IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第145話

 

 

 

「あび、げ・・・何者だ、貴様?!」

 

突如として現れた碧眼茶髪の少女に対し、箒は其の首元へ日本刀の切先を怒号と共に差し向ける。

対する碧眼茶髪の美少女、アビゲイルは短く「ひッ・・・!?」と悲鳴を上げて首をすくめた。

 

「お・・・お、落ち着いて箒! 私はあなたに危害を加えるつもりはないわ!!」

 

しかし、取り繕う彼女に箒は「うるさいッ!」と問答無用で突き放した言葉を発した後、『斬捨て御免』とばかりに得物を振り上げる。

登場早々にあわやこれまでかと思われた其の時。窮地に立たされたアビゲイルは実に早口で言葉を並び立てた。

 

「わ、私はッ! 『ある人』によって送り込まれたAIよ! そんな事が出来る人なんて限られてるでしょうッ?」

 

「ッ・・・なに?」

 

其の言葉に彼女の手が止まる。

『ある人』とは誰であろう?

世界でも有数な鉄壁を誇るであろうIS学園のファイアーウォールを悠々と越えて来る人間など限られる。箒の頭へ浮かんだのは、頭へ兎耳を付けた紫髪色の放蕩娘だ。

 

其れを理解したのか。彼女は「ッチ・・・!」と実に忌々しそうな舌打ちをした後、「一体、何の用だッ?」とアビゲイルを睨んだ。

 

「何の用って・・・もちろん、あなたを助けによ」

 

「助けだと? フッ・・・バカバカしい。私は、あの人の力がなくても―――――」

 

箒は彼女の言葉を嘲笑と共に一喝しようとしたのだが・・・「なら、どうやって”この次”に行くつもり?」と云う疑問符に対し、途端にバツが悪い様に黙ってしまった。

そんなツレない彼女にアビゲイルは吐きそうになった溜息を飲み込んで、”此れから”の事情を説明し始める。

 

彼女の話によれば、此れから二人はアビゲイルの力を使って箒の居る電脳次元世界から他の誰かのいる電脳次元世界へワープするのだそうだ。

此れに箒も当初は渋い顔を晒したが、刀を振るう事しかできない武士娘に選択肢など有ってないようなもの。

渋々此れを了承し、アビゲイルの繋いだ扉をゆっくりと開けた。

 

《フフッ・・・よくやった。いい子だね、アヴィ》

 

・・・・・此の時、アビゲイルが少しだけほくそ笑んだ事を『怪物』以外が知る由もない。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「・・・・・ここは・・・?」

 

扉の先に広がっていたのは、美しい花々が咲き誇る庭園だった。

 

「おい、AI。どこだここは?」

 

「さぁ?」

 

「さぁって・・・貴様、やはり!」

 

「ちょッ、ちょっと待って! 私はただ電脳世界の壁を越えるだけで、指定して誰の世界に行けるとか・・・そんなんじゃないの!!」

 

必死に首を横へ振るアビゲイルに箒は「はぁ・・・ッ」と呆れた様に溜息を吐き漏らす。

だが、このままボーッとしている訳にもいかないので、彼女は状況を打開する為に探索を開始する事にした。

 

庭園内はISの高性能レーダーが役に立たないような『設定』になっている為か。近くに人がいる様な反応はない。

仕方がないので、二人は身の丈以上もある垣根に沿って歩く事にした。

すると、二人はある開けた場所へとたどり着く。

 

「あれは・・・」

 

其処で箒の目にあるもの、ある建物が留まった。

其れは白い外壁をしており、とても特徴的で人生の大きな転換期が行われる重要な建物だ。

 

「こんなところに立派なチャペルがあるなんて・・・一体誰の世界かしら?」

 

「さてな。だが、大方の予想など付く」

 

そう言って箒は其のそびえるチャペルの方へ歩みを進めて行く。

けれども・・・

 

「ん? なんだこれは?」

 

そんな彼女の進行を妨げる”見えない壁”が現れたのである。

無論、「邪魔臭い」とばかりに刀を振るって此れを破壊しようとする箒だったが、其れは思いの外堅固な耐久力を誇っていた。

仕方がないのでチャペルへの侵入ルートを変更する事にした・・・そんな時。

 

「ねぇ、箒?」

 

今まで静かにしていたアビゲイルが口を開いたのである。

 

「なんだ?」

 

「さっきの話だけど・・・あなたは、ここが誰の世界かわかったの?」

 

「どういう意味だ?」

 

「だって、あなたさっき「大方の予想はつく」って、言ってたじゃない。一体誰の世界なの? 聞かせてくれない?」

 

其の言葉に箒は「あぁ、あれか」と呟いた後、自分の持論を披露し始めた。

 

「大方、あそこでは誰かが結婚式をしているのだろう。そして、この電脳世界へ入り込んだメンバーから予想するとおのずと絞られる」

 

「へぇ、誰なの?」

 

「決まっている。あのロクデナシ・・・清瀬に恋い焦がれているラウラかシャルロットのどちらかだろう」

 

キッパリとそう告げた箒の言葉にアビゲイルは「・・・どうして?」と少々訝し気な疑問符を投げ掛ける。

 

「あの人に送り込まれたAIだから知らないだろうが・・・この二人は、あのロクでもない清瀬という男にゾッコンなのだ。なぜ、あんな卑屈で低俗な男に夢中になるのか私にはわからんがな」

 

箒は「はッ!」と軽蔑を含んだ嘲笑を晒した。

其の鼻笑いに対し、アビゲイルは眉をひそめながら彼女とは別の予想を話す。其の予想と言うのが―――――

 

「・・・・・でも、もしかしたら違うかもしれないわ」

 

「ふん、じゃあ誰だと言うんだ? あぁ、もしかしたらセシリアか? いや、それとも鈴か? まぁ、どっちにしてもそんな幻想など私と紅椿が一刀両断にするがな!」

 

「・・・あと一人残っているんじゃない?」

 

彼女の其の言葉に「・・・なにッ?」と箒が随分と凄んだ表情でアビゲイルを振り向いた。

其の今にも自分を切り殺そうとする恐ろしい睨み顔に彼女は思わず苦笑いをして「じょ・・・冗談よ」と両掌を箒へ見せつける。

 

「ふんッ。AIの分際で下手な冗談を抜かすな! だいたいあいつが・・・一夏がそんな事など―――――」

 

そう箒が否定文を言いかけたのだが、「―――――んッ?」と疑問符で其れを打ち止めた。

何故ならば、進むべき道の先に二人の背丈を優に超える厳重な金網フェンスが現れたからだ。

 

「ッチ、またか。おい、AI。他に行ける道はないのかッ?」

 

「知らないわ。あと、いつまでも私の事をAI、AIって呼ばないでくれる? 私の名前はアビゲイルよ」

 

ムッとした表情で言い返すアビゲイルに「役に立たないAIだ」と言わんばかりに表情を曇らせる箒。

しかし、「むッ、あれは・・・?」と何かに気付いて紅椿のハイパーセンサーで其れを注視した。

するとどうだろう。其処には煌びやかなれども落ち着いた雰囲気のあるドレスやスーツに身を包んだ見知った顔の者達がいるではないか。

「何をしているのか?」と問われれば、其れは勿論、彼等彼女等は待っているのだ。新郎と新婦の登場を。

・・・けれども、此処である問題が発生した。

 

「な・・・なんで・・・?」

 

其の問題とは、箒が見守る結婚席の列席者の中には彼女が予想したラウラやシャルロットの姿が確認でき、おまけに恋敵である鈴の姿となんと”自分の姿”まであったのだ。

なれば残るのは―――――

 

「ッ・・・てやぁあああああ!!」

 

「箒!?」

 

最悪の事態を察した箒は、慌てて引き抜いた二振りの刀を金網フェンスへ振り下ろす。

されども頑丈なフェンスは其の刃を弾き飛ばしてしまう。

 

「ッく! だったら!!」

 

―――――と、言って今度は飛ぼうとするが・・・あら不思議。なんとブースターがプスンプスン。これでは障壁を越える事が出来ない。

 

「あ・・・ッ・・・あれは!」

 

そうこうしている内に白のヴェールで顔を覆った花嫁を連れた白タキシード姿の朗らかで幸せそうな笑顔を浮かべる一夏が奥から現れたではないか。

其の事から察するに此の電脳世界に囚われている人間が箒の想い人であることが理解できた。

しかし、問題は其処ではない。

 

「ほら、やっぱり。私の予想した通りだったわね。ここは一夏の望んだ世界・・・でも相手は誰かしら?」

 

「うるさい!!」

 

そう問題は一夏の相手、つまりは新婦役である。

此処は対象となった人間の望んだものを具現化する世界なのだ。という事は、此の結婚式を彼は望んだ。箒とも鈴とも違う。全く別の女と夫婦の契りを交わそうとしているのだ。

其れが、其の事が箒には―――――

 

「あいつは・・・一夏は・・・・・ッく!!」

 

「箒?!!」

 

居てもたってもいられなくなった彼女は、萬力の力を振るって強引にフェンスを突き破ると一気に駆け寄った。

 

「一夏!!」

 

「え? ほ、箒?」

 

いきなり式場へ乱入して来た箒に新郎一夏は大いに驚く。

其れも其の筈。何故なら、彼の目の前にはドレスを身に纏った箒と紅椿で武装した箒・・・二人の箒が居たのだから。

 

「一夏ッ、目を覚ませ!! ここは幻想の世界だ!!」

 

「な・・・何言ってるんだよ、箒? お前だって俺達の結婚を祝ってくれたじゃないか。それなのに・・・どうしてこんな事を・・・?」

 

「ッ、やはり洗脳されてしまっているな・・・大丈夫だ、一夏!! すぐにお前を解放してやるッ!!」

 

状況に対応できずに唖然とする一夏を助けんと箒はヴェールを被った新婦に向かって刀を振り上げた。

其の動作に偶然にも対応したのか。新婦は彼女の振り下ろした刃を寸での所で躱し、肉の代わりに被っていた其のヴェールが地へ落ちる。

 

「なッ・・・!!?」

 

其の瞬間、箒は驚天動地の表情に顔を歪めた。

 

「ほ・・・箒ちゃん・・・!」

 

其れも其の筈。隠されていた白のヴェールの下にあったのは、あの忌々しい自身の姉、篠ノ之 束の顔があったのだから。

其の事実に彼女は頭脳はフリーズする。一夏が望んで結ばれようとしていたのは、自分でもなく恋敵の鈴でもなく、自身と一夏を引き離した原因を作った人物だったからだ。

此れなら顔も名も知らぬ女であった方が随分とマシだ。

 

「な・・・な、なんでッ・・・なんで姉さんが、姉さんが一夏と・・・!!?」

 

「ッ、箒ぃい!!」

 

其の混乱と同様で止まった箒の手に握られた得物を奪わんと一夏が彼女へと掴みかかる。

勿論、箒は此れに抵抗の意思を示した。

 

「は、離せ一夏!! 私はお前を救う為に―――――

「ふざけんなッ! さっきからなに訳わかんねー事言ってんだよ!! 束さん・・・”束”のお腹には、”俺の子供”がいるんだ!! 手荒な真似すんじゃねぇええ!!」

―――――な・・・なんだと・・・ッ!!?」

 

余りに衝撃的な発言に箒は傍から此方の様子を伺う束の顔を見る。

 

「ね・・・姉、さん?」

 

「箒ちゃん・・・ごめんね?」

 

「ッッ・・・!! う・・・うわぁアあぁぁアアアアッ!!」

 

申し訳なさそうに顔を伏せた束の反応に箒はギョッとした後、混乱がピークに達したのか。訳も解らず彼女は叫んで、一夏の手を振り払おうとした。

・・・・・・・・其れが大きな間違いだという事がすぐに解る。

 

ザクゥウッ!!

「あッガ・・・!!?」

「・・・・・え?」

 

振り解こうとした手が不思議と一夏へと差し向けられ、其の手に握られていた日本刀の切先が彼の腹を刺し貫いた。

 

「ほ・・・ほう、箒・・・ッ、ど・・・どうし、て・・・・・!!」

 

裂かれた腹から噴き出した血が真っ白で真っ新なタキシードに鮮やかで真っ赤な薔薇を幾輪も咲かせる。

そして、其のままズルズルと一夏は力なく地面へと倒れ伏した。

 

「い・・・一夏・・・お、おい・・・一夏ッ・・・?」

 

箒はゆっくりと倒れ伏した彼に近寄り、其の肩へ手を添えて揺らす。

しかし、返って来るのは無言と光を無くした虚無の眼だけ。

 

「・・・ち、ちがう。違う、違う違う! わ、私は・・・わたしはただ一夏を救おうと!!」

 

言い訳でもするかの様に四白眼で叫ぶ箒。

だが、周囲の皆は彼女に何か恐ろしい者でも見る科の様な畏怖の眼を向けた。

 

「ちがう違うちがうちがう違う違う!!」

 

其の眼に箒は思い出す。あの夏の、あの忌まわしい第一次福音討伐作戦を。自分の勝手な振る舞いのせいで、一夏に重傷を負わせてしまった事を。

 

「わ・・・わ、わたしは・・・私は・・・!!」

 

ガチガチ歯を震わせて、遂に其の場へへたり込んでしまった箒。

手にはべっとりと一夏の血が付いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・さて。此処までの茶番にお付き合いくださりありがとうございます。

皆さんもご存じの通り、此処は本当の一夏が陥った幻想世界ではありません。

本当の一夏は、ある怪物によって救い出されて陥れられてしまいました。

 

なれば、此の世界の一夏は何者なのか?

説明をしたいのは山々なのですが、また長々となってしまいそうなので、簡単に言います。

彼は”ある目的”の為にあの怪物、ハンニバルによって作られた『ニセモノ』です。

ですが、何故こんなまどろっこしい真似をしたのでしょう?

 

「―――――そうよ。あなたのせいじゃないわ、箒」

「・・・・・え?」

 

想い人の骸の側で呆然と崩れる箒に声を掛けたのは、此処までの道中を共にしたアビゲイルだ。

彼女はそっと囁く様に箒の耳元へ語り掛ける。

 

「あなたは彼を救おうとした。全然、あなたは悪くないわ」

 

「で、でも・・・でも、わ・・・私が、い・・・一夏を・・・!!」

 

「違う、違うわ。あなたは全然悪くない―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――悪いのは・・・全部、あの女のせいじゃない」

「へ・・・ッ?」

 

そう言って、アビゲイルは黒曜石の様に『真っ黒な眼』で彼女の姉である束を指差した。

 

「あの女・・・篠ノ之 束は、あなたから一夏を奪ったの。だいたい・・・今まで一夏と離れ離れになっていたのも全部、あの女がISなんてものを作ったから。ISなんて作らなければ・・・あなたは一夏と離れ離れになる事も、彼に悪い虫が付く事もなかったのよ!」

 

「そ・・・それは・・・ッ」

 

ジットリと箒の思考内に侵入したアビゲイルは、彼女から反論の思考と言葉を奪い去り、本来の”目的”を植付ける。

 

「全部、全部全部、ぜーんぶ・・・あの女のせい。あの女が・・・篠ノ之 束がいなければ、あなたは今よりもずっと幸福だったの」

 

「ッ・・・そうだ・・・・・姉さんが・・・あの女なんて居なければ、私は一夏と・・・!!」

 

ギリギリ歯を軋ませ、ギョロリと束へ目を向ける箒。其の目は、血走って懇々とした憎しみで染まっていた。

・・・其れを確認したアビゲイルは、”止めの一言”を囁く。

 

「なら、あなたのするべきことは・・・わかるでしょ?」

 

「・・・・・・・・あぁ・・・ッ」

 

彼女の言葉に箒は今一度刀を握ると、其の刃を振り上げる。

・・・実の姉に向かってだ。

 

「や・・・やめて、箒ちゃん・・・!」

 

「だまれッ・・・姉さんの・・・お前のせいで・・・・・一夏は!!」

 

彼女は、蒼天高く振り上げた赤く濡れた白金の刃を何の躊躇も容赦もなく・・・・・振り下ろした。

 

 

 

 

 

ズザシュゥウッ!!

 

 

 

 

 

「素敵よ、箒」

 

蒼天の空の下で飛び散る血飛沫と悲鳴の中、そっとアビゲイルは朗らかに笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆







































―――――あぁッ! やっとグロ系の血なまぐさいのが終わった!
やっとイチャラブが書けるぞ! よっしゃ書くぞー!!
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