※加筆修正しました。
俺の推している作品の一つに『文豪ストレイドッグス』云うもんがある。
神奈川県の横浜が舞台で、実在した日本の文豪達が各々が執筆した作品名を冠する特殊能力を駆使する能力バトル漫画じゃ。通称『文スト』と云う。
其の中でも特に推しキャラ・・・いや、推しカプがいる。其れは、『中島 敦』と『泉 鏡花』の『敦鏡』云うNLカップリングじゃ。
キャラクター紹介は省くが、概要としては―――――
家族を知らない少年と家族を失った少女。
マフィアで三十五人もの人間を殺害し、殺人マシーンとして生きてきた鏡花。敦が見せてくれた「光」に心奪われ、「殺人」以外にもできることがあるということを証明する為、武装探偵社で働くことを決意する。
―――――的な感じ。
めちゃんこでぇれー推せる。
そんな推しカプに沼ったのは、アニメ版『文豪ストレイドッグス』第九話「うつくしき人は寂しとして石像の如く」で、敦と鏡花ちゃんが横浜でデートするシーンを見た事がキッカケじゃ。
ひょんな事から横浜のデートスポットを巡る事となった中島 敦と泉 鏡花。
二人は中華街からスタートして横浜の名所を巡って行き、其の途中でクレープを食べたり、ゲームセンターのUFOキャッチャーでウサギのぬいぐるみを取ったり、観覧車に乗ったりして・・・・・
此れを見た時、俺ぁ「わあお・・・尊い!」って思ったし、「俺もこねーなデートしてみてぇなー・・・」なんて思った。
可愛い恋人とのデート。
あん時は、「夢のまた夢じゃなー」なんて思っとった。
・・・じゃけど―――――
「うん? どうしたのだ春樹?」
『人生、塞翁が馬』と云ふ。
『真実は、小説よりも奇なり』と云ふ。
まさか・・・・・まさか、まさか・・・まさか!
此の俺にこねーな可愛え彼女が出来るなんて夢にも思わんかった!
「阿破破・・・いんや。別に何でもねーでよ」
俺が誤魔化すみてぇにはにかむと、顔を覗き込んで来る彼女は・・・ラウラちゃんは、ちょっと不満気に「むぅッ・・・誤魔化すんじゃない!」と口を尖らせた。
・・・うっわ、可愛い。めちゃんこでぇれーかわいい。ぐうの音も出ん程にカワイイ。
そんな彼女が俺の恋人・・・やったでbaby!! Yaahaaa―――――ッ!!!
良かったー。俺めっちゃ頑張ったもんなー。
折られたり、切られたり、潰されたり、刺されたり、ぶち込まれたり、焼かれたり、叩かれたり、殴られたり、蹴られたり、陰口言われたり、喰らわせられたりしたけど・・・頑張って良かったー!
全身が裂傷と刺傷と銃傷と火傷と打撲だらけだけど・・・頑張って良かったー!!
あぁ―――――ッ、酒呑みてぇ―――――ッ!!
「誤魔化してねぇでよ。じゃけぇ、そねーな顔せんでや。まぁ、そねーな顔も可愛えけどなぁ」
「ッ、この! 茶化すんじゃない!!」
ケラケラ笑う俺にラウラちゃんがポコポコと怒って、ぷいっとソッポを向くんじゃけど―――――
「・・・・・手・・・」
「ん?」
「手、を・・・つないでくれたら、ゆ・・・許してやる」
ソッポを向きつつ俺の方に手を差しだすラウラちゃん。
其ん耳は、寒いからじゃろうか、先まで真っ赤っかじゃ。
「勿論、勿論じゃとも。じゃけど・・・緊張のあまりにギュッとしてしまうかもしれんで? 其れに今の俺の手、でぇれー冷たいでよ?」
「ドンと来い、だ! それに私は軍人だぞ? 握力には自信があるし、冷たいなどと―――――」
言い終わる前に俺ぁラウラちゃんの一回りも小さな手をギュッと握る。か細い指に俺の指を絡ませる。
「おッ! やっぱし、ラウラちゃんの手は温いわぁ。其れに柔こいなぁ」
別に最近は手を繋ぐなんて事は珍しくない。ツーか、手を繋ぐ
ラウラちゃんの方もこんなん慣れて来たじゃろうし―――――
「うッ・・・うゥ・・・・・」
・・・・・・・・前言撤回。圧倒的優勝。
めちゃんこでぇれーぼっこう顔が真っ赤っかじゃがん。
『顔が火を噴く』とは正に此の事じゃろうな。
「あ、ありゃあ? 何じゃーラウラちゃん、照れとるん?」
「べ、べちゅに照れてなどいない! ちょっと驚いただけだ!!」
「阿ッ破ッ破ッ破ッ!」
「ッ、笑うなー!!」
阿ー、可愛え。ホントにめちゃんこでぇれーぼっこう可愛えわぁ。
あぁ・・・・・絶対に――――――――――
◆◆◆◆◆
やはり十二月は寒い。
それに日本でも祖国のクリスマスマーケットと同じ様に街は煌びやかで、一年前にドイツ軍IS教官時代の織斑先生と共に訪れた冬のドレスデンにも劣らないだろう。
それでも少し前の私ならば、過ぎ去る行事の一つだと思って受け流していたな。
・・・だが、今年の冬は違う。
「阿ー・・・悩むわぁ。どれも似合うわぁ」
私の顔を覗きながら次々とマフラーを物色するのは、世界で二番目に発見された男性IS適合者。
そして・・・・・私の愛おしい愛する
今日は、その春樹との初めてのデート。前日は過度な動悸と緊張感に襲われ、あまり寝付く事が出来なかった。初陣前でもこんなに緊張する事はなかったのに。不思議だ。
不思議と言えば・・・先に待ち合わせ場所に到着していた春樹の顔を見た時、とても温かい気持ちが胸に浮かんだ。あのどこかマヌケな笑顔に私は思わず自分の顔をほころばせてしまったのだ。
それに・・・その・・・・・寮では、キスよりも
見知らぬ人間が居る外である為なのだろうか?
それでも私は誇り高きドイツ軍人だ。すぐさま態勢を立て直し、春樹とのデートを遂行する。
春樹の計画した進撃ルートは、普段の私ならとても赴かない様な場所ばかり。
中華街では朝食代わりに様々なものを食べ歩いた。
フカヒレの小籠包に私の顔くらいもある大きな台湾唐揚げ。それになんとも見た目がキューティフルなパンダの肉まんだ。
どうも私はこの手の可愛らしい食べ物は非常に食べずらい。修学旅行で買ったひよこ饅頭もためらってしまったからな。
でも結局は食べてしまうのだ。罪悪感と共にジューシーな旨味が口いっぱいに広がって、とても美味しかった。
最近気付いたのだが・・・春樹は私によく美味しいものを勧めてくれる。
まるで私を太らせて食べてしまうのが魂胆なのかと、この前セシリアが春樹に問い掛けていたのも新しい。
・・・最近は、だいたい周5日のペースで
中華街で空腹を満たした我々は、食後の運動とばかりに海の見える公園へと進軍。
冬の海風が少し冷たいが、小春日和の中をゆっくりと行軍するのは、とても気持ちが良い。
休日だということもあって、親子連れや私達の様なカップルもちらほらいた。
そこから我々はシーバスに乗船し、横浜の名所観光を海上から眺めた。
折角だからと春樹と一緒に名所をバックに自撮りをしてみる。無論、琥珀が周囲の携帯端末にハッキングしてかけている変なフィルターはない。
だから、撮ったその場で待ち受けにしてやった。
そして、海風に吹かれながら名所を見た後、シーバスから降りた我々は現在、巨大複合施設でショッピングをしているという訳なのだが・・・・・
「『シュバルツ・レーゲン』・・・シュバルツって、黒じゃ云う意味よな? じゃー、黒がええんかねぇ? じゃけど、クリスマスカラーの赤も捨てがたい・・・! どっちも君の綺麗な銀髪に映えるけんねぇ」
「・・・・・おい、春樹?」
「うーん・・・まぁ、ええわ。両方買うたろ。すんませーん」
「春樹!!」
悩みに悩んで結局、此の男は・・・まったく!
「ん? どしたん?」
「どうした、ではない! 私はマフラーなど・・・」
「いるっちゃに。寒い時は、首元とか温めた方がええんじゃ。それにシーバスの時にクシャミしょーたがん。風邪ひくでよ」
「あ、あれは別に・・・私は寒さなど平気だ!」
「じゃあ俺のお節介いう訳で。其れとも、やっぱ・・・・・迷惑じゃろうか?」
「め、迷惑な訳がないだろう! だったら私が自分で買うぞ!」
「ええっちゃに。俺からのプレゼントじゃ、プレゼント。専属パイロットで、でぇれー高い給料貰うとっても使う機会がないけんね。其れに前々からラウラちゃんには色々贈りたかったし。恋人同士になってから全然あげられんかったしな」
「ッ、
お前は何を言っているんだ?
私は・・・春樹、お前からいつも
なのに・・・なのに・・・・・
「ありゃ? ラウラちゃん?」
「私も! 私も春樹に何か贈りたい! 何が欲しい?」
やっぱり酒か?
中華街でもショウコウシュ?とか、コウリャンチュー?とかが飲みたいとか言ってたからな。
いいだろう。私も軍からの給料を使う機会がそんなにないからな。存分に春樹に使ってやるぞ!!
「えー。エエよ、俺は」
「遠慮するんじゃない! それとも・・・迷惑か?」
「んな阿呆な! 解った解った。じゃけど・・・突然欲しいもん云われてもなぁ・・・」
「なんだと?! 何かないのかッ、何か?!!」
「おいおいおい。そう急かさんで下さいや、少佐殿。えーと、そうじゃなぁ・・・・・阿ッ!」
「何だッ? 何か思いついたのか?!」
「とりあえず・・・昼飯食べながら考えるでよ。食べ行こうやぁ」
「・・・・・紛らわしいのだッ、このおわんご!!」
◆◆◆◆◆
「お・・・おい、春樹? 本当にここでか?」
ラウラ・ボーデヴィッヒは動揺していた。
今日は恋人との初デートで緊張していると言うのに此れ以上何を戸惑う事があろうか。
「応。此処じゃ此処。長谷川さんが紹介してくれた日本料理の店じゃでよ」
「待て待て待て待て待て! 何だこれは? 何かちょっとした庭みたいなものがあるぞ!」
ラウラは現在進行形で戸惑っている。
何故ならば、春樹が案内してくれた食事処と云うのが、素人目から見ても高級店でしかない見えなかったのだ。
「大丈夫、なのか? もう少し、こう・・・ちゃんとした服装で来るべき所ではないのか? 修学旅行で宿泊した旅館と同じくらいすごいぞ! 料亭というやつじゃないのかここは?!」
「大丈夫、大丈夫。ちゃんとラウラちゃんは可愛えけん心配いらんでよ」
「いや、可愛いとかいう話ではないと思うぞ!?」
「エエけんエエけん。早う入ろうやぁ」
動揺するラウラの両肩を持って店へと入って行く春樹。
しかし、ラウラは兎も角、どうして春樹はこんなにも慣れた感じなのか?
勿論、春樹とて緊張はしていた。だが、実を言うと此の店へ来るのは
其の酒宴出席者からの紹介の御蔭で、普段ならいちげんさん御断りな店でもこんな若造二人がこうして入店する事が出来るのだ。
「き・・・緊張する。味が解るだろうか?」
「個室にしてもろうたけんね。多分、すぐに慣れるでよ」
「たぶんって・・・と、いうか。春樹、お前は前にもここへ来た事があるのか? オカミという者があいさつで来たぞ?」
「応。前に長谷川さんに連れて来てもろうたんじゃ。其ん時は酒ばっかで料理にはあんまり手を付けんかったけど、後で食うときゃ良かったなぁって思うとったんよ。其れに、銀座で寿司食うよりもこっちの方が本格的な日本料理が食えてエエかな思うて」
「そ、そうなのか? それで・・・一体何が出て来るのだ?」
「今の冬の時期にピッタリの料理。ネタバレすると鍋料理」
「鍋・・・・・すきやき?」
中庭が臨める趣のある部屋の風格に圧倒され、ラウラは疑問符ばかり浮かべてしまう。
そんな緊張でソワソワする彼女があまりにも可愛らしかったのか。春樹の表情は先程から終始一貫してほころんだままだ。
「・・・・・・・・なんだ、これは?」
目の前へ運ばれて来た料理に対し、思わずラウラはキョトンとしてしまう。
何故ならば、彼女が想像していた斜め上の料理が登場したからである。
「春樹、この赤いのはなんだ? 牛肉とも豚肉とも違うみたいだが? もしかして、魚か?」
「そう、お魚よ。じゃけど此れは、魚は魚でも鮪。鮪のしゃぶしゃぶよ」
「ま、マグロだと?!」
鮪と聞いてラウラはギョッとする。彼女の中では、マグロ=高級食材の認識であったからだ。
「応。其れも刺身でも食える新鮮なトロマグロ。其れを昆布と鰹の合わせ出汁でシャブって、ネギと一緒に食べるのよ」
「ぜ、贅沢だな」
生唾ゴクリッと飲み込んで、分厚い切身マグロを黄金色の出し汁の中で泳がせる。
そして、其れを程良く煮えた白ネギと一緒に口の中へ「あむっ!」と放り込む。
「ッ~~~~~!!?」
するとどうだろうか。口に入れた瞬間、ギュッと凝縮された本マグロの旨味が口いっぱいに広がって来たではないか。
「う・・・う、美味い! マグロとは、こんなにも美味いものなのか?! 口の中でほろろととろけたぞ!! それにネギがシャキシャキとアクセントになって・・・美味い!!」
「阿ッ破ッ破ッ破ッ! お気に召してなにより。さてさて、もっと食いんせぇ」
促されるまま、ラウラはパクりパクりと一口また一口とマグロをほうばっていく。
其の度に目を輝かせて幸せそうな蕩けた表情をするのもだから、其れに釣られてさっきから春樹の表情はニヤけてきってしまっている。
「むぐ・・・むぐ・・・・・ごくんッ・・・あぁ、美味かったぁ~!」
其れから何枚もマグロをお代わりし、遂には〆の雑炊までペロリと平らげてしまったではないか。
「結構あっさりじゃったなぁ。御蔭で、ようけぇ食うてしまったでよ」
「本当にな。あ~、お腹いっぱいだ。それに何だかポカポカと身体が温かいぞ」
「途中で生姜を鍋に入れたがん。あれであったまったんじゃ。ショウガオールは身体を温める効果があるけんな」
昼食終えて店を出た二人は、仲良く手を繋いで再び横浜の街を散策を再開。
そんなラウラの首元には、春樹に先程買って貰ったマフラーが巻かれている。
「・・・本当に感謝するぞ、春樹」
「うん? 何なん改まって?」
「春樹・・・お前は私に色々な感情を教えてくれる、与えてくれるのだ」
突然、ラウラは春樹へ語り掛けて来た。
其の神妙な面持ちに少々驚きつつも春樹は彼女へ耳を傾ける。
「私は・・・・・自分がどういう人間かわかっていなかった。いや・・・人間というよりも兵器としての認識の方が強かった。でも・・・でも、お前と出会って・・・・・お前と、春樹と一緒にいろいろな事を体験する事で、私の知らない私を知る事が出来た。私の
「・・・・・」
「ありがとう。お前を好きになっていくたびに私は・・・自分を好きになる事も出来た。春樹、お前は私にたくさんの喜びを与えてくれるのだ」
何処か気恥ずかしそうに頬を朱鷺色に染めるラウラ。
其の麗らかな笑顔に対し、春樹は一瞬目を見開いた後、思わずソッポを向いてしまった。
「・・・俺は、ラウラちゃんの喜ぶ顔とか驚く顔とか、色んな顔が見たいだけじゃ。ただの其れだけじゃ。其れに―――――」
春樹は外へ向けていた顔をおもむろに彼女の方へ向ける。酒を飲んでもいないにも関わらず、真っ赤に染まって火照った顔を向ける。
「―――――ラウラちゃん、君は俺にようけぇ事・・・あったかいモンをくれる。「ありがとう」とは俺の台詞じゃ。こねーな俺を好きになってくれて、ありがとう。でぇれーぼっこう大好きじゃで、ラウラちゃん」
彼から向けられる照れた朗らかな笑顔にラウラはギュッと目と掌に力を入れ、「んン~~~~~ッ♥」と悶絶するかの様な声を漏らした。
グーっと体温が急上昇し、熱に浮かされた様に頭がクラクラして来る。
「あ、あー! は・・・春樹、あんな所にクレープが売っているぞ!」
「おッ、ホントじゃな。甘いものは別腹じゃと云うし・・・何がええ?」
「おっと。大丈夫だぞ、春樹。ここは私が持つ。お前にはさっき奢ってもらったからな。ここは私に奢るから、お前はここで待っていろ! おススメを買って来てやる!」
「へいへい。了解いたしました少佐殿」
余りの気恥ずかしさからか、話を切り上げてラウラは急いでクレープ販売のキッチンカーへ急ぐ。
其の様子を微笑みながら眺める春樹。
冬の北風が着こんだコートと雪の様に真っ白な髪を揺らすが、心は気持ちの良い春風でも吹かれている科の様な心持だ。
一杯の幸福感が身を包む良い気持ちだ。
―――――――だが、だからこそ。
〈春樹、一歩後ろへ退け〉
「・・・阿?」
ズギャァアアアアアアア―――――アアンッ!!
・・・・・冬空へ鮮血が舞い、焼けた鉄の臭いが漂う。
◆◆◆
――――――――――「仕留めた」・・・と、”彼女”は引き金を絞った瞬間に確信した。
何故ならば、スコープの中心に捉えた対象へ向けた得物は、とても人体へ向けるには余りにも過度とも云える対物ビームライフル。
トリガーを引けば、確実に対象を木っ端微塵に出来る代物で
「ッ!?」
・・・しかし『
無論、「どうして・・・ッ?」と彼女は疑問符を浮かべる。
其れもそうだ。
銃口からショッキングピンクの焔が吐き出された瞬間。スコープ十字の中心に捉えていた筈の対象が、突然一歩身を引いたのだから。
まるで、居る筈もない
其の御蔭で、放たれた桃色の閃光は対象の頬を掠めるだけとなってしまったのである。
「こ、殺さないと・・・殺さなければ・・・・・あの方は、危険なのですから・・・!」
彼女は、対物ビームライフルからセカンドウェポンであるサブマシンガンと近接格闘武器たるブレードへ切り替える。
そして、対象との距離を詰める為に一気にブースターを噴かすのであった。
・・・
◆◆◆
「うぎィヤぁあ”あ”ア”あ”ア”ア”あ”あ”あ”あ”あ”ッ!!」
「ッ、春樹・・・!?」
キッチンカーの屋台から二人分のクレープを受け取ったラウラだったが、突如として聞こえて来た鼓膜を破るかの様な絶叫。
何だ何だと振り返れば、其処には恋人である春樹が顔面を抑えて身悶えうち跳ねているではないか。
其の様子は、まるで
「春樹ッ、大丈夫か?!!」
勿論、ラウラは春樹の元へ駆け寄ろうとする。
動揺の余り受け取った二つのクレープが地面へ落ちるが、気になどしていられない。
ズドン!
「ッ、く・・・来るんじゃねぇええ!!」
「!?」
だが、自分に向かって駆け寄ろうとするラウラに対して春樹は怒号と共に空へ向かってコンバットリボルバーをぶっ放す。
其の絶叫と銃声は、彼女だけでなく周囲に居た人間達の鼓膜をビリビリと刺激し、目の前で起こっている状況が只事ではない事を知らせ、そして其れはパニックとなって一気に周囲へ拡散した。
「銃声?!」
「爆発ッ、爆発だ!!」
静寂の水面に岩を投げ打つ如く広がったパニックにより、人波が濁流の様に流れる。
しかし、そんな状況下にも関わらず、春樹は焼け焦げた肉の臭いが香る自分の左頬を抑えながらある一点を睨む。
「(畜生ッ、ちくしょうッ、チキショウめッ! 完全に、完全に油断しとった!! 明らかに俺じゃと認識して撃って来やがった! ふざけやがってッ、ド畜生め!!)」
頬肉どころか、歯と歯肉まで焼かれたのが、なんのその。
いくさ人の顔になった春樹は、銀色のコンバットリボルバーの撃鉄を引き起こして構える。
皮肉にもビームの入射角によって狙撃手の大体の位置は割り出しているが、正確な位置は不明。其れ故に次の狙撃があるのではないかと勘繰ってしまい、動けないでいた。
〈春樹、落ち着け〉
「落ち着けるか、ボケェ! ちょっと間違えたら頭が腐った柘榴みてぇに飛び散っとったんじゃぞ! 冷や汗だらだらで、ちぃとばっかしチビったわ!」
≪春樹、ごめんなさい・・・! 明らかに私の落ち度だわ・・・ッ≫
〈本当にな。私が気付かなければ、今頃、彼の脳はミディアムに焼かれていたぞ?〉
≪ぐッ、うぅ・・・!!≫
「二人共ッ、此の状況下で喧嘩すんじゃねぇ!!」
愛機である琥珀と幻覚のハンニバルの睨み合いに春樹はうんざり顔でギリリ歯を鳴らす。
「・・・・・」
そんな言い争いをする三つ巴の背後へ迫る
其の
「―――――此のッ、糞ったれがァ!!」
「ッ、ぐぅ!!?」
けれども、其れよりも早くドガッ!と春樹は馬の様に背後へノーモーションの後ろ蹴りを放った。
まさか、後ろ蹴りをするとは思ってはいなかった
「此のボケカスがぁ!」
「ぎゃッ!?」
春樹は更に其の人型の景色へ向かってズドン!ズドン!!ズドン!!!とリボルバーカノンに火を噴かせる。
息も吐かせぬ其のコンボ攻撃によりパチパチ火花が散った後、遂に其の身体へ纏われていた光学迷彩が無効化され、其の本性が姿を現す。
・・・・・のだが・・・
「おんどりゃぁああ!!」
「げっふぅう・・・!!?」
光学迷彩を暴かれて現した姿に対し、感想を述べる代わりに春樹は暗殺者へ向けて蹴りを放った。
ベキベキ《font:6》凍った部分がひび割れて砕け散る。
「何じゃ、オメェ? 襲撃者界隈じゃあ真っ黒パーカーが流行りなんかぁ? 阿”ぁ??」
現状、春樹は現在進行形でブチ切れている。恋人との初デートに横槍を入れられたのだから、さも当然だ。
更に言えば目の前の襲撃者に命を狙われ、頬肉を焼き抉られている為にアドレナリンがドバドバ出てしまって力加減が出来ていない。
「
顕現させた三尺太刀を大きく振り上げる春樹。
其れに対して謎の襲撃者は思わぬ反撃に圧倒されてしまい、「はぁ・・・はぁ・・・!」と肩で息をしている。
「春樹・・・!」
ラウラは確信した。春樹の勝利を確信するしかなかった。
今までの経験上、負傷した彼が敵に容赦などする訳がない。そして、其の場合は必ずと言っていい程に敵はオーバーキル状態になるからだ。
「はぁ・・・はぁ・・・・・フッ・・・」
けれども、そんな狂戦士に向けて襲撃者はフードの下で微笑んだ。どうも様子がおかしい。
此れに逸早く気づいたのは、春樹の幻覚であるハンニバルだった。
〈ッ・・・待つんだ、春樹!〉
「うだらぁああああああああッ!!」
だが、興奮状態である春樹に彼の声は届かなかった。
両眼から焔を零し、歯を剥き出し、春樹は振り上げた赤光の刃を一気に振り下ろす。
・・・
「あッ・・・・・!?」
刃が直撃する寸前、何故か春樹は手を止めたのである。そして、一気に表情を強張らせて眼を四白眼にしたのだ。
一体何が起こっているのか理解できていないのか、離れた場所で見ているラウラも何が何だかと疑問符を浮かべるばかり。
「・・・か・・・か・・・・・ッ」
「か・・・?」
「か・・・”
驚愕の表情と共に春樹はボソリと一言呟く。
其れと同時に跪いて筈の襲撃者は、顕現させたまるでドリルの様に捻じ曲がったナイフを前へと突き出した。
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
………………仕事がツラみ。
御褒めのコメントが欲しい。
大酒飲みの蟒蛇くん……ハーレム沼に引きずり込まれる?
-
踏み止まる。
-
渋い顔で入る。
-
酒を飲まされた上で後ろから刺される。