『承認欲求』
其れは人間が他者を認識する能力を身につけ、成長し社会生活を営んでいく内に「誰かから認められたい」という感情を誰でも多かれ少なかれ抱くようになる感情の総称である。
世界で初めて其の存在が確認された最初の男性IS適正者である織斑 一夏は、今までそんな欲求とは無縁であった。
何故なら彼は、いつでもどこでも誰からでも”認められていた”からである。
勿論、一夏の事が気に入らないと心の中で蔑んでいた連中は多かれ少なかれ居たであろう。
しかし、身内は世界最強のIS操縦者ブリュンヒルデで、ともなって実家は裕福。しかも外見は姉に似て文句なしの容姿端麗。そんなスクールカーストのトップクラスに入る彼に誰が文句を言えようか。
そんな諫める者が少ない状況下で、周囲からチヤホヤされていたからこそ、彼の生まれながらの欠点の一つである”鈍感”を育んだ要因と云える。
・・・だが、そんな順風満帆の一夏の前へ大きな障壁となる男が現れた。
男の名は『清瀬 春樹』。一夏から数えて二番目に発見された史上二人目の男性IS適正者である。
其の春樹は周囲が一夏を称える中で唯一彼を糾弾し、批判し、嫌悪する人間であった。
そんな人間に初めて出会った一夏は、大いに困惑した事だろう。
当初、そんな態度をあからさまに見せる彼に戸惑いを感じつつも同じ境遇である事に好感を持ち、一夏は無意識かつ無自覚に春樹を籠絡せんとしたが・・・此の捻くれた大酒飲みの蟒蛇は大きく此れを拒絶。
更に二人の溝は、学園へ途中編入して来たシャルロット・デュノアの男装事件を機に決定的となり、一夏もまた春樹を嫌悪する様になった。
・・・しかし、彼の春樹に対するマイナス感情は此れに留まらない様になる。
一夏と春樹。学園へ入学当初の彼等は立場が大きく違った。
片方は世界初の男性IS適正者にして、世界最強のブリュンヒルデの名を冠するIS適正者を姉に持つ将来有望株。
対してもう一方は、家柄が良い訳でも、身内にIS関係者が居る訳でもない、本当に唯の地方に住む一般中学生。
無論、賭ける期待は雲泥の差がある。
ところがどっこい。蓋を開けてみれば、二人の実力差は期待とは反比例する様に大きくかけ離れたものになっていたのだ。
周囲の期待から入学当初から専用機を与えられたのにも関わらず、大した戦果も立てられていない一夏に対し、期待ゼロ成長性ゼロ能力ゼロの『ゼロの春樹』と揶揄されていた春樹の打ち立てた功名は凄まじいの一言に尽きた。
専用機には確実にスペックが劣るであろう量産型ISで、第三世代専用ISでも苦戦する所属不明の無人IS機体をスクラップにし、違法技術であるVTSによって暴走したドイツ専用IS機体を収めた。
更に日本政府より専用機が与えられて以降は、暴走した軍用機体を諫め、学園を襲撃して来たテロリストが駆るISを屠り、再び襲撃を敢行した正体不明の無人IS機体を撃墜させ、ISを纏わずとも学園へ乗り込んで来た特殊部隊へ悪夢を見せたのである。
更にプライベートでもデュノア社ならびにデュノア家の騒動解決に奔走し、同社が参加した新機体発表会を襲撃したテロリストを撃退する大手柄を打ち立てたのだ。
そんな出世街道を奔走する春樹が、一夏は気に入らなかった。
彼としては、自己中心的で他人の事など少しも考えず、敵に対して微塵も手心を加えない血も涙も思いやりもないナイナイ尽くしの春樹が何故に周囲から称えられて慕われるのかが理解できなかったのである。
だが、そんな春樹に一夏は追い付けなくなっていた。
『銀の福音事件』で自身の専用機である白式が二次移行しようが、どれだけ己自身を鍛えようが、もう其の実力差をひっくり返す事は出来なくなっていたのだ。
ISを纏っての模擬戦闘で敗北を決し、生身においての得意の剣道でもコテンパンに打ち負かされてしまう有様。
「どうしてあんなヤツが・・・ッ」と一夏の春樹に対する劣等感は嫉妬心に結び付き、いつしか其れは歪んだ憎悪へ変貌していく。
◆◆◆
夜の帳がすっかり居りきった頃。
京都市内は碁盤の外れにある倉庫街へ真っ黒な装備に身を包んだ物々しい一団がゾロゾロと物騒な得物を手に集結していた。
「・・・こちらアルファ1、配置へついた」
「こちらアルファ2、狙撃位置に到着」
一団の正体・・・其れはIS統合対策部製の対IS新型EOS『石英』を身に纏った警察特殊機動隊の面々である。
彼等は新型氷結弾頭を装填した銃火器を手に国際的過激派テロリスト、ファントム・タスクが潜伏していると思われる倉庫前へ此れから突入せんと戦々恐々としていた。
◆
「・・・納得がいかねぇ」
そんなEOS隊員達が絶妙な緊張感を漂わせる中、後方へ待機している車両の中でぶつくさと一夏は唇を尖らせる。
「相手はISを使ってるのに・・・何で俺達が控えに回らなくちゃなんねーんだよ・・・!」
今作戦において、彼は不満でしかなかった。
作戦の指揮を執るを思っていた世界最強のブリュンヒルデにして姉である千冬と引率で来ていた山田教諭は捜査本部の方へ赴き、生徒の中では一番の年長者である楯無もそんな彼女等に護衛と云う形でついて行ってしまったのである。
其の御蔭で、実質的な現場指揮を執る事になったのが、あの春樹であった。
「なにが子供だよ・・・ッ。アイツだって俺達と・・・俺と同じ子供だろうがッ。それなのにどうしてアイツだけ・・・清瀬だけ特別扱いなんだよ・・・!!」
彼は警察並びにIS学園勢の部隊を二つに分けて作戦を遂行する様に仕向けたのだが、我が物顔で作戦指揮をする一夏は反発。
しかし、今までファントム・タスク相手に数々の傷を付けたと言う大手柄を打ち立てた春樹以外に作戦指揮をするに見合う人材はいなかった。
「・・・・・大丈夫、一夏?」
「シャル・・・」
そんな苛立ちを隠せずぶつくさと奥歯を軋ませる一夏を心配してか、シャルロットが彼へ声を掛ける。
しかし、一夏の彼女へ向ける目はとても冷めているではないか。
「なんだよ、俺に何か用かよ?」
「ううん、別に・・・・・でも、なんだか焦ってる様に見えたからさ」
「焦る? なんで俺が焦るんだよ?」
「い、一夏?」
一夏はハイライトのない目でシャルロットを見る。
元はと言えば、彼女の男装事件の一件から一夏の運命は狂って来たと言っても良いのではなかろうか。
「お二人ともどうかされたのですか?」
「セシリア・・・ッ」
「なんだよ、セシリア?」
冷淡な一夏の瞳に戸惑うシャルロットを知ってか知らずか、助け舟を出して来たセシリアに目線が写る。
「い、いえ・・・出撃前にシャルロットさんに御用がありましてよ。よろしいですか?」
「う、うん。今行くよ! それじゃあ一夏、またあとでね(なんだか・・・なんだかよくわからないけど、今の一夏・・・こわい)」
此れ幸いとシャルロットはセシリアについて行き、一夏の前から立ち去った。何とも言えぬ違和感を彼に感じたまま。
「・・・・・俺がみんなを守るんだ。アイツなんかよりも、清瀬よりも俺の方がみんなを守る事が出来るんだ・・・!」
◆
「荻野課長、配置付きました」
≪よし・・・カウント開始!≫
配置に付いたEOS部隊は得物を手にカウントゼロの合図を待つ。
ISのハイパーセンサーをEOS用に改造したレーダーによると倉庫内には複数の反応が見られる事から、相手は此方の動きに気付いていないと思われる。
≪5…4…3…≫
「ゴクリ・・・ッ」
最大限の注意を払い、敵に気付かれない様に銃器を構える。
そして―――――
≪2…1…0ッ!≫
「行動開始!!」
「行け行け行けぇッ!!」
カウントゼロの合図と共に倉庫内へ放り込まれるスタングレネード。
ビキャァア―――――ン!!と凄まじい音と眩い光が炸裂した後、グレネードランチャーから発射された催涙ガス弾。
そんなガス弾から白い煙が立ち込めると同時に倉庫内部へEOSを纏った隊員達が雪崩の如く押し入った。
ところが・・・・・
「あれ・・・? 剣崎さん、なんかおかしいですよ?」
「あぁッ、なんかヤバいかも」
≪どうした? 一体何があった?≫
倉庫内部の異変に真っ先に気付いたのは、野崎巡査だけではなかった。
余りにも内部が静かすぎたのである。其の余りの静けさに隊員達の間に動揺が奔る。
「剣崎・・・さっきまであったレーダーの反応が消えた!」
「ッ・・・まずい!!」
罠だと気づいた時には、もう既に遅かった。
≪―――――≫
「げぇッ!?」
「なんだぁ?!」
倉庫の二階ベランダ部分から突如としてズラズラッと現れた鉄仮面の集団。其の左腕には大口径の機関砲を持つ者やビーム砲を持つ者まで居るではないか。
さて、そんな機械的な鉄仮面集団はまんまとホイホイされたゴキカブリ共に向けてトリガーを躊躇なく引いた。
ズガガガガガガガガガガッ!!
ズギャギャギャギャギャ―――ンッ!
照明のない真っ暗闇の倉庫に響き渡る眩い瞬きとピンク色やら緑色やら青色の閃光。
≪―――――≫
≪―――――≫
此れはまんまと罠にかけてやっつけてやったと鉄仮面軍団は顔を見合わせて銃撃を終える。
射撃線上の先にはモワワーッと床の材質であるコンクリートが粉状となって周囲に舞って居た。
正に「勝った! 警視庁特殊機動隊・完ッ!!」なのであるが―――――
「―――――ところがどっこいだぁ!!」
≪―――――!?≫
モワワーッと粉塵舞う吹き抜け一階からズガガガガガガガガガガッ!!と青白い弾丸共が下から上へと突き上げる様に噴き出したのだ。
バギャン!
≪―――――!!≫
青白い弾丸が鉄仮面の体表面へ着弾したと同時に中の用薬が炸裂し、バキバキィッと絶対零度に凍てつく。
其処へ矢継ぎ早にズダダダンッ!とブロンズ色の徹甲弾が直撃する事で、凍り付いた部位が飴細工の様に粉々に砕け散った。
「よっしゃやりぃ!」
「浮かれないで! 確実に標的排除を完遂するんです!!」
≪―――――?!!≫
漸く其処で鉄仮面軍団は罠に填めた筈の警視庁特殊機動部隊EOS課が全滅していない事に気付いたのである。
「やっぱし罠を張っていましたね、剣崎さん!」
「楯を装備していた御蔭で助かった・・・やっぱり日頃の訓練がこんな所でモノを言うね」
「しかし、何だぁあの連中は? ISにしちゃあ随分と機械的だぞ」
「ブリーフィングでウルティノイドさんが言っていた『ゴーレム』って言う無人機ですよ、きっと!」
「なら・・・遠慮なくぶっ壊せるって事だな!!」
罠に填める処か、思わぬ反撃にあってしまった鋼の乙女達。
そんな彼女等に向かって氷結弾頭やら徹甲弾を大盤振る舞いで撃ちまくるEOS隊員達。
しかし、此のまま黙ってやられる鋼の乙女達ではない。彼女等はシールドビットを展開して防御陣形を形成しようとする。
「―――――そうはいかなくてよ!」
≪―――――!!?≫
とこがどっこい。そんな展開したシールドビットを遥か後方から御嬢様言葉と共に撃ち落とすサファイアの戦装束を纏う令嬢が居るではないか。
「貴女達の手札などお見通しですのよ! さぁ、EOSの皆様! やっておしまいなさい!!」
「オルコット候補生の助太刀だ! 良いトコ見せようぜ、お前ら!!」
「おーほっほっほっですわ!」と高笑いを響かせつつ的確にゴーレム達のシールドを撃ち落とすセシリアに導かれるEOS部隊。
「―――――行って・・・山嵐!」
「―――――墜ちちゃえ!!」
≪―――――ッ!!?≫
更に其処へ水色のISを纏う簪と温かなオレンジ色の装甲を持つISを駆るシャルロットが、ミサイルパーティーとマシンガンパーティーを行う。
更なる戦乙女達の登場に歓声に沸くEOS隊員達。何処か悲鳴の様な甲高い機械音を響かせるゴーレム達。
ゴーレム達の最大の誤算と言えば、IS学園勢が以前に彼女達と同じ型番の機体と戦っていたという事とEOS隊員達の練度が想像以上に高かったという点だ。
≪―――――!!≫
≪―――――!?≫
次々とEOS隊員達とIS学園勢の凶弾に倒れて行くゴーレム達。
けれども声にもならぬ機械音を上げても尚、前へと前へと進む様にプログラムされている彼女等に恐怖心などない。
「・・・・・ッチ。やはり木偶は時間稼ぎにもならんな」
そんな役立たずの彼女等に業を煮やしたのか、遂にIS学園勢達が狙っていた本命が闇の中で舌を打ち鳴らす。
「ん? なんだ? なんかちっこいのが出て来たぞ」
闇の中から出て来た其の黒い機体に近くに居た隊員が疑問符を浮かべた。
何故ならば、他のゴーレム達は男受けの良い何ともグラマラスなフォルムに対し、其の機体は随分と控えめなスタイルと身体に黒いヴェールを被っていたのだ。
「うちの姪っ子を虐めるみたいで気が引けるが・・・悪く思うなよ」
隊員は其の機体へ銃口を向けて引き金を絞っていく。
「―――――いつまでも頭に乗るんじゃあ・・・ない!」
「へッ・・・?―――――ぶっげェエ!!?」
しかし、其の機体は俊敏な動きと共にゴーレム達とは全く違うアプローチでEOS隊員へ攻撃を仕掛ける。槍の様に長いビットからレーザーを発射し、其の隊員を後方彼方へと吹き飛ばしたのだ。
「西方さん!?」
「何だアイツ?!」
「袋叩きだ! 優先的に狙え!!」
其の他のゴーレム達とは風格が違う事がハッキリと認識する事が出来、隊員達は其の機体目掛けて一斉掃射を行う。
ところが・・・・・
「ッ、まさかあの機体は!? いけませんッ、みなさん下がって下さいませ!!」
「―――――へ?」
黒い機体の正体に気が付いたセシリアが声を上げるが、もう遅い。
彼女は自分に向かって掃射された弾丸を器用に回避するや否や、自らのスタビライザーを大剣へと変化させて隊員達へと襲い掛かったのだ。
「煩わしいッ!」
彼女が自分の身の丈ほどもあろうかと云う大業物を一振りすれば、ズバァアアッン!と大気さえも切り裂く斬撃により自らへ纏わりつこうとした油虫の如きEOS隊員達が薙ぎ払われる。
一応、IS統合対策部製の新型EOS石英は対IS戦闘を念頭置いている為、機体に使用されている装甲板の強度は実に高い。
しかし・・・やはり其れは”ガワ”の話である。
「うげぇえあ”あぁあああああアア!?」
「ぶぎぃぁアアア阿!!」
『『『!!?』』』
いくら防弾チョッキを着こんでいても至近距離でマグナム弾の発砲を受ければ内蔵や骨に手酷い目も当てられぬ損傷を負う様に・・・振るわれた大剣によって薙ぎ飛ばされた者達は生々しい砕けて潰れる音と共に聞くに堪えぬ断末魔を響かせたのだ。
「そんな、みなさん・・・!? ッ、よくも!!」
赤子の手を捻るが如く何とも簡単に同胞達が打倒された事にEOS隊員達が唖然とする中、目を鋭く二等辺三角形にしたセシリアが主力武装である巨大な特殊レーザーライフル『スターライトmkⅢ』のトリガーを絞る。
無論、此れに黒い機体は持ち前の第六感で反応し、黒いヴェールをたなびかせつつ緊急回避を試みるのだが―――――
「『有象無象の区別なく、私の弾頭は許しはしない』・・・ですわ!!」
「―――――ッ!」
ロングバレルの銃口から発射されたショッキングピンクの流星は直線的な動きをせず、まるで燕の様な動きのある曲線美を描いたのだ。
其のままチュドン!と黒い人型を桃色の焔が包む。
其の瞬間、思わず誰かが叫んだ。「やった!」の一言を。戦場で言ってはならぬ「やった!!」の一言を。
「チッ・・・!」
桃色の焔が焼いたのは、彼女へ被せられた黒いヴェール。
其の燃ゆるヴェールを舌打ちと共に脱ぎ捨てれば、其処から露わで出でたるは、モルフォ蝶の濃い青の装甲。
其れが今宵の月明かりに照らされれば、まるで身体表面を宝石で覆っているようだ。
「ッ・・・『サイレント・ゼフィルス』!!」
ヴェールを脱いで現れた機体に対し、セシリアは珍しく目の色を変えて叫ぶと再びロングバレルライフルを差し向ける。
≪―――――!!≫
≪―――――ッ!!≫
だが、支援攻撃に従事ていたスナイパーが自ら進んで位置を晒したせいで、角砂糖に群がる蟻の様にゴーレムが彼女へ一斉に襲い掛かった。
「ところがどっこいだよぉ~!!」
「撃てぇえ―――――!」
そんな彼女を守らんと量産型ラファール・リヴァイヴを纏った本音とEOS狙撃部隊が弾幕を張る。
しかし、一進一退の弾幕合戦が此のまま続くのかと思いきやだ。EOS勢にはファントム・タスクのゴーレム勢に対して明確に劣る部分があった。
≪―――――!!≫
「ッ、うわぁあああああ!?」
其れは接近戦である。
氷結弾頭の被害を受けつつも何とか弾幕を掻い潜った鋼の乙女は、恨みを晴らさんとEOS隊員達へ向けて刃を振るう。
機械の萬力の力に敵う筈もなく、塵芥のゴミの様に吹き飛ばされて行くEOS隊員達。
「ウォオオオオオッ!」
「うわぁあああああああ!!」
其れでもボウリングのピンの様に倒される彼等の中にもガッツを見せる者が何人かいた。
警視庁特殊機動課EOS部隊を率いる荻野課長と期待の新人である野崎巡査だ。
「うわぁあああああああ!! 何なのこいつら?! マジでなんなの?!!」
「叫んでないで手を動かせッ、野崎!」
「うっわスゴい! さすが荻さん! EOSの御蔭で鬼に金棒、虎に翼!」
「野崎くん、昔の呼び方に戻ってるよ?」
「それそれそーれ! うちの鉄人刑事と大型ルーキーに続け!!」
≪―――――ッ!!?≫
・・・けれども、想像を超える活躍をする彼等によって圧倒されるゴーレム達も中には居たが、そんな者は極々一部。
必ずしも戦場は一人の英雄によって状況が変わる訳ではない。其の他の雑兵によって大半の戦況は決まるのだ。
「どわぁあああああああ!!?」
≪―――――!!≫
遠距離では勝算は有れど、近距離になるとやはり天下無敵無双のISにEOSが敵う訳がなかった。
再起不能になる隊員とゴーレム。其の比率はいつの間にかひっくり返ってしまい、尚且つ無人機とは性能を一線を画す黒騎士サイレント・ゼフィルスが現れた事で状況は一転。
・・・先に『其の他の雑兵によって大半の戦況は決まるのだ』と申したが、例外と云うヤツは何処にでもある。
極々稀な事であるが、一人の英雄によって変局の一途を辿る戦場も確かにあるのだ。
「失せろ・・・ザコ共がッ」
『『『ぎゃぁああああああ!!?』』』
サイレント・ゼフィルス・・・いや、新たな力を得て『黒騎士』となった彼女は、自らが振るう大剣と穂先からビームを発射できる二対のランサービットで周囲に群がる敵を屠って行く。
「・・・ッチ」
されども多くの敵を屠れども彼女は何処か不満気に舌を打ち鳴らすと、キョロキョロと辺りを何度も見渡した。
まるで誰かを探している仕草だ。
「えーい! あったれー!!」
「―――――ッ!?」
其れを隙と捉えたか、其れとも唯の流れ弾か。再起不能になったEOS隊員達を助けようと援護発砲した本音の攻撃が黒騎士へと飛んで行き、幸か不幸か黒騎士の背中へと直撃したのである。
「ッ・・・!」
「あっちゃあ・・・私、やっちゃた感じかなぁ?」
とんでもなく変な所で本音のビギナーズラックが発動し、氷結弾によるラッキーアタックが決まった事に黒騎士は仮面の下にあろう睨み眼をギョロリと彼女へ向けたのだ。
「本音!!」
≪―――――ッ!!≫
「そこを・・・退けぇえ!!」
直感的に本音の危険を感じ取った簪は滅多に面へ出さぬ感情を露わにし、彼女を助けようと前へ出るが、其の進路に鋼の乙女達が立ち塞がる。
「本音!」
「逃げてくださいッ、本音さん!!」
彼女の危機にセシリアやシャルロットも本音を助けに行こうとするが、やはり其れをゴーレム共が邪魔をせんとす。
「貴様ァ・・・ッ」
「あわッ、あわわ・・・!」
只ならぬ殺気と共に大剣を振り上げるや否や、一気に距離を詰めんと瞬時加速で本音へと迫る黒騎士。
あわや此れ迄―――――
―――――かと思われた・・・其の瞬間である。
「セイヤァアアアアアア―――――ッ!!」
「ッ、チィイ!」
『『『!?』』』
刃を振り下ろさんとする黒騎士の横から青白い斬撃が雄叫びと共に飛来して来たのだ。
此れはマズいと無意識に感じ取ったのか、黒騎士は奥歯をギリリッと噛み締めると緊急回避を行う。
≪―――――ッ!!!??≫
そうして行き場を失った飛ぶ斬撃は、たまたま射線上に居たゴーレムへと直撃。哀れチュド―――――ン!と季節外れの花火となった。
「・・・ッ・・・」
再びギョロリと静かに睨み眼を向ける黒騎士。
だが、視線の先に居るのは本音ではなく―――――
「もう・・・もう大丈夫だ! 俺が来たからには、もうお前の好きにはさせねーぜ!! ファントムタスクッ!!」
『『『一夏(さん)!!』』』
―――――自分とは双極を成す真っ白な機体カラーを施されたISを纏う世界初の男性IS適正者、織斑 一夏へ向けてだ。
「・・・・・違う。お前じゃない・・・」
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆