IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第176話

 

 

 

『野崎 圭』巡査。

彼は中卒でありながらもバイト先の上司の勧めもあり、高卒認定試験合格後に地方公務員区分で警視庁へ入庁。

其の後は町のお巡りさんとして職務に務めていたが、昨年、持ち前の天賦の戦闘力と元バイト先であった探偵事務所で培った操作能力のよって異例の速さで栄転。

警視庁の”鉄人”刑事として名を馳せる『荻野 邦治』が新しく指揮する事となった警視庁対テロ及び特殊犯罪組織装甲機動課、通称『EOS課』へ配属する事となった。

ところが配属直後、公式記録に残る世界史上初めて行われた新型EOSを使用した国際的過激派テロリスト、ファントム・タスク幹部構成員逮捕劇は失敗に終わってしまう。

 

『キャノンボール・ファスト襲撃事件』で世間に名を上げた二人目の男性IS適正者の専用機を開発製作し、既存のEOSを越える新型機体を設計開発したIS統合対策部製のEOSを十機以上投入したにも関わらず、やはりISを纏うテロリストには適わなかった。

しかし・・・EOSでISを排除したという事は、マッチロック式である火縄銃で最新鋭のアサルトライフルに勝利すると云うジャイアントキリングなのであるが、テロリストを獲り逃したという事実は警察にとってもIS統合部にとっても屈辱的な事であったのである。

 

其の屈辱を雪ぐ機会は意外にも早く訪れた。

出所は信用できるが、匿名による情報源によって日本へ潜伏しているであろうファントム・タスクの支部が明らかとなったのだ。

汚名返上を名の下にEOS課は支部を潰し、彼女等に協力していた反社会的勢力を磨り潰した。

そして、東から西へのテロリストならびに反社会的勢力退治の旅は京都が終着点となったのだが・・・・・

 

「え!? 俺達ってもう用済みなんですか?!!」

 

EOSを装備する警官隊が待機する屯所へ響き渡る野崎巡査の驚嘆の声。

其れを先輩である『剣持 和臣』巡査部長が「ちょっとちょっとッ、声を抑えて!!」と抑えるのだが、納得のいかない野崎は更に声を荒げる。

 

「酷いじゃないですか! 今まで頑張って緩衝材のプチプチ潰すみたいにチマチマやって来たのに・・・最後の最後にIS持ってる人たちが全部持ってちゃうって、そんなのアリなんですか?!!」

 

「僕達だって納得はいってない。けど・・・しょうがないでしょ、上からの命令なんだから」

 

「そうだぞ、野崎の坊主。ほれ、見てみろ。坊主よりも我らが課長殿の方が鶏冠にきてらっしゃる」

 

メンバーの中でもベテランである『相馬 信輝』巡査部長が親指である方向を示す。さすれば其処には『エヴァンゲリオン』の『碇 ゲンドウ』スタイルで指を組む課長の荻野 邦治が座していた。

其の様子は傍から見ても不機嫌であり、彼の周囲ならびに空間が歪むほどのマイナスムードが漂っていたのである。

 

「この仕事のせいで、小学校に入ったばっかの娘さんに随分と会えてないからな。おっかないったらありゃしねぇ」

 

「た、確かにそうっすけど・・・で、でも! 俺は、その俺達の後釜をIS学園の学生がやるってのが納得いかないんですよ!! ISの専用機所有者だが知らないですけど・・・まだ学生でしょッ? それもまだ十代の!」

 

「野崎君、それブーメランじゃない? 君も十代の時に探偵社で事件に首突っ込んでたじゃん」

 

「うぐッ・・・それを言われると辛いっすけど。でも・・・でもなぁッ・・・!」

 

市民を守るお巡りさんがやる仕事をISを纏うと言っても普段は普通に学校に通う学生に任せても良いものなのかと野崎は眉をひそめた。

しかも相手は国際的過激派テロリストだ。其れも司法や政界の中枢にまで潜み、今までに何人もの気に喰わぬ人間を闇に葬って来た恐ろしい組織である。そんな血も涙もない連中の相手が学生に務まるだろうか?

 

そんな疑問符を浮かべたのは、何も野崎ばかりではない。

他の隊員達も手柄の横取りの様な真似に同じく疑問符を浮かべる者も居たし、憤慨する者も居た。

調度、其の時である。

 

「どうも~」

『『『!』』』

 

待機所に入って来た一人の人物。

真っ赤な腰まで伸びたツインテールに纏めた赤い髪と肩から胸元まで露出する程までに着崩した着物とピンヒールというアンバランスなファッションが特徴的な恰好をしている隻眼隻手の女性で、彼女の登場にISの知識には疎くともニュースはちゃんと見る者達は目を見張った。

『アリーシャ・ジョセスターフ』。事実上の世界ナンバー2とされている『ヴァルキュリア』の名を冠するISパイロットだ。

 

「おいおい・・・IS学園の学生さんたちが参加するんじゃなかったのか? 俺でも知ってる有名人さんが出て来るなんてよ。さっきから若い連中がソワソワしてたのは、あれが原因か・・・剣ちゃん、俺ってちょっと大丈夫? 汚くない?」

 

「大丈夫ですよ、相馬さん。ダンディ、ダンディ」

 

「でも・・・あんな人が出て来るって事は、さっき言ってたIS学園の学生が参加するっていうのはガセだったんですかね?」

 

やはり流石に学生がテロリストを相手にする訳がないと皆が思っていると待機所に入って来たアリーシャが一瞬立ち止まって振り返った。

自然と其の場に居た全員が彼女の向く方へ目をやる。さすれば―――――

 

「・・・失礼する

『『『ッ!?』』』

 

―――――皆はギョッとし、目を四白眼にする。何故ならば、目線の先には異様な雰囲気を放つ鎧武者が居たからだ。

 

騎士甲冑とも武者甲冑とも捉えられる新雪の様な白銀の鎧兜。

其れを包む様に纏う鮮血の真っ赤な陣羽織と胴へ刻まれた鯨の尾びれの紋様。其の背中にはIS学園の校章が刺繍されている。

しかし、何よりも皆の目を引いたのは、其の人物の顔であった。正確に言えば、其の瞳である。

燃える炎が零れる様に煌めく金眼四ツ目の瞳。其の瞳に姿は違えど”彼”を映像や記録媒体で見知った者ならば、誰もがピンと来た。

 

「『ウルティノイド・レウス』だ・・・!」

 

『キャノンボール・ファスト襲撃事件』の渦中において突如として現れた機体で、ある”光の巨人”とある”銀飛竜”を合わせた様な姿に誰かが付けた異名だ。

其の強さは、当時現場で見た者がいるのならば猶更筆舌に尽くし難い強さである。

 

IS適正者の中でもエリートと呼ばれるIS専用機所有者達が苦戦必至で刃を合わせる鋼の乙女達を一瞬にして、其れも何体も纏めて塵芥のスクラップにした。

加えて、そんな彼女等を率いていた黒揚羽蝶のISをあの左右の腕を十字に組んで放つ必殺技で吹き飛ばした時など、あの”光の巨人”を知る者ならば誰しも興奮したのだ。

 

さて・・・そんなウルティノイド・レウスと呼ばれる金眼四ツ目の甲冑武者は皆の視線を独占しつつEOS課の長である荻野の前へ立てば、被っている銀兜と金眼四ツ目の面当てを外して一礼した後に待機状態である警察職員達の方を向く。

其の時、誰かが「おお・・・ッ!?」と驚嘆の声を静かに呟いた。何故なら其の銀兜と特徴的な面当ての下にあったのは、ワンポイントマークの様に一線の黒があしらわれた真っ新な白髪と数は違うが面当てと同じ金の焔が零れ漏れる瞳があったからだ。

 

「スゥッ・・・皆さん、お疲れ様です!!

『『『ッ―――――!!?』』』

 

そんな驚嘆符と同時に響き渡った大声が彼等の耳をつんざいた。

其の声質声色にウルティノイド・レウスの正体が二人目の男性IS適正者である事は明白であり、そんな彼の声を聞いた者はまるで目の前に上司が居るかの様な感覚に陥ってしまい、即座に直立不動となったのである。

其の状態を見回して確認した後、ウルティノイド・レウスは先程よりも声量はあらずとも誰もの耳へ届く声を張り上げた。

 

「此度のテロリスト殲滅作戦は、皆さんのご尽力がなければ決して順調には行かなかった事でしょう。心より感謝致します。ありがとうございます!」

 

並べられた感謝の文言に職員達は思わず顔をほころばせるが、労いの言葉を発するウルティノイド・レウスは若干渋い表情となる。

 

「されど・・・そんな作戦の最後の手柄を我々の様なケツの青い若輩者が奪い取る様な真似をしてしまい、大変申し訳ございません。ご理解を頂けると幸い等とは露にも思っておりません。幾ら上からの命令であろうと看過できるものではありません。本当に申し訳ありません」

 

そう言って彼は深々と頭を垂れた。

ISを扱う者ならば傲慢不遜な輩が珍しくない此の世の中で見せた其の姿に対し、皆が一寸の動揺をする中で、ある男が空気の読まぬ発言をする。

 

「はい! ウルティノイド・・・さん? ちょっといいですかッ?」

 

「はい、何でしょうか? えーと・・・」

 

「野崎、野崎 圭です! 階級は巡査です!!」

 

其のある男とは、先程までブウを垂れていた野崎巡査だ。

「おいおい、野崎君!」と周囲が戸惑う中、彼は自分の疑問符をIS学園の英雄殿へ放り投げた。

 

「俺・・・いや、私達は今作戦から外されると聞きました。ですが、自分はそれに納得がいってません! 何か我々に出来る事はないでしょうか?!」

 

「おいッ、野崎!」

 

「―――――口を謹め!!」と言葉を発する寸前、ウルティノイド・レウスは再び大声を張り上げたのだ。「其の御言葉を待って居ました!!」と。

轟く言葉に皆は思わず耳を抑えるが、彼は構わずに声を張り上げる。

 

「今作戦は、此の日ノ本に蔓延る害虫害獣共の駆逐が目的! 其れを司法国家の守り人である貴方達なしで行う等は愚の骨頂!!」

 

「お、おお・・・ッ!? な・・・なら?」

 

「浅沼さんッ、例のモノを此処へ!!」

 

呼びかけられた事へ「はッ、はい!!」とビビりながらも皆の前へアタッシュケースを持って現れた浅沼は、ビクビクしながらも其の中身を衆目へ晒す。

 

「此方は我がIS統合対策部の技術で造り上げた特殊弾頭『二十二式凍結炸裂弾』であります。今まで使用して頂いた氷結弾よりも高威力に仕上げて貰いました。皆さんには此の弾頭を装填し、我々の後方支援を行って頂きたいのです!」

 

『『『!!』』』

 

「無論、無理強いをするつもりはありません。志願者のみの配布となります。よろしいでしょうかッ、荻野課長殿?!!」

 

隊員達の視線が一気に荻野課長へ注がれる。

そんな皆の視線に今まで目を閉じていた彼の瞳がカッと見開くや否や即座にち上がった。

 

「許可する。ただ・・・志願する者は相応の覚悟を持て!」

『『『ッ、はい!!』』』

 

其の返事に其の場に居た全員が志願する事が伺えたのか。ウルティノイド・レウスはダメ押しとばかりに叫ぶ。

 

行くぞぉおお―――――ッ!!

『『『ウオオオォォ―――――ッ!!』』』

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「・・・まるで”ドゥーチェ”のようだったサネ」

 

「阿? 誰がぁ?」

 

待機所での志願招集後、各々が殲滅作戦の準備をする中で、アリーシャは装備の最終点検を行う春樹へ声を掛けた。

 

「さっきの君サ。てっきり私を出汁にして集めるかと思ったんだけどネ・・・・・うん、流石は千冬が目を付ける事はあるサネ」

 

「・・・御褒めに預かり後衛じゃが、買いかぶり過ぎじゃ。其れに俺ぁファシズムに傾倒しちゃあおらん。アンタの国の独裁者と一緒にすんな」

 

リボルバーカノンへ新作氷結弾を装填しつつウルティノイド・レウス・・・いや、清瀬 春樹は冷淡に返答する。

其の態度が気に入らないのか。アリーシャはしな垂れかかる様に彼との距離を詰めるが、其れを鬱陶しそうに春樹は払い除けた。

隻眼隻手であるアリーシャだが、其の容姿は同性異性問わずウットリする程の美貌である。そんな自分に対して冷たい態度をとる春樹に彼女は興味を惹かれた。

 

「むぅ・・・君、私の事が信用できない?」

 

「あぁ、出来ん。じゃけぇ、傍に置いとくんじゃ。えろう癪じゃけどな」

 

今作戦、ファントム・タスク討滅作戦は、京都環状線モノレールで馬鹿をやろうとした絡新婦のISから引き抜いた情報を元に練られた計画である。

だが、此の作戦で前線を任せられたのは学生連中ばかり。子供よりも戦う責務があるべき筈の大人である教師は、”ある事情”から捜査本部へ向かう事となったのだ。

其れに部外者であるアリーシャが付いて行こうとした為、監視の為に随分と癪だが、作戦参加に彼女を周囲に無理言って組み込んだのである。

 

「・・・中々酷い事を言うのサ」

 

「出来過ぎた偶然で此処に居るアンタに信用何ぞある訳なかろうがな。此処なら対処もしやすい。アンタが敵じゃと解った途端に袋叩きに出来るしな」

 

「大した自信だけどネ・・・出来ると思ってる?」

 

「・・・試してみるか?」

 

ジャキリッとリボルバーカノンへ弾丸を装填した春樹は、撃鉄を起こしつつ切れ長の目をギョロリとアリーシャへ向けた。

此れに彼女は「へぇ・・・ッ」と口端を歪めるが、アリーシャの飼い猫である白猫シャイニィはビクビクと小さな体を震わせる。

 

「―――――おい」

 

「「!」」

 

そんな何とも言えぬピリついた雰囲気の二人に肝の座った人物が声を掛けた。

振り返ると其処には眉間へ皺を寄せたラウラが、怯えた表情を晒す浅沼を背にしているではないか。

 

「任務開始前に一騒動起こすつもりか? これ以上厄介事を増やす事を私は許さんぞ」

 

「・・・悪い。御免ね、ラウラちゃん。京都に来て早々ドンパチに巻き込まれちゃって、俺ってちぃとばっかし気ぃ悪くなっちまってた」

 

「まったく・・・気持ちは解るが、殺気を抑えろ。浅沼殿が顔を青くする」

 

「すんません浅沼さん。でも俺に何の用で?」

 

顔を青くする浅沼に疑問符を振ってむると彼女は春樹へ新しく開発された装備品を背中のバックパックから二つ取り出す。

一つは長物の近距離武装。もう一つは中距離武装。

 

「・・・はぁ~・・・・・浅沼さん?」

 

「何ですかい若旦那?」

 

「開発部の人達の中に『デモンベイン』見た人っています?」

 

「はい! リボルバーと対となると言えばと言っていました! 長物の方は幕末やら戦国のヲタクの人が監修し、その筋でも有名な刀匠に鍛造して頂いたのです!!」

 

爛々と目を輝かせる浅沼を余所に春樹は「マジっすか・・・ッ」と両手で顔を覆い、「次に新武装を開発する際は自分も一枚嚙ませて下さい」と彼女に念を押すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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