IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第174話

 

 

 

―――――其の日、京都駅を中心にぐるりと囲む様に張り巡らされた京都環状線モノレールは今日も今日とて盛況であった。

秋の連休と云う事もあり、車内には地元住民以外にも新たな観光名所も目当てに京都を訪れているであろう観光客も多く乗車していたのである。

そんな折に発生してしまった国際的過激派テロリスト集団、ファントム・タスクによるレールジャック事件。

荒ぶる怒号を上げながらサブマシンガンを連射し、自らのISを展開したファントム・タスクのオータムは、彼等彼女等の目にはとんでもない”怪物”・・・いや、古の都を背景にすれば、恐ろしいに”妖怪”に映った事だろう。

 

・・・・・しかし、日本には『類は友を呼ぶ』と云う言葉がある。

偶々居合わせた何の罪もない人々を虐げる悪逆卑劣な天魔外道の気配に惹かれて現れる者・・・・・事件から解放された元人質達は後にこう証言する。

―――――『鬼』が出た、と。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

京都は鴨川にある三条河原。

パッと見た感じは何処にである様な河川敷じゃが、辺りには普通の河川敷じゃあ比にならん程のカップル共が等間隔に間を開けて愛を語らっとる。

『鴨川等間隔の法則』と云うソースが何処からか解らん有名な法則があるみたいで、しかも鴨川の三条河原でデートをした恋人達はより深い絆で結ばれて生涯を共に円満に過ごせるというジンクスが存在するそうじゃ。

 

俺ぁ此の手の話にゃ疎いけん、鈴さんから此の話を聞いた時、「ラウラちゃんとの初デートには此処がエエじゃろうなぁ」なーんて妄想を膨らませた。

じゃけども・・・やっぱ理想と現実は違うな。京都旅行じゃ云うても襲撃の可能性を考慮し、原則団体行動が徹底されてとるけん、中々ラウラちゃんと二人っきりになれる時がない。全然ない。ホントにない。ド畜生めじゃ、ド畜生。

 

「ふふ・・・楽しいな春樹♪」

 

・・・じゃけどまぁ、ラウラちゃんと手ぇ繋いで京の都を散策出来る云うんは、ちぃとばっかし前じゃったら想像も出来んかったけん、此れでもまぁ良しとしよう。

団体行動の中でのデートでも例の法則が適用するかは眉唾もんじゃが、ラウラちゃんが嬉しそうならエエじゃろう。

 

「・・・なんで教えた私よりも満喫しちゃってんのよ」

「お姉さん、ちょっと面白くなーい!」

「ブーブーッ!」

「お似合いだねぇ~」

「そうだね」

「べ、別に羨ましいなどとは・・・おい、一夏! 私達も向こうへ行くぞ!!」

「えッ、おい?!」

「ッ、ちょっと抜け駆けはダメよ!!」

 

「・・・騒がしいですわねぇ」

 

ホントじゃわ。

あぁッ、もうちょっと静かにしてくれや。特に水色。

ただでさえ厄介事が何時何処から来るんかコッチは内心ヒヤヒヤなんじゃけんな。ちょっとぐらいは恋人との甘酸っぱい青春を味合わせてくれや。

 

「ラウラちゃん、寒うない?」

 

「大丈夫だ。ドイツ軍人たるもの並の鍛え方はしておらんぞ!・・・だが、もう少し手を握っていても良いか?」

 

「勿論ですとも!」

 

あぁ、もう最高。尊みがヤバい。泣きそう、俺の彼女が可愛すぎて泣きそうじゃわぁ。

まぁ、そうじゃよな。あれだけ激闘の日々を送って来たんじゃもん。俺だってたまにゃあエエ目を見てもエエ筈じゃもんな!

 

 

 

・・・・・何て思っとった時が俺にもありました。

 

〈春樹、楽しんでいる所で大変申し訳ないが・・・〉

 

「・・・・・ド畜生め。ホントマジでド畜生め」

 

丁度良く腹も減って来たもんじゃけん、飯でも食いに行こうとテレビでも話題になった京都新名所のモノレールに皆で乗ってみた。

鴨川ん方でクソッタレの織斑が焼き栗や焼き芋の話をしょーたけん、俺ぁ余計に腹が減っとった。

京都は着倒れと云うが、美味しいもんもようけーあるけん楽しみにしとった・・・楽しみにしとったのに!

 

〈春樹、先頭車両にISの反応があるわ。しかもご丁寧に銃器と爆発物もセットでね〉

 

「マジでふざけんな。ホントマジでふざけんなド畜生。初日、初日じゃぞ。初日で此の様か、ド畜生め」

 

耳元で囁かれたハンニバルと琥珀ちゃんの警告に対し、俺は取り合えず怨嗟を呟いた。

人間ってマジでショックな事があると語彙力が駄々下がりになるのね。

 

「ん? どうしたのだ春樹?」

 

「ラウラちゃん・・・なんか御免、ホント御免。折角の京都旅行なのにマジで御免なさい」

 

「ッ・・・まさか!」

 

其のまさかなのよね。

「ふーざーけーんーなーよーッ!」って感じじゃ。こねーな事になるなら此のダイヤに乗るんじゃなかった。

 

「はぁ~~~・・・小隊各員へ通達。防戦態勢を構え」

『『『・・・えッ!?』』』

 

「・・・ん?」

「みんな、どうかしたのか?」

 

俺の一声にダメバナ織斑とDV篠ノ之以外の面々が口をへの字に曲げる。布仏さんに至っては「え~~~ッ、やだぁ~~~!」って目に見えて不満気じゃ。そりゃ折角、綺麗で可愛え御着物に着替えて京都の街並みをぶらり散策しとったんじゃけんな。そりゃあ嫌じゃわ。

俺じゃって嫌じゃわ。ホント、俺じゃって嫌じゃわ。じゃけど、ほっとく訳にもいくまーがな。

あぁ~~~・・・ホントマジで嫌い。

 

「俺が先行するけんバックアップは任せらぁ。布仏さんや簪さんは乗客の避難を誘導してくれんか?」

 

「任せて」

「がんばるぞー!」

 

「ちょっと待てよ、清瀬! お前、なにやろうとしてんだよッ?」

 

「何って・・・毎度の如くの厄介事退治に決まっとろうが」

 

「はぁッ!? 一体どういう事だよ?!」

 

「喧しい。静かにせぇ。後、お前は引っ込んどけよ織斑。篠ノ之もじゃ、足手纏いはいらんけんな。鈴さん頼んだ」

 

「なんだと貴様ッ!!」

 

喚くな喧しい。こういう場合は迅速的な行動が必要なんじゃ。

とりま様子見でISを部分展開した状態で俺を先頭、ラウラちゃん、シャルロット、楯無、セシリアさんの縦列フォーメーションで進撃。

するってぇとコッチの動きに勘付いたんかは解らんが、先頭車両から軽快な破裂音が聞こえて来た。

此れがクラブミュージックのパリピ音楽なら良かったんじゃけど、生憎と此の音は聞き慣れて来たサブマシンガンの連射発砲音じゃ。音からしてイスラエル製のウージーじゃろうか?

乗客の人ん中には、聞き慣れん音じゃけども銃の発砲音だと理解できた人がチラホラ居って、顔をソラ豆色にし始める。

ホントマジでエエ迷惑じゃ。カタギのモンに迷惑かけてんじゃねぇーよ、ド畜生め。

 

・・・さて。

まぁ、此の様にして俺はイライラしとった。

折角の可愛い可愛い恋人との旅行に水を差されたんじゃけん、当然と言えば当然じゃ。

しっかし・・・そんなボケのテロリストは俺を更にキレさせるある種の才能があったらしい。

 

「・・・・・阿”ッ?

 

車両と車両を繋ぐ扉の窓ガラスを通じて見えたのは、サブマシンガン片手に喚き散らす被疑者の酷く不細工な形相。

俺ぁそいつの顔に見覚えがあった。いつかの文化祭でクソッタレの織斑のISをブン盗って、野郎を八つ裂きにしようとしたおわんごじゃ。名はボケカスBBAのオータム。

あんまりよー覚えとらんが、確か一緒に居ったサイレント・ゼフィルスちゃん諸共スペシウム光線で焼いた筈なんじゃが・・・ゴキブリみたいなやっちゃな。

 

まぁ、そねーな事は今はどーでもエエ。

肝心なのは、其の不細工な顔がきょーとーて泣きょーる子供に対して、クソッタレのオータムがISの刃を現在進行形で振り上げている事実じゃ。

 

何をしょーるか? 此の外道・・・ッ!!

 

・・・つくづく俺ぁ自分の未熟さを改めて実感した。

昔から怒りの沸点が自他共に理解不能と云われとるけん・・・まぁ、是非もなしじゃろうな。

堅いワイヤーか何かが千切れる音と一緒に思わず俺ぁ手元に顕現させた鉈をぶん投げとった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「ッ、チィイ!!」

 

ガシャーン!と車両と車両を繋ぐ通路の間にある扉の窓ガラスが割れると同時に飛んで来た”ソレ”へ対し、オータムは持ち前の反射神経とIS戦闘技術でソレを自らのISであるアラクネの装甲脚で弾き飛ばした。

またしても響き渡った甲高い破壊音に対し、先頭車両へ居た人質達の何人かが同じくらいの悲鳴を上げる。

・・・しかし。

 

「ッ、ひッ・・・ヒィイッ!?

 

そんな人質達と同じ様な脅えた声色を何故かオータムまでもが響かせ、尻餅をつく勢いで後退したのだ。

先程まであれだけの威圧感を放っていたテロリストが、ホラー映画を怖がる子供の様な表現をした事に彼女の近くへ居た乗客達は「えッ・・・?」と困惑の表情を浮かべた。

 

けれども何故にオータムがこんな表情と態度をとったのか。

理由を挙げるとするならば、其れは間違いなく先程彼女が弾き返したであろう物体が原因だ。

 

「な・・・なな、何でここに! 何でここにコレがあるんだよぉおお?!!」

 

アラクネの装甲脚で弾き飛ばされて車両の天井へ突き刺さった”ソレ”をオータムが忘れる筈がなかった。

あの日、あの時、あの瞬間、自分達に向けられて投げられた狂暴な形をした真っ赤な刃を忘れられる筈がなかったのである。

そして、戦闘に対しての優れた察知能力を持っている彼女だからこそ、どうして此処へ其の思いでの刃があるのかがすぐに理解できた。理解できてしまった。

 

―――――「グルルァア嗚呼ッ・・・!!

『『『ッ!!?』』』

 

四つの金色の眼を持った”其れ”は、低い唸り声を上げて割れた窓ガラスが着いた扉を押し倒すとオータム達の居る車両へ入って来る。

異様な雰囲気を放つ”其れ”の登場に「お・・・『鬼』や」と人質達の誰かが小さく呟いた。

 

・・・ヴぇロォアぁア嗚呼ッ!!

「ッうヒィイい!!?」」

 

一拍の沈黙の後、突如として『鬼』は一気にオータムとの距離を詰めるや否や、人体の急所目掛けて殴打を繰り出してくる。其れを彼女は悲鳴を上げつつアラクネの装甲脚によって寸での所で受け止めたのであった。

オータムが纏っているアラクネは、先の文化祭襲撃事件において自爆と云う手段で長らく再起不能となっていた。だが、世界で最も偉大な”天災博士”が新たなISを作成する其のついでとして改修されたのである。

よって以前よりも装甲による耐久力は上がっている筈なのだが・・・・・

 

バッキャァアアアアアッン!!

ぐッぺぇえエエ!!?

 

瞬時加速にも劣らぬ凄まじい勢いと共に放たれた教科書通りの右ストレートは、立ち塞がったアラクネの装甲脚をまるで味のしなくなったガムの様に凹ませると同時にオータムの顔面を後方へブッ飛ばす。

そうする事で殴られた彼女は、踏ん付けられた蛙の如き断末魔を上げて先頭車両の運転室真横へめり込んだのであった。

 

ガロロロォア・・・ッ

「ひッ・・・!」

 

低く唸りながら弾き返された事で天井へ突き刺さっていた自分の得物を抜いた彼に対し、先程までオータムに狙われていた母子は再び悲鳴を飲み込んだ。

そんな二人へギョロリと鬼は金眼四ツ目を向けると同時に手を伸ばす。

しかし、最早此れ迄かと思いきや―――――

 

「よー頑張ったな。もう大丈夫じゃ」

 

「・・・え?」

 

「駅員さんも大丈夫ですか?」

 

「は・・・はい!」

 

彼は守られる様に庇われていた幼子の頭を優しく撫でて口端を上げたのである。

そして、「皆さんを頼むでよ」と自分の背後へ控えていた色とりどりの装甲を纏った和服美人達へ担ぎ上げた母子や床へ倒れた車掌を任せたのだ。

 

「ちょっと春樹くん? いきなりギアをトップに上げないでくれる? お姉さん、困惑しちゃった」

 

「ラウラちゃん、後ろの人質の人らぁは?」

 

「もうッ、無視しないでよ!!」

 

「大丈夫だ、後ろの車両へ移した」

 

「そうか。じゃあ・・・」

 

「―――――コイツ、ブチ回してやろう」と鬼は・・・いや、春樹は剥き出しにした牙を面白い様に壁面へめり込んだオータムへ差し向けた。

此のあまりに殺気立った瞳にオータムは再び「ぎゃひぃいいッ!!」とあられもない悲鳴を上げて倒れた体で後退りをする。

幾度の修羅場を潜り抜けて来た彼女と云えども恥も外聞もなく歯をガタガタ震わせ、顔を真っ青よりも真っ白にしたのだ。

其れ程までに目の前に佇む春樹が恐ろしくて恐ろしくて堪らなかったのである。

其の無様な様子に対して、ファントム・タスクの狂暴性を知っている楯無は若干の拍子抜けを感じ、一方の恐れられている当人である春樹は『ジョジョ第三部』の『スティーリー・ダン』の情けなさを思い出す。

けれども、一切の容赦をする気はない。人質をとった時点で、幼い子供と其の母親を煩わしいと云う理由で手に掛けようとした時点で、オータムがボコボコにされる事は決定事項であった。

 

「ッ、ギャハハハ!!」

 

「阿?」

「な、なにッ?!」

 

だが、突如として怯えた表情を晒していた彼女が一転して口端を吊り上げたのである。

そんなオータムに春樹達が疑問符を浮かべていると彼女は自分がめり込んでいる壁面の横にある運転室へアラクネの装甲脚を伸ばしたのだ。

 

「オッラ、テメェら! コイツがぶっ殺されたくなかったら、さっさと後ろへ退がりやがれ!!」

「うッ、うぅ・・・!!」

 

切先鋭い装甲脚の先には運転室へ取り残されていたモノレールの運転士が捕まっており、形勢逆転とばかりにオータムは彼へ銃口を差し向けた。

 

「ッ・・・まったくテロリストらしいわね。なんて卑怯なの!」

 

「うるせぇ! 黙ってろ、ロシアの尻軽女!! オラッ、さっさと後ろに行けや!!」

 

「ッチィ!!」

 

再び人質を取れた事に御満悦のオータムに楯無は眉をひそめて口をへの字に曲げ、ラウラは大きく舌打ちを鳴らす。

 

「・・・・・」

 

しかし、春樹だけは表情を変えず、黙々とオータムを金眼四ツ目で睨む。

其の表情と態度が気に入らないオータムは人質の運転士の頬へサブマシンガンの銃口を押し当てて喚き散らした。

 

「なんだテメェッ?! 睨んでんじゃねぇよ、このダボがぁ!! 本当にマジでコイツぶっ殺しちまうぞ、ゴラァ!!」

「ひぃい!!」

 

けれども春樹は動じる処か、呆れた様に「あ~ぁ・・・」と肩をすくめて溜息を吐き連ねたのである。

 

「ふざけんじゃねぇ、フザケンジャねぇ!! なんだテメェッ、その態度はよぉ!!」

 

「いんや。なぁ、オータムだっけか? 今ならまだ間に合うで。今、投降すりゃあ半殺しで済ませてやる。其の人を・・・放せ」

 

「ッ、ギャッハハハ!! 誰が離すかよ! 逆にぴったりくっついてやるぜ!!」

 

「おー・・・破破ッ、そりゃ好都合じゃ」

 

「なんだと?!」

「春樹くん!?」

 

意外な返答に目をぱちくりさせるオータムと楯無だが、側に居たラウラだけは少し微笑んだ。

 

「春樹、もちろん何か考えがあるんだろうな?」

 

「モチのロンよ。なぁ、運転士さーん?」

 

「は、はぇ・・・?」

 

「俺を信じてくれるかい?」

 

「コイツは一体何を言っているんだ?」と疑問符を浮かべる間もなく、春樹は運転士へ再度疑問符を投げ掛ける。「俺を信じてくれるかい?」と。

頬にサブマシンガンの銃口を押し付けられると云う有り得ない状況に運転士はおっかなびっくりで冷静な情緒ではいられなかったが、突拍子もない春樹の問いかけに彼は一周回って落ち着きを取り戻す。

そして、ピカピカ金色の焔が零れる春樹の四ツ目を覗いた。

 

「し・・・しし、信じますで! ワイはあんさんを信じます!」

 

「おいッ、なに勝手にしゃべってやがる?!」

 

「ほうか。じゃあ・・・行きますでよ」

 

『言質を取った』とばかりに春樹は口端を吊り上げると何故か自分の得物である鉈を鞘へ仕舞い、クラウチングスタートの構えをとったではないか。

此の謎の行動に一拍だけキョトンと其の場に沈黙が訪れた。

 

「スゥー・・・ハァー・・・ッ」

 

そんな周囲の状況に目もくれず、春樹は呼吸を一定にする。

 

コォォオオオオオッ!!

 

『波紋の呼吸』をするかの様に、『全集中の呼吸』をするかの様に呼吸する。

そして、合掌した手に力を籠める。『呪力』を込める様に。『霊圧』を込めるかの様に。『念』を込めるかの様に。

 

「・・・!(ヤバいッ、何だか知らんがコイツはヤバい!!?)」

 

オータムは異様な殺気を出し始めた春樹に何かを察したが、もう時すでに遅し。

”準備”は整った。断頭台の刃は天上まで上がったのだ。後は振り下ろすだけなのだ。

 

「避けんなよ? まぁ・・・外さんがな

「ッ、ひぃ―――――!!?」

 

オータムが瞼を閉じた一瞬の間の後、春樹は瞬時加速で距離を一気に詰める。

彼女にしてみれば、まるで畏怖が瞬間移動して来た様だろう。しかし、オータムには盾としての人質がいた。

彼女は咄嗟に其の人質を前へ出す事で、突き出して来た春樹の掌底を受け流したのだが・・・・・

 

ズドッゴォオオオオオッン!!

「ぐッッべぇばぁあアアアアア!!?」

 

「は?」

「え?」

 

春樹の放った拳は確実に運転士へ直撃した。

しかし、放たれた衝撃は楯となった彼の身体を通り抜けてオータムへぶち当たったのである。

 

清瀬流対決術・虚刀ノ型四式柳緑花紅』・・・よっしゃ、成功!」

 

後は初手と同じ様に蛙の断末魔を上げて彼女は後方へとブッ飛ばされた。けれども先程とは違って背後にあったのはモノレールのフロントガラスのみ。

其のままオータムはフロントガラスをぶち破り、車外へと放り出されてしまった。

 

「ぐッ・・・ぎゃぁあああああああ!! 痛ぇッ、痛ぇええよぉおお!!」

 

モノレールの上から落っこちたオータムは、叩き付けられたミミズの様に道路の上で暴れ回った。

 

お察しの方もいるかもだが、説明しよう。

春樹は体育祭の一件以降、自分でオリジナルの武術を試行錯誤で造っていた。

其れはステゴロから得物を使ったオールラウンダーの戦闘術であり、早い話が、彼のお気に入りの『作品』から技を拝借した感じになる。

其の一つであるオータムへ放った『清瀬流対決術・虚刀ノ型四式『柳緑花紅』』は、春樹の愛読書の一つである『刀語』から拝借したモノだ。

此の技は、元来は身体を捻って拳を相手に突き出す事で敵の肉体を内側から破壊する鎧通し的な技である。

本来ならば一撃必殺の技なのだが、なにぶんと今日が初めてのお披露目と実践であった為、威力は抑え気味だ。

まぁ・・・其れでも骨の二・三本と臓物の一つくらいは潰す事には成功してはいるが。

 

「―――――よう」

「ッ!!」

 

そんな激痛にのた打ち回るオータムを見下ろす四つの金色の瞳。

ギョッとするのも束の間。其の金眼四ツ目の持ち主は、彼女の鳩尾を萬力の力を持ってグシャリ!と踏みつけた。

 

「ゲぇ・・・ッ!!」

 

「汚ねぇな。俺のISが汚れるじゃねぇか」

 

口から出た吐瀉物が足にかかった事が癪に障ったのか。春樹は更に足へ力を込める。

肋骨が割れる様に折れた。

 

「さて・・・トドメと行こうかね」

 

「ま・・・待て! 待って下、さい!!」

 

さぁ、此れから完全なるトドメを刺さんと春樹は愛用の得物である鍵鉈をすらりと抜くのだが、此れにオータムが口元から血を吐きつつ待ったをかける。

 

「阿? 何なら?」

 

「た、助けて・・・助けてください!」

 

「・・・は?」

 

オータムは目に涙を浮かばせて許しを請うたのだ。

 

「お、オレの・・・オレの負け、負けです! どうか許してッ、助けて下さい!!」

 

「ほう? 大人しく捕まるってか? 洗いざらい吐くってか?」

 

「は、はい! 捕まります! 洗いざらいある事ない事しゃべるから!! だから許して下さぁあい!!」

 

手を組んで許しを請う彼女は自分の美貌を理解していた。嘆き咽び泣くオータムは傍から見れば、まんま悲劇のヒロイン其のままであったろう。

そんな彼女の涙に周りのギャラリーの目が何だ何だと注がれる。

 

「(そうだ。男なんてチョロいもんだ。今は下手に出てやるんだ。この薄汚ねぇ野郎の足がどいたら、一気に首をかっ切ってやる!!)」

 

オータムは機会を伺っていた。

今は従順な振りをして、拘束力が弱まったら一気に其の頭だけを地面に落としてやると機会を伺っていた。

 

・・・・・しかし、此の女は間違っていた。

もし、自分を拘束してい人物が一人目の男である一夏であったなら難なく誑す事が出来たろう。

けれども今、彼女が相手にしている男は―――――

 

「そうか、解った・・・・・」

 

春樹は許しを懇願するオータムの瞳を覗いた後、得物を鞘へ納めた。

此れに対して彼女はしめしめと思い、騙し討ちの機会を虎視眈々と狙う。

・・・ところがどっこい。

 

「・・・シュワッチ!」

 

「へ?」

 

此の男はオータムから足を退かせる処か。両腕のレーザーブレードを展開したのである。外は紅く、真は白い退魔の焔を顕現させたのだ。

 

「お・・・おいッ、ちょっと待てよ。なに、やってんだよ?」

 

「・・・」

 

「なにするんだよってオレは聞いてんだよ!!」

 

酷く酷くオータムは嫌な予感がした。夕刻の闇夜に不気味な金色の焔が、自分を見下ろしていたからだ。

 

「なぁ・・・お前は笑っていたよな」

 

「は、はぁ?」

 

「モノレールん中で、お前は子供を串刺しにしようとした時・・・お前は笑っていた」

 

「ッ、この!!」

 

咄嗟に彼女はアラクネの切先鋭い装甲脚を展開させての刺突攻撃を行った。

 

「・・・手癖が悪いなぁ」

「がァア!?」

 

しかし、其の黄色と黒の縞模様が施された絡新婦の足は、金眼四ツ眼の飛竜の背中に生えた蒼穹の六枚羽によって其の全てが断ち切られてしまう。

 

「お前は子供を笑いながら殺そうとした。其れも・・・”私”の目の前でだ」

 

「や・・・やめ・・・ッ」

 

「許せれん、許せれんよなぁ?」

 

飛竜は左手の制御ユニットへ右手のコネクタを接続させ、腕を十字に組んだ。

彼女にとって忘れられないポーズであろう。

 

「大丈夫、大丈夫じゃ・・・・・殺さぬ程度に焼いてやるけんね」

「い”ッ・・・い”やぁあ”あ”あああ”ああ”ああ”ああ!!

 

其のまま春樹は腕をスライドさせ、自身の専用ISである琥珀の単一能力『晴天極夜』を超至近距離で発動させたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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