IS/Drinker   作:rainバレルーk

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※注意
9500字越え。
ほぼヴィラン・・・と云うか、ヴィランでしかない我らが刃。
ご都合主義アリ。

以上を踏まえてお願いします。



第179話

 

 

 

―――――こんな窮地は一体いつぶりであろうか。

劫火が燃え盛り、夜空の星が見える吹き抜けとなってしまったスイートルームで、ファントム・タスクは実動部隊モノクロームアバターが長であるスコール・ミューゼルはそんな事を何故だかボオゥっと思った。

 

ボスニア・ヘルツェゴビナの時であろうか。

アフガンの時であろうか。

クウェートの時であろうか。

バグダッドの時であろうか。

ウクライナの時であろうか。

されど・・・余りにも数多の戦場を疾駆し、数多の修羅場を潜り抜けて来た彼女でさえも初めて経験する最悪の状況が其処にはあったのだ。

 

阿ッ破ッ破ッ破ッ破ッ破ッ!!

 

金眼四ツ目に白銀の鎧兜。其の上から纏う真紅の陣羽織をたなびかせ、百鬼夜行の主の様な風貌の男、二人目の男性IS適正者である清瀬 春樹は奇妙な嘲り笑いを響かせながら今宵の月の様に輝くコンバットリボルバーのトリガーを引く。

 

「ッ、くぅう・・・!?」

 

すると銀筒発射された蒼い閃光は、全身に金色のカラーリングが施されているスコールの第3世代型IS『黄金の夜明け(ゴールデン・ドーン)』の装甲へ炸裂した瞬間、其の表面にかなり大きめの氷柱を出現させたのである。

無論、組織でも指折りの実力者の負傷に対して「スコール!!」や「隊長?!」と謂ったレインとフォルテの叫びが聞こえるが、此れに一番驚いたのは他ならぬスコール自身であった。

 

「『プロミネンス・コート』が、効かない・・・ッ?!」

 

『プロミネンス・コート』。

其れはゴールデン・ドーンの機体周囲に張る薄い熱線のバリアの事であり、大抵の攻撃は防ぐ事が出来る。

そんな最強の炎の鎧が、たった一発の攻撃によって凍り付いてしまったのだ。

 

凍てつくせッ! 『イタクァ』!!

 

其の鎧の下の肉までも蝕まもうとする絶対零度の弾丸、『二十二式凍結炸裂弾頭』を春樹は更にスコールへ向けて撃鉄を叩く。

だが、此れに逸早く反応する者が居た。

 

「させないっス!!」

 

プラスチック爆弾の爆風から漸く立ち直ったフォルテは、動揺を隠せないスコールの前へ現れ出でると防御の為の氷壁を顕現させたのだ。

御蔭で此の立ち塞がった氷の塊に対し、新型氷結弾は一定の衝撃波は与えるものの先程よりかは威力が劣る事となる。

 

「・・・阿ッ破!

 

しかし、何故か此の邪魔者に対して春樹は悔しがる処か、更なる笑みを浮かべる。

そして、其の笑みと共にもう片方の手に握られた漆黒と焔のエンブレムが施されたミリタリーモーゼルを構えたのだ。

 

「ッ、フォルテ!!」

 

さて、其の笑顔に何かを察したのか。氷壁を顕現させたフォルテを庇う様に前へ飛び出したのである。

 

焼き尽くせ・・・ッ! 『クトゥグア』!!

 

呟く言葉と共にミリタリーモーゼルのトリガーは絞られ、構造内の特殊薬莢を撃鉄が叩いた。

すると黒筒から放たれたのは、周囲の劫火と同等か其れ以上の火柱であったのである。

 

「ッ、ぎゃぁあああああッ!!?

「レイ―――――ン?!!」

 

ミリタリーモーゼルへ装填されていたのは、トチ狂ったIS統合対策部の連中が造り上げた特殊弾頭『四式爆裂焼夷弾』、通称『爆裂弾』。

決して人に対して向けてはならぬ『ドラゴンブレス弾』をベースに制作された対IS用弾だ。

其の威力・・・申し分なし。

 

「熱いッ! 熱いィイイいいい!!」

「レイン! 今すぐ消すっス!!」

 

操縦者を外傷から守る筈の絶対防御装置が機能していないのか。火達磨になって絶叫と共に転げ回るレインへ消化の為の冷気を送ろうとするフォルテ。

けれども、そんな彼女の腕を「危ない!」と声を荒らげて引いたのは、他ならぬスコールであった。

 

ズドドッン!

・・・ッチ!

 

もしスコールがフォルテの腕を引かなければ、彼女は摂氏何千度ととも云える爆裂弾の餌食になっていただろう。

其れでも燃える恋人を助けようと「放すっス!!」とフォルテは手を振り払おうとするが、そんな彼女に向けて春樹はミリタリーモーゼルを構える。

 

「ッチィ!!」

 

其れを防がんとスコールは主武装である両肩に備わっている炎の鞭『プロミネンス』を展開し、高速回転と共に防御シールドを構築した。

 

無駄無駄無駄無駄無駄ッ、無駄ァア!!

 

されども其れで止まる春樹ではない。

再び新型氷結弾頭が装填されたリボルバーカノンの銃口を向けると何とも言えぬ正確無比な射撃をし、先程のゴールデン・ドーンに着弾した時と同じようにプロミネンスを氷菓子の如く凍らせたのである。

此れでは不味いとスコールは瓦礫の物陰へとフォルテを連れ込むと反撃の為の超高熱火球『ソリッド・フレア』を生成するのだが―――――

 

オラぁッ!

ぐッふぇ!!

 

そうこうしている間、春樹は爆裂弾の熱さに悶え苦しむレインを缶ゴミでも潰す様に踏みつけたのだ。

 

無法者の分際で、ようも俺達に牙を向けやがって此の糞ッタレのボケなすびが! ただでは済まさんッ! 確実に確実に消し炭にしてくれるわ!!

 

激昂状態で何度も何度もレインを踏みつけるものだから、踏む度にベキベキボキボキと馬鹿に嫌な生々しい音が響き渡る。

・・・此れでは、天魔外道がどちらなのか区別がつかない。

 

「―――――ッ・・・ふ、ふざけん・・・じゃねぇ・・・・・ッ!」

阿”ぁッん?

 

しかし、レインもただ黙って踏み付けられていた訳ではない。

熱の苦しさと痛みに耐えつつも一瞬の隙を逃さず、彼女は急ごしらえながらもスコール直伝のソリッド・フレアを生成したのだ。

 

「くたばり・・・やが、れッ!!」

「―――――ッ!?

チュッドォオ―――――オン!!

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「なんなの、この状況・・・!?」

 

国際的過激派テロリスト集団、ファントム・タスクの主要メンバーが潜伏しているであろうホテルを包囲した警察特殊装甲機動隊とIS学園勢。

先行した事実上の現場指揮官である春樹からの連絡を待って居たのだが、突如としてマークしていた部屋が爆音と共に吹き飛んだのだ。

此れを合図と踏んだIS学園勢はコートを脱ぎ据えるや否や、自身のISを纏って現場へと急行。しかし、現場に突入する直前、またしても彼女等の鼓膜を爆音が揺さ振った。

 

「ハァ・・・ハァッ・・・チクショー、やっぱり控えてやがったか!」

「レイン!!」

 

其の爆発音の後に現場へ入ってみれば、其処には口から血を垂らしながら意気消沈で跪く学園の元スパイと其の彼女を労わる様に抱き締める学園の裏切り者が居たのである。

 

「本当・・・本当に優秀な人材ね。仲間に出来なかったのが残念よ、本当に」

 

しかもそんな二人の側には如何にもという感じの雰囲気を放つ黄金のISを纏う人物が恨めしそうに此方を睨んで来るではないか。

 

「・・・・・金ぴかの方、ファントム・タスク幹部、スコール・ミューゼルと見受ける」

「残りの二人はブリーフィングで聞いたスパイと裏切り者で良かったサネ? でも、二人目くんは何処に行ったのサ?」

 

「へッ・・・野郎なら、ブッ飛ばしてやったぜ」

 

ズタボロのレインは得意げに口元の血を拭いながら、春樹が吹き飛んで行った方向を親指で示す。

此れに対してアリーシャは「ッ、残念だけど遅かったネ」と若干寂しそうに表情を歪めるが、彼女よりも彼と付き合いの長い連中は何故かほくそ笑んだのだ。

 

「はッ、馬鹿め。どんな事をしたか知らんが・・・それぐらいであの春樹がくたばると思っているのか?」

 

「・・・だよなぁ。だから、さっさとオレ達は逃げたいんだよ! 邪魔すんじゃねぇ!!」

 

鼻で笑うラウラに対し、焦燥感漂う返答をするレイン。其の様子にスコールは「レイン?」と疑問符を浮かべた。

先程のソリッド・フレアは自分程ではないが、IS一機を再起不能にするぐらいならば申し分ない威力。其れも至近距離の直撃だ。機体処か、操縦者にも多少のダメージが及んでいるとスコールは考えていた。だから焦る必要などないのだ。

・・・けれども。

 

「―――――阿ーッ、糞が。痺れちもうたでよ」

 

「ッ・・・!?」

「WAO!」

 

とても残念な事にモノクロームアバター達が相手にしているのは、IS学園の狂戦士にして不死身の刃の異名を持つ規格外の人間なのだ。

 

「フッ・・・どうした春樹? 油断でもしたか?」

 

「コイツの事だ。どうせ余韻に浸り過ぎた所を突かれたのだ」

 

「オメェと一緒にすんじゃねぇよ、篠ノ之」

「なんだと貴様!」

 

「はいはい、二人とも。今はそれどころじゃないでしょ?」

 

「其れもそうじゃな」と不意打ちのソリッド・フレアの御蔭か、いつもの調子に戻った春樹は再び二丁拳銃を構える。

そして、彼に釣られる様にラウラ達も自らの得物を手元へ顕現させた。

 

「二人目・・・いや、清瀬? そう言えば、作戦はどういったものだったネ?」

 

「決まっとろうが・・・・・『袋叩き』よ!」

 

ニチャリと下卑た表情を歪める春樹に対し、レインを支えるフォルテが吠える。「卑怯っス!」だと、「恥ずかしくないんスか!」と。

此れに正々堂々を信条とする箒や一般的な倫理観を持つ鈴は「うッ・・・」と痛い所を突かれた様な表情を晒す。

 

「いんやちっとも!」

「な!?」

 

ところが、一方の春樹は恥ずべく処か、声を大にして言い放つ。「俺らぁは、こうでもしなきゃ勝てんのじゃ!」と。

 

「卑怯? 卑劣? 上等じゃ! 俺らぁは弱ぇけんなぁ・・・何をしても許されるんじゃ!! テメェらの様な悪党を倒すんなら特にのぉッ!!」

 

あんまりにも堂々と踏ん反り返って言い放つもんだから、思わずフォルテは「ぐ・・・ッ」とぐうの音を呟いてしまい、其の彼の隣で「それはお前だけだ!」と何故か箒が喚いた。

 

「と、いう訳だ。どうだテロリスト共? 今からでも降伏するか?」

 

「ッケ、誰が―――――」

 

「―――――するかよ!」と宣言する前にレインの顔面へ発射される新型凍結弾頭。其れを着弾する直前でスコールの放ったソリッド・フレアが相殺して事なきを得る。

 

「清瀬ッ、テメェぶっ殺してやる!!」

「そいつは奇遇じゃ! 俺も同じ事を考えとった!!」

 

さぁ、其処から再び始まった氷結弾と爆裂弾の雨あられ。

けれども先程とは違って、スコール達は前面の対処だけをするだけではいけなくなっていた。

 

「私達が居る事を忘れるな!!」

「喰らいなさいよッ!!」

 

春樹の銃撃に加え、背後からは日本刀に青龍刀を振り上げた箒と鈴が瞬時加速で迫る。

此れをレインは主武装である双剣『黒への導き(エスコート・ブラック)』で迎撃せんと構える。―――――のだが・・・・・

 

「春樹直伝・・・そうはイカの金時計!」

「ッ、クソがぁああ!!」

 

剣を構えた瞬間、ラウラの十八番であるAICがレインへ襲い掛かる。

『停止結界』とも呼称されるAICは使用に多量の集中力が必要なのだが、対象を任意に停止させる事が出来、1対1では凄まじい効果を発揮するある意味チートなものなのであるが、其処に春樹の実にイヤラシイ悪知恵も加わった事で更なる高等技術へと進化していたのだ。

 

「ッ、レイン!!」

 

無論、恋人の危機に動かぬフォルテではない。彼女は防御の為の氷壁を展開しようとするのだが―――――

 

「―――――私を忘れちゃ困るネ!」

「ッ!?」

 

そうはさせまいとアリーシャの鋭くも重い一撃がフォルテに襲い掛かる。

 

「レイン! フォルテ!」

 

「余所見をしてんじゃねぇでよ!!」

 

二人に意識がブレるスコールに対し、春樹は高速リロード共に何とも素敵な笑顔で迫った。

炎を操るスコールのゴールデン・ドーンと云えども至近距離で爆裂弾の直撃を受ければ一溜まりもない。

 

「いつまでも調子に・・・乗るんじゃあない!!」

「うわお!?」

 

其れを警戒してか。ゴールデン・ドーンの先端が開閉式となっている巨大な尾が投げ槍の速度で放たれる。

 

「―――――ところがギッチョン!!」

「な・・・!?」

 

しかし、其れを防いだのは、先端が三又となっている春樹の纏うIS琥珀の白銀の尾っぽであったのだ。

其のゴールデン・ドーンの黄金の尾を抑え込んだ春樹は、其のまま射撃をするかと思いきや掌へ顕現させていた拳銃を収納したではないか。

此れに対しスコールの崩された調子はもっと崩されてしまう。

「何故、此の状況で銃をしまったのか?」と。「銃をしまったのなら次はどんな武器を展開するのか?」と。刹那の一瞬、彼女の脳内を疑問符が支配した。

無論、いつまでもそんな疑問符を後生大事に抱え持つスコールではない。・・・ないのだが、其の一瞬のフリーズによって対処が遅れてしまうのは否めなかったのである。

 

「オラァアッ!!」

「―――――ッ!!?」

 

ズドムッ!とスコールの整った美しいギリシャ彫刻の様な顔に叩き込まれた白銀の手甲に包まれた拳骨。

最初、彼女は何が起こったのか理解できなかった。

迫り来る拳骨が自分の高い鼻をへし折った瞬間も、其のまま尻餅をついてしまった瞬間もだ。

漸く自分がとても原始的な方法で殴られた事に気付いたのは、自身の纏っている黄金の鎧が圧し折られた鼻から垂れた血で汚れた瞬間であった。

余りにも久方ぶりの外傷に呆然とするスコールに対し、尚も春樹は「おんどりゃぁあ!!」と声高らかに二発目の拳骨を振り上げる。

 

「・・・・・」

「ゲぼらぁッ!?」

 

ところがどっこい。

さぁ此れから殴打せんとした瞬間。何故か踏ん付けられた蛙の様な断末魔を上げたのは、春樹の方であった。

 

「・・・いつまでも調子に乗らないで頂戴」

 

「破ッ・・・ようやっと本性見せたか! えぇ、金ぴか?」

 

「それは貴方もでしょう? 紳士的な態度は上っ面だけの・・・”雄豚”には調教が必要ね」

 

「言うてくれるじゃねぇかよ・・・此の”雌豚”ァッ!!」

 

さて、其処から始まったのは金と銀の拳骨と足蹴にと尻尾撃の応酬。

勿論、殴打に留まらず、両者は互いの近接格闘武装を顕現させ、更なる苛烈な戦闘を繰り広げる。

すらりと抜いた赤く振動する鉈に焔を纏うしなやかな鞭。其れに火球と氷柱が混ざり合っては華を咲かせた。

 

「よくも今まで好き勝手やってくれたなテロリスト! 正義の刃を喰らえ!!」

 

「図に乗るんじゃ―――――

「ザ・ワールド!」

―――――ッ、ボーデヴィッヒてめぇ!!」

 

「ぶっ飛べぇ!!」

 

「ッチィ!」

 

一方のレインは、箒の斬撃→ラウラのAIC→鈴の龍咆のハメ技に苦しんでいた。

各個撃破に映ろうとしても今度は鈴の青龍刀→箒のブラスターライフル→ラウラのレールカノンと云った連携攻撃が襲い掛かって来るではないか。

確実に、確実に相手のシールドエネルギーを削る連携技だ。

 

「レイン!!」

 

「だから・・・行かせないって言ってるじゃないのサ!」

 

さて、もう一方の方も一進一退の攻防が繰り広げられていた。

フォルテは袋叩きに遭う恋人を助けようと近づくが、其の度にアリーシャが立ち塞がっては彼女を叩き伏せる。

流石は前モンド・クロッソ大会覇者か。フォルテに対し圧倒的な実力差を見せ付けるアリーシャ。

しかし、其れでも倒される度に彼女は立ち上がった。

 

「OH・・・すごいガッツだネ。君の様なパイロットがテロリストだという事が悔やまれるサ」

 

「うるさ、いっス・・・! 褒めるなら・・・そこを退いて欲しいんスけど!」

 

「それは出来ない相談だネ。君の気持はよく解るけど・・・私は千冬によしよしペロペロしてもらう為に頑張らないとだからネ」

 

「わけわからない事言うなっス!!」

 

叫びと共にフォルテは機体の能力によって攻撃の為の氷塊を顕現させる。

だが、周囲が劫火に燃えている為か。纏まった塊とならず強度も低レベル。とてもじゃないが、立ち向かうには脆弱過ぎた。

 

「・・・ごめんネ」

「ッ、きゃぁあああああああ!!?」

 

超高速回転するサイクロンの様な物体を削る風と共に紙切れの如く吹き飛ばされてしまうフォルテ。

 

「ッ・・・フォルテ!!」

 

奇しくも其の吹き飛ばされた先に居たのは、もうズタボロと言っても良い状態にされてしまった愛おしい恋人、レインであった。

放り投げられたフォルテをキャッチしようと目線を向けるが、意識までをも向けてしまった為に隙が生じてしまう。

 

「どこを見ている?!」

「ぐっがぁアア!!」

 

放たれたラウラのプラズマ手刀がザシュゥウッ!とレインへ炸裂。

彼女は其の斬撃によって吹き飛ばされた事で、フォルテを抱き締める処か、正面衝突をしてしまった。

 

「さて、そろそろ遊びはここまでだ・・・!」

 

「フッフッフッ・・・」とでも云いそうな雰囲気で二人を囲むIS学園勢。

其の背後でスコールと壮絶な取っ組み合いの殴り合いから睨み合いをしていた春樹も「其の通りじゃのぉ!」と牙を見せてのしたり顔をする。

此れに対して苦い顔渋い顔をするのは敵役テロリストであるスコール達。

最初っから調子を散々に渡って狂わされて崩された挙句、まだ相手が本調子ではないと知らされた。

テロリストに成り立てのフォルテに至っては心が折れそうになって少し泣きそうだ。

 

「阿破破破・・・じゃ、”射撃開始”をお願いしまーす」

「・・・え?」

 

「射撃開始をお願いします」とは一体どういう事であろうか。

まるで他人に頼む様な―――――

 

「―――――まさか!?」

 

スコールのそんな声と共にパァーンッ!と遠くの方から破裂音が聞こえた。そして、自らの背中へ酷く冷たい痛みがビキビキィッ!と襲い掛かって来たのである。

 

「ヒットですじゃ。次は左へ二度修正」

≪了解!≫

 

春樹の声に応えたのか、再び木魂する破裂音と云うか銃声。

しかも先程とは違い、多方面から飛んで来た青白い弾丸は指定された位置へと三人のテロリストへ着弾したのだ。

 

「つ、冷た!?」

「野郎ッ!!」

 

其処からは始まったマシンガンの如き氷結弾の雨あられ。

春樹の使用した拳銃対応の型番ではなく、ライフル対応の専用型番を使っている為に威力は増大している。

 

「弾があるだけどんどん撃て! 数撃ちゃ当たる!! いてもうたれッ!!」

 

さぁ、此のライフル氷結弾頭を使用しているのは、ホテルから少し離れた位置にあるビルの一室を陣取った新型EOSを装備した警察特殊機動隊の面々。彼等は配布された氷結弾を惜しみなくスコール達に向かって発砲した。

因みに此の氷結弾一斉射撃によってあれ程広がっていた劫火が鎮火の一途を辿るのは、

思わぬ副反応である。

 

「ッ、ふざけんじゃねぇえ!!」

 

勿論、只黙って氷結弾の餌食となって氷漬けになるモノクロームアバターの面々ではない。

炎を操る事を得意のお家芸にするレインとスコールは、小さなソリッド・フレアを幾つも生成し、自分達に向かって飛んで来る氷結弾を相殺する。

しかし・・・・・

 

「はい、至近発砲」

「はい、停止結界」

 

「「ッ!?」」

 

底意地の悪い春樹はそんなスコールの迎撃を嬉々として邪魔し、ラウラは標的排除に対する効率的な助力をした。

 

「レイン! 隊長!! 今助け―――――」

「ごめんけど、『高電圧縛鎖(ボルテックチェーン)』」

―――――ッ、きゃぁあああああああ!!?」

 

そんなピンチな二人を助けんとするフォルテだったが、鈴の容赦のない新型武装が身体へと巻き付くや否や、凄まじい稲光が奔ったのである。

 

「阿―――――破ッ破ッ破ッ破ッ破! 惰弱惰弱惰弱ゥッ! 俺らぁを敵に回した事を後悔させた上でブタ箱にぶち込んでやるワァ!! 阿ッ破ッ破ッ破ッ破ッ破ッ!!」

 

「O・・・OH・・・ッ」

 

アリーシャは此処に居る誰よりも静かにドン引きしていた。

IS界隈では、二人目の男性IS適正者は癖が強いとの噂があったが・・・此れは癖が強いと云うレベルではない。今の春樹はまるでアニメに出て来る典型的な悪役其の物であった。

 

実を言えば、アリーシャは此の戦いが苦戦必至に陥ると思っていた。

専用ISがあると言っても自分を除く乗り手は、一人の軍属を覗いて全員学生。碌な戦闘経験も積んで来ていない素人に毛の生えた程度だと。

ところがどっこい。

 

「はい、ラウラちゃん。空かさず其処へ?」

「AIC!」

「PERFECTじゃ、ラウラちゃん!!」

 

「このクッソたれバカップルが!!」

 

そんな彼女等を率いていたのは、百戦錬磨のテロリストをも手玉に取る稀な才能を持った金眼四ツ目の面当を被った二人目の男性IS適正者。

一応、彼は政府公式発表では昨年まで地方に住む普通の一般中学生の筈なのだが、アリーシャの見る清瀬 春樹と云う人物は、余りにもサディスティックなサイコパスに見えたのだ。

 

「さっさとカキ氷に成れよぉ。そしたら其のまんまブタ箱に入れてSNSに晒してやるわぁ!」

 

一方の春樹は、自分がとても危うい興奮をしている事に気付かずにいた。

初めて出来た恋人との初めての旅行。其れが早くも一日目からオシャカになってしまった事で、憤怒の感情に溺れていたのである。

だから彼は敵を弄る事で其のストレスを発散していた。本来の春樹ならば悪戯に敵を陥れて虐める真似などしなかっただろう。

・・・自陣営が勝利を目前にしている時など特にだ。

 

話は変わるが、春樹の好きな作品の一つに『ジョジョの奇妙な冒険』がある。

其のジョジョ第二部の主人公であり、第三部でも活躍する『ジョセフ・ジョースター』は次の台詞で見得を切った経緯がある。『相手が勝ち誇った時、ソイツは既に敗北している』・・・と。

 

≪―――――ほ・・・本部! 本部! 応答を願う!!≫

 

「阿?」

『『『?』』』

 

IS学園勢が使う通信機器を通じて聞こえて来たのは、随分と切羽詰まった男の声。聞き慣れぬ声からして、彼は別動隊へ行った警察特殊機動隊の隊員だろう。

突然の緊急通信に思わず皆の意識が其方へ一瞬だけ逸れるが、普段ならば気にも留めなかったろう。

・・・・・其の通信内容が、”ある人物”を含んだ内容でなければ―――――

 

≪―――――”織斑”候補生が! 織斑候補生が・・・うわぁあああああああッ!!?≫

 

「―――――ッ、一夏!!」

「え・・・?」

「ちょッ、箒?!」

 

飛び込んで来た通信内容に真っ先に動いたのは箒であった。

彼女は一目散に身を翻すと周囲の声が発せられる前に別動隊が居る方向へブースターを噴かしたのである。

其の場に居た全員が箒の行動に唖然と呆然とした。

 

さて・・・此の彼女の行動を”好機”と捉えたのは何方の陣営であったろう?

 

「―――――フォルテ!」

「はいっス!!」

 

「ッ、しまっ―――――」

 

気付いた時には既に遅かった。

全員がポカンとした一瞬の内にフォルテは自機能力によって人並大の氷塊を造り上げる。

あれ程劫火に包まれていた周囲がEOS隊と春樹の氷結弾の御蔭で冷やされた為、大きな氷を塊を作るのは容易だったろう。

何と皮肉な事か。

 

・・・しかし、大きな氷塊を造った所で何だと云うのだろうか。攻撃用にしては少し大きく、防御用にしては小さい此の氷塊を。

 

「流石よ、フォルテ・・・!」

「愛してるぜ! お前は最高だ!!」

 

赤い舌を出しつつフォルテの作った氷塊へ向けてスコールとレインは同じくらいのソリッド・フレアを衝突させたのだ。

大きな氷塊は、高熱の燃える球によって水を通り越し、水蒸気となって周囲を覆ったのである。

 

『『『!!?』』』

「ッ、畜生が!!」

 

急激に広がった水蒸気に目をやられるIS学園勢。

しかし、所詮は目視をやられただけ。ISのハイパーセンサーの前では無駄・・・・・だと言う事はスコール達も理解していた。

なれば何故に彼女等は爆発的な水蒸気を発生させたのか。

其れは一重に彼等の意識を一瞬でも逸らせる為だ。

 

「本当に癪だけど・・・此処は戦略的撤退をとらせてもらうわ」

 

「スコールッ、テメェエエ!!」

 

「さようなら、ギデオン」の挨拶と共にスコール達の身体が背景の中に溶けたのである。

『特殊光学迷彩』。特に彼女等の使う光学迷彩は、ISのハイパーセンサーさえも欺く代物なのだ。

 

「ッ、此の糞野郎がぁあああああ!!」

「春樹!!」

 

雄叫びと共に銃を乱射する春樹。

だが、飛び出した弾丸は空虚を撃ち抜くばかりで、霧が晴れた頃には現場へ残ったのは瓦礫と凍った炎だけであった。

 

「卑怯じゃぞッ! 出て来い、スコール・ミューゼル!!」

 

喚く春樹を嘲笑うかの様に今宵の月とホテルの下から聞こえて来るサイレンの光が、彼を照らす。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
『承認欲求』、何でしょうね?
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