旧148話と旧149話を結合しますた。
第148話
―――――〈ワールドパージ事件〉
其れは鉄壁を誇ると謳われたIS学園のファイアーウォールを難なく超え、中央システムをダウンさせた正体不明の”天才ハッカー”と”謎の実働強襲特殊部隊”が引き起こしたテロリズムである。
・・・されど、蓋を開けてみれば此れ幸いな事に学園側の”外的”負傷者数は、ある一人の”大酒吞み”を除いてゼロ。
システムダウンの影響で降りて来た防壁シャッターによって一時的な監禁状態に陥った一般生徒達もシステム復旧の為に電脳世界へ乗り込んだ専用機所有者達にも大事に至る外傷を負う事はなかった。
(※内的負傷を負った”鈍感騎士”が一人いるが、カウントしないものとする)
そんな事件から三日後・・・・・
「・・・・・ふふ・・・ッ」
電脳世界へ進撃した討伐部隊の一人である独逸の妖精は、其の美しい銀髪を揺らしながら静かにそっと微笑む。
「お? 何かいい事でもあったのですか、”銀の君”?」
其の彼女の微笑に反応したのは、IS統合部開発室所属の技術者である浅沼 翠だ。
彼女は共に並んで歩く銀の君ことラウラの顔を覗いて疑問符を浮かべるが、其れに対してラウラは「い、いや・・・なんでもない」と照れ臭そうに目を逸らす。
「ほうほう・・・愚問でしたな。こんな美少女に恋い慕われる・・・”刃の若”は羨ましい限りですなぁ」
ラウラの反応に浅沼は「うんうん」頷いた後、「銀の君・・・愛って、良いものですか?」と疑問符を投げ掛けるのだが・・・
「揶揄ってやるな、小心狸」
「あ痛ッ!」
そんな狸の後頭部を軽く叩く手が一つ。
振り返ってみれば、其処には成人女性の平均身長を優に超える背丈のスレンダーが一人。浅沼と同じくIS統合対策部に所属する金城 沙也加だ。
「まったく。ボーデヴィッヒ女史、うちの子狸が失礼を」
「このーッ、誰がたぬきか!」
反撃に打って出ようとする浅沼だったが、身長差もあってか簡単に抑え込まれてしまう。
ラウラはそんな二人の何処か喜劇的なやり取りに「フフフッ」と笑みを溢す。
其の笑顔が実に印象的だったのか。浅沼と金城は同性でも思わず魅入ってしまった。
・・・まったく関係ない話だが、此処まで彼女が感情を表情に素直に出す事もなったのもあの大酒飲みの蟒蛇のおかげだったりする。
「ん? どうかしたのですか、二人とも?」
「い、いえ! なんでもありません!」
「浅沼氏、ボーデヴィッヒ女史を次の”検査”へお連れするのです」
金城の言葉に「はい」ではなく「おう!」と元気よく返事した浅沼は、患者着姿のラウラを次の検査室へ案内するのだった。
―――――此処は、都内にあるIS統合対策部が持っている医療研究所。
其処で、蟒蛇からの寵愛を受ける独逸の銀の君は、電脳世界から帰還した事による影響がないかどうか身体や脳の精密検査を受けている。
ワールドパージ事件直後、あの鈍感騎士を除く全員がうんざりする程の事情聴取が行われたのだ。
蟒蛇との心が漸く通じ合い、二人は幸せなキスを・・・・・する直前で、事情聴取に巻き込まれたラウラとしては歯痒い事この上なかった。
けれども現在、彼女の機嫌は上々である。何故かと言うと其れは―――――
「ん? おッ、ラウラちゃん!」
―――――共に精密検査を行う相手が、自分の想い人であるあの飲んだくれの蟒蛇だからだ。
「ッ、春樹!!」
「うわお!?」
自分に向かって手を振って笑顔を溢す彼が嬉しかったのか、思わずラウラは春樹に体当たり攻撃・・・もとい、抱き着いてしまう。
ウェイトが軽いと云えどもドイツ軍仕込みのタックルに蟒蛇、もとい春樹は思わずよろめいてしまうが、グッと腹に力を入れて持ち堪えた。
「むふふ~。ラブラブですな~、若ぁ~?」
此の二人の遣り取りに対し、浅沼がニヤニヤと揶揄う様に口を抑えて彼等を生暖かい目で見る。
此れに金城は口を三角にし、呆れた目で彼女を見たのだが・・・
「応ッ、えかろうがな!」
「春樹・・・ッ!」
揶揄われる筈の春樹はニッカリ口を三日月に歪め、いつもの通り「阿破破ノ破!」と嘲り笑う。
其のあっけらかんと馬鹿に朗らかに笑う彼の表情に周囲に居やわせた皆は思わず息を飲む。
「ふははッ、流石は我らが刃だ! ドンと肝が座っている!」
「ッ、室長!」
そんな彼の様子に上機嫌な壬生が賞賛するかの様に手を叩く。
其れを皮切りに「確かに!」「やっぱり前よりも男っぷりが上がった!」と言った各々の感想が述べられ、春樹は何だか照れ臭くなって口がモゴモゴ動いてしまう。
「うむッ、流石は春樹だな!!」
「ですな、銀の君!」
「ボーデヴィッヒ女史は解るにしても・・・なんでお前が偉そうなんだ、浅沼氏?」
金城の言葉に「うひひひッ」と浅沼は黙って誤魔化した。
「所で・・・壬生さん?」
「ん?」
「俺とラウラちゃんは朝早うから学園から呼び出されて身体検査じゃー、健康診断じゃー、脳波検査じゃー、体力検査じゃー、なんじゃーかんじゃーヘチマじゃー云うて検査を受けたんじゃけども・・・まだあるんですか?」
ジトーと暗い視線の春樹に壬生は「すまん、もうちょっとだから! ねッ!」と拝む様に彼へ手を合わせる。
此れに春樹は「ヤレヤレ」と首を捻った後、「ほんで、次は何をするんで?」と疑問符を投げた。
其れに対して壬生は待ってましたとばかりに二人をある部屋に通す。
「・・・・・・・・何じゃあこりゃ?」
其の検査室の中央へ佇んで居たのは、春樹の身の丈はあろうかと言う二本足の白い無表情のロボットだった。
「・・・ペッ〇ーくんじゃがん」
「ん? なんで胡椒なんだ、春樹?」
「・・・・・何でもないでよ、ラウラちゃん」
◆◆◆◆◆
一方其の頃―――――
「紹介いたします。此方が、我がIS統合対策部開発室が製作しました次世代型EOS・・・jp式自動人型装甲機動甲冑、『石英』です」
IS統合対策部開発室の筆頭技術者である芹沢 早太は、背後に控える青と銀をパーソナルカラーとした甲冑の様なパワードスーツをパワーポイントを交えてPRしていた。
jp式自動人型装甲機動甲冑『石英』。
ワールドパージ事件において怪力無双の武勇を誇ったIS統合対策部製試作EOS『義月一型』の正式改修型機体。
学園内で刃を交えた正体不明の襲撃者との戦闘データを元にグレードアップ加え、老若男女を問わず誰でも簡単に乗りこなす事をコンセプトとした操縦性を追求した機体だ。
義月は試作型だった為に基本兵装は腰部分に内蔵されているスラッシュハーケンだけであり、主要武器と言えば拳ぐらい。
しかし、此の石英は違う。
義月から引き続き内臓されているスラッシュハーケンに加え、対人戦闘及び対IS戦闘を目的として開発された自動小銃並びに近接格闘武装を内装していた。
・・・けれども、そんな完全な”武器”として誕生した石英を芹沢(弟)は一体誰に紹介しているのだろうか。
「昨今、世界のテロリズムは過激の一途を辿っています。特に問題となっているのは、そのテロにISが使われていると云う点です。『ファントム・タスク』・・・所属国籍、規模も不明の過激派反政府組織であります。彼等は各国で開発されたISを強奪し、其れを悪用しています。これは許されざる行為です!」
普段の気怠い様子とは打って変わり弁舌を論ずる芹沢の言葉に「うーむ・・・ッ」等とクライアント側は頷きを入れる。
「されども・・・ISにはISでしか対処できないと言う原則が。ですが、それも今日までの事! この石英は、武装犯のみならずISを所持しているテロリストにも負けぬ性能を誇っています!!」
「こちらをご覧くださいッ!」とモニターへ映し出されたのは、謎の黒づくめの武装集団と戦闘を繰り広げる鉛色の一角独灼眼の戦士だ。
・・・実は此の映像、ワールドパージ事件と称される騒動を捉えた決定的映像を少々加工して放映している。
流出元は御想像にお任せする。
「おぉッ!?」
「あの数と弾丸をたった一人で・・・ッ」
「一体これはどういう事なんだ?!」
残虐非道を良しとする襲撃者どもを藁の様に薙ぎ倒してゆく鉛色の夜叉に室内に居る全員が息を飲む。
特に盛り上がったのは、此処まで彼等を先導して来た敵の大将であるIS乗りとの一騎打ちだ。
「・・・・・さて・・・いかがだったでしょう? 先程の映像は、この石英の前段階であった試作試験機である義月一型のものであります」
映像が終わった後、芹沢は静かなれども熱気醒めあらぬ面前へ向かって語り掛ける。「さぁ、どうしますか?」と。
此の芹沢の言葉にクライアント側は各々に目配せを交わした後、「・・・採用配備に対して前向きに検討してみましょう」と好意的な言葉を並べるのだった。
◆◆◆
「あぁ・・・コーヒー美味い」
石英のプレゼンが終わった芹沢は、仲間のスタッフと共に待合室で缶コーヒー片手に一服する。
其の表情は先程の明るくハキハキしていたものとは打って変わり、いつもの何処か気怠い感じだ。
そんな一仕事終えた彼に「お・・・お疲れ様です」と何処か遠慮がちな声が掛けられる。
目を向ければ、其処には小柄な水色髪の丸眼鏡の少女が一人。
「あぁ、ホントマジでお疲れだよ。でも・・・そっちも頑張ってたじゃねぇか、”更識”」
芹沢の言葉に簪は「い、いえ・・・私は・・・」と余所余所しい言葉を返す。
・・・其れにしても、何故に簪が此の男と共に行動をしているのか? 其れは彼女が改修機である石英の製作に携わっているからに他ならない。
「謙遜すんじゃねぇよ。血と何かの汁でドロッドロのボッコボコになってた義月を修理して、それを改修できたのはお前の御蔭だろうが。もうちょっと胸張れよ」
「で、でも・・・」
「更識、過ぎたる謙遜は嫌味にしか聞こえなくなるから気を付けろ」
「は、はい」
見るからに「しゅん・・・」としてしまった簪に「・・・やりづれぇ」と芹沢は顔をしかめる。
普段はあのちゃらぽらんな大酒飲みの相手をしている為か、其の余りに落差のあるギャップに困惑してしまう。
そうしていると簪の携帯がブーンブーンとバイブレーションの唸りを上げる。
「ッ、すいません。外します」
「あ、あぁ」
電話で席を外した彼女に何でかは解らないが、芹沢は「ふぅッ」と胸を撫で下ろす。
「芹沢さぁん。あんなかわいい子イジメちゃだめですよ」
「そうですよ。もうちょっと、なんか・・・もうちょっと優しくできません?」
「だからモテないんですヨ。それに”この場所”へ売り込もうってアイデアを出してくれたのは簪嬢なんですからね!」
二人の遣り取りを見ていた同僚たちは彼に諌言を云うが、「んな事言ってもよ・・・」と腕を組んで首を傾げた。
三十路間近の野郎に年頃の美少女の相手は荷が重かったのだろうか。いまいち表情が優れない。
―――――「失礼します。芹沢 早太さんはいらっしゃいますか?」
そんな中、IS統合対策部が仕切っている待合室に聞きなれない声が響く。
振り返ってみれば、其処には「おぉッ」と感嘆詞が出る程の容姿端麗な女性が佇んで居るではないか。
「なぁ、おい。あんな美人な”婦警”さんっていたか?」
「あれはスーツ組の人じゃないか? ”警部”とか”警視”クラスのさ」
「じゃあ責任者の人かな? つーかあんな美人と出会えるんなら、この仕事もちったぁ楽しいな」
皆は此の美人の登場に頬を緩ませる。
・・・・・だが。
「なッ・・・!?」
「ん? どうかしたんですか、芹沢さん?」
「あッ。いたいた」
一人だけ、芹沢だけは酷く驚いた様で不快そうな表情を晒していた。
そんな彼を余所に室内へ入ってきた女性は明るい表情を振り撒きながら距離を詰めて行き―――――
「久しぶり、”早太くん”」
『『『・・・・・えッ!!?』』』
何とも親しそうに彼の下の名を呼んだのだ。
此れに周囲から好奇の目が一斉に二人へ差し向けられるが、芹沢は彼女の名を忌々しそうに呟いた。
「なんでテメーが此処に・・・”警視庁”にいるんだよ、『篝火』・・・ッ!!」
◆
「―――――んで・・・俺に一体何の用だ?」
待合室から離れた通路の一角。
其処で芹沢は酷くぶっきらぼうに忌々しそうな声色で目の前で微笑む切れ長の瞳と抜群のスタイルを持った女性に言葉を投げつける。
彼女の名前は『篝火 ヒカルノ』。世界的にも有名な倉持技研は第二研究所の”所長”だ。
「相変わらずとげとげしいねぇ、早太くん?」
「気安く人の名を呼ぶんじゃねぇよ、このボンクラが・・・ッ。なんでお前がここに居る? 研究所であの古いスク水でも着て机に噛り付いてるお前が?」
夜街に蔓延るヤンキーやチンピラの様にメンチを決める芹沢に「やれやれ」と溜息でも吐きながら篝火は彼に返答をしていく。
「はぁ・・・ここには技研のコネもあってね。今日、君が警察関係者に次期機動隊への特殊パワードスーツをプレゼンするって小耳にはさんだものだからね」
「おぉ、それはそれは。わざわざありがとうございます。御蔭で俺は胸糞の悪い気分だ。達成感も糞もねぇ!」
「もうッ、本当は嬉しい癖に」
クスクスにやけながら此方を見る彼女に「ッ、テンメェ・・・この・・・!」と芹沢はワナワナ拳を震わせ、ギリギリ歯茎を軋ませる。
「おぉッ・・・あの芹沢さんが調子を狂わされている!?」
「ただもんじゃねぇな、あの美人さん!」
明らかにあからさまに機嫌が悪くなっている芹沢に物陰から様子を伺っていたIS統合対策部の面々は、彼を手玉に取り始めている篝火に対して感嘆詞を呟いた。
しかし、其れにしても組織内でも重要人物である芹沢を容易に転がす彼女は一体?
「・・・と言うか、どういう関係なんだあの二人?」
「知らねぇのか? 元部下と上司の関係なんだよ。あぁ、芹沢さんが部下で、篝火さんが上司な」
「えッ、マジかよ!?・・・ちょっと待て、つーことは芹沢さんって元倉持技研の人だったの?!」
「うそん、僕も初耳なんですけど!」
思わぬ事実の発覚にやんややんやと盛り上がる外野を余所に芹沢の眉間の皺がどんどんドンドン深くなっていくが、当の元凶は相変わらず悪戯っ子な笑みを浮かべる。
しかし、途端に篝火の表情が真剣な顔つきなものとなった。
「早太くん・・・私がここにいる理由ってわかる?」
「知るか!」
「ちょッ、芹沢さん!?」と外野の声が響くが、当の本人は「っけ!!」と唾でも吐きそうな不快な表情を晒す。
けれども、篝火は其れを何故か好意的に受け取ったらしく「ふふッ」と楽しそうに微笑む。
「私はね、早太くん・・・君を、君ともう一度仕事がしたいと思っているんだ」
「断る!!」
食い気味に否定文を並べた芹沢にIS統合対策部の面々から『『『レスポンスが速い!!』』』とのツッコミが炸裂。
其の大声に近くに居た私服やら制服やらの警官たちが集まって来るが、何とか其れを諫める。
「・・・即答だね」
「俺とお前の関係は、もう終わってるんだよ」
「まだ根に持ってるの? あれはしょうがない事じゃないか! 私だって”彼”が発見されなかったら!!」
「ッ、ふざけるんじゃねぇ!!」
警視庁内で大声を上げる男に周囲は警戒し、「あわわ」と芹沢の同僚達は焦燥感を募らせた。
だが、芹沢は其の不機嫌さを隠すことなく篝火に振り向ける。
「いいか! お前は打鉄弐式のプロジェクトを捨てて、白式プロジェクトを先行したんだ!! 天才プログラマーだか何だか知らねーがッ、俺達のプロジェクトをお前が潰したんだッ!!」
「ッ、芹沢さん!!」
「待て待て、其れ以上はダメですってッ!」
「そ・・・それは・・・ッ」
今にも篝火に掴み掛ろうとする芹沢を止める同僚達。
彼は其の手をと舌打ちと共に振り払い、「これ以上付き合ってられるか!!」と身を翻して去って行く。
其の背を追う様に篝火は「ま、待って!」と手を伸ばすのだが・・・
「此れ以上はダメっす」
其の通路を阻む様に彼の同僚達が並び立つ。
「・・・そこをどいてくれないかな」
「無理っすね」
「二人の間に何があったか知りません。ですが・・・俺達の仲間が嫌がっている事はもうやめて頂きたい」
「ッ・・・!」
そんな表情は朗らかなれども鋭い視線を放つ彼等に気圧されたのか、グッと下唇に力を入れて彼女もまた身を翻すのであった。
「・・・・・一体・・・どういう、こと?」
其れを更に物陰から一部始終見ていた簪はふとそんな疑問符を思い浮かべ、去っていく芹沢を興味深そうな目で見つめた。
◆◆◆◆◆
―――――今日は朝からぼっこう疲れた。
身長・体重測ったり、視力検査じゃあ聴力検査に血液検査に尿検査にレントゲンに心電図・・・・・
まぁ、健康診断でやる検査ばっかりなんじゃけども・・・問題は其の後じゃ。
なして、酸素マスクみてぇな装置付けてルームランナーとか走らにゃおえんのじゃッ?
俺、一応病み上がりなんじゃけど?
片手の指で数えるぐらい前に骨を折りーの、肉を千切られーの、鉛玉撃ち込まれーの、刃物で刺されーのしたんじゃけどもッ??
・・・其れで其の体力テストみてぇーなもんをやる「はいはい」やる俺も俺もじゃけどな。
んでもって最後に”アレ”じゃ。二本足のペッ〇ー君、もといパッペー君(命名、壬生さん)とのステゴロ。
・・・・・・・・なんで??
なして朝とーから検査や体力テストみてぇなのやって、最後の最後に機械人形と殴り合いせにゃあならんのんなん?
今日まで酒飲まんかったら、でぇーれぇー美味い旨過ぎる酒を飲ましてくれる言うたけん飲まんかったのに・・・割に合わねぇー!
其れにッ、其れにじゃ!! 連日続いた尋問・・・もとい事情聴取のせいで、我が愛しの銀色黒兎ちゃん・・・ラウラちゃんといちゃいちゃイチャイチャ出来んかった!!
俺ぁよーやっと自分の気持ちに正直素直にいようと決めたんじゃ! 前の世界から数えても、生まれて初めて出来た恋人といちゃいちゃらヴらヴしたかったのにッ!!
こ、このッ、ち・・・チキショウめ~~~ッ!!
はぁッ・・・ハァッ・・・ハァ~~~!
酒飲みてぇエエエ!!
「「お酒が飲みたい」って顔してるね、清瀬君?」
「心配すんな、我らが刃。すぐに美味い酒が飲めるよ」
そう云いながらほとんど呆れた感じで俺の前に座っとる高良さんは口角を歪め、隣の壬生さんはぐりぐり俺の頭を撫でやがる。
―――――現在、俺は真っ黒なハイヤーに乗せられてどっかに連行されよーる。
検査が終わって、ようやっとラウラちゃんとのふれ”愛”が出来る思うたのに・・・思うとったのに!!
なーにが、「若ッ、こっから先はオンナノコの検査です!」じゃボケェッ!
あーッ! 齧りたい、舐めたい、吸い付きたい!!
・・・あぁッ、ダメじゃ。ホントに酒が飲みてぇ。頭がメロメロになって来たでよ。ちゃんとした理性が働きょーらん。
「(・・・壬生先輩、ちょっとヤバくないですか?」
「(ッ、あぁ・・・そうだな。さっきから黙って外見てるし、眼が両方とも”狼の眼”になってるしな」
「(大丈夫でしょうか? この後、お酒を飲む前に―――――」
「(バカ! 滅多な事言うな! 案外、我らが刃は耳が良いんだぞッ!」
・・・・・悪いが、聞こえとるんじゃけどもな。
ッチ、やっぱし一悶着あるんかい。なして静かにタダ酒って飲めんのんじゃろうか?
せめて初めての恋人とのイチャラブを楽しみたかったんじゃけどなぁ・・・ここ最近、変に億劫になってしもうとったけんな。
ラウラちゃんには悪い事・・・してしもうたなぁ。あんなに俺なんかを思ってくれる人は、家族以外でそー居らんでよ。
・・・ラウラちゃん・・・・・
なーんて感傷に浸っとったら、俺らぁを乗せた黒曜石みてぇに真っ黒なハイヤーは郊外から離れた場所に来た。
そんでもって、なんか時代劇に出て来る見るからに厳つい武家屋敷に入って行った。
えッ、誰の家なんなんな此処?
高良さん云うには長谷川さんが待っとるって言うとったし・・・・・政界の若き傑物を待たせる俺も俺じゃが、其の人と一緒に居る此の屋敷の持ち主・・・一体何モンじゃあ?
〈あらッ? 春樹、見てなかったの?〉
「阿ぁ?」
〈立派な門構えに表札が立てかけてあったじゃない。―――――
―――――『更識』って〉
「・・・・・・・・阿”ッ??」
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆