IS/Drinker   作:rainバレルーk

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※未熟だからこその駆け足気味。
※御褒めのコメント、めちゃ欲しい。
※何でか知らんが『花の慶次』にハマってしまった。



第195話

 

 

 

―――――其の能力は、対象者に幻覚を見せる。

―――――此の能力は、対象者を外界と遮断し、精神に影響を与える。

―――――此の能力は、仮想空間では相手の精神に直接干渉する事で、現実世界では大気成分を変質させることで相手に幻覚を見せる。

 

―――――此の能力名を【ワールド・パージ】と云ふ。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

がッ・・・フぅ・・・!!

 

刀身の捻じ曲がった特殊な対ISナイフが、ISに備わっている筈の絶対防御の合間を縫ってズブリッ!と、春樹の左脇腹を抉り抜く。

 

「くッ、うぅ・・・!」

 

彼へナイフを突きつけた襲撃者は更に危害を加える為にナイフを引き抜こうとするが、刺された側の春樹がグッと其のナイフを引き抜かれない様に力一杯抑えた。

ナイフが引き抜かれれば、其処からの大量流血してしまうからだ。

 

「糞ったれ・・・がぁ!!」

「うぐぁ!?」

 

相手との距離をとる為にドガッ!と春樹は襲撃者の腹部へヤクザキックを蹴り込む。

力加減皆無の蹴り込みに一瞬だけ怯む襲撃者だったが、すぐさま体勢を立て直し、サブマシンガンを構える。

 

―――――――「させませんわ!!」

 

構えた筈の黒光りするサブマシンガンが、ズギャァアン!と真横から飛んで来た桃色の閃光によって撃ち抜かれて弾け飛ぶ。

其の閃光が飛んで来た方向へ視線を向ければ、其処には流れる金髪をたなびかせながらレーザーライフルを構える青い眼の戦乙女、セシリア・オルコットが居るではないか。

 

「ラウラさんッ、今です!!」

 

「よくも貴様ぁあああああああッ!!」

「ッ、ぐぅうう・・・!!?」

 

セシリアの号令からラウラはタックルを襲撃者の横っ腹へドゴォンッ!と喰らわせる。

其の威力は、瞬時加速の速度と共に放たれた為に絶大であり。対象を吹っ飛ばすには十分すぎるものであった。

 

「春樹ッ! しっかりしろ春樹!!」

うゲ・・・フぅ・・・!

 

「・・・・・」

 

ナイフの刺さった脇腹を抑えて口と鼻から逆流した吐血する春樹を抱き抱えつつ、ラウラはくしゃくしゃに歪んだ表情で叫ぶ。

其の様子に襲撃者は対複数戦の態勢に入る為、バックステップと共に飛翔しようとする。

 

―――――「逃がさないよ!!」

「ッ、くぅ!?」

 

だが、浮かび上がった瞬間。ズダダダッ!と発射されたアサルトカノン用の重い弾頭が其の身体に纏わりつき、其の衝撃でもって襲撃者を地面へ叩き落す。

 

「どーん・・・!」

「な!!?」

 

更に其処へ叩き込まれるのは、ミサイルポッドから射出された誘導ミサイル。

其の人一人に対して行使されるには余り過度とも云えるミサイル群の信管が炸裂すれば、ドグォオオンッ!!と小規模なクレーターを形成した。

 

「ごっフッ、ゴホ・・・! い、一体どうして・・・?!」

 

土煙の中、襲撃者は思わず疑問符を浮かべる。

どうして此処に春樹とラウラ以外の専用機所有者が、其れも複数いるのか?

追跡中にそんな気配はなかった筈なのに。

 

「ですが、今はそれよりも!」

 

流石に一対多数では分が悪いと判断した襲撃者は、退却戦と再び身体へ光学迷彩を覆っていく。

 

―――――ジャラララララッ!

「え・・・ッ!?」

 

ところがどっこい。光学迷彩が覆う直前、其の身体へ刃の鱗を持った蛇が絡み付いたではないか。

 

「ちょっと・・・どこへ行こうって言うのかしら?」

 

「ッ・・・さ、更識 楯無代表・・・?!」

 

鱗刃の蛇、蛇腹剣ラスティーネイルの柄を持つのは、IS学園生徒会会長にしてロシア代表の更識 楯無。

其の両隣には、彼女の妹である更識 簪とフランスはデュノア社令嬢のシャルロット・デュノアが、自らの得物を構えていたのであった。

 

「あら。私も有名になったものね。まぁ・・・テロリストに名が知れるなんてちっとも嬉しくもないけどッ」

 

「ど・・・どうして・・・一体どうして、あなた達がここに?」

 

「それは・・・・・IS乗りとしての直感よ!」

 

実を言えば、楯無達はIS統合部製の新型光学迷彩を借りて春樹とラウラのデートを追跡していたのである。

まさか、そんな馬鹿な動悸でステルス迷彩を使うバカが居るとは、襲撃者も思ってもみなかった。

 

「さて・・・それで、あなたは一体何者かしら? まぁ、彼を狙うぐらいだもの。大方の予想は着くわ。そうでしょ、亡霊(ファントム)さん?」

 

「くぅッ!」

 

疑問符を投げ掛けると同時に蛇腹剣を手繰り寄せ、特殊ナノマシンによって超高周波振動する水を螺旋状に纏ったランス、蒼流旋でフィニッシュを飾ろうとする。

しかし、襲撃者が此のまま黙ってやられる訳もない。身体に巻き付いた剣へ近接ブレードを入れ込んで断ち切ると、彼女等から距離を取ろうと瞬時加速で後退した。

 

「逃がす訳がないだろう!!」

「ぐッ!」

 

だが、其れを特に許さぬ者が此処に一人。

漆黒の装甲を身に纏い、プラズマ手刀を振るう銀髪オッドアイのラウラ・ボーデヴィッヒ其の人である。

彼女は、一団の中で唯一の非戦闘員である本音に春樹を任せると酷い怒りの形相で恋人の仇を討たんと斬りかかったのだ。

 

「殺してやるッ! 貴様だけは、絶対に・・・殺してやる!!」

「うぅッ・・・!(な、なんて力!?)」

 

ラウラの其の一撃をガキィン!と近接ブレードで受け止める襲撃者。

けれども、此れは悪手であった。

此のラウラ・ボーデヴィッヒと云う者は、其の荒ぶる本能を戦闘にフル活用出来る御人なのである。

 

「喰らえッ!!」

「―――――!!?」

 

ドゴォッン!と肩に搭載された大型レールガンが、超至近距離で襲撃者の頭部顔面へ向けて発射された。

爆炎と共に崩れ落ちる襲撃者だが、其れでも尚、ラウラの怒りは治まらない。

 

彼女は襲撃者の首を鷲掴みにするや否や、未だ黒煙が立ち昇る顔面へ向けて固く握り込んだ拳骨をガンガン! ガンガン!叩き込む。

 

「ぐッ! ガ!! ぶべッ!!」

 

パンチングマシーンの如く大きく揺れる頭部。

例え打たれ強いヘビー級ボクサーでも一発喰らえばK.O.間違いなしの連打を叩き込んだ後、ラウラは大きく振り上げた拳骨を思いっ切り振り切った。

 

ドッガァ―――――アアン!

「ゲぼらぁアア―――――ッ!!?」

 

連打に次ぐ連打の後に叩き込まれた渾身の一撃は、襲撃者を後方彼方へとブッ飛ばすには容易である。

 

「ッ、春樹!!」

 

ぶっ飛んだ襲撃者が力なく地面へ倒れ伏した後、ラウラは重傷を負った恋人の元へと駆け付けた。

 

ひゅー・・・ヒゅーッ・・・ヒュー・・・・・

 

「春樹ッ、春樹! 大丈夫、大丈夫だからな!! 本音ッ! 救急、救急車はまだか?!」

 

「お、落ち着いてラウラウ! い、いちおう応急手当はしたんだよ! で、でも・・・でも・・・!」

 

「でも? でも、何だ?!」

 

「な、な・・・なんだか、なんだか様子がおかしいんだよ!!」

 

「おかしい? 何がおかしいのだ?!」

 

本音の言う違和感とは、春樹の現状が、出血性ショックとは違う別の痙攣症状が見られたからだ。

原因は何かとラウラが、ナイフの刺さった春樹の脇腹を捲って見ると、其処には、歪で異常な青紫色の蚯蚓腫れがナイフを中心に放射状に奔っているではないか。

 

「これは・・・毒か?!」

 

「毒ですって!?」

 

「毒でしたら・・・ナイフを抜いた方が、よろしいんじゃありませんの?」

 

「いや、ダメ。抜いたら、ドバッて血が出ちゃう・・・!」

 

予想外の状況に慌てる一同であったが、そんな中で瀕死状態の春樹が自分を抱えるラウラの胸倉を掴んで引き寄せた。

 

ひゅー・・・ヒュー・・・・・ら・・・ラウラちゃん?

 

「しゃべるなッ、しゃべるな春樹! 大丈夫だッ、お前はいつもこれ以上の怪我を負っても平気で元気になるやつじゃないのか?! 今は、ゆっくり―――――」

ええから、聞け!

 

涙をこぼすラウラの悲痛な叫びを遮り、春樹は彼女に語り掛ける。

「襲撃者の()を確認してくれ」と。

 

「か、顔?」

 

「春樹さんッ、どうして顔なんて?!」

 

「ッ、全員警戒しなさい!」

 

春樹の発言に戸惑う一行だったが、楯無の発した声に全員の視線がむくりと起き上がって自分達を見下ろす様に上空を浮遊する襲撃者へ向けられる。

 

「―――――流石は【月の落とし子(ローレライ)】と云った所でしょうか?」

『『『なッ!!?』』』

 

起き上がり、春樹一行へ顔を向ける襲撃者。

しかし、其処へ居たのは、最早最初に見た深々とフードを被った姿ではない。

 

「えッ・・・ど、どうして・・・えッ、えぇ!!?」

 

シャルロットは酷く表情を引き攣らせ、襲撃者とラウラの顔を交互に確認し、再度驚嘆の声を上げた。

何故ならば―――――

 

「ら、ラウラさんと―――――」

「ラウラちゃんと―――――」

 

『『『()()()!!?』』』

 

―――――最早ボロ布ぼろきれと化したフードの下にあった襲撃者の素顔は、血まみれの春樹を抱えるラウラと()()()であったからである。

 

「貴様・・・何者だ!? どうしてッ、春樹を狙う?!!」

 

当然な如く投げ掛けられた疑問符に対し、襲撃者は随分と丁寧な対応と共に自己紹介をする。

 

「私の名は、『クロエ・クロニクル』。私の目的は、そちらにいらっしゃる清瀬 春樹様の”排除”でございます」

 

「排除? どうして・・・一体何の為に?!!」

 

「”我が主”の為でございます。そちらにいらっしゃる清瀬様は、完全なる()()()()()()。それも大いに危険な。それゆえにこの世から消えてもらう事を私は望んでいるのです」

 

随分と澄んだ目で淡々と語る其の彼女の異様な態度に対し、一行は表情を引き攣らせる。所謂『ドン引き』だ。

クロエの異常で異様なオーラが、あっという間に場を支配してしまう。更に彼女は其の支配力を高める為にパッチンと指を鳴らす。

さすれば―――――

 

『『『ッ、なぁ!!?』』』

 

―――――一行を囲む様に黒ずくめの一団が周囲一杯に溢れかえる。

一体どこにこんな戦力を隠していたのだろうか。此れでは戦力の量も勢いもクロエの方へ傾いてしまった。

 

「さて・・・私の目的は、そちらの清瀬様です。大人しく彼を渡して頂けるのならば、貴女方に危害は―――――」

ズガンッ!

 

されども其れで挫ける一行ではない。

主導権を握り、何処か余裕そうな態度を醸し出すクロエに向かってラウラはレールガンを撃ち込んだのだ。

此れには思わずクロエも眉間へしわが寄る。

すると―――――

 

「破ッ・・・・・阿破ッ、破・・・阿破破破ッ・・・阿―――――破ッ破ッ破ッ破ッ破ッ!!」

 

「え・・・!?」

「は、春樹くん・・・?」

 

ケラケラ、ケラケラと奇天烈な笑い声を上げる者が一人。

無論、こんな状況で笑い声を上げられる者など一人しか居らぬ。口から血を出しながらもクロエの方へニタリと微笑みを向ける清瀬 春樹、其の人だ。

 

「・・・何が、可笑しいのですか?」

 

こっフぅ・・・カフッ・・・・・交渉事で、相手に・・・敵に不安な顔を見せるんじゃねぇでよ。自分が有利じゃと思わせたいのなら・・・()()。こねーな風によ・・・阿破破ノ破!」

 

充血した眼と青白い顔をしているとは思えぬ快活で奇妙な笑い声に対し、クロエは表情を変えずとも内心ギョッとした。

満身創痍の瀕死の死にぞこないでありながら軽やかに笑う彼をクロエ・クロニクルは『()()』と感じたのである。

 

更に次の瞬間。そんな内心を揺さ振られながらも無表情を貫く彼女の鉄仮面を大きく崩す言葉を春樹は吐いたのだ。

 

「あぁ、そう言えば・・・クロエ・クロニクルさんよぉ? ()()に・・・『()()()()()()()』に()()()()部分は、まだ痛むかい?」

「ッ―――――!!?」

 

文字通り血反吐と共に吐き出した彼の言葉に対し、クロエの表情はぐしゃりと歪に変わる。

そして、「ッ・・・うぅェえッ!!」と嗚咽音と共に口を抑えるのだが、胃から食道を通って逆流した勢いを止める事は出来ず、掌と口周りはベッタリベッショリと吐瀉物まみれになってしまった。

 

「え!?」

「なッ、なに・・・?」

「ど、どうしたのかな?」

 

あまりに突然の出来事に春樹を中心に防御陣形を組む一行へ動揺が奔る。

しかし、そんな中でも冷静に状況を読む者が居た。

 

「喰らいなさい!」

 

楯無は、ナノマシンで構成された水を霧状にして攻撃対象物へ散布し、ナノマシンを発熱させる事で水を瞬時に気化させて水蒸気爆発を起こす、清き熱情(クリア・パッション)を発動。

其の衝撃波と熱量を以て自分達の周囲を囲む黒ずくめを一掃するのだが・・・どうも様子がおかしい。

 

「ッ、やっぱり・・・!」

 

何と黒ずくめの集団は吹き飛ばされる事なく、砂で造られた像の様にサラサラと崩れ去ったのである。

吐血状態の春樹がクロエの動揺を誘った際、黒ずくめ集団の一体が一瞬僅かに()()()のだ。

此れは、清き熱情によって大気成分が霧散した為である。

 

「ラウラちゃん!!」

「わかっている!!」

 

周囲の敵軍が”幻影”だと判った途端、ラウラはギロッと三角にした眼と共にクロエへ向かって大型レールカノンを発射した。

 

ドゴォッン!

「ぐッぅ・・・!!」

 

嘔吐の為に必要最低限の防御を強いられたクロエは、バランスを崩して地上へ落下して行くのだが―――――

 

「貴様ァアアアアアアッ!!」

 

其の彼女の落下地点にラウラは瞬時加速と共に差し迫る。振り被った右掌へプラズマをバチバチと輝かせながら。

 

無論、クロエとて近接においての最大火力を易々と喰らうつもりはない。すぐに回避行動をとらんとブースターを逆噴射させる。

けれども、此れを許すラウラではない。

 

「させるものかぁ!!」

「ッ!?」

 

残った片方の左手を突き出すと、クロエの身体はピタッと其の場に()()してしまう。まるで動画を停止ボタンで停める様にだ。

此れは、ラウラが纏う専用機シュヴァルツェア・レーゲンが有する反則的とも云える能力、AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)である。

 

さて、其の対象を任意に強制停止させる事が出来る能力によって相手を固定したラウラは、其のままクロエの腹部へ向けて振り被った光り輝く手刀を鋭く突き出す。

 

デュクシィッ!

「グっはぁアア!!?」

 

「おんどりゃぁああ!!」

 

容姿端麗な少女が出してはならぬ断末魔と共にくの字に曲がるクロエへラウラは更なる追い打ちをかける為に勢い其のままドガッ!と回し蹴りを決める。

其の鞭の様にしなやかなれどもハンマー以上の衝撃力を有する蹴り技により、クロエは胃液が混じった唾液を吐きつつ、付近にあった建造物の壁面へ人並代の穴をあけた。

 

「おい・・・どうした? さっさと立たんかッ、このド三品が!! 私の男に・・・春樹に手を出したのだ! ただで殺してやる訳にはいかんぞッ!!」

 

『『『お・・・おう』』』

 

血走った眼と剥き出しの歯茎と共にラウラは威嚇音をかき鳴らす。

其の只ならぬオーラに味方もタジタジである。

 

「がッ・・・フ・・・・・(ま・・・まさか、これほどまでの力をつけていたなんて・・・ここは退却した方が・・・・・しかし!)」

 

一方、一方的な蹂躙を受けたとも見えるクロエの視線は、未だ虫の息の春樹へ向けられていた。

其れも其の筈。彼はクロエにしか知り得ない事実を言い放ったからだ。

 

「ッぐぅ・・・うう・・・!!」

 

痛む。

勿論、其れはラウラに攻撃された痛みでもあった。だが、其れよりも激しく痛んだのは、特殊な器具が装着された片足である。

 

―――――〈あぁ、クロエ。君は、なんて・・・()()()()んだ〉

「ひッ・・・!!」

 

クロエは春樹の発言によって()()()()()()()()

あの冷たい声色を。あの血の気の引いた顔色を。そして・・・あの”痛み”を思い出してしまう。

 

「い・・・いやッ、いやぁ・・・! い、痛い! 痛いのは、いやぁ・・・!!」

 

切り落とされた膝下が痛む。

抉り取られた肝臓が潜む脇腹が痛む。

食い千切られた片耳が痛む。

 

忘れたくとも忘れられない忌まわしい()()()()()()()”痛み”がフラッシュバックする。

其のおぞましい記憶と体験により、クロエは顔を青くして痙攣発作を起こしだした。

 

「貴様だけは・・・貴様だけはァ!!」

 

しかし、そんなクロエの事情などラウラの知った事ではない。

確実に相手に止めを刺す為、彼女はリアアーマーに計六機装備されたワイヤーブレードを展開し、其れを一気にクロエの細い首へと巻き付けた。

 

「あッ・・・グがァア・・・・・ッ!!」

 

ギチギチ、ギチギチと嫌な音が響く。

絶対防御の規定を越え、鋭い糸鋸の様な刃がクロエの柔肌へ喰らい付いて血を垂らす。

 

「さぁ・・・死ねぇッ・・・・・!!」

 

ラウラは酷く澱んだ赤錆色の右眼を見開き、一気にクロエの首を圧し折ろうと力を込める。

勿論、クロエは此の危機を脱しようと必死になって足掻くのだが、其の力は骨を圧し折るどころか、首を断ち切る勢いだ。逃れようにも逃れられない。

 

 

 

 

 

・・・・・ところが―――――

 

ズギャァン!!

『『『!!?』』』

 

突如として青紫色の光が、ラウラとクロエの二人の間を断ち切る様に通り過ぎた。すると其の光は、いとも容易くラウラのワイヤーブレードを焼き斬ったではないか。

御蔭で呼吸阻害から解き放たれたクロエは大きく激しい呼吸音と共に肺へ空気を取り込む事が出来たのだが、此の横槍によって恋人を傷付けた下手人を仕留め損なった事は、ラウラを更に怒らせるには十分過ぎた。

 

「貴様ァッ、何者だ?!!」

 

そんなテンプレートな言葉と共にレーザービームが放たれた方向へレールカノンを放つが、其の発射された弾頭を新手は何と此れを再び発射し()()()()()()のだ。

 

「・・・・・」

 

ラウラの攻撃を無効化した新手は、亜音速の弾頭を撃ち落とすと云った超絶技法を成した其のビームライフルの銃口を下ろす。そして、無言のままに被っていたフードを脱げば、其の()()が海風にたなびく。

 

「ッ・・・そ、そんな・・・・・貴女・・・!!?」

 

晴天の霹靂の如く現れた敵増援に対し、意外な反応を示したのは、新手と同じ()()()()()()()()()を構えたセシリアであった。

だが、そんな反応も束の間。新手の姿がまたしても突然の如く消える。まるで本人の姿が空間へ()()様に。

けれども、驚くべき事は此れだけに留まらない。

 

―――――「Ms.クロニクル。御無事ですか?」

『『『!!』』』

 

消えたと思った場所から瞬間移動でもしたかの様に新手はクロエの側へ膝をついた後、素早く彼女を抱き抱えたのだ。

其の余りの手際の良さは傍から見ても一級であったが、其れでも新手の次の行動を察したラウラは即座に掌へ稲妻を滾らせる。

 

「させません」

「なッ・・・!?」

 

しかし、其れよりも早く新手はブースタースカートから射出した()()()で、其の掌を明後日の方向へ弾いた。

 

「・・・申し訳ありません、()()()

「!」

 

ビットから発射されたビームによってラウラがバランスを崩した瞬間。赤毛の新手は何かを呟きながらクロエを抱えたまま再び水の中へ沈み込む様に掻き消えて行ってしまう。

 

「ふ・・・ふざけるなッ・・・ふざけるな、貴様ァア!!」

 

あまりの怒涛の出来事に対してラウラは叫び散らすが、其の絶叫は虚しくも周囲に木魂するばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど・・・・・どうして・・・どうしてですの?・・・・・『チェルシー』?」

 

セシリア・オルコットの呟きに応える者は誰も居ない。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆

極東は田舎生まれの蟒蛇くんの進化ルート

  • ジークフリート
  • ファフニール
  • 俵 藤太
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