IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第184話

 

 

 

―――――現代の京の都で巻き起こった時代錯誤も甚だしい真昼間の”百鬼夜行”に闇夜の”大捕り物長”。

 

お天道様の目下で、人目もはばからず、突如として新名所のモノレールで飛び道具と爆弾を振り回して車内の乗客乗員を人質にとった天魔外道な絡新婦。

しかし、其処へ幸か不幸か偶然にも現れ出でた金眼四ツ目の異形の”鬼”は、そんな卑劣なる絡新婦を尽く殴り、穿ち、潰し、そして退魔の焔で炙った。

其の余りある圧倒的な強さを目の当たりにした車内に居た人質の誰かが此れをSMSへ投稿してしまい、ネットでは一時的な『バズり』が巻き起こってしまったのである。

情報統制や情報規制が行われても突然のテロリズムを逸早く収めた此の鬼に対し、やれ『ウルティノイド・ゼロ』だの。やれ『両面宿儺の復活』だの。やれ『新しい仮面ライダー』だのと大いにネットは沸いた。

だが・・・此の”鬼”なる者の活躍は此れだけに留まらなかったのである。

 

夜の帳が降り切った京都で行われた国際過激派テロリスト集団、ファントム・タスクの討伐作戦。

情報遮断に情報規制や情報統制が行われ、外部への情報流出を極限まで抑えた誰も知らない、知られてはならぬ戦いにおいて銀兜を被った金眼四ツ目の鬼はファントム・・・”亡霊”達を束ねる組織の幹部と刃を交えた。

・・・けれどもあと一歩と云う所で、味方である筈の若い”騎士”があろう事か乱心し、戦場を搔き乱したのである。

 

自らの乱心に浮足立った者達をバッタバッタと巻き藁の様に薙ぎ払う騎士。

其の影響によって五人も居なかった負傷者は、敵陣営の巻き返しもあってか最終的には十五人にもなってしまった。

其の内の七人が、騎士による必殺の剣によって重度の火傷と骨折を負ってしまったのである。

しかし、そんな最悪の状況下においても死者数0人を貫けたのは、鬼神の如き働きを見せた鬼武者の御蔭であろう。

混乱に紛れて逃走したテロリスト幹部共の捜索を年長者の分隊に任せ、鬼は敗残兵に成り掛けていた味方陣営に檄を飛ばして士気を上昇させるや否や、我を失って暴れ回る騎士に拳骨を喰らわせた。

だが、流石はあの”戦乙女の長”を姉に持つ騎士か。覚醒した後に拳骨を喰らわせた鬼武者へ必殺の剣をブチかましたのである。

咄嗟に防いだ事で直撃は免れたものの、鬼は肋骨を折られ、左腕を焼かれて砕かれた鬼武者は一時的な虚無感に襲われたが、いつかの憤怒を思い出して再び立ち向かったのだ。

 

そんな昼も夜も戦って戦い抜いた鬼武者は今―――――

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

昼と夜に関わらず、血と硝煙と炎に苛まれた怒涛の時間が過ぎ去った翌日の事。

IS学園の専用機所有者達が宿泊する旅館。其の見事に手入れの行き届いた庭園の見える広間にて。

 

「むぐむぐ・・・もぐムシャぁ・・・ッ」

 

目の前へ並べられた手を付けるのも億劫になる煌びやかな京料理の品々をどっかり腰を据えて貪る様にガブガブ喰らう男が一人。

左腕にはめたギプスを気にもせずに飢えた餓え子の様に料理を喰らう男の姿は、第三者から見れば「うわー・・・ッ」と冷めた目か、引いた目で見る関わり合いたくない様子であったろう。

 

「ふふ・・・そうあわてて食べてくれるな。のどにつまってしまうぞ?」

 

「こっちのお料理もおいしいから食べてみて!」

 

「そろそろお茶はどうかな?」

 

しかし、そんな飢えた男をとんでもないレベルの美少女達が甲斐甲斐しく彼をもてなしているではないか。

にも拘らず、其の彼女等からの優しい手を余所に男は『花より団子』とばかりに美味なる料理へ喰らい付いている。

そんな彼等の様子を溜息吐きつつ見る者が居た。

 

「ったく・・・あんだけきのうの夜に活躍したヤツだとは思えないわね。まるで乞食みたいじゃないの」

 

昨夜の討伐作戦で活躍した中国代表候補生である『凰 鈴音』だ。

 

「そう言わないで下さいまし。ほとんど飲まず食わずで駆け回ってたのですからね」

 

其の冷めた目を晒す鈴を諫めるのは、同じく討伐作戦で活躍したイギリス代表候補生の『セシリア・オルコット』である。

 

「そうだとしても・・・あれはないわよ」

 

「まぁ、一理ありますが・・・それにしてもよく食べますわねぇ」

 

「まるで掃除機みたいだねぇ~」

 

苦笑いをするセシリアの隣で頷くのは、何故だか討伐作戦に専用機所有者でもなければ代表候補生でもないのに参加する事になってしまった『布仏 本音』だ。

 

「くー・・・くー・・・」

 

「ありゃ~? かんちゃんってば、おねむちゃんだ~」

 

其の本音の隣で舟を漕いでいるのは、此れも討伐作戦で活躍した日本代表候補生の『更識 簪』である。

彼女は討伐作戦終了後、楽しみにしていた深夜アニメを視聴する事が出来たので、ちょっと寝不足なのだ。

 

「御嬢様・・・いえ、会長。あまり構い過ぎるのもどうかと思われます。ボーデヴィッヒやデュノアさん達もですよ。そして・・・簪御嬢様、起きて下さい」

 

わちゃわちゃと男を世話する三人のかしまし娘に注意し、未だ眠り眼の簪を起こすのは、IS学園生徒会所属の『布仏 虚』である。

彼女からのまるで母親の様な言い方に口を揃えて「はーい」と返事をするのは、昨夜の討伐作戦で活躍したドイツ代表候補生の『ラウラ・ボーデヴィッヒ』とフランス代表候補生の『シャルロット・デュノア』に彼等とは別行動をしていたロシア代表の『更識 楯無』だ。

 

「ごっく・・・ゴクッ・・・・・ぷはぁー! あぁ・・・やっと、やっとこさ落ち着いたでよ」

 

そして、椀物の汁を何とも美味そうに平らげた後で大きく溜息を漏らすのは、昨夜の討伐作戦で多大なる武功を上げたであろう日本代表候補生の『清瀬 春樹』である。

 

「もう・・・清瀬君、あなたはもう少し落ち着いて食べれないのですか?」

 

「阿破破、此れは御見苦しい所を。じゃけど、昨日は京都らしい食いもん云うたら生八つ橋ぐらいしか食うてなかったでしたけんね。ようやっとマトモな飯が食えましたけぇ、美味いのなんのって」

 

昨夜の激闘の後で春樹はバッタリと其の場へ倒れ伏してしまい、其のままぐ~すかぐ~すかと寝てしまったのだ。

後衛と聞いていたのに前線へ出撃し、時間をあけずに強敵達との連戦を繰り返し、エナジードリンクとエナジーバーしか口にしていなかったのだから春樹としては心身共に疲弊してしまっていたのである。

なので、睡眠欲を満たしてからの食欲はとどまる事を知らなかった。

 

「阿・・・おえんわ。昨夜の布仏先輩と五反田くんの馴合いが聞きたいけど、すぐに腹が減って適わん」

 

「ちょ、ちょっと清瀬君!」

「は・・・ハハハ・・・」

 

春樹の台詞に慌てる虚に対し、ニマニマニヨニヨと周囲の目が彼女の方へ向けられる。

昨日はまさかあんな激闘になるとは思ってもみなかった故、置いてけぼりとなっていた虚は車夫のバイトとして来ていた本当の一般人である『五反田 弾』と夜を過ごしていたのだ。

 

「おい、五反田くんよ。どうじゃった? キスの一つでもしたんか? それとも・・・気を利かして部屋を一緒にしてやったんじゃけん、もう夜這った?」

 

「ッ、げっほゲホ!? な・・・なに言って?!」

「清瀬君!!」

 

再び彼からの思わぬ言葉に咳き込む弾と顔を真っ赤にする虚。

其の余りの初々しさに春樹は「何じゃ、まだかい」と残念そうな表情を晒し、「・・・お義兄ちゃんて呼んだ方がいいのかな~?」と彼女の実妹である本音は温かな視線を二人へ送った。

 

「こらこら春樹くん、揶揄ってあげないの。こう見えて虚ちゃんは初心なんだから」

 

「初心なのか」

「初心なんだね」

「初心なんですわね」

 

「ッ、ちょっと皆さん!!?」

 

皆からの温かい目に珍しく慌てる虚を彼女の隣に座る弾は「(・・・かわいい人だなぁ)」と表情を緩ませ、そんな鼻の下を伸ばす中学の同級生と周りの空気に鈴は「まったく、もう・・・」と渋い顔を晒す。

 

「そ、そう言えば・・・き、清瀬さん?」

 

「阿? 何じゃ、五反田くんよ?」

 

「いや、あの・・・一夏がまだここに来てないみたいなんですけど。何かあったんですか?」

 

弾の言葉に眉間へ深いシワを刻む鈴。周囲も彼の発言にどうしたものかと表情を曇らせるのだが―――――

 

「あぁ、野郎なら夜中に腹が痛ぇ云うてな。病院に行きよったで。篠ノ之の方も腹が痛いって云よーたけぇ、一緒にな。何を拾い食いしたんじゃろーな、あのバカ二人はよぉ? 破破破!!」

 

弾の言葉に春樹は平然と”方便”を述べる。無論、「此れ以上詮索するなよ?」と云う程の無言の圧力をしっかりとかけてだ。

其の圧に純粋な一般人である弾は「は・・・はい。わ、わかりました」と同年代にも関わらず敬語で返事をした。

 

「失礼いたします」

 

「阿?」

 

調度、そんな時。部屋の襖を開けて入って来た旅館の仲居さんに皆の目線が注がれる。

 

「清瀬様にお客様がお見えとなっております」

 

「客? ッ、はい! わかりました。どうぞ通して下さい」

 

自分に客だと聞くや否や、春樹は着崩していた浴衣を整えて身綺麗に急ぎ顔をおしぼりで大いに拭ったではないか。

 

「皆さん、失礼するよ」

 

「え・・・!?」

 

仲居さんに案内されて入って来た人物に弾は両眉を上げた。

何故なら其の人物は、自分の祖父が良くニュースで見ている注目の若手代議士であったのだから。

 

「どうもおはようございます、長谷川さん。まさか、こねーに早う来て下さるとは」

 

「いや、君に・・・君達に無理をさせてしまった此方側だ。早く出向く事が良いと言う訳ではないが、来させて貰ったよ。しかし・・・やはり早すぎたか。まだ食事中だったとは」

 

「いんえ、俺が起きるんが遅かっただけです。あとの皆は見ての通り食後の一服中ですわ」

 

「そうか。なら調度良いかもしれない。空手と云う訳にはいかなかったから、手土産を持って来た。皆でどうぞ収めてくれ」

 

有名代議士からの手土産菓子に年相応の反応を見せる面々だったが、未だ状況が読み込めていない一般人枠の弾は思わず長谷川の顔を凝視してしまう。

 

「おや・・・見ない顔がいるね。学園の生徒じゃないようだが、お友達かい?」

 

「あぁ、彼は布仏先輩の”コレ”でさぁ」

 

そう言って長谷川に親指を見せる春樹に対し、虚は「・・・清瀬君?」と三角の目を差し向けた。

 

「はははッ、成程。もうお婿さんを見つけるとはね」

 

「もうッ、長谷川のおじさままで!」

「べ、別に俺はまだ虚さんとそこまでの関係じゃ・・・」

 

「おいおいおいおいおい、聞いたか? ”まだ”・・・だとよ」

「つまりは、そういう関係にいつかはなるという事だな。私と春樹の様な関係にな」

 

ケラケラケラケラと朗らかに笑う春樹とラウラに虚と弾は茹蛸の様に更に顔を真っ赤にし、其の様子を面白くなさそうに楯無とシャルロットは頬を膨らませる。

何とも和やか状況だが、長谷川が此の和やかな雰囲気を見に来た訳ではない事を春樹は重々承知していた。

 

「・・・ラウラちゃん?」

 

「うん? なんだ春樹?」

 

「ちぃとばっかし長谷川さんと話があるけぇ外すでよ」

 

そう言って春樹は明るい表情のまま席を外すと長谷川と共に別室へ移動したのだが―――――

 

「・・・んで、どねーなったんで?」

 

別室へ通された瞬間、長谷川を上座に座らせた春樹の表情は一気に鋭さを増したのである。戦場へ赴く武将の様な険しい表情になったのである。

 

「あのボケカスをブチのめいてから気絶したみてぇに眠ってしまいましたけんな。あのテロリスト・・・スコール一派は? ジョセスターフのヤツに捜索部隊を任せましたけど」

 

「残念だが・・・未だ発見には至っていない。時間的に考えれば、逃げられたと考えるのが妥当だろう」

 

「ッチ、まんまと逃げられたって訳か・・・・・すいません、長谷川さん。折角、俺の思う通りに指揮を任せて頂いたんに・・・しかも警察の人らぁに結構な被害を出してしもうた。本当に申し訳ありません!!」

 

血が滲み出るほど手を握り緊めて悔しがりつつ土下座をする春樹に対し、長谷川は「そう自分を責めないでくれ」と肩へ手を添えた。

 

「君がいなければあのまま戦線は崩壊して死者が出ていたかもしれないし、市街地への侵攻を許して市民に被害が出ていたかもしれない。清瀬君、君は謝るべきじゃないよ」

 

「ッ・・・ありがとうございます」

 

「それに悪い事ばかりでもない。昨夜の作戦で、組織の戦闘員であるオータムと今まで存在だけが確認されていた『M』と云う構成員の捕縛も出来た。世界各国が血眼になっていた存在を捕まえる事が出来たんだ。これは誇るべき事だよ」

 

「・・・はい?」

 

長谷川の並べた言葉に春樹は引っ掛かって疑問符を浮かべる。

 

「長谷川さん・・・なら、あの子の・・・サイレント・ゼフィルスの、Mの”素顔”を確認した云う訳で?」

 

「やはり・・・知っていたのか、清瀬君。一体いつからだ?」

 

「ベルギーの一件で、偶然にもちょっくら顔を見ました」

 

「初対面の時じゃないか! どうして話してくれなかった?!」

 

「話した所で信じてくれましたか?」

 

疑問符を疑問符で返した春樹に長谷川は「・・・確かにそうだな」と溜息を漏らす。

 

「彼女・・・彼女は一体なんなんだ?」

 

「・・・手前勝手な俺が考えるにあの子は、”国際法に触れる”存在でしょうよ。例を上げるなら、ラウラちゃんと”ほぼ同じ”様なね」

 

「同じ? ッ・・・つまり、それは!」

 

ハッと息を飲む長谷川だが、そんな彼に春樹は「シッ・・・!」と自分の唇の前へ人差し指を重ねる。

そして、目を細めつつキロリッと襖へ鋭い眼光を向けるや否や、勢い良く開け放した。

 

『『『ッ、きゃあ!?』』』

 

さすれば様々な髪色の美少女達がドタドタとドミノ倒しとなって部屋の中へ雪崩れ込んだではないか。

 

「・・・・・何しょーるんなん、君らぁは?」

 

眉間を八の字に口をへの字に歪める春樹に対し、美少女達は「え・・・えへへへ」とはにかんで誤魔化そうとするが、彼は大きく長い溜息を吐き連ねた。

 

「す、すまん春樹。お前と長谷川代議士との話が気になってな。本当は、私一人でこっそり聞き耳をたてていたのだが・・・」

 

「ラウラちゃんだけに抜け駆けはさせないわ。そ・れ・に・・・お姉さんも長谷川のおじさまに聞きたい事があったしね」

 

「ぼ、ボクは止めようとしたんだよ!」

 

「シャルロット・・・そんな事言いながら、あんた、ウキウキしてたじゃないの」

 

「あざといですわね~、実にあざといですわ!」

 

「ちょっとセシリア!!」

 

キャンキャンキャンキャンと元気な子犬の様に喚き出した一行に「はいはい、解った解った」と両掌を彼女等へ見せる春樹。

 

「状況から考えて・・・簪さんは其のまま寝かせたまんまで、布仏の虚さんの方は五反田君とイチャイチャして、布仏の本音さんの方は和菓子に夢中って所じゃろうか?」

 

「さすが春樹さん。状況判断が即座ですわね」

 

「ありがとさん。ハァ―――――・・・どうしましょうか、長谷川さん?」

 

目頭を押さえる春樹に「ははは・・・参ったね」と長谷川は苦笑いを零す。

一応、昨夜の出来事は国家機密に当たる重要な作戦だ。

作戦参加者ではありつつも各国の代表候補生が混じった彼女達へ事情を話しても良いのだろうかと彼は悩む。

だが、そんな政界の若獅子に歴戦の蟒蛇が耳打ちをした。

 

「・・・教えといた方がエエと思いますで」

 

「清瀬君?」

 

「多分・・・いや、絶対にまたこんな事は起きますよ。其の時にもまた、ラウラちゃんらぁの力が必要になりますでよ」

 

「・・・・・」

 

春樹の言葉に長谷川は目を瞑って「・・・確かにそうだな」と頷く。

其れに若き戦乙女達は「やった!」と各々顔を見合わせるが、そんな彼女達に春樹は「じゃけど!!」と釘を刺す。

 

「此れから話す”事情”とやらは、かなりショッキングな内容じゃ。特に・・・ラウラちゃんと鈴さんにはな」

 

「何ッ?」

「どういう事よ、それ?」

 

まさか自分の名前が出るとは思って見なかったのか、訝し気に表情をしかめるラウラと鈴。

其れも其の筈。此れから話すであろう”事情”には、二人にとってとても関わりの深い人物が関係するからだ。

 

「まぁ、さて・・・今回のキッカケとなる事の発端じゃけどな―――――」

 

「どう話したもんじゃろうか?」と耳の裏をかく春樹を前にゴクリと固唾を飲む戦乙女達だったのだが―――――

 

「ッ・・・春樹!!」

 

突如としてラウラが何かを察した様に立ち上がったのである。

此れに勿論「何だ何だ?」と驚く面々だったが、すぐに彼女が何を意図しているのかが理解できた。

 

「ッ、総員戦闘配備!」

 

敵襲である。

 

ドッガァアア―――――アアアン!!

 

『『『ッ!!!??』』』

 

直後に響き渡ったのは、鼓膜を震わす途轍もない爆音と建物を大きく揺らす衝撃だった。

 

「庭の方よ!」

 

「ゆっくり息も吐かせてくれませんわね!!」

 

「シャルロット! シールド構えて、長谷川さんを頼まぁ!!」

 

「任せて!!」

 

一行は、着の身着のままドタドタバタバタとISを部分展開した状態で爆心地らしき庭へと向かう。

 

「あッ! きよせんだ!!」

「春樹!!」

 

「五反田君と布仏先輩は?!」

 

「お姉ちゃんが一緒になって安全な場所までさがってるよ~!」

 

庭先へ出れば、爆風によって割れたガラス片や障子紙が散乱する縁側で、すっかり目の覚めた簪と口端に菓子の破片を付けた本音が既に万全の態勢で構えている。

 

「うっわ・・・なによこれ・・・ッ?」

 

「・・・酷いわね」

 

未だ粉塵漂う景色が広がる中でもあんなにも美しかった庭が破壊されたと云う事実は目に見えている光景が其処にはあった。

石灯ろうは砕けて転がり、草木は無残にも引き千切られて辺り一面に散らばっているではないか。

 

「ッ、春樹さん・・・! あ・・・アレは・・・ッ」

 

粉塵が徐々に晴れる中、ハイパーセンサーを覗くセシリアがとんでもない物でも見るかの様な表情へ顔を変える。

其の指差す方向に全員が顔を向ければ、皆一様にして「・・・・・はッ??」と疑問符を浮かべた。

何故ならば、爆心地中央と思われるクレーターへ突き刺さっていたのである。

まるで絵本の中から飛び出して来たような大きな大きな”人参”が突き刺さっていたのだ。

 

「・・・・・」

 

「お・・・おい、春樹?」

「は、春樹さん?」

 

全員が呆然とする中、チベットスナギツネの様な眼差しの春樹は徐に右腕のレーザーブレードを発現させ、手元へ光の輪を高速回転させる。丸鋸の様な紅白の八つ裂き光輪を回す。

直撃すれば、あの様な人参のオブジェクトなど簡単に輪切りに出来よう。

しかし―――――

 

―――――「わーッ! 待って待って、”はーくん”!!」

『『『ッ!?』』』

 

「・・・阿”?」

 

何処からともなく聞こえて来た聞き慣れぬ弾む様な声に皆の注意が注がれる。すると其処には―――――

 

「じゃじゃじゃじゃーん☆ 久しぶりだねッ、はーくん!!」

 

人参の中から出て来たモデルの様なスタイルを擁した紫髪にウサ耳のカチューシャを付けた美女が、春樹に向けて「ぶいぶいッ☆」とピースサインを晒しているのであった。

 

「・・・・・・・・ッチィ!」

 

取り合えず・・・春樹は、そんな彼女に向けて舌打ちと共に丸鋸光線をぶん投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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