IS/Drinker   作:rainバレルーk

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※キャラ崩壊アリ



酔い覚まし:幕内・赤いは酒の咎
第165話


 

 

 

「―――――俺は、”自分の世界”を守りたいだけです」

 

内閣直属特務機関、IS統合対策部。

そんな組織の副本部長と云う大役を任されている長谷川 博文は、ふと”ある少年”の言葉を思い出す。

 

其の少年は、自分の事が嫌いだと言っていた。

其の少年は、自分の事を無力だと言っていた。

其の少年は、自分の事が愚かだと言っていた。

其の少年は、自分の羞恥を隠す為に酒を喰らうと言っていた。

其の少年は、自分の人生に酷く疲れた様な濁った瞳をしていた。

・・・・・それでも。

 

「其の為なら俺は喜んで『利用』されます。其の代わり、俺は嬉々として貴方達を『利用』しますよ。阿破破破ッ!」

 

其の少年は、”笑う”。

ただISを使えるだけと謂う理由で家族と引き離され、孤独に惑い、理不尽に打ちのめされながらも少年は”嗤う”。

其れは、少年の精一杯の強がりだったのだろうが、長谷川には其の”哂い声”が耳に残っていた。

まるで自分達を嘲笑うかの様な表情が強く印象に残っていた。

憔悴しきっているにも関わらず、笑みを浮かべる少年へ長谷川は酷く興味を抱いていた。

・・・そして、今も尚、其の少年への興味は益々強まっていた。

 

≪ご覧下さい。今、事務所へ検察庁の方々が次々と入って行きます!≫

≪捜査関係者の話では―――――≫

 

現在テレビで放映されているのは、ある代議士の事務所に家宅捜査が入るニュース映像である。

しかも一人ではない。

一人は防衛省の事務方であった。

一人は野党第一党の名物議員であった。

一人は最近売り出しの若手のホープであった。

一人は芸能界から鳴り物入りで議員になった人物であった。

しかも其れらに関した企業からも胡散臭いボロが芋づる式で出て来た。

其の他にも様々な人物が居たが・・・皆が皆、共通している点と言えば、”ある少年”が策を弄して手に入れた情報によって陥れられた点だろう。

 

「・・・やはり、凄まじいですね」

 

一緒にテレビを見ていた秘書官の高良は苦笑いを浮かべて噂の彼を思う。

 

「あぁ。益々、彼が味方陣営であった事をありがたいと思うよ」

 

其の高良の発言にニヤリと笑みを浮かべた後、パリッとしたフォーマルジャケットへ腕を通す。

今回の騒動の一件により、長谷川が所属する派閥へ敵対する売国奴まがいの政敵共は大幅に減少したかに見える。

だが、切り落としたのは僅かばかりの末端連中。本当の”膿”を出すのはこれからだ。

 

「(君がどこの誰であろうと関係ない。・・・君の其の頑張りに私達は少しでも応えてあげたいんだ!)」

 

キリッと表情を鋭くし、長谷川は踵を鳴らして行くのだった。

 

―――――さて、こんな政界きっての若獅子を滾らせる少年はと言うと・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おんどりゃテメェッ! くたばりやがれやぁああッ!!

「きゃぁああああああッ!!?」

 

何故か道着袴姿で、同じく道着袴姿の少女へ向けてありったけの力を込めた拳を振り下ろしていた。

・・・無論、畳には拳大の穴が開く。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

―――――学生の本分とは何であろうか?

勿論、其れは他ならぬ『勉学』である。

無論、いくらIS等と云う超兵器を扱うIS学園の生徒も例外ではない。

其処等の進学校よりも高いレベルの教育に加え、其れにISのとんでも物理法則を理論的に纏めた必須学科もあるのだ。

余程の秀才でなければついて行けない。

 

さて、そんな世界トップレベルのIS学園に半ば強制的に入学させられたついこの間まで地方の田舎公立中学生だった少年がついて行く事が可能であろうか?

毎日毎日必死こいて朝も昼も夜も平日も休日も勉強すれば可能と言えば可能だが、其れに命の遣り取りをする様な『イベント』に強制的に巻き込まれたらどうなるか?

・・・まず無理だろう。

 

『学園のケダモノ』『学園の狂戦士』『学園のイカレポンチ』『ギデオン・ザ・ゼロ』『金眼四ツ目の銀飛竜』等と云った畏敬の名を幾つも持つ『我らが刃』こと、二人目の男性IS適正者である清瀬 春樹は”劣等生”である。

入学当初は、其のハイレベルな学力に喰らい付こうと必死になってはいたものの・・・『ゴーレム事件』を皮切りとしたイベントと言う名の『喧嘩』に巻き込まれ行くにつれて増えるストレスと酒の量により、春樹は”諦め”を覚えた。

 

『酒』と『喧嘩』。

其れが彼の過ごして来た日常だった。

其れからしばらくし、IS学園一年生の半分を終えた頃になって漸く自他共に認める相思相愛の仲となったドイツ代表候補生であるラウラの御蔭で酒とストレスの量はだいぶ減ったのだが・・・・・まぁ、其処は年頃の男女の恋人関係だ。

『酒』と『喧嘩』と『セックス』。

春樹の学園生活はお世辞にもとても健全とは言えぬ爛れたものに成り果ててしまっていたのであった。

 

其れでも彼は学力以外の面では優等生達とは変わらぬ成績を修めていた。

特に学園防衛を担う私設防衛部隊ワルキューレ部隊を立案発足指揮し、名ばかりではない大手柄を挙げた功績は大きい。

御蔭で留年の心配は無くなったのだが・・・其れは其れ、此れは此れである。

 

ド畜生めぇええッ!!

 

IS学園大運動会後に行われた筆記テストの結果は散々たるものであった。

赤点は免れたものの周囲に居るセシリアやシャルロット、簪達の優等生達等に比べると余りにも目も当てられぬ凄惨たる結果だったのである。

毎夜毎夜くんずほぐれず同じ寝床で愛を語らうラウラでさえ今回のテスト結果は高得点の嵐。

特に授業中でも居眠りが目立つ本音が成績上位者の欄に名を連ねたのは地味にショックであった。

日本代表候補生の専用機所有者なのに、生徒会役員なのに、ワルキューレ部隊の総隊長なのに、テスト成績はドベである彼をよく思わない連中は聞こえるか聞こえないかの音量で陰口をたたいた。

其のせいで春樹は普通に落ち込んだ後、いじけて拗ねて躁鬱状態となった。

 

そんな凄まじく面倒臭い性格を矯正してやろうと生徒会長である楯無は、ストレス発散の為には運動するのが良いと武道場へ彼を連れて行ったのだが・・・・・

 

往生しやがれぇえッ!!

「ちょッ、ちょっと待ってってばー!?」

 

連行の仕方が悪かったのか。春樹の不機嫌さはカンストし、確実に命を獲る攻撃を仕掛けて来たのだ。

運動音痴から一騎当千万夫不当の狂戦士へジョブチェンジした彼の攻撃は、対暗部組織、更識家当主である楯無でも流石に苦戦した。

 

「ハァッ・・・ハァ・・・ッ! ちょ、ちょっと春樹くん? がっつき過ぎじゃないかしら? 流石のお姉さんも疲れちゃうわ」

 

ガルルルッ・・・!! じゃったら当たれや、此の女郎が」

 

「当たったら確実に骨が折れちゃうじゃないの!」

 

「阿呆な事言うな。骨が折れんくらいには加減しとる・・・・・当たっても肉が千切れるか、ゲロを吐くくらいじゃ。其れかハラワタが破裂する。ハラワタをぶちまけろッ!」

 

「ダメじゃない!!」

 

「喧しいわい!!」と彼は一撃確殺の打撃を放つ。楯無は其れを寸での所で回避する事で、彼女の代わりに壁へ春樹の拳がめり込んだ。

 

「あッ、畜生!? 抜けねぇ!!」

 

「ッ・・・ふっふっふっ、チャーンス!」

 

此の隙を逃す楯無ではない。

彼女はササッと春樹の腕へ自らの四肢を絡ませると一気に其れを締め上げる関節攻撃を仕掛けた。

 

「どーう? 降参するなら今の内よ?」

 

先程とは打って変わり、余裕ぶったしたり顔で春樹の顔を覗く楯無。

常人なら大の男でも呻き声を挙げる負荷が関節へかかっているのだ。勝利を確信するのは至極当然だった。

・・・だが相手は骨を折られ、肉を千切られ、ハラワタが飛び出しても戦闘不能にならなかった男だ。

 

「・・・なら、其のまま”砕く”だけじゃ」

「えッ、ちょ―――――」

 

春樹は腕に巻き付いた楯無ごと腕を振り上げると其れを一気に畳へと振り下ろす。

 

「ッ、とぉおお!!」

 

しかし、眉目秀麗な楯無の顔面が畳へ直撃する寸前。彼女は春樹の腕に絡ませていた身をひらりと宙に舞わせ、彼との距離を置く。

其の緊急回避に春樹は「ッチィ!」と忌々しそうに舌を盛大に打ち鳴らした。

 

「はぁ・・・はぁッ・・・はぁ・・・! ちょ・・・ちょっと春樹くん?! 本当にお姉さんの頭を砕く気だったでしょ!!」

 

「応ッ。腐ったメロンみてぇにグシャリとな」

 

「誰が腐ったメロンよ!!」

 

「もう、ほんとにヤダ・・・この後輩」と楯無は後ろ手に両手をついて腰を抜かしたが、春樹は未だ脂ぎった瞳をしており、彼女へ向けて何とも妙な構えをとったではないか。

 

「あ・・・あの、は・・・春樹くん? なーんで私に殺気立った目を向けて来るのかな? お姉さん怖ーい」

 

「阿? んなモンまだ続けるけんじゃろうが」

 

「・・・お願いします。一休みさせてください」

 

楯無は静かなれども迅速に正座をしつつ頭を下げた。

流石の忍びの家系の御令嬢も体力バカのバーサーカーゴリラと成り果てた地方出身者には付いて行く事が難しくなったようだ。

 

「おい、フザけんじゃねぇよ。部屋ぁ引き籠もっとった俺を無理無理連れ出しておいて、俺より先にバテるんじゃねぇでよ」

 

「そのことについては謝るからぁ! 休ませてよぉ!!」

 

「五月蠅ぇよぉ! もうちょっとで何か掴めそうなんじゃ。もうちっと付き合え・・・・・次は確実に捻じ切ってやるけんなぁ!」

 

「物騒な事言わないで!! それに・・・なにか掴めそうって、なにが掴めそうなの?」

 

「・・・知らん。何かは何かじゃ。ボンヤリとした『拳法』みたいな感じじゃ」

 

「・・・・・はぁッ、まったく。アニメとか漫画ばっかり見てるからテストの点が悪いのよ」

 

「おんどりゃテメェ・・・云うてはならん事を。やっぱ、ブチのめいてくれるわ!」

 

自分から誘っておいて駄々をこねだし、あろう事か春樹の地雷を踏み抜いた楯無だったが、眼を三角にする彼の表情を見た途端にニヤリと口端を吊り上げたではないか。

 

「フフッ・・・やっと、いつもの顔になったわね」

 

「阿ッ、何がじゃ?」

 

「やっぱり、春樹くんは落ち込んでいるよりもその方が君らしいわ」

 

「ッ・・・あぁ、調子狂わされるのぉ!」

 

何だか納得のいかない表情を晒しつつ春樹はドッカリと其の場に腰を据える。

落ち着いてみれば、かなり汗をかいていたようでグッショリ濡れた道着が鬱陶しい。「畜生め」と彼は道着をシャツの様に脱いで大の字となった。

 

「ッ、ちょ、ちょっと!? なんて格好してるのよ!!」

 

「こうした方が涼しいんじゃ。楯無もすればエエが」

 

「もうッ、馬鹿な事言わないで! そのままだとカゼひいちゃうから着替えて来なさい!!」

 

頬をほんのり朱鷺色に染めて喚く楯無に春樹は「へいへい」と冷めた台詞を吐いて更衣室へ向かう。

其れを見送った楯無は「ふぅ、やれやれ」と溜息を漏らした後、朱鷺色だった頬を其れよりも濃い紅に染め上げた。

 

「はぁ・・・・・ん~ッ! かっこよかったー!」

 

春樹が着こんでいた白い道着の下にあったのは、鋼の様に鍛え上げられた上質な筋肉。

多感な思春期の少年が水着のグラビアアイドルを見て性的興奮を覚える様に花も恥じらう乙女である彼女もまた鼻息を荒くしたのである。

更に加えてそんな鋼の肉体に付けられた無数の傷跡が、くっきりと刻まれた刀傷に銃傷に火傷が、肌を伝う汗で艶やかで色っぽく見えたのだ。

 

「私、あの体に抱えられて・・・お姫様抱っこしてもらって・・・んン~~~ッ!!」

 

真っ赤な顔でごろんごろんと身悶えする楯無。

彼女が思い出すのは、ワールドパージ事件の最中だ。襲撃者共の魔の手から颯爽と現れて自分を救い出してくれた彼の腕の温もりだ。

 

「また・・・また春樹くんに抱きしめて、もらいたいなぁ」

 

あの時の感覚を思い出しながら名残惜しそうに自身の肩を自分で抱いて溜息を吐き漏らしつつ道場の天井を見上げた彼女の瞳にふと『あるもの』が映った。

 

「・・・・・・・・ごくりッ!」

 

思わず楯無が生唾を飲んでしまった其の『あるもの』とは、乱雑に畳の上へ放置された

じっッとりと春樹の汗がタッッップリ含まれた道着である。

そんな汗臭い・・・いや、”雄臭い”代物に楯無は「ダメよッ、だめ!」と言いながらも手を伸ばし、其れを大切そうに抱き締めた。

 

「すぅ~・・・はぁあッ・・・・・いいにおーい・・・」

 

楯無はとろーんと艶やかに目を潤ませ、胸一杯にむせ返る汗臭を飲み込む。

煩いくらいドクンッドクンと心臓が高鳴って行くのが理解できた。

 

「春樹くん・・・春樹くぅん・・・ッ!

 

切羽詰まった吐息と共に艶やかで色っぽい声色で春樹の名を呟く彼女であったが、甘美で香しい匂いに夢中になるあまり背後へ来た気配に気づくのが遅れたのは、忍びの家の棟梁として如何なものだろうか。

 

「―――――・・・おい」

「ひゃい!!?」

 

投げ掛けられた若干不機嫌な声に上擦った変な声色を発した後、恐る恐る振り返ってみると其処には腕組み仁王立ちの”銀髪の黒兎”が右の灼眼を三角にしていた。

無骨な黒の眼帯と相まって威圧感が凄まじい。

 

「ラ・・・ラウラちゃん、ワルキューレ部隊の子たちと一緒に訓練してたんじゃ・・・ッ?」

 

「なに、それならセシリアや四十院の好意に甘えて任せている。そういう貴様は何をしているのだ?・・・えぇッ?」

 

どうやら落ち込んでいる恋人を元気付けてやろうと早めに訓練を切り上げたにも関わらず、自室に帰投してみれば其の肝心な恋人が居ないのだ。

何処に居るのだろうと彼の専用機である琥珀へプライベートチャンネルをかけてみれば、なんと武道場で二人っきりでくんずほぐれずヤッていると云うではないか。

・・・ラウラは奥歯をギリリッと噛み締めた。

 

「生徒会長であろうと言うモノが、”妻”である私の留守中に”夫”にちょっかいを出そうとは・・・見下げ果てた根性だな」

 

「い・・・いやだわ。誤解よ、ラウラちゃん。私は春樹くんが酷いテスト結果で落ち込んでいたから励ましてあげようと思―――――」

やかましいッ!!

 

ラウラの凄まじい怒号がビリビリと武道場へ轟き響き渡る。

普段では考えられない殺気立った表情とオーラに思わず楯無は一歩後ろへ足を引いてしまう。

 

「今になって春樹の魅力に気付いた愚か者共が、蛆蝿のようにむらがりおって・・・! もう春樹は私の・・・私のものなのに・・・ッ!!」

 

「ラ・・・ラウラ、ちゃん?」

 

ラウラはワナワナと同世代と比べても小さい肩を震わせ、ルビー色の瞳をどんどん年月の経った赤錆色へ変色させていく。

・・・因みにだが、現在の学園での春樹の評価は本人が思っているものに”反比例”する様に高い。

理由を挙げるのならば、『キャノンボールファスト事件』で垣間見せた彼の真の力であろう。

『学園の王子様』も霞むあの強さに加え、『ゴーレムⅢ事件』で見せたリーダーシップに事件の渦中に居た今まで彼をよく思わなかった生徒達は春樹を認めざるをえなかった。

更に多くの鉄火場をくぐって来た御蔭なのか。彼の顔面偏差値に『イケメン』とは違う属性が付与された。

其の属性の名は『男前』。戦う男・・・いや、勇ましい『漢』となった春樹の顔は、身内ぐらいしか異性との関わりがない女子高育ちの多いIS学園生徒にはかなり堪らないものになっただろう。・・・其のせいでラウラの心労は多くなった。

前述の彼女の発言の通り、今更になってワラワラと春樹に群がるメスブ・・・・・生徒が増える増える。

ワルキューレ部隊にも彼目当てで入隊を希望するもの出る始末だ。

・・・無論、そんな半端な輩は鬼教官のドイツ軍仕込みの訓練によって蹴落とされるが。

 

「ちょ・・・ちょっと落ち着きなさいよ、ラウラちゃん」

 

「落ち着いていられるか!! よくも私の楽しみを獲りおって、この泥棒猫がッ! それに・・・貴様、その手に持っているものはなんだッ? 春樹の、春樹のたまらないいい匂いがするぞ!」

 

「こ、これは・・・別になんだっていいじゃない! あなたには関係ないでしょ!」

 

「大ありだ! それは春樹の着ていたものだ! それもたっぷりと春樹の汗が浸み込んだものだろう?! 私にはそれを洗濯する義務がある! 妻としての義務がッ!!」

 

「だ、だめよ! これは春樹くんに貸してあげてたものだから・・・私が責任をもって洗濯するの!!」

 

「そんな事を言って・・・あとでそれをちゅうちゅう吸う気だろう?!」

 

「バッ、バカじゃないの!? そんな事する訳ないじゃない!! あッ、あー! もしかしてラウラちゃんはそうしたいのかなー?」

 

「なにを言っている。そんな事は当り前だろう。当然の権利だ。しっかり楽しんだ後で洗うに決まっているだろう?」

 

「ッ・・・あ、あなた・・・春樹くんが関わるとキャラ変わり過ぎじゃない?」

 

「さも当然」とばかりに真顔となったラウラに色んな意味での『狂気』を感じた楯無は思わず口をへの字に曲げてしまうが、彼女とて引けぬ理由がある。

彼女は彼女で春樹の着ていた其の道着を私物のテディベアに着せて抱き枕にすると云う下心丸出しの思惑があるのだ。

 

「・・・ならば、仕方あるまい。こうなれば実力行使だ」

 

「はぁッ・・・しょうがないわね。ラウラちゃんがあんまりにも聞き分けの悪い子だから、お姉さん大人げなくなっちゃおうかなぁ?」

 

「ほざけ! ロシア代表の実力・・・試させてもらおうかッ!」

 

遂にISを出して臨戦態勢を構える二人。

そんな二人の間に仲裁に入る人間が一人居た。

 

「・・・・・何をしょーるんじゃ?」

 

「ッむぐぅ!?」

「春樹くん?!」

 

袴姿からシャツ姿に着替えた春樹である。

彼は毛を逆立させて敵を威嚇する猫の様なラウラの背後を執ると落ち着かせる為なのか。彼女の口の中に自分の指を突っ込んだ。

 

「落ち着け落ち着け、ラウラちゃん。じゃけど楯無、あんたも下手に煽るなや」

 

「ご、ごめんなさい・・・思わず熱くなっちゃったわ。お姉さんってば、うっかり!・・・と云うか、大丈夫なのソレ?」

 

「阿ん?」

 

楯無の言う『ソレ』とは、口へ捻じ込まれた春樹の指をガジガジ噛み締めて「フゥーッ・・・フゥッー・・・!」と鼻息を荒くし始めたラウラの事である。

 

「あぁ、大丈夫大丈夫。なぁ、ラウラちゃん?」

 

ちゃぷッ・・・・・♥ あぁ・・・だ、大丈夫・・・大丈夫だぞ! だから・・・春樹、もっと指なめさせてくれ♥♥

 

恍惚の表情を晒すラウラに対し、「そ・・・そう」と楯無は口端を引き攣らせてた。

すると其れを察したのか。そんな彼女に向けてラウラは潤んだ目を細めて口端を吊り上げた。

 

「ッ・・・むぅ!」

 

「何ならな? 突然、鯖河豚みてぇに脹れやがって。よー解らんやつじゃのぉ」

 

「なんでもない! フンだ!! 勝手に二人でイチャイチャすればいいじゃないッ!」

 

「いや、勿論其のつもりじゃけど? アンタが途中でバテてくれたせいで消化不良じゃけんな。あぁ後、道着は俺が洗っとくわ」

 

「えッ、ちょ―――――」

 

そう言って春樹は山賊の様にラウラをお米様抱っこする。

まさか自身の発言を肯定されるとは思っていなかった楯無の目は点となってしまい、一方で担ぎ上げられたラウラは何とも艶やかな表情を朱鷺色に染め上げた。そして、そんな彼女と共に「じゃ、そーゆう事でー」と春樹は武道場を去って行く。

・・・跡に残されたのは、真っ白な目であんぐりと口を呆けた様に開ける哀れなロシア代表だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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