今回、短いです。
いや、長い文章が続き過ぎただけか・・・
悪しからず。
紅葉が映える秋の夜。
護国の兵共が一喜一憂しつつも奮起して鋼の絡繰り人形と刃を合わせている頃、本来ならば前線指揮に当たる筈の戦乙女の長たる織斑 千冬は、副担任である山田 真耶教諭と学園生徒会長たる更識 楯無を引き連れ、捜査本部へ居た・・・筈だった。
「―――――頼まれていた例のモノだ」
捜査本部に居る筈の楯無が現在進行形で居たのは、本部が置かれている場所とは別の廃ビルであったのだ。
そんな彼女の前には、暗い緑色のフードを深く被った謎の人物が銀色のアタッシュケースの中身を見せている。
ケースの中に入っていたのは、何処か高そうなアンティークを思わせるブローチが一つ。
其れを「確かに・・・」と言葉を並べて受け取ると無意識だろうか、誰かを探す様にキョロキョロと目配せをする謎の人物に楯無は問いかけた。
「随分とソワソワしているけど・・・織斑先生はここにはいないわよ、『アンネイムド』さん?」
彼女の問い掛けに対し、謎の人物はフードの下からギョロリと三角にした碧眼を向けたのである。
謎の人物の正体は、『ワールドパージ事件』においてIS学園の実行襲撃を行った特殊部隊『アンネイムド』の隊長であったのだ。
「情報提供者が貴女だと聞かされた時は酷く驚いたけれど・・・やっぱり、こうして顔を合わせると違和感があるわね。貴女の事は何て呼べばいい? 隊長さん? それとも・・・フレンドリーにあの人に付けて貰った『カレン』って名前で呼んだ方がいいかしら? 『カレン・カレリア』さん?」
先のワールドパージ事件において楯無は彼女の部下である隊員達と衝突し、あわや乙女の危機を迎える処であった。
しかし、彼等を率いていた隊長であるカレンと顔を合わせるのは初めてであり、其れに対して楯無は口元へ扇子を前にして静かに作り笑いを浮かべる。
「・・・・・確かにモノは渡した。これ以上、貴様に付き合うつもりは―――――」
「そう言わないで。織斑先生は、よりによって私を貴女との橋渡しにしたんだから・・・何か考えがあるんじゃない?」
「考えだと・・・?」
「仲直りの為・・・とか? ほら、私って貴女の部下達にケガを負わされたじゃない? それに対する謝罪とかないの?」
楯無の言葉に「どの口が云うか・・・!!」と隊長は奥歯をギリリ鳴らす。
「貴様らとて私の部下を・・・ッ、私を・・・!!」
「え・・・? ちょっと待って・・・一体何の話?」
「知らないと言わせんぞ! 貴様らがッ・・・き、きき貴様らが・・・あの、あの”バケモノ”が・・・私達にした所業を・・・ッ!!」
楯無は知らなかった。ワールドパージ事件において特殊部隊アンネイムドがどういった目に遭ったのかを。口に出すのもはばかれるどんな悲惨な目に遭ったのかを。
其の事を思い出したのか。カレンは苦しそうに口をへの字にし、自らの肩を抱いて体を震わせた。
そんな予想外の反応を示す彼女に驚いたのか、楯無は訝し気に眉をひそめる。
――――――――――調度、其の時であった。
「―――――もうそれ以上口を開いてもらうのは、こちらとしても困りますね」
「「ッ!?」」
人っ子一人居る筈のない廃ビルのフロアから聞こえて来た第三者の声に楯無とカレンはギョッとし、声のする方へ目を向ける。
さすれば其処には、三白眼にそばかす顔のスラリと足の長い人物がへの字口を晒しているではないか。
楯無は突如として現れた此の人物を知っていた。
『ゴーレムⅢ事件』後、自分の妹である簪を自陣営に引き込んだ酷く頭のキレるIS統合対策部所属の女性職員、金城 沙也加であったのだ。
「ッ、おいロシア代表! これはどういう事だ?!!」
「か、金城さん!? どうして貴女がここにッ?」
彼女の登場に焦ったカレンは所持していた銃器を取り出そうと懐へ手を差すが、其れに対して金城は溜息と共に呟く。「はい、確保ー」と。
バン!!
「ぐァッ!?」
すると暗闇の中から破裂音と共に薄黄色いモチの様な物が飛来し、カレンへと引っ付いたのだ。
其のモチの様な物は正しくトリモチであり、彼女の身動きを重くする。
「き、貴様らぁあ!!」
トリモチに身動きを遮られながらもカレンは反撃を画策するが、金城は相変わらずのへの字口から溜息を一つ漏らすと今度は廃ビルの外から破裂音が木魂した。
バン!
バン!!
バン!!!
「ッ、むっぐァア!!?」
何発も響いた破裂音の後にべっとりべっちょりぐっちょりとトリモチがカレンを覆い、しまいには彼女の口を塞いでしまったのである。
抵抗むなしく虜となってしまったカレンは楯無へ鋭い目を向けた。「騙したな!!」と言いたげな目を。
「―――――被害者ぶるなよ、テロリスト風情が」
そう金城は語り掛けながら近づくとカレンの怒りに満ちた瞳を覗きながら其のまま彼女を踏ん付けた。
「お前らは国賊だ。お前らの雇い主は己が利益の為に無辜な人間から、子供達から強奪しようとした凶状持ちだ。そんなお前らを私達が許す訳がないだろうが」
金城の言葉と共に彼女の背後から特殊光学迷彩を解除したEOS隊員達が現れ、黄ばんだトリモチでべとべと状態のカレンをわっせわっせと連行して行く。
「・・・・・どういう事ですか?」
疾風怒濤の展開後、楯無はへの字口の金城に疑問符をぶつける。
だが、金城の方は「あぁ、そう言えば居たな」ぐらいの反応で、「何がです?」と疑問符で返した。
「何がじゃないです! 私は、さっきの出来事の説明を求めているんです! これも織斑先生の指示なんですか?!」
「まさか・・・これは我々の独断専行ですよ」
「ッ、独断専行って・・・そんな事を一体誰が?!」
「そう言えば・・・貴女は更識家の現当主でしたね。前当主・・・お父様から事情を聞いてはいないので?」
金城の言葉に「え・・・?」と戸惑う楯無へ対し、彼女は「・・・余計な事を言いましたね」と顔を背けてEOS隊員達の後を追う。
勿論、「ま、待ってください!」と楯無は彼女を呼び止めるのだが・・・・・
「私達は自分の仕事をしたまでです。あなたもあなたの仕事を遂行してください。早い所、そのブローチを届けてあげたらどうです?」
「それでは・・・」と終始どこか冷たく気怠げな金城はそう言ってサッサと立ち去って行ってしまった。
「ちょッ、ちょっと!?」と楯無は引き留めたかったが、なにぶんと待たせている人間が居る為に彼女もさっさと其の場を去る事にする。
・・・・・後に残ったのは、壁や床に嚙み終えたガムの様にへばりついた余分なトリモチだけであった。
◆◆◆
「はい・・・こちらで”犬”は確保しました。”戦姫”の方にも監視を付けていますが、”兎”との接触はありません。このまま今日中に接触がない場合は・・・・・はい、わかりました。引き揚げさせます」
トリモチ弾でワールドパージ事件の襲撃犯を拿捕する事に成功した金城は、何処かへ連絡を行っていた。
「はい、”刃”の方は問題ないでしょう。彼なら我々が思う以上の戦果を立ててくれる筈です。しかし今度の彼は、”コンニャク”を五個用意したくらいでは納得しないでしょう。”レンガ”でも積まなければ、随分と・・・・・はい、確かに。わかりました、ご用意はそちらで行うという事で。それと報酬の件ですが・・・・・ありがとうございます」
礼を述べた後に通話スイッチを切った金城は珍しく上機嫌な表情を見せ、目の前へトリモチ塗れのまま寝そべる”犬”へ目を向けた。
犬はトリモチで塞がれた口から涎を垂らしながらギロリと彼女へ睨み眼を向けている。
「ふんッ・・・精々、我々の飯のタネになってくださいよ」
そんな犬に向けて金城は嫌味ったらしそうに上機嫌な表情を浮かべるのであった。
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆