IS/Drinker   作:rainバレルーk

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※師走の様に内容も駆け足でござい。



第188話

 

 

 

アリーシャ・ジョセスターフは、世界に”飽いていた”。

 

イタリアの国家代表にして第二回モンド・グロッソ大会優勝者である彼女だが、第二回大会決勝戦で対戦相手であった第一回大会覇者たる織斑 千冬が『ある事情』により欠場した為、不戦勝と云う形で二代目ブリュンヒルデになったものの「千冬との決着はついていない」と公言しており、第二回モンド・グロッソのブリュンヒルデ受賞を辞退している。

 

アリーシャとしては千冬との再戦を望んでいたのだが、当の千冬本人は第二回大会終了後に現役引退を表明。

此れをマスメディアで知ったアリーシャは、膝から崩れ落ちる科の様に大いに落胆してし、其の後の彼女の私生活は荒れる事となった。

他者を圧倒する素晴らしい実力を有しているが故、皮肉にもモンド・グロッソ後にあったであろう諸大会がアリーシャの瞳には子供の喧嘩程度の”小競り合い”にしか映らなかったのである。

更に言えば、千冬が勝ち逃げのような形で引退した為、いつまで経っても世間からの評価は№2であった。

 

しかし、別にそんな世間からの評価などアリーシャは気にも留めていなかった。所詮は戦いの”悦”を知らぬ評論家共の猿の鳴き声にも等しい文句だ。

けれども、其れよりも彼女を蝕んだのは、身体の内に燻り続ける戦いを欲する焔であったのである。

其の焔は昼夜を問わず心を燻し、身体を火照らせた。

 

・・・調度、そんな時だ。苦しむアリーシャの前へ『ファントム』達が現れたのは。

 

ファントムは戦闘中毒の禁断症状を患う彼女に対し、自分達の組織へ来る様に誘う。

無論、アリーシャは此れに最初は難色を示す。だが、余程禁断症状が苦しかったのか。千冬以外との戦闘の拒否を条件に彼女はダークサイドへと乗り換えたのである。

しかし・・・アリーシャは知らなかった。

第二回大会で好敵手たる千冬を欠場に追い込んだ『ある事情』を引き起こしたのが、其のファントムである事を。

 

 

 

さて・・・こうしてダークサイドに陥ったアリーシャは、ファントムからの呼び出しを受けて京都へ赴いた。

調度其の時、偶然にも好敵手以上の思いを抱いている千冬が同じ場所にいる事が判明し、思いの丈をぶつける為に会いに行ったのである。

 

其の過程で、アリーシャはある二人の少年と出会った。

一人は、千冬の弟にして世界初の男性IS適正者である織斑 一夏。

もう一人は、二人目の男性IS適正者にしてファントムから要警戒人物として認識されている清瀬 春樹。

此の後者たる二人目の男にアリーシャは目を見張った。

 

偶然とも云える出逢いの後、彼女はファントムのメンバーの一人が春樹によって捕縛された事を知る。

アリーシャは此れを他のメンバーに伝え様としたのだが、彼から初対面より銃口を向けられる程に警戒されていた為に断念。

そうこうしている内に春樹によってファントム討伐の作戦が立案指揮されてしまい、彼に興味を持ったアリーシャは此れに参加。

作戦遂行中に残りのファントムメンバーと鉢合わせした時の何とも言えない感覚と云ったらない。

 

幸いにも『あるトラブル』によってファントムメンバーは逃げ遂せる事が出来たのだが、春樹によって二名のメンバーが捕縛されてしまった。

一人は、組織の秘蔵っ子。もう一人は、自分を組織に勧誘して来た部隊長の恋人。

ファントムの部隊長は二人を取り戻そうと画策したが、未だ自分達を血眼になって捜している警察の目が厳しい。

 

其処で頼りとなったのが、アリーシャであった。

ファントム討伐部隊に所属し、警察からの信頼も厚いという事もあり、たった一人を除いて誰からも怪しまれていなかった為である。

勿論、彼女はファントムへ出した条件である『千冬以外との戦闘の拒否』を理由に此の頼りを最初は酷く渋った。

しかし、ファントムは其処で『ある事』をアリーシャへ囁く。「『あの坊や』と戦えるかもしれない」と。

『坊や』とは、やはり討伐作戦時に無類の強さを内外へ見せた春樹の事に他ならない。

そんな彼の力を間近で見ていたアリーシャの心にはある欲が出てきている事をファントムは目ざとく察知していたのである。「此の男と闘ってみたい」と云う戦闘中毒者独特のバトルジャンキーが陥り易い症状を見抜いていたのだ。

 

・・・けれども、結局此れはある種の”方便”である。

ファントムの隊長であるスコール・ミューゼルは、どうしても恋人であるオータムを取り戻したかった。

其の為に敗走と云う苦汁をなめた直後でもオータムの行方を捜し、場所を特定し、奪還作戦まで立案した。

しかし、安易に自分達が動けば、またしてもあの男が血気盛んなEOS部隊を率いて押し掛けて来るだろう。

其処でスコールは、半ば捨て石の形でアリーシャを使う事にしたのである。

 

 

 

ー◆◆◆ー

 

 

 

ドワァオオオオォォオオオ―――――オオッン!!

 

 「何だ、何が起こった?!」

             「爆発ッ、爆発だ!!」

「今度は一体何だってんだッ!?」

「一体何が起こったんだ?!!」

「煙ッ、煙で何も見えない!!」

 

「・・・・・すまないネ」

 

ファントムが仕入れた情報を元にフードで正体を隠したアリーシャは、なんと正面きってスタングレネードとスモークグレネードをばら撒く。

非殺傷武器と言っても余りにも凄まじい閃光と衝撃音が響き渡り、煙が周囲を覆った事で現場は一気にパニックへと陥る。

そんな状況の中をアリーシャは風の如く素早く慌てふためく人の波を掻い潜ると渡された情報通りに下へ下へと降りて行く。

勿論、律儀に階段やエレベーターを頼る事なく壁や床を突き破ってだ。

 

「なッ、なんだなんだ!?」

「襲撃者! て、テロリストだ!!」

「動くなッ、手を挙げろ!!」

 

無論、建物内に居た警察官達も黙っていない訳がない。

此の正体不明の襲撃者を確保逮捕せんとサスマタや防護盾で彼女を包囲するが、生身の人間がISを纏った者に敵う筈もなかった。

 

「邪魔をしてないでおくれヨ!」

『『『うわぁあああああッ!!?』』』

 

透明な波動の如き風を纏った腕を振るえば、巻き起こった局所的暴風が周囲の警察官達を吹き飛ばす。

そうして行く手征く手で立ち塞がった警官達を排除していけば、流石に彼等も保管庫から銃器を手に取る。しかも事前情報によれば、庁内にはIS統合対策部から仕入れた対IS新型EOS『石英』と対IS迎撃弾である氷結弾頭が配備されているとの事。

流石のトップレベルのISパイロットであるアリーシャも閉鎖された空間で、氷結弾頭を装備した大人数を相手取るのは分が悪いと判断。

噂の春樹とは戦いたいが、此れ以上の面倒事を起こす事は控えておきたい為、早々に目的のモノを奪取して包囲網が完全に敷かれる前に脱出せんと彼女は急いだ。

 

「ここが、そうかナ・・・?」

 

向かって来る敵を蹴散らしつつ地下の地下にある秘密の空間へ辿り着いたアリーシャは尋ね人を探そうとするが、どうにも彼女を待ち構える人間が居たようで―――――

 

「ッ、おおっと!!?」

 

「・・・ッ!」

 

薄暗い影の中から現れ出でたるは、何とも如何にもな風貌をした黒ずくめの集団が「であえッ、であえ!」と登場。

彼等は忍刀と呼ばれる部類の刀剣やらサブマシンガン等の軽銃器をアリーシャへ差し向ける。

 

「(WAO・・・日本にはもういないって、みんな言っていたけれど・・・・・『忍者』、いるじゃないのサネ)」

 

「かかれ・・・ッ!」

 

どっからどう見ても忍者な集団が一斉に襲い掛かって来る。其れも銃器には対IS兵器である氷結弾を使用している為、上階にいる警官達とは比べれば強い部類に入るだろう。

其れでもやはりISに真正面で挑むには分が悪い。其れ故に彼等は遠距離戦闘と近距離戦闘に分担制を敷いてアリーシャへ挑む。

 

「・・・ッチ、面倒臭いネ」

 

狭い空間で蠅の様に素早く動き回る彼等にアリーシャは眉間へシワを寄せる。

此方としてはさっさと目的を果たして逃走したいのに斬撃を躱せば銃撃が飛んで来る事に苛立ちを募らせた彼女は、遂に大人げない行動に奔った。

 

「『疾駆する嵐(アーリィ・テンペスト)』・・・ッ!!」

『『『ッ!!?』』』

 

突如として忍者達の前へ現れたのは、超高速回転の風で構成された複数の分身体であった。

無論、其の分身体へ向けて忍者集団は自らの得物を差し向けるが、着弾や着刃すると物体がチェーンソーの如き風によって穿ち削られて無力化されてしまう。

 

「(それじゃッ、急いでいるんでネ)」

 

分身体障壁にし、アリーシャはさっさと其の場を離脱。

其れでも襲って来る場合には、最早手加減無用の一撃を喰らわせば、相手は「ぶギョ!?」と云った踏み付けられた蛙の様な叫びを挙げて壁へめり込む。

 

「さーって・・・囚われのお姫様達はどこだろうネ~?」

 

少々アドレナリンが出て来た為、若干楽しくなってきたアリーシャは、まるで遊園地に来た感覚になっていた。

ただ残念なのは、其れももう終わりが近づいているという事だ。

 

「お・・・いたいた」

 

予め受け取っていた個別の生体反応を頼りに探索してみれば、目的の反応が居るであろう部屋を発見。

 

「さてと・・・おっと、その前にネ」

 

部屋に入る直前、アリーシャは左腕へ超高速回転する風圧を纏わせると其のまま正拳突きの要領で一気に拳を前へ突き出す。

 

「『風王鉄槌(マテッロ・リーヴェルヴェント)』!」

ドゴオオオッン!!

 

すると高圧濃縮された風が爆発的な衝撃波と共に扉ごと壁を吹き飛ばし、壁面の残骸諸共「うぎゃあああ!!?」と云った断末魔を挙げる忍者共を蹴散らした。

 

「ふぅー・・・やっと会えたネ、お姫様? って、WAO・・・!!?」

 

邪魔者を蹴散らし、未だ粉埃が舞う尋問室へ入室したアリーシャは、目的である要人の顔を見て大きく驚く。

何故ならば、其処には自らの好敵手にして想い人である織斑 千冬を彷彿させる少女が佇んでいたからだ。

 

「コードネーム『M』。似ているとは聞いていたけれど・・・本当に千冬にそっくりサネ」

 

「・・・誰だ、貴様?」

 

「話はあと。今は急いでここを出る事が一番サ!」

 

フード姿の自分を怪しむMをアリーシャは連れ出そうと手を差し伸べるが、彼女は煙たそうに其の手を振り払う。

無論、Mの此の行為にアリーシャは「どうして?」と疑問符を投げ掛ける。

 

「私は・・・私はもう組織を抜ける」

 

「ッ、なにを言っているのサ?」

 

「私は、やっと出会うべき存在と出会えたんだ! 私と同じ復讐を望む存在と!!」

 

何とも嬉々した表情で「ちょっと何言ってるのかわからない」事を語るMにアリーシャは戸惑うが、折角、警察組織の本丸へ乗り込んだのに「はい、そうですか」と引き下がる訳にはいかない。

 

「スコールは君が必要だと言ってたサ。次の『オペレーション・エクスカリバー』には、絶対にってネ」

 

「・・・なんだそれは?」

 

「さてネ。詳しい事はまだこれからサ。だから―――――

「じゃったらオメェは用なしじゃ」

―――――ッ!!?」

 

呆れた声と共にズドッン!と響いた銃声。バリン!と割れるマジックミラー。

発射された弾丸は、思わず防御姿勢をとったアリーシャの”右腕”へ直撃し、青白い氷と共にカチコチ凍り付いた。

 

「おんどりゃぁあああああ!!」

「っく!!」

 

着弾と共に割れたマジックミラーから飛び出した来たのは、鉈を振り上げた金眼四ツ目の銀兜を被った武者。刀身が真っ赤に染まっている為、まるで人喰い夜叉の風貌である。

 

バキャリィイイッン!

「う阿”ぇ?!!」

「ッチ!!」

 

振り下ろした刃が凍り付いた右腕に直撃した瞬間、まるでガラス細工の様に砕け散った。

まさか、そんな事になるとは思ってもみなかった武者は刹那の吃驚仰天をした後にある事を確信したのである。

 

「ッ、やっぱり・・・やっぱり裏切っとったか、アリーシャ・ジョセスターフ!!」

「まさか、君がいるとはね・・・清瀬 春樹!!」

 

武者・・・否、春樹は砕け散った右腕を正体を隠蔽する為の一つである義手だと判断し、即座にフード姿のISパイロットの正体を見抜くと再び氷結弾頭が装填された銀色のリボルバーカノンを至近距離で差し向ける。しかし、氷結弾の威力を其の身をもって体感したアリーシャは、そうはさせまいと凄まじい風圧纏った左拳を放つ。

撃鉄が雷管を叩くよりも早く放たれたカウンターパンチはグシャリ!と金眼四ツ目の銀兜の顔面を捉えた。

 

ぎっげェエエ!?

 

拳に纏った風がチェーンソーの回転刃が樹木を切り倒す様に表面を削って粉砕する。

其の拳撃によって仮面の下にある頬肉ごと抉り取られる事で、聞くに堪えぬ絶叫を上げる春樹。

常人ならば、此のたった一発の攻撃によってK.O.けれども流石は『狂戦士(ベルセルク)』の畏怖名を一つに持つ男か。脳を揺らす衝撃波と頬の痛みを払拭するかの様にある得物を高速切替(ラピッド・スイッチ)で顕現させる。

 

「ッ、―――――『小手切り”赤”一文字』!!」

 

其れは京都の一件において、御乱心を起こした白騎士の腕を叩き斬った切れ味抜群の三尺太刀。

春樹は其の天下一品たる刃の切先を思いっ切りアリーシャの胸部へと差し向けた。

砕けた仮面の下から垣間見える琥珀の焔が零れる右眼と共に真紅の刀身で串刺しにせんと突き出すが、アリーシャのISであるテンペスタの装甲が勿論其れを阻止する。

だが、装甲の下にある肉を突き刺せなくとも其の身体を後ろへブッ飛ばす事は容易であった。

 

「くたばりやがれやぁああ!!」

「ッ、ぐぅうううううう!!」

 

ブースターを噴かし、押し倒す様な形で背後にあった壁面を何枚も何枚もぶち抜きつつ春樹はテンペスタのシールドエネルギーを削って行く。

しかし、アリーシャとて黙ってやられているばかりではない。

再び高圧縮された暴風纏う拳を放たんとするが、其の鉄拳を春樹は第三の手とも云える先端が三つ又マジックハンドの尻尾で拘束する。

 

ヴェろぉお阿”ァア”ア”ア”ア”!!

 

壊れた金眼四ツ目の仮面から滴る血液が混じった唾液がダラリとアリーシャの顔へと落ちる。

其れが癪に障ったのか、彼女は暴風を脚部へ纏わせた。

 

「『風王鉄槌(マテッロ・リーヴェルヴェント)』ッ!!」

ドゴオオオッン!!

「ッ、ウげらぁああ!?

 

拳に風を纏わせる応用で放たれた脚撃は春樹の腹部を捉えると彼をラケットで打ったテニスボールの様に吹き飛ばす。

 

「ハァ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・・・フ、フフ・・・フハハ! アハハハハハ!!」

 

春樹のハメ技から自力で逃れたアリーシャは、今までかぶっていたフードコートを脱ぎ捨てて息を切らしながら口端を吊り上げる表情を晒した。

「楽しい・・・なんて楽しい時間なんだろうか」と。久方ぶりに体験する強敵との闘いに彼女は興奮していたのである。

 

「もちろん・・・もちろん、まだ戦えるサネ?」

 

そんな疑問符に応えるかの様に粉埃の奥から聞こえて来たのは獣の如き唸り声と此方に向かって飛んで来る真っ赤な刀身の鉈であった。

 

おんどれぇえええええ!!

 

其の投擲された鉈の後ろから粉埃を掻き分けて現れ出でたるは、脇構えで刀を振り被った鬼の形相で迫り来る春樹。

目視で其れを確認したアリーシャは最高の笑顔と共に左腕を振り被る。

 

「『疾駆する嵐(アーリィ・テンペスト)』!!」

 

テンペスタの単一仕様能力である自身の分身を複数作り出し、分身を構成する超高速回転の風で、投擲された鉈を弾き飛ばす。

 

「まだまだ行くサネ! プラス、『風王鉄槌(マテッロ・リーヴェルヴェント)』!!」

 

其の防御に使ったであろう分身体の背後を暴風によってプッシュする事で、物体全てを削り取って破壊する分身体を移動式シュレッダーとして放った。

此の周囲の瓦礫を木っ端微塵にして突き進む嵐に春樹は如何なる方法を以て対処するのか。

 

「清瀬流対決術、黒崎の型一式!

―――――『月牙天衝』―――――!!」

ズッシャァアアア―――アアッン!!

「なァッ!!?」

 

「力こそパワー!」と云わんばかりに春樹が放つは、刀身へ纏わせた紅白のエネルギー刃。

此れは彼が毛嫌いしている織斑 一夏の専用機『白式』の単一仕様能力『零落白夜』を応用した・・・早い話が、”パクった”技なのだが、エネルギー刃には春樹の専用機である『琥珀』の単一仕様能力『晴天極夜』を使用している為に其の威力はオリジナルを優に超える。

其れ故にゴーレムさえも一撃で熔かしてしまう焔は、一気に風の分身達を呑み込むと巨大な炎柱を作った。

 

ウリィイイやぁア阿ァアアッ!!

ウォオオオオオオオオオオオ!!

 

其の炎柱から飛び出してくるは、刃を斜に振り上げた焔を纏う春樹。彼の登場にアリーシャは更に更に口角を吊り上げ、再び拳を振り絞る。

振り下ろされる焔を纏う刃と振り上げられる暴風を纏う拳。

直撃すれば、一溜まりもない攻撃同士がぶつかり合った瞬間―――――

 

ズドオォォオオ―――――オオッン!!

 

―――――余りにも凄まじい閃光と共に地震の如き衝撃波が周囲を大きく揺らした。

 

「・・・・・痛ぇえッ・・・痛ぇんじゃ、ボケカスがぁ・・・!!」

 

少しの静寂の後、春樹は自身へ崩れ落ちて来た瓦礫をどかし、愛刀を杖に仕立て上げて立ち上がると眉間に皺寄せて前方を睨む。

点滅する非常灯が粉塵によってぼやける薄暗い中、彼は愛銃であるコンバットリボルバーを顕現させ、機体反応がある方向へ銃口を向けた。

 

「と、トドメを・・・トドメをさしてやるけんなぁ・・・ッ!・・・・・げフ!?

 

老いぼれの様にヨロヨロと距離を詰める春樹だったが、段差に躓いて転んでしまう。

 

「・・・痛ぇ、痛ぇよぉ・・・痛ぇよぉ、お母ぁちゃーん・・・・・ッ!!」

 

血の混じった痰を咳き込みながら彼はベソをかく。

京都の一件から一週間も経たずにまたしても大怪我を負ったにも関わらず、またしても怪我を負った事は肉体的にも精神的にも大きな苦痛である。

 

「ゴッホ、コホッ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ゴクッ、ハァ・・・ど、どうやら・・・私の勝ちのよう、サネ」

 

そんな彼を見上げる様に口から血を垂らして煤塗れのアリーシャが佇む。

其れでも春樹は取りこぼした銀のリボルバーを掴もうとするのだが、其れはアリーシャによって蹴り飛ばされてしまった。

 

「あー・・・Mr.清瀬、本当にありがとうネ。おかげで久しぶりに楽しい時間が過ごす事が出来たサネ」

 

「こ、此の糞ったれがッ・・・この、やろう・・・!」

 

勝ち誇った様に笑みを溢す彼女に春樹は杖にしていた刀を振り回すが、棒っきれの様に力なく振るものが当たる訳もない。

 

「・・・ここももう崩れる。はしゃぎ過ぎちゃったネ。私としてはもうちょっと楽しみたかったけれどもサ」

 

「五月蠅ぇ、やい。勝手に御開き宣言すんじゃ、ねぇッ・・・まだ、まだ終わっとらんぞ・・・!」

 

「・・・若いっていいネ。そのタフさが眩しいサ。でも、もう終わり。彼女はもらっていくネ」

 

口から出る血を拭いつつ立ち去ろうとするアリーシャの足を春樹は「待て、や・・・!」と掴んだ。

 

「ハァ~、もう・・・しつこい男は―――――・・・は?」

 

何かを言いかけた途端にアリーシャは自身の目を丸くした。

どうして彼女は驚いた様に左眼を見開いたのか。其れはアリーシャの横っ腹へ春樹が箒の柄(モーゼル・ミリタリー)の銃口を突き付けていたからである。

 

「・・・阿破破、捕まえたぜこん畜生・・・ッ!」

 

因みにだが・・・

春樹の握っている銃は、『マシンピストル』と云うものに分類される。

マシンピストルとは、フルオート射撃可能な拳銃サイズの火器の総称で、早い話がトリガーを引いたままにすれば弾倉内の弾頭が無くなるまで撃ち続けられる代物だ。

さて、其のマシンピストルへ装填されているのは、頭の螺子が少々外れた連中が集うIS統合対策部が作成した特殊焼夷弾。通称『爆裂弾』。

此の爆裂弾。あのドラゴンブレス弾を参考に作成されている為、発砲時の火花によって燃焼範囲は銃口からおよそ三十m程度とされる。

 

Q.そんな弾頭を弾倉が空になるまで撃ち続ければどうなるか?

 

「破ッ破ー、ザマぁ見ぃ!」

「ッ、この・・・クソガキがぁ・・・・・!!」

ズドゴォオオオオォォオオオ―――――オオッン!!!

 

A.大爆発を巻き起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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