IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第173話

 

 

 

 

 

―――――国際的過激派テロ組織ファントム・タスクは日本へ進出する際、各地で不況や暴対法の煽りを受けて崖っぷちに立たされている反社組織並びに零細企業へ資金提供をする代わりに彼等を傀儡にする事で勢力を拡大させていった。

そして、其処から更に政界へと蛸の様に魔の手を伸ばし、国家其の物を飲み込まんとしていた・・・・・のだが・・・

 

「おりゃ開けんかいッ、ゴラァア!」

「早う出て来んか、ボケェ!!」

「開けんとドアぶち破るぞッ、ボケコラァア!」

 

「あ、開けます・・・開けますから・・・!」

 

何処かの大酒飲みの蟒蛇が、学園に潜入していたファントム・タスクの構成員からすっぱ抜いた情報を上司を通じて”お上”へリーク。

其の御蔭で売国奴が逮捕された事で、芋づる式に全国の反社組織の事務所へ家宅捜索が一斉に行われたのである。

結果としては、ファントム・タスクとは全く関係ない余罪で逮捕された連中の割合が大半を占めていたが、確実に其の支配力を削って行った。

 

「おいッ、中でガチャガチャ音がするで!」

「証拠隠滅か! 突入やッ、いてもうたれ!!」

 

『『『ッ!!?』』』

 

しかも組織との繋がりが深いと思われる団体事務所には、家宅捜索とは名ばかりの押し込み強盗と言っても良い勢いで警官隊が突入して来るのだ。

更に警官隊の装備は此れから何処かへ戦争にでも行くのかと言う重装備で、先頭に立つ隊員達は対IS装備であるIS統合対策部製の新型EOSを纏っている。

下手に突っかかれば、公務執行妨害の名の下に制裁を受けるのだ。本当に堪ったものではない。

 

「おどりゃテメェ! ここにファントム・タスクの連中が居る云う事はわかっとるんや!!」

「大人しゅう身柄を引き渡さんかいッ、ワレェエ!!」

 

「こ・・・ここには、もうおれへんのです・・・ッ」

 

「なんやとワレェエッ?!」

 

大鎧の武者甲冑の様な厳かな新型EOSを身に纏った目の血走った隊員に胸倉を掴まれた事に流石の組構成員もタジタジ。

 

「ッ、おーい! ちょっとこっち来てくれや!!」

「ッチ。どした、何があったんや?」

「これ、見てみぃ・・・!」

「おいッ、こりゃあ・・・!?」

 

押し入った事務所内で何かを発見し、隊員達が目の色を変えてしまったではないか。

そして、其のまま彼等は取っ捕まえた組員へ尋問を行う。

 

「こりゃ何や貴様ッ? プラスチック爆弾の破片やないか?! 他にも時限信管なんぞもぎょーさんあったで!!」

 

「そ、そりゃあ・・・ッ!!」

 

「・・・・・そりゃ、”秋の姐御”のもんや」

 

一人、騒ぐ他の組員とは雰囲気の違う冷静な態度をとる人物の発言に隊員達の熱い視線が注がれた。

 

「あ、兄貴! そんな事言ったら!!」

 

「かまへんかまへん。わしは最初っから、あんなガイジン連中の傘下に入るんはイヤやったんや。・・・お兄さん達、ただのポリ公と違うやろ? 一目見ただけでわかったで」

 

「おい、誰や秋の姐御って?」

「そんなヤツ、組の中に居ったか?」

 

「わしは中学しか出とらへんのんやけど・・・ちょっとぐらい英語は知っとるや。秋や、秋。秋は英語でなんて言うんや?」

 

「秋ぃ? んなもん簡単や。秋は英語で・・・・・ッ、ま、まさか!!?」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

過激派テロ組織、ファントム・タスク。

其の実動を受け持つモノクロームアバターなる部隊に所属する『オータム』は窮地に立たされていた。

彼女は組織内においても高いISへの適性と操縦技術を有しており、第二世代型と云えども米軍が開発製作した機体である『アラクネ』を強奪して我が物としている。そんなオータムであったが、彼女の栄光にも落日の日が来る事となったのだ。

 

世界初の男性IS適正者である織斑 一夏の専用機『白式』を奪取せんと文化祭が行われるIS学園へ潜入したあの日・・・・・オータムは出会ってしまったのだ。あの『怪物』に。

 

―――――「阿ーッ破ッ破ッ破ッ破ッ破ッ!!」

 

・・・今でも時より思い出すあの奇妙奇天烈摩訶不思議な気色の悪い不気味な高笑い。其れと同時に肌へ伝わる燃える上がる幻痛と辺りに広がる紅白の焔。

 

「ッ・・・クソ、クソクソ、クソクソクソ!!」

 

思い出す度にオータムは顔を両手で覆い、激痛を耐えるかの様に口をへの字にして奥歯を噛み締める。

全くもってノーマークのオマケと侮っていた二人目の男性IS適正者。其の彼にオータムは皮膚を焼かれ、圧倒的で絶対的な恐怖をねじり込まされた。

あの男のせいで彼女はかなりの重度の火傷と心的外傷後ストレス障害を負ってしまい、テロ活動の復帰までにかなりの時間を費やしてしまう事となる。

 

しかもオータムが床に臥せっている間、例の二人目の男性IS適正者によって組織の襲撃を防がれる処か、学園へ忍ばせていた仲間の潜入工作員まで捕縛されてしまった。

其の後、工作員は学園内で勧誘した離反者によって脱獄に成功するのだが、今まで隠し果せていた組織の情報がまんまと盗まれてしまった。

さて・・・其の盗んだ情報を元に日本政府の猛反撃が始まった事は言うまでもない。

今まで悠々自適でのさばって支配力を伸ばしていたのは何時の事やら。平和ボケした国の司法機関だと侮っていた日本警察の力は想像以上に強烈であったのだ。

 

御蔭で東から西へ西へと追い遣られていったファントムタスクは、遂に日本の最終拠点として置いていた京都支部まで追い詰められてしまう。

しかし、そんな京都各所に散らばっていた支部までにも対IS用装備を有する新型EOSを纏った警官隊が乗り込んで来た。

更に傘下に降りながらも自分達に不満を持って獅子身中の虫と成り果てた裏切り者達により、警察の手があと一歩のところまで迫って来た始末である。

 

「・・・もう、ここはダメね」

 

此の圧倒的不利な状況に対し、日本支部を任されていた実動部隊モノクロームアバターの長である『スコール・ミューゼル』は、拠点を捨てて国外への逃亡を画策した。

けれども、其の考えに至るまでタッチの差で遅かったのか。逃げようにも既に包囲網が組まれていたのである。

勿論、警察内部にも内通者を造り送り込んではいたが、彼等彼女等も最早監獄の中。頼れるのは自分達だけだ。

其処で追い詰められた彼女等が考えたのが、警察の目を多方面へ向けさせている間に街を脱出する算段であった。

其の作戦の誘導員として自ら志願したのが、オータムである。

作戦としては、彼女は捨て駒の反社組構成員が調達製作した時限爆弾を手にテロを起こし、警察の目を其方へ向かせている間に逃げると云うモノであった。

 

こんな短絡的な作戦しか出来なくなるまで追い詰められてしまった彼女達だが、無論、此れから起こすであろうテロでオータムは死ぬつもりもなければ捕まるつもりもない。もし、包囲されたとしても持ち前の突破力で包囲網を突き抜け、其のままランデブーポイントまで駆け抜けるつもりだ。

 

そんな爆破テロの標的となってしまったのは、近年新しく造られたモノレールであった。

長年の間、京都へ新交通機関を導入したいという意見が前々からあった。其処で地下鉄よりも現実的な理由でモノレールが造られたのだが、当初は古都京都の歴史的景観を破壊してしまうのではないかと指摘から見送られて来た。

しかし、ぶら下がり型モノレールでなく上乗せ型の環状線モノレールならば、レールはあまり目立たないので景観破壊の量は小さい事が新たに指摘されたのである。

其れが切欠によって開発が進んだ環状線上乗せモノレールは遂に半年前に完成し、順調な運用を行う事が出来ているのだ。

 

新たな観光名所として大々的に発表されたモノレールは各所メディアで紹介がなされていた為、テロの標的としては申し分なかったのである。

 

「あのう・・・お客様、いかがされましたでしょうか?」

 

「あ”ッ?」

 

ふとオータムが我に返ると今までブツブツと自分が精神病患者の様に譫言を言っていた為、彼女を気遣った他の乗客が車内に居た車掌を呼んでいたのだ。

・・・此れは都合が良いとオータムは思った。

 

「じ、実はさっきから動悸が激しくて・・・あぁッ、苦しい!」

「だッ、大丈夫ですか?!」

 

胸を患ったフリをして若い車掌へと倒れ込むオータム。

若い車掌は、彼女の持つ美貌とナイスなバディに「これは役得!」と思ったのだが、彼はすぐに其れを後悔する事となる。

 

「ッ、うげぇえ!!?」

「オラァアッ! テメェら全員床に伏せやがれ!!」

 

『『『ッ!!?』』』

 

オータムは若い車掌を床へ組み伏せると懐から取り出したサブマシンガンを天井へ向かって連射したのだ。

突如として響き渡った銃声に車内に居た乗客全員が吃驚仰天するのも束の間。彼女はそんな彼等彼女等へ銃口を向けたのである。

 

『『『きゃッ・・・きゃぁああああああ!!?』』』

 

オータムは再びサブマシンガンを連射させ、射線上に入ったモノレールの窓ガラスを全て割砕いた。

其の割砕かれたガラスの音と共に車内へ響き渡った悲鳴絶叫に「そうそうッ、コレコレ!」と彼女は御満悦な表情を晒す。

久方ぶりの職場にオータムは胸がすくような気持ちであったろう。

 

「い・・・い、一体なにを?」

「見りゃ解るだろッ? ジャックだよ、ジャック! レールジャックだ!!」

 

彼女から現在進行形で踏まれている若い車掌の言葉にオータムは宣誓すると持参していた黒い大袋からある物を取り出す。

其れは実にクラシックな形をした時限爆弾であった。

 

「テメェら全員窓際に並んで立て! 今すぐにだ!! さっさとしねぇと撃ち殺しちまうぞ!!」

 

其の時限爆弾を車両の中央に設置すると人質となった乗客全員を割れた窓際へ並べ立てたのだ。

此れなら外からのスナイパーの狙撃をされ難くなる。

 

「ひッ・・・ひぃい!!」

 

「あぁん?」

 

そんな中、人質の一人が隙を突いて逃げようと別車両への通じる扉に駆け寄った。

 

「・・・ッチ。逃げてんじゃ、ねぇよ!!」

「ッ、ギャぁアア!!?」

 

しかし、其れを逃すオータムではない。

舌打ちを盛大に打ち鳴らした彼女の背中から黄色と黒の縞模様のカラーリングが施された絡新婦の様な触腕が現れるや否や、其の腕に内蔵された砲塔が火を噴いたのである。

だが、以前のアラクネとは違う点があった。

 

「ひッ・・・ひぃいい!?」

「ッ・・・畜生、まだ慣れねぇから外しちまったぜ。テメェ、運が良かったな」

 

其れは、装甲脚に内蔵されていたのは以前の様な実弾機構ではなくビームライフルの様なエネルギー機構であったのだ。

其のいつもとは違う射撃感覚に慣れていなかったのか。的を外してしまうが、威力は申し分ない。

発射されたビーム砲は床を突き抜けて貫通してしまい、其れによって異常を検知したモノレールが緊急停止してしまった。

 

「まぁ良い。おい、そこのジャリガキ。サツに電話しろ」

 

「はッ? え・・・えぇッ、でも!」

 

「いいからさっさとしやがれ! ぶっ殺されてぇのか?!!」

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

まさか警察に電話する様に促されるとは思って見なかった女学生は、怯えながら自分の携帯で通報する。

 

「なぁ・・・おい、ありゃISとちゃうんか?」

「何でハイジャック犯がISなんて持っとるんやッ?」

「んなもん知るかぁ! そやけど・・・うつやかな人やわぁ」

「「阿呆!!」」

「なして、うちがこないな目にあわにゃああきまへんの?!」

「かなんなぁ、なんかしんどうなって来たわぁ・・・」

 

「ッ、どいつもこいつも・・・喧しいんだよ!!」

 

恐怖が伝染し、其々の不平不満が零れだす。

其のぼそぼそとした声が癪に障ったのか。オータムは再びサブマシンガンを連射し、今度こそ完全に大きな穴ぼこを開けてしまう。

其の再び響いた大きな銃声が切欠となったのか、一度目の銃声で恐怖を抱えて押し黙っていた幼子が母親の腕の中で大きく泣き喚いたのである。

 

うっ、うわぁぁあああああん!!

 

「・・・あ”ぁん?」

 

大きく声を泣き声を上げた幼子へオータムはギョロリと殺気立った視線を向けたのだ。

其のナイフの様な恐ろし気な瞳に幼子を抱いていた母親の瞳が揺れ動く。

 

「おい・・・オレ様は慣れねぇ事やってイライラしてんだよ。本当なら、今すぐにでも全員ぶっ殺してやりてぇんだがなぁ!」

 

「か、かんにん! かんにんしてぇな!! 坊や、そんなに泣いたらあかしまへん。大丈夫、大丈夫やさかい。坊や、お願いや・・・!」

 

祈る様に願う様に幼子をあやす母親だが、親の心子知らずとも云える程に幼子は「こわいよー、こわいよー」と大きな声で泣き喚く。

其の耳障りな喚き声をいつまでも我慢できる程にオータムは大らかな性格ではなかった。

 

「うるせぇって言ってんだろうが!!」

「ッ―――――!!?」

 

短気な其の性格により、彼女は蜘蛛の様な装甲脚を幼子目掛けて振り上げる。

咄嗟に母親は自分の子を守ろうと庇う様に身を挺して前かがみとなり、周囲に居た人質達は息を飲む者もいれば、目を背ける者も居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・さて、話は変わるが、オータムと云う御人は全くもって”ツイてなかった”。

いや、もう其れは逆に言えば”ツイている”と言っても差し支えがない程にツイていなかったのである。

 

―――――『赤子泣かすな、ドヨが来る』―――――

 

「・・・・・何をしょーるか? 此の外道・・・ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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