「ところで・・・二人って仲が悪いの?」
騒動が起こったHR後。互いの自己紹介も程々に第二グラウンドへ向かう一夏とシャルルだったのだが、待ち受けていた他クラスの一団に追われる羽目になった。
その一団から逃れる為に走る二人。その時、シャルルが不意に言ったのが上記の内容だ。
シャルルから見て、春樹の第一印象はあまり良いとは言えない。
初対面のラウラにビンタされた事には同情するが、その鬱憤を一夏に八つ当たりしたようにも見えた。
「いや、そういうわけじゃないだが・・・なんでか知らないけど、清瀬が俺を敬遠してるんだよ」
「・・・そう、なんだ」
それを聞いたシャルルは少し顔を暗くして返答する。
何故かはわからないが、シャルルは春樹の事が気になっていた。彼が教室を出る際、自分を”疑惑の眼”で見た事が気になっていた。
「よーし、到着!・・・って時間がヤバい! すぐ着替えた方がいいぜ」
「う、うん。・・・そう言えば、なんか清瀬くんって他の皆と喋り方が違うよね。あれはなんで?」
二人は同時にロッカーのドアを開けて荷物を置くと、服を脱ぎながらシャルルは一夏に質問した。
「あぁ、あれか。それは清瀬が西日本の出身だからじゃないか。方言ってやつだよ。どこの県かは知らないけどな。・・・ってヤバい。早く・・・って、シャルルもう着替え終わったのかよ?」
「僕は中に着ていたんだ。一夏もそうしたら? そっちの方が便利だし、時間のロスも少ないよ」
「今度からそうするよ。とにかく今は急がないと! シャルルは先に行っててくれ」
「うん」
転校生を気遣ってか、先にシャルルを行かせる一夏だったのだが・・・
「すみません、遅れました」
「遅い!」
結局、一夏は授業開始から五分後にグラウンドへ到着するのだった。
既に一夏を除いた一組二組の全員が整列しており、千冬の号令を今か今かと待っている状態だ。
「まったく・・・では、これより格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」
『『『はい!』』』
千冬の号令に声を張り上げる生徒達。
今日から本格的にISを起動させた授業が始まる為か、やはり専用機を持っていない生徒から歓喜と気合が混じったものがあった。
「今日はまず戦闘を実演してもらう。そうだな・・・凰にオルコット、前に出て来い」
「はい」
「一夏と清瀬のせいなのに、何であたしが・・・」
名前を呼ばれ、前に出る鈴とセシリア。だが、鈴の方はなんだか不満気だ。
何故かというのも、鈴は一夏と春樹を撒き込んで、朝の騒動のことを聞いていたのだ。
あまりにもそれが目に余ったのか、鈴は千冬の出席簿の餌食となった。
「あと、ついでに清瀬もだ」
「・・・はッ、なんで俺まで!? てか、ついでて!!」
「朝の騒動を起こした罰だ。つべこべ言うな」
「え~・・・」
「グダグダ言うな。お前らは少しはやる気を出せ、特に清瀬。頑張れば、織斑や布仏に良いところが見せられるぞ」
この耳打ちに鈴は「まあ、実力の違いを見せるいい機会よね! 専用機持ちの!」と張り切り出すが・・・
「・・・織斑先生ぇ、なんで布仏さんの名前が出るんですか?」
「なら、オルコットか?」
「先生・・・ホントなに言ってるんですか? 大丈夫ですか?」
「・・・清瀬、そんな目で人を見るな」
「あぁ、疲れてるんだな先生も」と憐みの目をする春樹。予測が外れた千冬は彼からの視線に戸惑った。
「それで織斑先生、相手はどちらに? 私は鈴さんと春樹さんのタッグでも、バトルロワイアルでも構いませんが」
「ふふん、それはこっちのセリフよ」
「・・・あの二人とも、俺が訓練機だって忘れとりゃあせんか?」
「慌てるな馬鹿共。凰とオルコットの対戦相手は清瀬と―――――」
説明をしようとしたその時だった。
空気を切り裂く音と共に三人のISハイパーセンサーが緊急起動し、上から何かが急接近することを知らせた。
「ど、どいてくださいぃいいッ!!」
その正体は春樹と同じ訓練機ラファール・リヴァイヴを身に纏った山田教諭。
どうやら制御が出来ていない状況らしく、このままでは墜落すること必死であった。
「ハァッ・・・止めて来い、清瀬」
「・・・止めたら、実演しなくても良いっすか?」
「あぁ、構わん」
「よっしゃー! バッチ来いや、山田先生!!」
千冬の了承を得ると早々に空へ舞い上がり、墜落射線上に突っ込んで来る山田教諭を見据える春樹。
ドゴンッ!!
「ぬぉおおッ!!」
「きゃぁあああ!!」
そのまま腕を広げた春樹に体当たりする形でぶつかる山田教諭。
春樹はそんな彼女を離さないようにしっかりと抱きしめ、スラスターを全開で吹かす。
そして、何とか地面スレスレのところで停止する事に成功したのだった。
「大丈夫っすか?」
「は、はい。ありがとうございます、清瀬くん。あ、あの・・・それでその・・・」
「ん? あぁ、はいはい。降ろしますよと」
春樹に抱き留められ、御姫様抱っこをしてもらっている為か。山田教諭の顔が朱に染まっている。
そんな彼女の照れる顔を間近で見られた為か、春樹はどことなく嬉しそうに口を歪ませた。
「・・・清瀬、やはり実演に―――「やりませんからね」―――・・・ッチ、まぁいい。さて、オルコットに凰。山田先生と模擬戦をやってみろ」
「あ、あの・・・二対一では・・・」
「先生とはいえ、さすがにちょっと・・・」
千冬の言葉に戸惑う二人。
IS学園の教員とは言え、流石に国家代表候補生二人を相手にするのは無理だろうと言う遠慮が出る。
「大丈夫だ。こう見えて、山田先生はお前たちと同じ元代表候補生だ」
「む、昔の話ですよ。それに候補生止まりでしたし・・・」
衝撃の事実に唖然となる一同。
それがなんで訓練機に振り回されていたのかと疑問を投げ掛けたくなった春樹だが、話が長くなりそうなのでやめた。
「それに安心しろ。今のお前達なら直ぐに負ける」
「「むッ!」」
「えッ、煽り耐性ゼロか二人とも」
結局、安い挑発に乗った二人は山田先生と対決。そして、不安の中見事、彼女の言った通りの結果となった。
それどころか被弾さえしていない事に再びクラスから驚嘆の感嘆詞が漏れる。
「さて、IS学園教員の実力が分かったところで授業に移る。各専用機持ちをリーダーとして、番号順に別れろ!」
『『『はい!』』』
千冬の号令に従って各班に分かれる生徒達であった。
―――――――
織斑先生の指示通り、各班ごとに分かれたんじゃけど・・・
「俺がリーダーやるんかよ。・・・大義ぃな」
こう言うんは、専用機持ちがリーダーをすりゃあええがん。
俺、訓練機じゃぞ。それに・・・。
「よろしくね、きよせ~ん!」
「よ・・・よろしく、清瀬くん」
「よろしくお願いします、清瀬さん」
「あぁ・・・よろしく」
布仏さんはええとして、他のメンバーがなんか脅えた目で俺を見ようるんじゃが。
・・・やっぱし、朝のあれはやり過ぎたかのぉ? 顔じゃなくて、鳩尾にしときゃあ良かったかのぉ。
「さぁ、まずは歩行訓練からだ。順次終えたところから次に移れ」
まぁ、ええ。先生もああ言うるし、ちゃっちゃと終わらせるか。
チンタラして、どやされるんも嫌じゃしな。
「んじゃまぁ、始めるんじゃが。・・・こりゃ、足場持って来るんじゃったなぁ」
俺らの班が使うISは、勿論ラファール・リヴァイヴちゃん。
じゃけど待機状態から起動させたら、なんか立てったまま出て来ちゃったラファールちゃん。
「きよせ~ん、あれ見て~」
「あ?」
俺が踏み台になるかと考えとったら、布仏さんが話しかけて来た。んで、彼女の指差す方に目を向けたら、織斑が篠ノ之さんを御姫様抱っこで同じく訓練機の打鉄に乗せようた。
「というわけで、きよせん」
「・・・あれをやれと?」
「うん!」
ワオッ、屈託がないでその笑顔。
「いや、布仏さんはええ言うても・・・」
「でも、早くしないと織斑先生に怒られちゃうよ~? それにだいじょ~うぶ。私が降りる時に座ったまま降りるから~」
でもなぁ・・・嫁入り前の娘っ子を抱き上げる言うんはのぉ・・・。まぁ、背に腹は代えられんか。
しゃーなしに布仏さんを抱きかかえる俺。
じゃけんど、めっちゃ後悔した。
「ん~? どうしたの、きよせ~ん?」
めっちゃんこエエ匂いする! 女の子独特のええ匂いがする!!
煩悩退散ッ、煩悩退散ッ!
「・・・いや、なんでもねぇでよ。・・・もう、ええか?」
「もしかして、きよせん・・・照れてる~?」
「あぁ・・・そりゃあ、こねぇに可愛え子と密着しとるんじゃし・・・まぁのぉ・・・」
「ふぇ・・・ッ!? そ・・・そっか~・・・」
あの・・・布仏さん? なんで君が照れるんじゃ? なしてテレリコしとるんじゃ?
君が照れると余計に俺が照れるんじゃけど!
まぁ、何とか無事に布仏さんをラファールちゃんに乗せての歩行訓練も無事終えた。
良かった、なんとか耐えてくれたな俺の心臓!
あぁ、酒飲みてぇ! 無性に酒が飲みてぇでよ!!
・・・・・・・・・・はい。という訳でリハビリ投稿でした。