IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第156話

 

 

 

「くぁッ、あぁ~~~・・・あぁ、眠ぃ」

 

時刻は七時前。

外はちぃとばっか薄暗いが、昨日の天気予報じゃあ晴れるって言うとったし、雨が降ってもアリーナには屋根があるけん大丈夫じゃろう。

 

今日は皆が待ちに待った大運動会の日。

学園へ無断侵入して来たボケ共とドンパチやってから一週間とちょっと経ったとは思えん。

・・・まぁ、ワールドパージ事件を知っとるんは俺を含めた専用機持ちと何人かの先生方だけじゃけんな。変に行事ごとを中止して怪しまれてもおえんじゃろう。

しっかし・・・病み上がりの身体には応えるハードスケジュールじゃったわぁ。

会長・・・楯無は先の事件で怪我してしもうたけん、大半の仕事を代理の俺がやらにゃあおえんかったし、”モグラ捕獲作戦”のデモンストレーションもせにゃあおえんかったしな。

 

「阿~~~・・・寝不足じゃわぁ」

 

〈・・・・・どの口が言ってんだか〉

 

「阿?」

 

横を向けば、白けた目で俺を見る白髪金眼の女の子・・・俺の専用機である琥珀ちゃん(擬人化体)が頬杖をついてプカプカ浮かんどった。

 

〈疲れているならさっさと寝なさい! それなのに・・・ここのところ毎晩だったでしょ! 昨日も前日のテント設営でてんてこ舞いだって言ってたけど、シャワーもせずに二人とも直行でベッドへ行ったじゃない!!〉

 

そう云うて琥珀ちゃんが指差した先に居ったんは、「すー・・・すー・・・」って気持ち良さそうに眠る銀髪オッドアイの俺の愛しい恋女房。

寒うなって来たけん、冬布団に餃子みてぇに包まっとるが、布団の下は綺麗な絹肌が生まれたまんまの姿で居る。

・・・・・はい。此処の所ずっと毎晩お盛んでした。

 

〈まったく・・・それなのに疲れただの、寝不足だのって言わないの!〉

 

「解っとる解っとる。じゃけぇそねーに大きな声出さんといてや。ラウラちゃんが起きてしまおうが」

 

「・・・私なら起きているぞ」

 

「ほらぁ、起きちゃったが。御免なラウラちゃん、五月蠅うしてしもうて」

 

「大丈夫だ、気にするな」

 

そう言いながら「ちゅ・・・ッ」とラウラちゃんは俺の頬っぺたへ起き抜けのチューをして、「ふふ♪」と微笑む。

 

・・・・・・・・やべぇ、滾って来た。

まだちょっと眠気が残る赤と金色の瞳と緩んだ口元・・・ヤベェッ、ヤベェよ・・・! 昨日の夜にあれだけ出したけど・・・・・じゅるりッ

 

〈駄目よ、ハルキ〉

 

「ふぅーッ、フーっ・・・ッ、な・・・何がぁ?」

 

〈鼻息が荒い! もう朝なのッ! それに運動会の準備があるでしょ!!〉

 

「「えぇー・・・」」

 

〈「えー」じゃない! ラウラも残念そうにしない!! さぁ、立った立った! 起きた起きた! さっさと動けエロ刃に発情兎ッ!!〉

 

ッチ、しょうがあねぇなぁ~。

あぁ、しっかし・・・気が重い。万事が万事巧く行きゃあエエんじゃけどなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

パン! パパン! と大運動会開催を告げる花火の音が鳴った後、前々日から準備されていた第一アリーナへ入場行進が行われている。

 

「よ、よし!」

 

其の入場行進の先駆けを任されたのは、天下に名を轟かせる世界最強のIS使いブリュンヒルデの弟にして世界初の男性IS適正者、織斑 一夏。

先のワールドパージ事件での後遺症からまだ万全ではないが、威風堂々とした姿で誉ある旗持ちの役に務めている。

因みに、ここIS学園はあらゆる国家に属していないので、校旗だけだ。

 

そんな入場行進を終えた後、引き続き今度は選手宣誓を行う一夏。

 

「宣誓。我々選手一同は、スポーツマンシップに乗っ取り、日頃の努力と鍛錬を信じー、その成果を存分に発揮して競技に望むことを誓います!」

 

此の選手宣誓に会場の生徒達から拍手が湧き上がるが、彼の仕事は此れで終わりである。

やはり男子生徒が女生徒ばかりのチームに入るのはパワーバランス的に問題があった。

・・・と云うか、そもそも一夏は競技に出られる程に万全ではなかったし、春樹に至っては学園警備の仕事で其れ処ではない。

宣誓を終えた一夏は台から降りると本営部が置かれているテントへと入る。すると「お疲れ様」と先に中に居た生徒会長の楯無が労いの声を掛けた。

 

「いや、俺は大した事なんて別に・・・」

 

「十分よ、十分。やっぱり男の子が声を掛けるとみんなやる気になるわね!」

 

「そ、そうですか?」

 

同じく怪我の病み上がりでありながらも元気一杯な楯無に対し、一夏は口端を引き攣らせながら眼を逸らす。

何故に目を逸らすか。其れは楯無の姿に理由があった。

 

「どうしたの、織斑君? って、あぁ! もしかしてお姉さんの”ブルマ姿”があんまりも魅力的だったからかしらぁ?」

 

彼女はそう言ってポーズをとる。

IS学園体育祭は大方は他の一班高校での運動会と変わりない競技内容と着用着の上は体操服と普通だ。

されども大きく違っている部分もある。其れは女生徒の下がブルマで統一され、MVP優勝者の景品が織斑 一夏との相部屋だという事であった。

怪我を負ったとしても楯無の悪戯好きの性根は変わりなく、其れに春樹の嗜虐性も加わって手の施しようがなくなっていたのである。

 

「べ、別にそんなんじゃ・・・!」

 

「もう、照れちゃって可愛い!・・・・・”彼”も君みたいな反応してくれたら良かったのに」

 

「え?」

 

「ううん、なんでもないの」と彼女が答えていると「お疲れ様でーす」と本営テントに黒々としたフルフェイスマスクの男が入って来たではないか。

 

「あら、意外と遅かったわね。会場と観覧席の警備は万端かしら? ワルキューレ部隊の総隊長さん?」

 

「阿? あぁ、盗撮目的だと思われる輩が招待客に紛れ込んでいる疑いがあった以外は大丈夫じゃ」

 

「え!? 大丈夫じゃないじゃない、それ!」

 

「大丈夫じゃ、大丈夫・・・ちゃんと対処したけんな」と云いつつフルフェイスマスクを脱げば、其処から現れたのは雪の様に白い髪の毛と金色と鳶色のオッドアイ。

「あ~、やっぱり蒸れるのぉ此りゃあ」と春樹は指でゼロマスクを弾くとどっかりパイプ椅子へ腰を据える。

 

「対処って、それは・・・ううん、やっぱりいい。聞くのがなんか怖いわ」

 

「破破破ッ。あぁ、其れがエエじゃろうな。・・・・・って、おお。其処に居るんは優勝景品である織斑くんじゃあ-りませんか?」

 

「清瀬・・・・・ッ」

 

ワザとらしくギョロ目を向ける春樹へ一夏は奥歯を軋ませて睨むが、彼は其れをニタニタ嘲笑うばかり。

 

「大丈夫でちたか~? ワールドパージで酷ぇ目にあったって聞きましたで~? ちょっと痩せたんじゃねーの?」

 

「・・・お前には、関係ないだろ」

 

カンカラカンカラ笑う春樹に一夏はそっぽを向く。

相変わらず深い溝のある二人に「まったく、もー」と楯無は呆れた様な溜息を吐く。

 

「ま、エエわ。じゃあ俺、他ん所を見て来る。テロリストにはくれぐれも気をつけんさいよ。特に織斑の野郎は知らない人間に付いて行くなよ。助けるんが面倒じゃけんな」

 

「それは君もよ、春樹君。ま、君の場合は襲う相手が気の毒になりそうだけどね」

 

「そいじゃあの」と云って席を立とうとする春樹。だが、其の彼へ「・・・おい」と今まで無視を決め込んでいた一夏が声を掛けた。

此れに「阿ぁ? 何じゃ?」とフルフェイスマスクを再び被りながらギョロリと目を向ける春樹。

 

「お前・・・今度は一体何考えてる?」

 

一夏は今回開催される体育祭に疑問を持っていた。

いくらIS学園が各国から支援されているとは言え、行事ごとがある度に毎回毎回襲撃されては堪ったものではない。其れにも関わらず体育祭は通常通り行われる運びとなった。

彼は教員である千冬や生徒会長でる楯無に聞いた。何故にかと。

すると千冬の方は学園上層部の指示だとしか聞く事は出来なかったが、楯無からは別の事を聞くことが出来た。

其れは―――――

 

「今回の体育祭、お前がするように偉い人に進言したんだってな? 何を考えてるのか知らないが・・・皆を危険な目に合わせるような事があったら、俺はお前を!」

 

「・・・阿―――――破ッ破ッ破ッ破ッ破ッ!!」

 

「ッ・・・なにが、おかしいんだよ?」

 

自分の奇天烈な笑い声をいぶかしむ一夏に春樹は一言言ってやる。「其れこそテメェにゃあ関係ないじゃろ?」と。

其れだけ言うと彼はさっさとテントから出て行く。

後に残ったのは、再び呆れ顔をする楯無と苦虫を噛み潰したような表情を晒す一夏だけであった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

『『『ワァアアー!』』』と歓声轟く第七アリーナ。観覧席は満員で、ある種の『人種のるつぼ』とも云える有様である。

そんな場所で此れから行われようとしている第一種目の競技は50m走だ。

 

「ふー・・・ッ」

 

深い呼吸と共にストレッチをするのは、ドイツの妖精と称えられるラウラ・ボーデヴィッヒ其の人である。

今回、別に彼女は優勝しよう等と云った意気込みはないが、出るからには目標は高い方が良い。

其れに実を言うと、彼女は無断で想い人である春樹と同衾しているのである。此処で誰にも文句を言われない高い評価を得られれば其れは其れで万々歳だ。

 

「・・・・・ラウラ?」

「ん?」

 

さて此れから競技が始まろうかと調度其の時、精神を集中させるラウラへ声が一つ。振り返ってみれば、其処には体操着ブルマ姿の親友、シャルロット・デュノアが薄い微笑を浮かべているではないか。

しかし、其の微笑は何処かぎこちなく、影が差し込んでいた。

其れも其の筈。彼女とラウラは親友でありながら、同じ男を愛してしまった恋敵であり、本来のルームメイトであったからだ。

加えて、春樹の自室へラウラが無断居住していた為にこうして面と向かって顔を合わせるのは一週間ぶりである。

 

「その・・・元気、だった?」

 

「あぁッ、こうして会うのは何だか久しぶりだな!」

 

そんな恐る恐る声を掛けるシャルロットに対し、ラウラは相も変わらず屈託のない笑顔を向けたのである。

此の毒気の全くない笑顔に「ッ、う・・・」と目が眩みそうになったが、何とか此れを耐え忍ぶ。

 

「ん? どうした、大丈夫か?」

 

「う・・・ううん、なんでもないよ。ど、どうラウラ? 春樹との生活は?」

 

・・・久々に会う親友との会話を拡げる為とは言え、何で彼女は自分の傷口に辛子味噌を塗る様な真似をするのだろうか。

そんな事を聞けば必ず―――――

 

「あ、あぁ・・・すっごく、イイぞ

「ッ・・・!」

 

其処にあったのは純真無垢な笑顔ではなく、色香漂う艶やかな微笑。

・・・学園の貴公子は心の中で堪らず吐血した。

 

「そ・・・そ、そうなんだ」

 

「あぁ、そうだぞ」

 

其れでも此れを何とかシャルロットは耐え抜いた。

多分・・・と云うか、絶対にラウラには相手へマウントを取っている自覚はないだろう。

されども彼女は軍人。戦う事を専門の生業としている人間だ。自覚はなくとも無意識に”敵”へ対するけん制を行っていたのである。

しかし、いくら恋敵と云ってもシャルロットは未だにラウラを大切な親友だと思っていた。

 

「ね・・・ねぇ、ラウラ?」

 

「ん? なんだ?」

 

「まだ、ボク達・・・友達、だよね?」

 

恐る恐る投げ掛けるシャルロットの疑問符にコテンッと首を傾げた後、ラウラは「当り前ではないか!」と表情を照らす。

そんな彼女の表情に安心したのか。シャルロットは仲直りの握手と云わんばかりに手を差し出すと、其れをギュッと握り返すラウラ。

だが・・・・・

 

「けれど・・・シャルロット?」

 

「ん?」

 

「私は一切譲るつもりはないぞ」

 

「・・・ッ・・・」

 

ギョロリとラウラは刺し貫く様な鋭い眼を向けたのだ。

ハッキリとした独占欲が渦巻く灼熱の瞳は、強固で強靭な意思が感じられる。

 

「・・・・・わかってる、わかってるよ。でも・・・ボクだって、諦めた訳じゃないから」

 

其の燃える様な眼にシャルロットは若干怖気づきながらも強く強く自分よりも一回り小さな手を握った。

 

「・・・・・そうか・・・」

 

其れを察したのか、ラウラは口端を引き攣らせる。あの大酒飲みの蟒蛇を彷彿とさせる笑顔を浮かばせたのだ。

・・・傍から見れば随分と異様な光景だった事だろう。

あの愛らしい白い黒兎が、愛くるしい子犬に向かって得も言われぬ美しさと恐ろしさを併せ持った表情をしていたのだから。

 

 

 

 

 

 

「阿ーっと・・・異常はなし、よと!」

 

第七アリーナへ警備の為の赴いた春樹は後頭部をペンで掻きながら重要リストへチェックを付ける。

 

アリーナを警備するワルキューレ部隊隊員や実働部隊の教員に警備の進展具合と進捗状況を確認した後、彼は休憩がてらにアリーナ会場で行われている50m走へ目をやった。

自分の恋女房が出場する競技なのだから当然と言えば当然なのだろうが・・・・・

 

「・・・なーして、ウチの学校の体操服はブルマなんならな?」

 

彼は観覧席の手すりへ頬杖を突きながらブウを垂れる。

IS学園の体操服がブルマだという事は前々から知ってはいた。「うっわ・・・学園上層部の連中の性癖って歪んどらん?」等と云うくらいには、「正直言って、目のやり場に困るでよ」と照れるくらいには思っていた。

けれども其れも半年以上前の話。今思う事はと云うと―――――

 

「阿ーッ、野郎はどいつもこいつもイヤラシイ目をしやがって・・・招待客でなけりゃあ今すぐに”のっぺらぼう”にしてやるってからに」

 

ギリギリギリギリ奥歯を軋ませながら不満気に観覧席を見渡す。

春樹としては観覧席に居る観客などどうなろうがどうでも良く、生徒が守られれば其れで良いと考えていた。

だから「なぁ、あの子可愛くね?」とか「うっわ、あれエッロ!」等とのたまわっている招待状持ちの野郎の生皮を剥ぎたくて剥ぎたくて敵わなかった。

品のない言葉を吐き散らしているのは、大方、学園へ多額の出資をしている投資家の身内か何かだろう。

だが、其れで怯む男ではない。もしも此の輩共が生徒に何かしようものなら有無も言わさず爪を剥いで顎の骨を割る筈・・・と云うか、確定事項だ。

・・・されども・・・・・

 

「うわー、肌白ぇし、細ぇ・・・」

「あの銀髪って本物かよ? かわいいな!」

「おい、あとで声かけてみようぜ」

 

「・・・・・・・・阿”ぁッ?

 

ラウラであろうキーワードが出る度にドロリとした濃厚な殺気が否が応でも滲み出る。

其れでも其れを聞いて其の度に殴り込みをかけていたらキリがない。

 

〈ちょっと春樹、落ち着いて落ち着いて〉

 

「阿~・・・畜生め、チクショウめ、ちきしょうめッ!」

 

そんなイラつきで身体を震わせる度に「おー、よしよし」と琥珀が彼の頭を撫でる。

其れでも機嫌が治らないのか。「グロロロッ・・・!!」と不機嫌を囁く春樹。

傍から見れば、厳つく黒いフルフェイスマスクを被ってIS学園特有の白い男子学生服を着た男が唸りを挙げているので、不気味な事この上ない。

 

「ラウラちゃんが褒められるんは嬉しい事なんじゃけれども・・・如何せん野郎どもの眼が気に入らん! はぁ~・・・俺ってつくづく器の小さい男じゃわぁ~」

 

〈複雑な男心ってやつね〉

 

「・・・琥珀ちゃん。マグロの目玉ってとっても美味しくて栄養価が高いんよ?」

 

〈・・・・・なんでこのタイミングでそんな話をするの?〉

 

「破破破・・・何でじゃろうなぁ?」と不穏に笑う春樹。

 

「あら・・・貴方は・・・・・?」

 

そんな守る側の警備員なのに明らかな不審人物丸出しの彼へ掛ける声が一つ。

「阿い?」と振り返ってみれば、其処に居たのは黒服の女性SPを連れた大人の色気が漂う白人女性。其の美貌は、先程までアリーナの花達に釘付けだった男どもの目を奪うには十分であった。

其の人物を網膜に確認した途端、春樹は深々と礼儀正しくお辞儀を披露する。

 

「ッ、これはこれはデュノア夫人! いつもご主人、デュノア社長にはお世話になっております!!」

 

彼女の名はロゼンダ・デュノア。

取引先のお得意様であるデュノア社社長、アルベール・デュノアの妻であり、シャルロットの継母だ。

 

「本日はこのような無粋な仮面で失礼いたします!」

 

「そんな堅苦しくしなくて結構よ。私達も今日はプライベートだから」

 

「私”達”?・・・と云う事は、社長も此処へ?」

 

「えぇ、そうよ」と云う肯定文に春樹は仮面の下で口をへの字に困らせた。

本当なら此のまま挨拶周りに行くべきなのだろうが、彼は前回IS統合対策部製新型EOSの件でデュノア日本支社を訪れた際、アルベールとシャルロットとの件で喧嘩別れの様な事になってしまった為に個人的にはとても気まずかった。

 

「・・・無理に来なくても良いわ、Mr.ギデオン。私は貴方とあの人に何があったから知っているから」

 

「い、いえいえ。俺・・・私も社長へ罵詈雑言吐いた上に社長室を汚してしまいましたので・・・・・今更ながら、申し訳ございませんでした」

 

「謝らないで頂戴。元はと云えば、あの人が”あんな提案”を持ちかけた事が原因。私からもキツく言っておいたわ。でも・・・本当に良いの?」

 

「何がです?」

 

「いきなりの提案だったけれど、貴方にとってはとても良い話だと思うのだけど?」

 

ロゼンダの台詞に春樹は眉をひそませる。

仮面を被っている為に表情は読めないが、低姿勢から一転して肩を怒らせた。

 

「確かに・・・確かに社長からの提案はとても良いお話でした。私の様な田舎出の、ISがただ使えるだけの野郎には勿体のないお話・・・・・ですが・・・」

 

春樹はそう言って話を途中で切ると、流し目でアリーナの方を見る。

其の彼の視線の先には、流れ星の様に美しい銀髪を後ろ手に纏めた愛しい恋人が50m走のスタートラインに立って居た。

 

「俺にゃあ、もう居るもんで」

 

仮面の御蔭で表情は読み取れないが、きっと彼は優しく微笑んでいるだろうとロゼンダは察し、ただ「・・・そう」と呟くのみ。

 

「貴方は・・・誠実な人、なのね」

 

「誠実? いえいえ、俺はそねーに立派な御人じゃありません。唯の功名ガキ、度量の狭い男です」

 

「謙遜ばかりね。でも、あの娘を悲しませるような真似は頂けないわ。お腹を痛めた子じゃないけれど・・・私の大切な娘よ」

 

「破破破・・・ちょいと其れは、お約束できませんね」

 

ロゼンダの言葉に春樹が苦笑いを浮かべた其の時だった。

パン! と乾いた発砲音が鳴り響く。

 

「よっしゃー! 行けやッ、ラウラちゃぁああん!!」

 

スタート合図と共に彼は手すりへ足を引っ掛けて人一倍大きな声で轟き叫ぶ。

其の御蔭かどうかは知らぬが、彼女は見事一等賞を取り、観覧席で応援してくれた恋人に向けて二人にしか解らない合図を送った。

其れに春樹はちょっとした優越感に浸ったのは、また別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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