IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第175話

 

 

 

 

「はぁ~~~・・・おい、一体どういう事だコレは?」

 

長い溜息の後、織斑 千冬はいつにも増して眉間へ皺を寄せた。

 

此処は清水寺前に併設された対組織犯罪対策捜査室。

京都へ潜伏しているであろう国際的過激派テロリスト集団『ファントム・タスク』の一斉検挙を指揮する前線基地の様な場所だ。

そんな所に対ISの専門家として招かれたのだが・・・訪れたのも束の間、彼女の携帯がけたたましい音と共に激しく震えたのである。

此の着信音に千冬は思わず表情をしかめた。戦士としての直感が働いたのであろう。

しかも恐る恐る画面を確認すれば、電話をかけて来た相手は学園一の問題児と評される二人目の男性IS適正者の名前が。

・・・どう考えても芳しい予感はしないが、意を決して通話に切り替えてみる。

すると―――――

 

≪”下郎”を一人お縄にかけましたけん。今からそっちに引き渡しに行きまさぁ≫

 

其の言葉と共にプツリと電話が切れた。相変わらず一方的な文言の此の遣り取りが、正に二人の深い確執を表している。

しかし、大人の余裕からか。千冬は大して気にも留めない様子で「ふんッ」と一呼吸。まるで鼻で笑うかの様な仕草であったが、忙しい最中でもかの有名なブリュンヒルデを一目見ようとする警官達にはとても興味深く見えたのだ。

 

「そりゃコッチの台詞じゃでよ。こりゃ一体どういう事なんなら?」

 

一方、焦げ臭い黒い煤を被り、涙と鼻水と若干のアンモニア臭で汚れた白目を剥きつつ泡を蟹の様にブクブク噴く女の首根っこを掴んで引き摺る二人目の男性IS適正者である清瀬 春樹は口をへの字に曲げた。

 

環状線モノレールで馬鹿をやらかしたファントム・タスクのメンバーをボッコンボコにしてワイヤーで亀甲縛りで縛り上げて来た専用機所有者達一行は、緊急合流地点であった清水寺前に集合したのであるが・・・

 

「Ciao、さっきブリなのサ」

 

疑問符を投げ掛ける千冬の背後には、昼間の茶店の待合室で春樹と一夏に絡んで来た随分と奇抜な着物に身を包んだ赤髪ツインテールの女性が、ピンヒールを履いた足をブラブラ遊ばせながら煙管を燻らせつつ此方へ微笑を向けていたのだ。

隣に居た一夏は「ッ、アンタはさっきの!?」と驚愕の表情を浮かべて彼女に指を差し、女性の正体を一目見た途端に察した其の他の所有者達は「ま、まさか!?」とギョッとする。

 

「なして”アレ”が此処に居るんなら? まさか、関係者とは云うまいな? 助っ人外国人が来るなんて聞ぃちゃおらんぞ、俺ぁ」

「”アレ”に関しては私も驚いた。なんで此処に居るのかは私も知らん」

 

「な・・・なぁ千冬姉、あの人って・・・誰なんだ?」

 

バッチバチの二人の遣り取りへ水を差した一夏の言葉に「じゃけぇッ・・・なして、オメェは知らんのんじゃ?!!」と歯を剥き出しで春樹は苛立ちを露わにした。

 

「い、一夏・・・」

「アンタ・・・ちょっと今のはマズいわよ」

「一夏さんって、ニュースを見ない人なんですわね」

「ニュース見なくても知ってる人はいるんじゃないかな?」

「だからダメバナ野郎なのだ、お前は」

「・・・ドン引き」

「うわぁ~・・・」

「お姉さんも悪い意味でびっくりよ」

 

一夏の無知に流石の幼馴染二人も困惑した表情をし、彼をよく思わない者は養豚場の豚を見る目を向ける。

 

「まぁ・・・世の中にゃあ、あの『お笑い怪獣』を知らん云うヤツも居るけんな。じゃけど・・・オメェ、一応はIS操縦者じゃろうが。しかも専用機持ちの。なんなん? 馬鹿なん? いや、其処らの馬鹿でもモノを知っとるわ。オメェは其れ以下か、豚野郎」

 

「なッ! 清瀬ッ、お前!!」

 

『人に悪口は言ってはダメ』と教えられているものの、春樹は一夏へ罵詈雑言を言わずにはいられなかった。

そんな呆れ果てて物も言えぬ表情を晒す彼に対し、「そこまでにして欲しいのサ」と現在進行形で話題になっている赤髪の女性が勢い良くパイプ椅子から立ち上がって此方へ近づいて来る。

 

「初めましてなのサ、弟くん。私の名はジョセスターフ・・・『アリーシャ・ジョセスターフ』。これでもイタリアの代表なのサ」

 

『アリーシャ・ジョセスターフ』

イタリアの国家代表操縦者にして第2回モンド・グロッソ大会優勝者であり、ISの単一使用能力を発動させた数少ない存在だ。

ISを知る者ならば誰もが憧れる存在なのであるが、自己紹介されても一夏はピンとも来ておらず、「変わった名前だな」等と云った見当違いの言葉を並べた。

 

「『ヴァルキュリア』の名を冠する世界最高レベルのISパイロット・・・生で見る日がこんなにも早いとは思いませんでしたわ!」

 

「でも・・・なんで、そんな有名な人がここにいるのかな?」

 

「ただの偶然にしては出来過ぎているな」

 

一方で、世界でも指折りのパイロットの登場にセシリアは目をキラキラさせるが、あまりにも出来過ぎた状況にラウラは目を細める。

 

「ラウラちゃんの言う通りじゃ。茶店では偶然と捉えられるが・・・今は必然じゃ。どうやって此処が?」

 

「そう怪訝な目を向けないで欲しいのサ。種明かしをすれば・・・SNSなのサ」

 

「SNSぅ?・・・・・まさかッ?!」

 

何かを察したのか。春樹は自身の携帯端末でSNSアプリである『ツブヤイター』を確認する。

すると出るわ出るわ。『ブリュンヒルデ発見』のハッシュタグ付きの呟きが。

 

「ちょっと前に千冬に電話した時、京都にいるって話していたのサ。其処からSNSのつぶやきを頼りに探した結果がこれサ」

 

「アンタぁ有名人なんじゃけん、変装ぐらいしとけぇや!!」

 

まさか、現代の情報社会の問題の一つである写真からの場所特定をやられるとは思っても見なかった春樹は奥歯を軋ませて怒鳴り上げた。

一応、秘密裏に行われる作戦にも関わらず、各場所で『京都の○○でブリュンヒルデ発見』の目撃情報を上げられている事に流石の千冬も分が悪い様に目を伏せる。

其れでも「・・・そういうお前たちはどうなのだ?」と自分の事は棚に上げて彼女は問いかけた。

 

「いや、俺はちゃんと対策しとるわ。山田先生、俺らの事をスマホで撮ってくれません?」

 

「は、はい。それでは!」

 

「チーズ!」と山田教諭が自身の私用携帯端末でピースサインの晒す春樹達をカシャリと撮影する。

ところが・・・・・

 

「あ、アレ?」

 

「どうした山田先生?」

 

「あの・・・その・・・ッ、清瀬くんたちを撮ってみたのですが・・・・・」

 

山田教諭の画面を見てみると其処にはピースサインを構える『両津 勘吉』をはじめとした『こち亀』メンバーが写っていたのだ。

 

「特定端末以外からの撮影じゃったら、皆の顔がこち亀メンバーになるシステムを導入しとるんじゃ」

 

「あ、でも・・・織斑くんは全然変わってないんですけど?」

 

「あぁ、そりゃ途中で面倒臭くなったんで。織斑だけフィルターかけとらんのです」

 

「ッ、おい!!」

 

「何じゃやんのか、屑鈍感野郎?」

 

「まぁまぁ二人とも。そんなに熱くならないでくれなのサ」

 

一体誰のせいで熱くなっているのも関わらず其の場を宥め様とするアリーシャに対し、千冬は「ところで何故、お前がここに居る?」と此の場の誰もが思う疑問符を投げ掛けた。

 

「暇なら相手をしてやるが、生憎と今は急を要するのでな」

 

「OH・・・久しぶりに会ったって言うのに相変わらずつれないネェ千冬ってば。まぁ、そんなとこも素敵なんだけどサ」

 

「・・・・・ん?」

 

アリーシャのある文言が春樹には引っ掛かった。・・・と云うよりも、其の文言と共に彼女の頬が朱鷺色になった点が引っ掛かった。

今はもう学園に居ない”あるカップル”と似通った雰囲気をアリーシャから感じ取ったのだ。

 

「千冬・・・私と一緒にイタリアで人生を歩もう!!」

 

『『『・・・・・えッ?? えぇッ!!?』』』

 

プロポーズの言葉ともとれる彼女の発言にギョッとする専用機所有者の少女達。

一方の専用機所有者の少年達は、一人は「ルームシェアするのか、千冬姉?」と頓珍漢な事を言い、「破ッ・・・良かったのぉ。お姉ちゃんが増えるぞ、愚弟」ともう一人は呆れた様な笑みを浮かべる。

 

「またその話か・・・もう何度目だ」

 

「さてね。もう八十回目から以降は数えてないからサ」

 

呆れた口調で返す千冬だが、アリーシャはまるで堪えてない。其れ処か寧ろ先程から終始一貫してニッコニコである。

正確に言えば、此の屯所に来てからずっとだ。

そう。何を隠そう此のアリーシャ・ジョセスターフなる人物は、千冬に対して第一回『モンド・グロッソ』で手合わせをした後から何度も求婚し続けているのである。

そして、其の度に千冬は断っているのだが、彼女曰く『自分よりも強い戦女神に出会えた』との事らしい。

 

「大丈夫。子供の心配ならデザインベビー技術があるから問題ないのサ!」

 

「一体誰がそんな心配をした! 私はIS学園から離れるつもりは無いと何度も言っているだろうが!」

 

「別に今すぐって訳じゃないのサ。弟くんの事があるから学園に留まっているんでショ? 弟くんが卒業してからでも全然構わないのサ」

 

「ッ、だからお前は・・・人の話を!!」

 

傍から見ても上機嫌で仕方ないアリーシャに対し、千冬はワナワナ拳を震わせる。

さて、此処から話は末広がりに広がって面白くなるのだが・・・”此の男”は生憎といつまでも痴話喧嘩を傾聴する訳がなかった。

 

「おいコラ、ブリュンヒルデとヴァルキュリアのお二人さん」

 

「ん?」「なんだ?!」

 

「将来設計を話合うんは楽しいじゃろうが、後にしてくれや。いつまでも此の色々垂れ流しとるボカケスをほっとくつもりか?」

 

そう言って春樹は亀甲縛りで晒されているオータムを踏ん付ける。

其れで漸く此の喧嘩に一段落が着いたのか。千冬は一つの咳払いをした後、屯所に居る警官達へテロリストと云えども同情の余地が感じられる不様と恥辱を晒すしかない彼女を引き渡した。

 

警察に身柄を引き渡した事で、「あぁッ、やっと此れで一息つけらぁ」と手柄を立てた春樹はグーと伸びをして「楯無、夕飯は何が出るんなら?」とクエスチョンマークを投げる。

・・・ところがどっこい。

 

「え?」

 

「「え?」じゃないわ。夕飯じゃ、夕飯。何が夕飯に出るんかって聞いとるんじゃ。やっぱし京都じゃけん、豆腐とか鱧が出るんか?」

 

「春樹くん・・・まさか、このまま帰るつもり?」

 

「・・・・・はいぃ?」

 

話が通じてない事に対し、まるで『杉下 右京』の様な疑問符を出す。杉下警部とは違い、酷く嫌そうに口をへの字に曲げて。

 

「お姉さんとしては、このまま一気に攻勢に出るべきだと思うわ。まさか、部隊の主要メンバーがすぐに捕縛されるなんて向こうも思って無い筈!」

 

確かに彼女の云う様にいつも受動的なIS学園勢が此処で逆に攻勢を掛ければ、ファントム・タスクに大打撃を与える事が出来る。

しかも此方には組織の実働部隊主要メンバーと所有ISが手中にある状態だ。傍から見ても好機である。

しかし・・・

 

「いや、解るけどさ。其れさ・・・俺らの仕事か?」

 

「えッ?」

「ッ、ちょっと何言ってるのよ春樹!」

 

珍しくIS学園勢で最大戦力を誇る春樹が難色を示したのだ。

彼の此の反応には賛同してくれると踏んでいた楯無は唖然とし、彼女の提案に賛同していた専用機所有者メンバーも驚く。

 

「まぁ、ちょっと聞いてくれや。あのさ、確かに俺達がバックアップで呼ばれたんは理解しとるよ。じゃけどさ・・・此れさ、もうバックアップの領域から外れてんじゃん。もう俺達が突撃する流れになっとるが」

 

「清瀬・・・貴様、何が言いたい?」

 

「御株を奪う事になるんじゃねぇか? お巡りさん達にじゃって”メンツ”ってもんがあろうが」

 

彼が難色を示した理由は、京都もしくは日本からテロリストを殲滅する為に躍起になっている警察の面子だった。

日本警察は、此のファントム・タスク殲滅作戦の為に開発されて日が浅い新型EOSを三十機以上も配備している。そんなヤル気満々で構えていた彼等の御株をケツの青い十代半ばの少年少女達に横から掠め盗られる事になれば、確執が生まれると春樹は危惧していたのだ。

 

「何言ってんだよ、清瀬? EOSなんかよりもISの方が強いんだから俺達が出た方が良いに決まってるだろ。そんな事言ってお前、怖気づいたんじゃねーのか?」

 

「うん。ちくっとばっかし黙ってようねぇ、最弱戦力くん」

 

「ッ、なんだと!!」

 

自分へ軽蔑の表情を向ける一夏を軽くあしらうと春樹は再び今作戦にISが出るべきではない事を説く。

 

「大体、ガキの仕事じゃねぇじゃろうが」

 

「が、ガキッ? 俺達が子供だってのか?!」

 

「子供じゃろうが。オメェ、自分の年まで解らんのか? 十五、六はガキじゃ。四百年前までなら兎も角、俺らぁは守られるべき存在じゃ。専用機所有者云うても鉄砲玉じゃねぇ。命を獲る獲られる場所に居るべきじゃねぇ・・・・・ん~、何か前にも同じ様な事言うた様な気がするでよ」

 

「熱海でやった福音討伐戦だ。あの時、春樹はIS戦術機との戦闘による危険性を説いていたな」

 

「おッ、あん時か。ありがとうね、ラウラちゃん。何か嬉しいね。憶えてて貰うのって」

「ッ、こら! 今はみんなが見て・・・・・あふんッ♥

 

春樹のテクニシャンな頭撫でりこによってラウラは一気にドロッドロに蕩けた表情を晒してしまう。

そんな表情を皆に見せまいと彼女を自分の懐へ匿うと「そんじゃあ、俺らぁは先に旅館へ帰ってるでよ」と足早に其の場を立ち去ろうとする。

 

「な・・・何だよ、アイツ! 大丈夫だぜ、千冬姉!! 俺は怖気づかずに戦って見せる。なぁ、箒?」

 

「あぁ、勿論だ! あんなヤツなどは最初から当てにしていないぞ、私は!!」

 

消極的な春樹に失望したか、一夏と箒は鼻息荒く目を爛々とさせる。

だが、『専用機持ちと云えども十代半ばの子供を過激なテロリストと戦わせる事は道理に反する』と論ずる春樹も尤もな事を言っていると言えば云っていた。

最新型のISを専用機として所有していると云えども、守られるべき筈の子供を矢面に立たせるのは倫理的に良いだろうか。

 

―――――「おっと。それは大変困りますね、清瀬代表候補生殿?」

「阿”ん?」

『『『え?』』』

 

そんな多感な年頃の心が倫理観に揺れる中で聞こえて来た声へ皆の視線が注がれた。

すると何故か、一夏が「アンタは・・・ッ」と渋い顔をする。

 

「ありゃ・・・なして”金城さん”が此処に居るんよ?」

 

「私もおりますで、若旦那に銀の君!」

 

声の主は、IS統合対策部へ所属する数少ない女性職員の一人にして中々の美脚を有するである金城 沙也加と其の背後からひょっこり顔を覗かせる同じくIS統合対策部に所属する技術者、浅沼 翠だ。

何故に一夏が金城に対して渋い顔をしたのか。其れは先の『ゴーレムⅢ事件』の時にこっ酷い目に合わされたからであるが、此処では割愛させていただく。

 

しかし、浅沼の方は警官隊に配備された新型EOS『石英』の顧問技術者である為に此処へ居るのは理解できる。だが、どちらかと言えば広報側の金城がどうして此処に居るのか。

・・・・・春樹は嫌な予感しかしなかった。

 

「長谷川副本部長より、京都に潜伏する過激派テロリスト集団、ファントム・タスク討伐の指令書を持って参りました」

「こんこんチキのバロー岬じゃッ、ド畜生め!!」

 

直属の上司からの指令書を金城から奪い取った春樹は書面に目を通しながら怨嗟を叫ぶ。

 

「やはり学園からの要請だけでは、詭弁を盾に今作戦から離脱するだろうと副本部長は読んでいたようで」

 

「回りくどい。じゃったら最初っからそうしろや。俺って今まで結構頑張って来たけど・・・えッ、信用ないの俺?」

 

「否ッ、そういう訳ではありませんぞ!」

 

「はい。やはり新型EOSではなく、ISによるテロリスト討伐が望ましいとの事です」

 

「・・・・・もしかして、上の上からの忖度で?」

 

何かを察した春樹の言葉に金城は目を背け、浅沼に至っては正直者故なのか。明らかに動揺して表情をソラマメ色にした。

 

IS統合対策部が制作した新型EOS『石英』。

機体能力は既存のEOSを大幅に超える高い能力値を有しており、更に大きな特徴としてISの絶対防御装置を阻害する機能、所謂『IS殺し』を備えている。

既存の兵器を越えた存在であるISを破壊する能力を得た兵器・・・やはり表沙汰になるのは、まだ少々早いようだ。

 

「世界には、まだ対IS用EOSのお披露目は早いとの事でして」

 

「じゃとしても方向転換が急すぎるじゃろう。やっぱし・・・国の中枢に居った獅子身中の虫共の退治が影響してるんで? 直接、俺に電話してくれりゃあエエのに」

 

「余計な説明をしなくて済むので手間が省けます。あと電話の件については、現在進行形で副本部長並びに本部長がフェミニスト気取りの連中へ対処している為、私達が伝言役として登場した次第です」

 

「ッ、あ~も~・・・色々と計画してたのに! ラウラちゃんとのデートとか、夜の事とか、色々と!!」

「どうどう。落ち着くのだ、春樹」

 

「ムキィイイッ!!」と歯を軋ませる春樹を抑えるラウラ。

傍から見れば、「なにをもめてるんだろうねぇ~?」と云った本音の疑問符がバッチリ当てはまる。

春樹はそんな疑問符を浮かべる同胞達へ苦虫を嚙み潰した様な表情を晒しつつ手を挙げた。

 

「刀奈ぁあ~ッ、ちょっとこけー来い」

 

「ちょっと!? 春樹くんってば、公衆の面前で呼ばないでよ!!」

 

自分の真名を呼ばれた事にギョッと慌てながらも飼い主に呼ばれた犬の様に見えぬ尻尾を振って走って行く楯無。

其の様子に一夏は怪訝な顔をし、御家の事情をよく知る簪と本音は彼女の嬉しそうな表情に複雑な顔をする。

 

「悪いが、俺も参加する事になった。でぇれー癪じゃけど」

「春樹が参加するならば、私もだな」

 

「ッ、そう! なら良かった! 春樹くんがいれば百人力よ。ラウラちゃんも居るからに百人力ね!!」

 

そう言って楯無は「万々歳」と描かれた扇子を拡げ、皆に二人の参戦を伝えるが、一夏と箒は面白くない顔をした。

 

「おい清瀬! 何だよお前ッ、コロコロ意見を変えやがって!!」

 

「そう怒らんでくれよ。其れに関しては俺が悪ぃ、謝る。ゴメンなさーい」

 

「貴様・・・何だその態度は!!」

 

「あっかんべー!」と舌を出す春樹とキャンキャン子犬の様に騒ぐ一夏と箒へ対し、「いい加減にしろ・・・!」と千冬の地を這う不機嫌な声色が木魂する。

 

「WAO・・・千冬ってば、最高ネ♪」

 

其れに唯一人だけ頬を紅潮させるアリーシャを余所に春樹は「んで、作戦は?」とIS学園勢攻勢を提案した楯無へ話を振った。

しかし―――――

 

「え、えと・・・実はまだ、なの・・・」

 

「えッ・・・」

「あれだけ息巻いておいてですの・・・?」

「お姉ちゃん・・・ダッさ」

 

「ぐっふぇッ!!?」

 

漸う息巻いておいて全くの見切り発車であった事が明るみになり、皆から精神的に追い詰められてしまう楯無。

しかし、其れを見越してなのか。春樹は「ヤレヤレ」と溜息を漏らしながら婦警に台車へ乗せられて連行される少々アンモニア臭いテロリストを呼び止めるのであった。

 

「さて・・・頼みますでよ『神の左手』サマ」

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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