IS/Drinker   作:rainバレルーk

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※9500字以上。
※アンチ高し。
どうぞ良しなに。


第181話

 

 

 

「―――――何かよぉ、嫌ぁな予感がするんじゃよなぁ」

 

「え・・・?」

 

京都に潜伏するテロリスト集団ファントム・タスク討伐作戦のブリーフィングの終了後、作戦現場へ向かう簪に声を掛けたのは、何とも味気なさそうにエナジーバーを喰らう実質的な前線指揮官である春樹であった。

 

「なに・・・嫌な予感、って?」

 

「ご存じの通り、”あの野郎”関係での予感じゃ」

 

渋い顔をしつつ呟いた彼の言葉に簪は「あー・・・」と若干浜に打ち上がった魚の様な目で答える。

春樹の言った『あの野郎』とは、無論何を隠そう一人目の男性IS適正者である織斑 一夏の事だ。

今までの経験上、此の手の戦いで敵はおろか味方にさえも手傷を負わせる原因を造って来たのが、此の男であった。

 

「憶えとる? 夏ん時の海事研修と秋口のタッグマッチん時。でぇれー大変じゃったよな」

 

「憶えてる・・・前者は任務遂行中に自分勝手に離脱して撃墜。後者は・・・春樹を後ろから・・・ッ!」

 

「お、おう。御免な、変な事を思い出させてしもうて」

 

「別に・・・いい。春樹が謝る事じゃないもの。でも・・・やっぱり、春樹は今回も”アレ”が問題を起こすって思ってる?」

 

「・・・・・残念な事にのぉ。本当に本当に」

 

溜息交じりに苦虫を嚙み潰した様な表情を晒す春樹に対し、簪は更に眉間へ皺を寄せて奥歯を鳴らす。

 

「何じゃーな。俺の言う事を戯言じゃ云うて一掃せんのか?」

 

「しない。私、春樹が冗談でもそんな事言わないって知ってる。それに・・・春樹の予言は、よく当たるから」

 

「ッ、破破! ありがとうよ」

 

「それで・・・私はどうすればいい?」

 

「阿ー・・・本当なら野郎にゃあ戦場には出て欲しうない。じゃけど、嫌がらせの様にヤル気満々じゃ。じゃけぇ其の為に野郎の機体と相性のええ篠ノ之と部隊を別けたんじゃしな」

 

「・・・出撃前に気絶させる?」

 

そう言って簪が上着のポケットから取り出したるは黒いリモコンの様な物体。其の先端からはバチバチと青白い稲妻が奔っている。

 

「スタンガン使うんは俺的にゃあ大賛成じゃけど・・・今回は、第三者機構の警視庁の面々方々が居るけんな。もし見られたらマズいしなぁ・・・」

 

「・・・だったら、どうするの?」

 

疑問符を浮かべる簪に対し、春樹は「其処でじゃ!」との言葉と共に彼女へある物を手渡す。

其れは形は少々違えど新型氷結弾頭を数十倍に大きくした様な代物であった。

 

「前々から氷結弾をミサイル弾頭に転用する話があってね。此れは浅沼さんに頼んどった其の試作品じゃ」

 

「これを・・・私に?」

 

「応、簪さんなら巧く扱ってくれると思うてな。じゃけど試作じゃけんな。弾数が此の一発しかない」

 

「・・・銀の福音の時の春樹みたいに?」

 

「さっすが簪さんじゃ、痛い所を突いてくれらぁ。一応は、”もしも”の時の為のモンじゃ。使わんかたら敵に向かってぶっぱなしゃあエエで。阿破破破!」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「・・・其の”もしも”が来ちゃったよ、春樹」

 

作戦結構前に控室へ閉じ込めておいた筈の一夏が、悪しきテロリストを打倒さんと月夜の空に其の白い機体を輝かせて登場したのだ。

親友である本音をテロリストの魔の手から救ってくれたのは、とてもとてもとても癪で適わないが、ちょっぴりの感謝の心はある。・・・だが、其れは其れ此れは此れだ。

彼女はゆっくりとミサイルポッドへ氷結榴弾を装填するのであった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「もうお前の好きにはさせねーぜ! ファントム・タスク!!」

 

一進一退の銃撃から攻勢一転の接近戦によって押され始めた警視庁特殊機動部隊EOS課及びIS学園勢。

そんな彼等を救わんと「颯爽登場ッ!」言わんばかりに白い鎧兜に身を包んで現れ出でたる一人の若騎士。

名を織斑 一夏。

彼は愛刀『雪片弐型』の切先をゴーレム軍団を率いる黒騎士へ向けて大見得を切った。

其の勇猛な姿に味方陣営から「おぉッ!」と歓声が上がる。

 

「・・・・・」

 

しかし、刀を向けられている当の本人・・・サイレント・ゼフィルスから黒騎士へと昇華した彼女は此方に睨み眼を向ける一夏に対して無反応と言って良い態度をとった。

そして、キョロキョロと周囲を見回した後、ゆっくりと言葉を連ねる。

 

「・・・おい、あの”奇天烈な笑い声”を上げる”四ツ目の仮面”を被った男はどこだ?」

 

「何ッ?」

 

「ギデオン・・・・・キヨセ・ハルキだ。あの男・・・あのふざけた男はどこにいる?」

「ッ、テメェ―――――!!」

 

自分を眼中にも入れていない黒騎士の放った言葉が随分と癪に障ったのか。一夏は振り上げた刃と共に瞬時加速で一気に迫った。

 

「一夏!?」

「一夏さんッ!」

 

『『『≪―――――!!≫』』』

 

いつもの直情的な動きに対し、彼の危うさを感じ取ったセシリアやシャルロットは援護しようとするが、其の前にゴーレム達が立ち塞がる。まるで「邪魔をするな」と言っているかの様に。

 

ガッギィン!

「な!?」

「フンッ・・・軽い。余りにも軽い・・・軽すぎる! あの男なら・・・ギデオンならもっと!!」

「うわッ!!」

 

一方、一夏の振るった渾身の一撃を黒騎士は自らが構える大剣フェンリル・ブロウで容易く受け止める。其の瞬間、黒騎士はランサービットのビーム攻撃をけしかけた。

 

「―――――ッ、ちくしょう!!」

 

一夏は其れを寸での所で回避し、距離を置く。

以前までの近距離専用の武器しか持っていない一夏なら攻撃行動制限はかなり狭まるが、彼もいつまでも頭を使わぬ人間ではない。

一夏の専用機『白式』は銀の福音事件以降に第二形態である『雪羅』へと進化し、左手に多機能武装腕が発現していた。此の多機能武装腕と云う代物、射撃用に大出力の荷電粒子砲が展開可能であったのだ。

更に加えるならば・・・彼が劣等感を抱く春樹との戦闘経験により、戦闘レパートリーが増えていたのである。

 

「喰らえ!!」

 

「むッ?」

 

彼は左手をアサルトライフルの様な射撃機構に展開させ、自らの単一能力である零落白夜と同じエネルギーの閃光を黒騎士目掛けてぶっ放す。

まさか、今までの経験上馬鹿の一つ覚えの様に直情的な近距離格闘を仕掛けて来た一夏からの射撃攻撃に目を見張りつつも彼女はまたしても難なく其れを回避した

 

「・・・前に会った時は、随分と無様な姿を露呈していたが・・・・・少しは成長したのか? いいだろう。予定は少々変わるが・・・この私に殺される資格はある!!」

「~~~ッ! 舐めんじゃねぇええ―――――ッ!!」

 

こめかみに青筋を浮かべた一夏は左手の射撃機構で弾幕を張りつつ大型化したウイングスラスター四機で二段階加速をして勢い良く迫って行く。

 

「セイヤァアアアアア!!」

「ッ、な!?」

 

そして、自分の得意な距離で黒騎士を捉えるや否や、左手を射撃機構から格闘用ブレードへ変形させ、単一能力である零落白夜のエネルギー爪を纏わせたのだ。

今までの経験則からは考えられぬクレバーな一夏の戦い方に黒騎士はギョッとする。ギョッとするが―――――

 

「―――――そこは・・・私の距離だ!」

「な―――――ッ、ぐぅうう!!?」

 

中距離遠距離を得意とするサイレント・ゼフィルスならいざ知らず、今の黒騎士は近接格闘に特化された改造を施された機体。

彼女は持ち前の反射速度とカウンターパンチの要領でフェンリル・ブロウを振るったのだ。

 

「・・・ん?」

 

けれども、カウンターブレードが命中して相手を後方へと追い遣った黒騎士の表情は冴えなかった。

 

「ま・・・間に合ったぜ!」

 

すると一夏を見てみれば、なんと彼は射撃機構や近接ブレードに変形する左手の多機能武装腕を防御用のバリアシールドに変形展開していたのである。

御蔭で自身の身を守る事も出来るし、零落白夜のエネルギーシールドによってフェンリル・ブロウに傷を付ける事も出来た。

 

「・・・・・だから何だというのだ!」

「え・・・って、うわぁあああああああ!!?」

 

先の一戦により、一夏に射撃能力がない事を見破った黒騎士はランサービットの穂先からズキューン!と彼を仕留める為のビームを連射する。

黒騎士、彼女の戦いに対しての考え方は、勝利の為なら『全てを利用する』事だ。なれば相手の不利を突き、戦況を自分の有利に持っていく事は至極当然の事。

何故ならならば、此れはスポーツマンシップに則った”試合”ではない。命と命を獲り合う”死合”なのだから。

 

「フッ・・・少しは成長したかと思えば、私としたことがとんだ思い違いをしていたな。いや・・・私が強くなり過ぎただけか?」

 

「ッ、ふざけんじゃねぇええ!!」

 

ランサービットからの弾幕射撃を縫い目を縫う様に避けつつ黒騎士へ接近した一夏は刀を振り下ろす。

 

「フン!」

ゴッギィン!

「うわぁア!!?」

 

ところがどっこい。振り下ろした雪片に黒騎士のフェンリル・ブロウが刃合わせが炸裂した途端、剣圧に負けて吹き飛ばされたのは一夏のほうであった。

しかし、其れは無論と言えば無論であった。白式の専用武器にして主要武装である雪片弐型は太刀である。

其の太刀を片手で扱った事と相手が重量級の大剣であった為、押し負けても当然と言えば当然だ。

 

「この!」

 

しかし、鍔迫り合いに負けても尚、一夏は諦めなかった。

大剣の剣圧によってバランスは崩したものの、其れを利用して左手の近接ブレードを黒騎士に向けて振り回していたのである。

 

「・・・無駄だ!」

「ッ、グっわぁアアアア!!?」

 

だが、平然とさも当然の如く黒騎士は一夏へ向けてランサービットを差し向けた。

しかも唯差し向けただけではない。ランサービットの名の通り、槍として穂先で両腕を刺し突いたのだ。

其のまま彼女は一夏を地面へと叩き付ける。両腕にはランサービットが突き刺さっている為に事実上の拘束状態だ。

 

「このッ・・・クソ! 卑怯だぞ!!」

 

「・・・そうか。それもそうだな」

「は?―――――グげぇええエエッ!!?」

 

喚く一夏に向かって黒騎士は強烈な蹴りを放った。

其の威力は申し分ない程で、蹴り飛ばされた一夏の身体は宙を舞い、大型倉庫の壁を突き破って道路へと投げ出されたのである。

 

「「一夏(さん)!!」」

 

≪―――――!!≫

 

「ッ、さっさとそこをお退きなさい!!」

 

逆流する胃液を抑えつつのた打ち回る一夏。

彼を助けようとセシリア達や警視庁の面々が助けに行こうとするが、やはりゴーレム達が其れを邪魔をする。

 

「フン・・・!」

「ッ、グッげぇ!?」

 

そんな釣り上げられた魚の様に跳ねる一夏を落ち着かせる為に黒騎士は彼の腹部を渾身の力を込めて踏み抜いた。

思わぬ衝撃に一夏は蛙の断末魔を上げる。

 

「こ・・・このッ、やろ―――――うげぇえ!!」

 

一夏は反撃せんと取りこぼしていた雪片を握り直そうとするが、黒騎士は其れを妨害する様に彼の腹部においている足へ更に込めて、ランサービットで雪片を遠くへ弾いた。

勿論、左手の多機能武装腕はフェンリル・ブロウを突き刺して潰している。

 

「・・・他愛もない。本当に・・・本当に本当に、本当に本当に本当に他愛もないな貴様」

 

苦しむ一夏を見下ろし、黒騎士は溜息を吐き連ねる様に呆れた。

ミシミシと機体の装甲版が圧力によって割れ始める。

 

「ヤツの・・・ギデオンへのウォーミングアップにもならん。あまりにも脆弱過ぎる。脆弱過ぎて話にもならん。成長したかと思ったのは、甚だ私の勘違いだったようだ」

 

「ふざ、けんなッ・・・! 俺は! 俺はみんなを・・・ッ!!」

 

「もういい。喋るな。順番は違うが・・・貴様の首を手土産に”あの人”に会おう。さて、あの人はどんな顔をするだろうか?」

 

若干バイザーの下でほくそ笑みつつ、黒騎士はフェンリル・ブロウを振り上げた。一夏の首を叩き斬る為にギロチンの刃を振り上げたのだ。

 

「うわぁああああああああ!!」

 

ガンッガンッガンッ!と黒騎士は無機質な表情のまま抗う術を断たれた一夏を抜き出た釘の様にフェンリル・ブロウを叩き込む。

皮肉にも白式の単一能力である零落白夜を多用した事で、ただでさえ少ないシールドエネルギーが半分以下になってしまっていた。

 

「さぁッ・・・これで、終わりだ・・・・・!」

 

トドメの一撃として再び振り上げられた黒騎士のギロチン。

此れを喰らえば、シールドエネルギーは完全に消失し、ISは強制解除となる処か。其の勢いのまま一夏の青首は大根の如く断ち切られるだろう。

 

「は・・・えッ・・・お、おい・・・?」

 

其の理屈が今頃になって理解できた彼へ何とも言い表せぬ恐怖が襲い掛かって来た。

今まで色々な騒動事がある度に様々なピンチがあった。しかし、其のどれもが突然のピンチであったのだ。

不意に受けた一撃によって意識不明や気絶に陥る事が多かった。其れはある意味で幸運な事であったろう。

けれども、今は此の瞬間は違う。徐々に徐々に大雨で家が沈んでいく床下浸水の様にこんなにも明確で確実なピンチはなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・いや、よくよく考えたらやはりあった。

 

〈やぁ・・・一夏?〉

 

織斑 一夏は思い出す。

『あの男』の声を、

『あの男』の表情を、

『あの男』の雰囲気を、

『あの男』―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の脳味噌を食べようとした『ハンニバル・レクター』を思い出す。

 

「お・・・おお、俺の・・・・・!」

 

「む?」

 

「―――――俺の側に近寄るなぁあああああ―――――ッ!!

ビッカァアアアアアア―――ッ!!

「なッ!?」

 

『『『えッ!!?』』』

 

甲高い悲鳴と共に白式が眩いばかりに光り輝く。

あんまりにも突然に目が眩むほどの光を放つもんだから黒騎士は振り上げたフェンリル・ブロウで思わず其の眩さを遮ってしまう。

まさか其れが最良の防御になるとは、彼女自身思いもしなかった。

 

ドッッッギャァアア―――――アアン!!

「ッ、ぐわぁあああああああ!!?」

 

とても大きな閃光の後に黒騎士を襲ったのは、余りにも凄まじい衝撃。

其の圧倒的なまでの衝撃によってあんなにも重そうな大剣を構えていた黒騎士の身体が何とも簡単に吹き飛ばされてしまい、其のまま彼女は理路整然と並んだ金属コンテナを大きく崩した。

 

「な・・・なんだッ・・・一体なにが起こった・・・?!」

 

ひしゃげて潰れてあっちこっちに玩具の様に散らばったコンテナの上で、黒騎士は疑問符を呟いた後、「・・・まさか!?」と体を起こす。

先程の一撃はきっと彼女が求めていた人物からのものに違いないと思ったからだ。

 

「なん、だと・・・?」

 

しかし、自分が元居た場所へ向けてみれば―――――

 

「≪Aaa・・・あァッ・・・≫」

 

―――――・・・其処に居たのは、真っ白な雪よりも無垢な色を有した騎士甲冑の人物で、何だか人の声と機械音が混ざった様な声にならぬ声を随分な猫背で呟いている。

 

「なんだ・・・なにがどうなっている?」

 

確か、あの場所にはズタボロにしてやった一夏がべそをかいていた筈だ。ならば、あそこに居るのは当然一夏という事になる。

けれども・・・明らかに雰囲気が違い過ぎた。違和感があった。其れは雰囲気に留まらず、外見の容姿さえも変化していたのだ。

まるで其の姿は、世界中の誰もが知るISの始祖たる存在・・・『白騎士』に酷似していたのだが―――――

 

「―――――・・・え?」

 

動揺の為か。ほんの一瞬フリーズしてしまった黒騎士がまばたきをした刹那、其の謎の白い騎士は彼女の視界から消え失せた。

再びの困惑が黒騎士の思考を支配するが、けたたましいアラートが鼓膜を揺さ振る。ロックオンアラートのけたたましい警告音が。

 

「≪Aaァッ・・・!!≫」

「なッ・・・!?」

 

黒騎士が戦場で培った直感で振り返れば、其処には既に自分へ向けて刀を振り被る白夜叉が居た。

此れはマズいと彼女は咄嗟に自らの得物であるフェンリル・ブロウを前へ出す。

 

ズギャァアア!!

「グぁアア!!?」

 

ところが、片手で振るわれた筈の斬撃は先程の一夏の時よりも凄まじい威力を発揮し、フェンリル・ブロウに稲妻の様な亀裂をひびかせたのだ。

 

「ッ・・・舐めるなぁああ!!」

 

先程まで自分に対して劣勢を喫していた男に押し負けている事へ激昂しつつ黒騎士は態勢を立て直すや否や、ランサービットを白夜叉と化した一夏へ差し向ける。

 

「・・・≪Aぁアアッ?≫」

「ッチィ!」

 

矛先から放たれるレーザーやランサービット自体の刃が機体へと向かっていくが、何ら効果が発揮されていないのか。白騎士は首を傾げつつ更に更に酷く歪な形へと変貌してしまった雪片弐型を押し付けた。

此のまま白騎士は黒騎士を圧し潰すつもりかと思いきや。彼は其の刃に青白い焔を注ぎ始める。

余りにもエネルギー消費が激しいが、少しでも当たれば再起不能を余儀なくされる必殺の剣『零落白夜』だ。

 

「貴様ァア―――――ッ!」

 

必死に此の窮地から逃れようと黒騎士は手数を繰り出すが、じわじわと上から掛かる圧力から逃げる事は出来ず喚く事しか出来ない。

そんな追い詰められる彼女に語り掛ける”ある声”が聞こえて来た。

 

―――――〈貴方に・・・力の資格は、ない〉

「ッ!!」

 

何の脈絡もなく幼い少女の声が聞こえて来た事に黒騎士はバイザーの下で目を見開く。其れも目の前の歪な白騎士から聞こえて来たのだから余計にだろう。

 

「・・・・・まれッ・・・黙れ・・・黙れ、黙れ黙れ黙れぇええ!!」

 

其の問いかけがスイッチとなったのか。黒騎士は白騎士の刃を撥ね退けて反撃に移らんとフェンリル・ブロウを振り被る。

 

「―――――≪AAAッ!!≫」

ザッシュゥウウウウウッ!!

 

―――――しかし、其れよりも早く・・・いや、前以て其の動きを解っていたかの様に青白い焔を纏った刃が黒い鎧を斜め一閃に切り裂く。

 

がッ・・・・・ッフ・・・ッ!」

 

お手本の如く袈裟斬りされた黒騎士は、霧の如く掻き消えて行くISと共にバッタリ棒の様に倒れ伏してしまった。

 

「ッ・・・や・・・・・やった、やったー!!」

「織斑候補生がとったぞー!」

 

戦場に居るであろう誰かが声を上げる。ゴーレム軍団の頭目であろう黒騎士を打ち破ったのだから声を上げても当然だ。

此の大手柄に「なら俺も!」とEOS部隊の士気は大いに上昇するのだが・・・・・

 

「ッ、ちょっと皆さん・・・!」

 

「うんッ。ボクも感じたよ。これは・・・ヤバいんじゃないかな?」

 

「かな・・・じゃない。これは・・・ヤバい!」

 

ISを纏った乙女達は、今までの短いながらも濃厚な戦闘経験から随分と非常にマズい危機を察知したのである。

そして・・・其の機器察知能力は、当たらんくても良いのに的を射てしまう。

 

「≪A・・・AAッ・・・・・≫」

 

「え・・・?」

 

「≪AAAぁaアぁアAッaAア―――――ッ!!≫」

 

首がくるりコテンと張り子の虎の様に未だゴーレム軍団と鎬を削るEOS部隊の方へ回った白騎士は、一転して振り被った青白い焔の籠った刃を振るう。

 

≪―――――ッ!?≫

 

「へ・・・ッ?」

「―――――ッ、ギャぁアアアアアア!!?」

 

さすれば飛ぶ斬撃として飛来する三日月となった斬撃は、ゴーレム処か共に戦う同胞である筈の警視庁特殊機動部隊EOS課の面々も焼き尽くしたのだ。

 

ぎぃいイやぁアアッ!!?

熱ぃいッ、熱いィイイいい!!

 

無人型のISなら兎も角とし、生身に鎧を纏ってるだけのEOS部隊隊員には大変に厄介な代物であった。

 

「≪AぁaあぁアAッaAあAAッ!!≫」

 

「ッ、ちょ・・・ちょっと待―――――」

「うわぁああああああああ!!?」

 

燃え堕ちる蛾の様にゴーレム軍団共々吹き飛ばされ行く仲間達を目にした途端、上がった筈の士気は右肩下がりの急転直下。

しかも其の発端が青く燃える斬首刀を掲げて迫って来るもんだから皆一様にして背を向けた。

御蔭で戦線は総崩れである。

 

「み、皆さん! 落ち着いて下さいまし!!」

 

≪―――――!!≫

 

「ッ、危ないセシリア!!」

 

EOS部隊へ動乱敗走が広がる中にも関わらず、ゴーレム軍団は其の攻め手を崩す事はなかった。

其れ処か「此れは好機!」と言わんばかりに突っ込んで来たのだ。

 

「あ・・・ありがとうございますわ、シャルロットさん」

 

「どういたしまして! だけど・・・これはマズいんじゃないかな?」

 

「そう、ですわね。ここは一旦退却を―――――

ドッグゥオオ―――――オン!!

―――――きゃッ!?」

 

突然の第三勢力と化した一夏の暴走に同じく動揺するセシリアにシャルロット。そんな彼女等へ―――――

 

「≪AぁaAAッ・・・!≫」

 

理性のリの字もない白騎士が刀を振り回して迫って来るではないか。

 

「う・・・あ、ぁあ・・・・・!!」

 

一方、突如として始まった惨劇に簪はオロオロと目を泳がせた。

 

うぎげぇええええええ!!

痛ぇッ! 痛ぇよぉおオオオッ!!

助け・・・ダす”け”てぇくぇええ

 

燃えながらのた打ち回る隊員やあらぬ方向に手足が曲がって泣き叫ぶ隊員達の阿鼻叫喚に「はぁッ・・・ハァッ・・・はぁ・・・!」と彼女の呼吸は浅く短くなる。

そんな過呼吸になっている簪は、目を泳がせながらもグッと息を飲んでミサイルポッドへ絶大な信頼を置く人物から預かった弾頭を装填した。

 

「ほ・・・本音、聞こえ・・・る? とりあえず、みなさんに消火活動と負傷者の搬送をやって・・・!」

 

≪う、うん! わかった!! で、でも・・・かんちゃんはどうするの?≫

 

「私・・・わ、私・・・はッ!」

 

「―――――ちょっと、無茶してくる・・・!」と簪はセシリア達に迫りゆく白騎士に向かってブースターを全速力で噴かしたのである。

 

「ッ、簪さん!?」

「簪、なにを・・・?!」

 

真っ直ぐ、ただ真っ直ぐブースターを噴かせる簪に勿論とも白騎士は気が付く。

 

「≪AアぁあAッ・・・!≫」

「・・・させない!!」

 

其の振り向く瞬間、簪はブースターを逆噴射させて目標をロックオンしてミサイルポッド『山嵐』を発動した。

無論、最早IS無双の強となった白騎士にただのミサイルパーティーが効く訳がない。そんな事は重々承知。

其れ故に炸裂して花火を開かせる中に絶対零度の弾頭を混ぜたのだ。

 

「≪AAッ・・・!?≫」

 

榴弾の中に混ざった氷結榴弾を切り裂いてしまった為に刀身が一気に氷柱を纏って凍り付く。

本当は機体其の物に打ち込む筈だったが、此れもまた良し。

 

「みんなッ・・・今!!」

 

「ッ、はい!」

 

怯んだ白騎士を確認した簪の合図によって残り僅かの手勢となったIS学園勢の砲塔が三者三様で向いた。

無機質なゴーレム軍団の対処よりも暴れ回る狂騎士に照準を合わせたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――しかし、やはりと云うのか。

此の状況においてやはり邪魔が入る。しかもとんでもない予想外の邪魔が。

 

「―――――一夏ぁああ!!」

 

『『『え・・・?』』』

 

三者三様の銃口や砲口の前に躍り出たのは、此処とは別の場所で討伐任務にあたっている筈の『紅い椿』であったのである。

 

「篠ノ之さん・・・!?」

 

「どうしてここに箒さんが!?」

 

彼女の登場に唖然とする一同だが、当の本人は知らぬ存ぜぬで其れ処か怒っているではないか。

 

「通信からの叫びに飛んで来てみれば・・・どうして皆、一夏に銃を向けている?! 向けるべき相手が違うだろう!!」

 

「・・・・・うるさいッ、邪魔をするな・・・!」

 

「なんだと?! 更識、貴様ァ!!」

 

とんでもない解釈違いの癇癪に思わず簪の表情も大きく歪む。

 

「≪Aッ・・・≫」

 

そうこうしている内に箒の肩を白騎士が叩く。

「どうした一夏?」と振り返る彼女だったが、其の言葉も想い人への柔らかい表情も向けられる事はなかった。

 

「―――――ッぐ・・・!?」

 

白騎士は振り向き様に箒の喉元を握り掴んだのだ。

そして、食事をする様にゴクリゴクリッと紅椿のエネルギーを啜ったのである。

 

「ッ、やめろぉおお!!」

 

簪は顕現させた薙刀を振り被って襲い掛かるが、白騎士はそんな彼女に向かって”残りカス”である箒を投げつけた。

咄嗟に彼女は投げ付けられた箒をキャッチするが、其れを狙っていたかの様に白騎士は斬撃を放ったのである。

 

次々と襲い掛かる状況に簪は刃を受ける防御壁を展開する事も戸惑った。

此のまま斬られるだろうと彼女は直感する。

ゾッとした。明確な必殺の刃にゾッとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――「・・・何をしとるか?≫」

更にゾッとするのは此の後であるが。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
次回:「理想(おまえ)に現実(じごく)を見せてやる」
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