

 

「ッ、些細って・・・些細で済ませるもんか、此れ?! 俺は此の世界の人間じゃねぇんじゃぞ!」

 

憤る春樹だが、ジェーンの方は逆に「だから何?」と言いたげな酷く冷めた様子だ。

 

「聞くけどさぁ・・・君って結局、何で悩んでる訳?」

 

「えッ・・・何って・・・・・」

 

「まぁ言わなくても解るよ。ボーデヴィッヒ嬢の事だ。それも本来の彼女の”立場”を考えてしまうんだろ?」

 

「・・・・・」

 

途端、彼は沈黙した。

「図星って顔だ」と微笑むジェーンを睨むが、凄味がない視線を向けられてもどうってことはない。

 

「彼女はヒロインだ。この『インフィニット・ストラトス』って世界のね。僕、こういうのに詳しくないんだけれど・・・ハーレム作品の走りって事でいいの? 屑鈍感系主人公ってやつ?」

 

あんまりにもアバウトな発言に対し、ツッコミ気すら失せた春樹は其れを敢えてスルーする。

 

「まぁ、何でもいいさ。そんなハーレムラノベのヒロインの一人が、ボーデヴィッヒ嬢だ。春樹、君が危惧しているのは―――――」

「やめろ」

 

だが、やはり癪に障る言葉には殺気の籠った言葉を突き刺した。静かなれど、ハッキリとした言葉を放つ。

其の言葉の直後に続く言の葉なく、幾何かの沈黙だけが続く。

実際、沈黙は僅か数えるばかりもない短いものだったが、たったの一秒が一分にも一時間にも感じられる。

 

「・・・・・・・・ジェーン・・・お前さんの言う通りじゃ。俺はきょーてぇー・・・怖いんじゃ。ラウラちゃんが俺から離れるんが怖いんじゃッ」

 

けれども其の沈黙に春樹は耐えられなかったのだろうか。そっと振り絞る様なか細い声と苦渋に満ちた表情で言葉を並べた。

 

「そうじゃ、怖いんじゃ! あの子がいつか、俺から離れて行ってしまいそうで怖いじゃ!! また・・・一人ぼっちになってしまうんが、怖いんじゃ!!」

 

泣きそうな哭きそうな啼きそうな顔で、自分の両肩を抱いて苦しそうに悲しそうに憎たらしそうに歯を軋ませる。

 

「なら・・・さっさと繋ぎとめておけばいいじゃないか。君は彼女に対する『愛』を”異性愛”じゃなく”父性愛”に変わらせつつあるんじゃない? それを区別するためのキスだ、そのためのセックスなんじゃないの?」

 

「阿呆を・・・言うな・・・・・俺なんかが、あの子が縛ってしもうてエエんか? 此の世界のもんじゃねぇ俺が、彼女を・・・・・ッ」

 

「うわッ、面倒臭い男」・・・と言う言葉をジェーンは吐きそうになったが、彼は其れを飲み込んだ。

 

『清瀬 春樹』と云う男は自尊感情が低い部類に入る。有体に端的に単衣に言えば、春樹は自分に自信がないのだ。

どんな大きな手柄を立てても、功名を挙げても、彼の精神が満たされるには不十分だった。

そんな彼が初めて愛した家族以外の女性・・・其れがラウラ・ボーデヴィッヒだ。

彼女との出逢いは正に衝撃的で、彼女と育んで来た絆は偽りのない真実だった。

だが、彼女から向けられる『愛』は何処か恐ろしかった。往年の名曲『神田川』に出て来そうなフレーズだ。

男として自分を初めて愛してくれた女性が、自分から離れて行ってしまうのも付き添ってくれるのも怖かった。

 

「春樹・・・僕は一度、テレサを失いかけた。知ってるよね?」

 

「・・・知っとるよ。誰だっけ、美術犯罪科のぽっと出の捜査官じゃったよな?」

 

「僕としてもあんまり思い出したくない思い出だ。だから・・・今の君を見てると、その時の事を思い出しちゃうんだ」

 

そんな恐怖心を抱く彼へジェーンは言い聞かせる様に言葉を投げ掛ける。

 

「僕も・・・テレサを愛する事には抵抗があった。やつ・・・レッド・ジョンの事もあったしね」

 

「じゃけど、結果的に倒した後で結ばれたじゃろうがな」

 

「結果論を言うのは容易い。でも、そこまでの過程や工程が難しいんだよ。だってそうだろ? 心強い同僚と恋人になるなんて想像もつかなかったよ、あの時は」

 

確かにジェーンとリズボンの恋路には、あまりにも多くの障壁や障害があり過ぎた。其れでも二人は何とか其れ等を収めて両想いとなったのだ。

だからこそ、彼としても春樹には幸せになってもらいたい。

 

「春樹、君は此の世界の住人じゃないって事を嘆いていたけれど・・・・・こう考えてみたら? この世界を一つの樽としよう。それで中には『インフィニット・ストラトス』って名前のワインが詰まってる」

 

「阿?」

 

「このままでも十分美味しいんだけど・・・・・誰かがこのワインへティースプーン一杯のウィスキーを入れてしまった。さて、この樽の中の酒を純粋なワインと云える?」

 

「いや・・・言えないじゃろ。酒は、たったの一滴でも味が変わってしまうけんな」

 

彼の言葉に「その通り」とジェーンは口角を吊り上げて頷いた。

 

「もうこの世界は君と謂うウィスキーが入ってしまった事で、純粋なワインではなくなってしまった。そして、これを君は飲み干すしかないんだ」

 

何処かのスペースブラザーズで聞いたような妙に説得力のある謎の例え話に春樹は戸惑いながらも「お、応ッ」と頷いてしまう。

しかし、其れでも彼は「・・・・・じゃけど・・・」と暗い顔をしてしまうのだったが―――――

 

「ッ、おっと・・・・・それにいつまでも彼女を待たせちゃ駄目だ。さもないと”食べられちゃう”よ?」

 

「阿?」

 

ジェーンは暗い表情を晒す彼へ声を掛けようとしたが、何かを発見して「ほらッ」と指を差す。

何が何だか解らない春樹は、其の指の方向へ振り返ってみれば―――――

 

グルルルォオオオオオ―――ッ!!

「ッ、ぎぇえええええ!!!??」

 

―――――なんと視線の先には、身の丈三十mはあろうかという巨翼を拡げたドラゴンが此方へ迫って来るではないか。

 

「お、おいッ! ジェーン、ありゃ一体・・・―――――って、居ねぇッ!!?」

 

流石は人の心を読むメンタリスト。逃げ足も一流だ。・・・まぁ、そんな些細な事は置いといて。

さぁ、逃げ遅れた彼へ目掛けてドラゴンは宝玉の様な四つの金の眼を差し向けるや否や、急降下爆撃機スツーカの如く凄まじい勢いで急降下して来た。

此れには、流石の春樹も「ひッ、ひぇえええええ!!」と恐れおののき慌てふためいてしまう。

しかし―――――

 

「―――――春樹ッ!!」

「えッ、えぇええええええッ!!?」

 

そんなドラゴンの背からヒョッコリと顔を覗かせ、彼の名を呼ぶ人物が現れたのである。

其の人物は、流れる白銀の髪に灼熱の太陽の眼と夜空を照らす月の様な黄金の瞳を持った戦乙女―――――『ラウラ・ボーデヴィッヒ』其の人だ。

 

「ラ、ラウラちゃ―――――

「春樹ィッ!!」

―――――って、おぉ―――い!!?」

 

吃驚仰天する春樹を余所に彼女は駆け足と共に銀色の巨躯を有するドラゴンの背から駆け足と共に飛び出す。

其れもISを纏わない丸腰状態でだ。

 

「わッ、ちょッ、待ってぇええ―――ッ!!!」

 

彼は走った。

近くに合ったであろうロッキングチェアを蹴飛ばして走った。

勿論、切開されて縫合された傷口が痛むが、そんな事など知った事ではない。

春樹は無我夢中で空高~くから落下して来るラウラをキャッチせんと両手を広げて駆け奔る。

 

「ラウラちゃぁああああん!!」

「春樹ィイイ!!」

 

上から下への力と前に突進する力が交差し、バッチィーン!とけたたましい音を発てた二人は其のままゴロンッゴロン!!と転がって行き、ドッシィイ―――――ッン!!と針葉樹の硬い幹へ衝突した。

 

「がッ、ぁあッ・・・痛ぁア”ア”ッ・・・・・ッ、じゃない!! 大丈夫か、ラウラちゃん?!!」

 

背中からメキメキィイッ!なんて謂う酷く生々しい音が聞こえて来たが、そんな事など御構い無しに春樹は抱き抱えたラウラの安否を気遣う。

けれども、彼女からの返事として返って来たのは・・・・・

 

んむぅう・・・♡」

「んッぐぅう!!!??」

 

熱烈な、余りにも熱い、火傷してしまいそうな程に濃密な口付けであった。

ラウラは「はむはむ♡」と薄い春樹の優しく唇を噛んだ後、「じゅるりッ♡」と口内へ真っ赤な舌を差し込んで「れろりれろり♡」とアイスクリームでも味わうかの如く彼の歯肉や舌を味わう。

 

はるき・・・はるきぃッ・・・♡ しゅきぃ・・・だいしゅきぃい・・・ッ♡♡

「え・・・あぇあッ・・・ら、ララ、ラウラちゃ―――――

むちゅぅうッ♡♡♡

―――――んンンッ!!?」

 

濃厚なディープキスとトロットロに蕩け切ったオッドアイの瞳に動揺する春樹を余所に語彙力を完全に失ってしまった彼女はキス攻撃の更なる猛追を仕掛けた。

ごくりッごくり♡」と彼の唾液を飲み干しては、「はぐはぐ♡♡」と自分の口へ吸い寄せた春樹の舌を美味しそうに甘噛んだ。

 

「・・・・・・・・ガウ

 

さて・・・其の余りにもしつこいとも云えるキスに業を煮やしたのか。大地へ降り立ったドラゴンは「もういい加減にしなさい」とばかりにラウラの後頭部をデコピンで小突く。

無論、手加減しているとは言えども其の威力は申し分ない。其の衝撃によってベロチューを交わす両者の歯がゴチンッと衝突してしまった。

 

はぁ・・・はぁッ・・・・・ッ、何をするのだ!? 折角の春樹との逢瀬を邪魔するな!!」

 

想い人との口付けを邪魔された事に憤り、自分の何十倍もある金眼四ツ目の銀飛竜へラウラは喚く様に怒鳴り上げる。

しかして春樹の方はあまりにも濃密なキスで呼吸困難必至だった為、ドラゴンの小突き攻撃はありがたかった。

 

「ちょっと待っていろ、春樹! 私はこいつと折り合いをつける! あぁ、あとその唇から垂れる血は拭くな! 私が舐めとってやるから!!」

 

グルルアッ

「痛ッ!? 何をするか、『琥珀』!!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・へぁッ!!?」

 

春樹は再び仰天する。ラウラの口から出た言葉に上擦ったウルトラマンの声が出てしまった。

 

「えッ、ちょ・・・待って! ラウラちゃん、今なんて言うたんなん?!!」

 

「ん? あぁ、『琥珀』と言ったのだ。このドラゴンは琥珀なのだ」

 

「エッヘン」と踏ん反り返るラウラの後頭部を再びドラゴン・・・いや、琥珀は「ガウッ」と小突いた。

其のせいで両者は額を付けて言い争うが、一方で春樹は相変わらずあんぐり口を開けたまま茫然自失である。

だが、彼はすぐに我を取り戻すと何故か飛竜化してしまった琥珀の頭部へ手を伸ばした。

 

「ホントに・・・ホンマに、琥珀ちゃんなんかッ?」

ガルル・・・ッ

 

彼の伸ばした掌へ琥珀は愛おしそうに自分の顔を擦り寄せる。

鋼の様な銀色の鱗が掌をなだらかに滑ってゆく。

 

「むぅー・・・!!」

 

其れがラウラには面白くない。

頬を膨らませ、潤んだ瞳で春樹と戯れる琥珀を睨んだ。

其れに気付いたかどうかは知らぬが、春樹はほくそ笑みながらそっと彼女を抱き寄せた。

 

「お、おいッ、春樹!?」

「・・・・・」

 

先程まで夢中でベロチューしていたとは思えない初々しい反応を見せるラウラを余所に春樹は無言のまま彼女を抱き締め続ける。そして、散々抱き締めた後に琥珀色の両眼でラウラの瞳を除いた。

其れがキスの前兆だと思ったラウラは思わず目を閉じて自分の唇を突き出すが・・・・・

 

「・・・・・ごめん。今は、俺からは出来ん」

 

「・・・・・えッ?」

 

「現実世界に帰ったら話があるんじゃけど・・・エエかな?」

 

其の有無を言わさない表情に彼女は「あ・・・あぁ」と頷いた。

そんな二人のやり取りに琥珀は何かを感じ取り、「クォオンッ」と頭で春樹の身体を軽く圧す。

 

「あぁ、解った。ありがとうな、琥珀ちゃん。後、ようやっと起きた言うんに其ん姿になったんかは教えてくれよ?」

ガウ!

 

「よっしゃ。じゃあ帰るか! ラウラちゃん、お手をどうぞ?」

「あ・・・あぁッ!」

 

大きく頷いた彼女の背に春樹はラウラの手を引いて跨った。

さすれば意気揚々と琥珀は其の巨翼を羽ばたかせ、濃霧が覆う空へと飛び立っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・ふーん」

 

其の飛び去って行く姿をジェーンは針葉樹の蔭から覗いていた。

 

「僕は彼の背中を押したのだけれども・・・押すまでもなかったかな? いや、余計に悪い方向に行ったかも。んー・・・まぁ、いいか。”良い笑顔”をしてたし」

 

そう言いつつ彼は再びロッキングチェアに腰を掛けると、傍にいつの間にか配置されたテレビの電源を付ける。

 

「さてと・・・”ヤツ”の方はどうかな? ”ネタバレ”はこれからかな?」

 

そう言って口を歪めて歯を見せるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





次回。ハンニバルカーニバル。
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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