IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第168話

 

 

 

「・・・・・はぁッ~・・・なんで、あなた達ってば・・・はぁ~ッ・・・!」

 

楯無はもう溜息が止まらなかった。

自分の右腕として頼りにしている虚の妹、本音からの連絡によって現場となった武道場へと駆け付けてみれば、其処に広がっていたのは目も当てられぬ光景であった。

 

「阿りゃん? 応、会長殿や。ぜぇぜぇ云うて、どうしたんよ?」

 

「はあッ・・・ぐぐ、ぁ・・・ッ」

 

キョトンとした表情で圧し折れた竹刀にガムテープを巻いて直そうとしているのは、問題児にして学園の狂戦士として有名な二人目の男性IS適正者、清瀬 春樹。

其の前方の壁へ力なく鼻血を垂らして項垂れているのは、世界最強のIS使いブリュンヒルデの弟にして学園の王子様としても有名な世界初の男性IS適正者、織斑 一夏。

IS学園に二人しかいない男子学生である両者だが・・・其の仲は正に犬猿。呉に対する越。ゴジラに相対するキングギドラだ。

 

そんな二人は以前、ISを纏った状態で試合を行った事がある。

当時、一夏の纏う専用IS『白式』は先の『銀の福音事件』で第二次移行によって第二形態・『雪羅』へ昇華していた為、未だ第一次形態の状態であった専用IS『琥珀』を纏う春樹の苦戦が予想された。

だが、ところがどっこい蓋を開けてみれば、まごう事なき春樹の圧勝であった。

其の春樹も『キャノンボール・ファスト襲撃事件』で第二次移行を経験し、第二形態・『極夜』を会得。更に其の状態でいる事に甘んじる事なく、彼はもっともっと強さを求めたのだ。

しかし、其れは同じ男性IS適正者に敗北の二文字を叩き付けられた一夏も同じ。

今まで自分よりも格下だと思っていた気に喰わない男にぐうの音も出せぬ程にコテンパンにされたのだから勿論の事だろう。

 

元々、一夏はIS学園入学までISに関する知識は皆無だったにも関わらず、驚異的なスピードで腕を上げた。

ただし、ブリュンヒルデの弟だからIS適性も高い・・・と云う訳ではない『B』ランクであり、ISの操縦に関しては学園に入るまで訓練を受けていなかった素人である為、長期間訓練を受けてきた他の専用機持ちと比較すると実力は劣っている。

加えて幼い頃から姉である千冬に守られて来た事から『誰か・何かを守る事』に強い憧れを持っていた為、其れにこだわるあまり自身の実力を弁えない行動をとったり、直情的になったりする事が多々見られる。

更に考えが表に表れ易いらしく、戦闘においてもよく考えを読まれている事が多々あった。

其れに比べて春樹の方はと言えば、彼もまたIS学園入学までISに関する知識は皆無であり、更に身体能力も平均よりも下の運動音痴であった。

しかもIS適正も一番最低ランクである『E』ランクであり、其のせいで周囲からの評価も低かった。

・・・だからこそだろう。周囲からの軽蔑や嘲笑に彼は負けじと憤怒し、アルコール依存症と鬱病を患いながらも自らを自らとしてあり続けた。

其の心を潰し、相手に己を悟られぬ様に心掛け、蛇の様に好機を待ち続けた事が功を奏したのか。不運と踊るばかりだった彼にも幸運が差し伸ばされたのである。

加えて春樹には一夏と違い、”才能”があった。戦いに対する圧倒的なセンスがあった。生まれ出る時代が違えば、手腕一つで一国一城の主になる程の才覚が彼にはあったのだ。

そして、また一夏とは違う”魅力”を此の男は持っていたのである。

其の魅力が人や物との”縁”を手繰り寄せ、今や清瀬 春樹なる吾人は自らの専用機を纏って駆ける日本代表候補生だ。

 

そんな同じ男性IS適正者でありながら、全く異なる経験と才能を有した二人が今度は生身での試合を行った。

結果は、一夏の惨敗。本気を出すまでもなく春樹の勝利で幕を閉じるのであった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ッ、クソ・・・!」

 

試合の後、武道場の壁面へ叩き付けられて気を失ってしまった一夏は意識を覚醒して直後に思った事は、「なんで? どうして?」と云った疑問符だった。

彼としてはISを扱った試合に負けはすれど、生身での試合、其れも自分の領分である剣道での試合ならば利があると踏んでいたのだろう。

そして、人を人とも思わぬ悪逆非道な春樹を打倒し、彼に騙されている生徒達の目を覚ましてやる算段だったのだろう。

・・・まぁ、そもそもの前提が間違えっているのだが。

 

何故に一夏は春樹に生身での勝負に勝てると思ったのか。

ISを装着した状態での試合で敗北を経験した一夏は、確かに強くなろうと彼なりに努力をしたのだ。

しかし・・・・・

 

「どう? 少しは頭が冷えたかしら?」

 

苦虫を嚙み潰した様な表情を両手で覆い隠す彼に声を掛けるのは、保健室の窓辺へ腕を組んで寄り掛かる楯無であった。

けれども彼女の声に一夏は答える事はなく、バツが悪そうにそっぽを向いたのである。

そんな悪戯が見つかって怒られる前の子供の様な態度を示す彼に楯無は今日何度目かの溜息を吐き漏らした。

 

「なんで、あなた達二人って仲良くできないの? 学園にたった二人しかいない男の子なのに」

 

「・・・アイツ、清瀬は?」

 

「竹刀を折っちゃったから反省文を書いているわ。一体どんな風に振り回せば、束ねた竹が折れるのかしら? 他の専用機持ちの子達も君達二人を止めなかったから反省文よ」

 

「ッ、ちょっと待って下さい! これは俺と清瀬の問題です! セシリア達は関係ないでしょう!!」

 

飛び起きた一夏に楯無は「・・・冗談でしょ?」と再び溜息を吐き漏らす。

 

「関係大ありよ、大あり。君達は世界に二人しかいない男性IS適正者よ。その二人の私闘を止めなかった事は、専用機を持つ代表候補生としての責任を問われるわ」

 

「でも・・・!」

 

「だいたいね・・・今回も一夏くん、君が春樹くんに突っかかった事が原因だと聞いてるんだけど? 一体、彼の何が気に入らないの?」

 

楯無の諌言交じりの疑問符に一夏は目を伏すとワナワナ拳を震わせて声帯を震わせた。

 

「アイツは・・・清瀬は、人を人とも思わない心の冷たい人間なんです。人の気持ちも知らないで、へらへらした態度で簡単に心を踏みにじれるなんですよ! そんなヤツがISなんて・・・!」

「・・・・・はぁ~ッ・・・!」

 

三度呆れた様な溜息を吐き漏らす彼女に対して一夏は「どうしてそんなにも溜息を吐くんですか?」と目を向ければ、其処には随分と冷めた瞳をした楯無が居るではないか。

 

「それは一夏くん、君もでしょう?」

 

「ッ、なに? 俺のどこがアイツと、清瀬と同じだって言うんですか?!!」

 

「君だって、人の気持ちも知らないでISを・・・力を振り回しているじゃないの。それも随分と子供っぽい理由でね」

 

「こ、子供っぽい・・・? 俺はみんなを守る為にISを使っているんだ! 清瀬の様にただ悪戯にISを、力を自分勝手に自分の為だけに振り回している訳じゃない!!」

 

「あぁ、そう。それで・・・誰を守ったの?」

 

「えッ・・・?」

 

「みんなを守る為って言ってたけど・・・その力で一体誰を守ったって云うの?」

 

「そ、それは・・・ッ!」

 

楯無の疑問符に一夏は口籠ってしまう。

「みんなを守る」と言いながら彼は一体誰を守ったのだろうか?

いや、守っている。銀の福音事件で作戦区域内の海域で宝石珊瑚の密漁をしていた密漁者連中を福音の魔の手から守っている。

しかし、其れは到底誇れる事だろうか。いや、違うだろう。

 

「それに一応春樹くんは私達の命の恩人なんだから。お姉さんとしては、あんまり彼といがみ合って欲しくはないのだけれど」

 

「は? どうしてアイツが、清瀬が俺達の命の恩人なんですか?」

 

「あら? ワールドパージで皆が学園の中央システムへダイブしている間、春樹くんは命懸けで私達の事を守ってくれていたのよ。知らなかった?」

 

「ッ、で・・・でも、俺達を守ってくれたのは会長の筈じゃ!」

 

「まぁ、私も頑張ったんだけど・・・不覚にも隙を突かれちゃってね。もう絶体絶命の乙女のピンチ!って時に春樹くんが駆けつけて来てくれたの! あぁ・・・カッコよかったなぁッ・・・」

 

「は、はぁ・・・ッ」

 

若干想い出補正のかかったワールドパージ事件時の春樹を思い出し、うっとり乙女の顔を・・・いや、雌の顔を覗かせた楯無に一夏は戸惑った。

いつも自分を年上ぶった表情で揶揄う彼女が、随分と瞳を潤ませて頬を紅潮させているのだから。

其れがショックだったのか。俯いた一夏に対し、楯無は彼が反省したのかと思って保健室を後にした。

 

「どうでしたか、織斑君の様子は?」

 

「一応、口を酸っぱくしたけど・・・ま、彼にはいい薬になったでしょ。それよりも虚ちゃんの方が大変だったんじゃない? ”あの二人”が相手だったから」

 

保健室前の廊下で楯無の帰りを待って居た虚に彼女は労いの言葉を掛ける。

楯無の言う”あの二人”とは、一夏の幼馴染ファースト・セカンドのあの二人だ。

 

「そうですね。凰さんの方はともかくとして・・・問題は篠ノ之さんの方でしたね」

 

「やっぱり、依存している感じ?」

 

「そう見受けられても間違いはないでしょう。久々にあの手の殺気を感じました」

 

「そう・・・その割には、今はいないわね」

 

「あまりにも騒ぎ立てるので、榊原先生に引き取ってもらいました。凰さんも冷静になって頂いたので、二人で一緒に」

 

其の言葉を聞いて楯無は安堵の溜息を漏らす。

・・・今日の彼女は溜息ばかりが多い。

 

「そう言えば、春樹くんの方は? 落ち込んでた?」

 

「そうですね。部の備品を壊してしまった事が申し訳ないと言っていましたが、あとは全然です。今頃はボーデヴィッヒさんに慰められているのではないかと。しかし、其処へ御嬢様の付け入る隙があるかどうか・・・ですが、急ぐべきかと」

 

「ちょ、ちょっと虚ちゃん! それちょっとどういう意味よ!!」

 

顔を真っ赤にして喚く楯無だったが、「舐めないでちょうだい!」と反省文を書き連ねているであろう専用機持ち達の場所へ急ぐのであった。

けれども、まだまだ今日は面倒事が続く様で・・・・・

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「清瀬の大バカモノはどこだ?!!」

『『『!?』』』

 

決闘もどきの現場となった武道場へ響き渡ったのは、何処かの公園前派出所に勤務する巡査部長の様な怒号であった。

何だ何だと総隊長と教官抜きの訓練を行っていたワルキューレ部隊の面々が視線と向ければ、其処にはポニーテールに美髪を纏めたIS学園一年一組の名物生徒が居るではないか。

一難去ってまた一難。「またか・・・ッ!」と困り顔と不満顔をするワルキューレ部隊隊員達は口をへの字に曲げた。

 

「あの・・・どうかされたんですか、篠ノ之さん?」

 

「どうしたもこうしたもない! またしても一夏に手を挙げよって・・・もう許さんッ、私が成敗してくれる!!」

 

「・・・・・はぁッー・・・」

 

顔を真っ赤にして怒っているのは、ISを発明した大天才である『篠ノ之 束』の妹にして世界で唯一の第四世代型IS『紅椿』の纏い手である一年一組の『篠ノ之 箒』だ。

そんなどう見ても直情的な彼女の登場に此の場を任されたワルキューレ部隊一番隊隊長の四十院は大きく溜息を漏らした。

 

「おい、四十院? 何をめんどくさそうに溜息を漏らしている?」

 

「いえいえ、別に何でもありません。生憎と総隊長・・・清瀬さんは、ここにはいません。”誰かさん”のせいで反省文を書く破目になったなので」

 

「・・・何だと貴様ッ?」

 

何処からか一夏がボコされた事を聞き付け、保健室へ恋敵兼親友の『凰 鈴音』と共に駆け付けた箒。だが、保健室手前で生徒会メンバーである虚に制止され、一応彼がブッ飛ばされた原因が自業自得である事を聞かされたのだ。

彼女から聞かされた事情に鈴は納得し、想い人ながらも自信の力量を計りきれていない一夏に「やれやれ」と呆れたが、箒の方は違った。一夏が傷付けられた事に激昂したのである。

一時は榊原教諭と冷静になった鈴になだめられて部屋へ戻ったのだが、やはり一度火が着いてしまった彼女の癇癪玉が簡単に収まる訳がなかったのだ。

しかし、愛用の木刀片手に現場へ乗り込んでみれば、明らかに自分に対して敵対心を向ける者達が居るではないか。

 

「四十院、なんだその態度は?」

 

「篠ノ之さん、布仏先輩から事情を聞いてはいませんか? 何か誤解なさっている様なので、言っておきますが・・・織斑君があのような不様を露呈したのは、彼自身の自業自得です。もしや仇討ちをしに来たのなら、お引き取り下さい。私達の訓練の邪魔になりますので」

 

「ッ、ふざけるな! 一夏をあのような目に遭わせておいて、反省文程度で済むとはどういう事だ!!」

 

「何を言っているんですか。先に手を挙げたのは織斑君の方ですよ? それも彼の方から言いがかりを付けて来たんです。それで止むを得なく清瀬さんはいやいや試合をする事に。憤りを覚えるのは、むしろこちらの方なのですがね」

 

「言わせておけば・・・貴様ぁ!!」

 

淡々と諭す様に語り掛ける四十院が気に入らなかったのか。箒は握り締めていた木刀を相手に叩き付ける様に降り上げた。

剣士にあるまじき直情的な行動である。

・・・しかしだ。

 

「―――――ヤレヤレ、ですね」

「ッ、きゃ!?」

 

木刀を振り上げたと同時に四十院は箒の目の前へ竹刀の先端を突き付けたのだ。

まさか自分よりも早く仕掛けられると思っていなかった彼女は思わず驚嘆の表情と共に尻餅をついてしまう。

 

「・・・申し訳ありません。思わず迎撃態勢をとってしまいましたわ」

「こ、この・・・ッ!」

 

彼女は文面では謝罪を述べているが、尻餅をついている箒には蔑む目で自分を見下している様に見えた。

此の四十院の目に益々箒は奥歯をギリリと噛み締めた苦々しい表情を晒したが、ふと周囲から注がれる視線に再び彼女はギョッとする。

何故ならば、四十院の背後に居たワルキューレ部隊の全員が自分に対して敵意のある眼差しと手元に握られた得物である竹刀を向けていたからだ。

 

「お引き取り下さい。それとも・・・私達全員がお相手しましょうか?」

 

「四十院、貴様・・・! 多勢に無勢で卑怯だとは思わんのか?!」

 

「えぇ、これっぽちも思いません。それに・・・先に仕掛けて来たのは篠ノ之さん、貴女の方でしょう? 当方に迎撃の用意アリです」

 

視界範囲全体から注がれる隠す気もない明らかな敵意に感情的となった箒は遂に自身のIS紅椿を展開しようとした・・・其の時だった。

 

「―――――ちょっと箒ッ!」

「ッ、鈴!?」

 

真剣を引き抜かんとする箒の腕を背後から引いたのは、酷く嫌な汗を現在進行形で垂らしている鈴であった。

 

「いやな予感がしたから来たけど・・・アンタッ、なにやってんのよ!!」

 

「なにって・・・見てわからんか? 私は一夏の仇討ちをだな!」

 

「バカ言わないでよ! 布仏さんから聞いたでしょ、あれは一夏の自業自得だって! それにアンタ・・・今なにしようとしたのよッ? まさか、一般生徒相手にIS使おうとしたんじゃないわよね?」

 

鈴の言葉に図星を突かれた箒はグッと息を飲む。

そんな彼女を自分の背後へ引き込むと鈴はのぞき込む様に四十院へ目を向ける。

 

「悪かったわね、箒が訓練の邪魔をして」

 

「・・・別に構いません。こちらこそ過度な態度をとってしまいました。みなさん、もう大丈夫みたいです」

 

四十院の鶴の一声に其の場に居た全員が迎撃態勢を解く。其の様子は彼女等が良く訓練されている事が伺えた。

 

「鈴ッ、お前はなにを謝っているんだ! コイツらは私の邪魔を!!」

 

「いい加減にしなさいよ、箒!! アンタは、もうちょっと専用機持ちとしての自覚を持ちなさい!! 相手は同じ専用機持ちじゃないのよ! 下手をすればッ!!」

 

「凰さん、もういいではありませんか。篠ノ之さんも感情的になってしまったあまりの行動だったのではありませんか? 幸い私達にケガはありませんから」

 

「四十院・・・ッ」

 

何故か、先程まで箒の凶刃に遭う寸前だった四十院が彼女を庇う様に鈴へ微笑みかける。

此の彼女の表情を不審に思った箒は怪訝な眼差しを彼女へ送ったが、鈴にとってはありがたい言葉であった。

もし此れが教員の耳に入れば堪ったものではない。

今までは、校則でも禁じられている専用機所有者のISを使用した小競り合いは学年主任である千冬によって揉み消されていた節があった。

しかし現在、千冬はスパイを取り逃がした処分で謹慎を受けている。其の為、専用機持ちが不祥事を起こせば必ず相応の処罰が下る事は間違いない。

無論、専用機持ちの生徒が専用ISを持たぬ一般生徒にISを使用して危害を加えるなど言語道断。下手をすれば退学になるかもしれないのだ。

 

「箒、今は状況が悪いわ。今は大人しくしておいた方が得策よ」

 

武道場から箒を連れ出した鈴は彼女へ諌言を語るが、当の本人は眉間に皺を寄せて納得のいかない表情を晒す。

 

「なにをヘタレた事を言っている?! 一夏がやられてしまったんだぞッ!」

 

「だから、アレは一夏が先に春樹に手を出したって言ってたじゃない!」

 

「お前は、あんな胡散臭い生徒会の人間の言う事を鵜吞みにするのかッ?」

 

「鵜呑みって・・・箒、アンタ、過敏になり過ぎよ」

 

「過敏だと? そんな事はない! それよりも鈴の方が異常だ。一夏が酷い目に遭ったと言うのに・・・どうしてあんな男を庇いだてする?」

 

「庇ってなんかないわよ!」

 

諫める鈴と反抗する箒。

段々と二人の間に険悪な空気が流れ始めて来ると、此れ以上状況が悪化する事を危惧したのか。鈴が「もういい!!」と頬を冬眠前のリスの様に膨らませて自室へとプンスカ帰って行った。

其の姿に箒は今更ながら罪悪感を感じたのか。引き留めようと手を伸ばすのだが―――――

 

〈―――――だめよ、箒〉

「!」

 

其の手を抑える者が一人。

自分の手を抑える其の手の主へ目を向けると其処には柔らかな笑みを浮かべる栗毛色の少女が居るではないか。

「・・・アヴィゲイル」と呼ばれた彼女は鈴へ伸ばした箒の手を諫めた。

 

〈放っておきなさい。あの子は、あなたが折角やろうとした事を否定したのよ?〉

 

「でも・・・ッ!」

 

〈きっと、あの子は一夏の事をあなた以上に思っていないんだわ。そんな人があなたの友達に相応しい訳ないじゃない。放っておきましょ。あなただけが一夏の事を一番思いやってるんだから・・・ね?〉

 

アヴィゲイルの言葉に「そ、そうだな!」と彼女は気を取り直し、「今に見ていろ、清瀬!」と筋違いの見当を思い浮かべるのであった。

 

〈ふふふ・・・大丈夫よ、大丈夫。箒、あなただけが一夏の事を大切に思ってるんだからね〉

 

・・・耳元で妖しい笑みを浮かべた彼女を従えて。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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