第2話
「なぁ、清瀬 春樹だよな?」
「・・・あ?」
HRを終え、やっと一息つけるかと思っていた矢先。俺の目の前に”元凶”がすました顔で現れやがった。
『織斑 一夏』。この世界でISを動かした”初めての男”。よーするに”原作主人公”ってやつだ。
「なんか用か?」
こう言う場合、DIOさまのように『そういう君は、織斑 一夏』的な返しをすればいいんだろうが・・・生憎と俺の”人生再出発計画”をとん挫させやがった野郎と仲良くしようとは思わない。
冷たく無機質に返答する。
「さっきの時間でも言ったと思うが、俺は織斑 一夏。よろしくな!」
「あぁ、そうか。それで?」
「え・・・?」
「それで、俺に何の用かって聞いてんだよ。こっちは誰かさんのせいで見世物にされてイライラしてんだよ、コノヤロウ」
「え、えーと・・・」
俺の棘のある言葉に戸惑う織斑。
初対面の相手に対してこういう攻撃的な物言いは、言った後で申し訳なさが心に来るのだが・・・不思議とそういった感情はない。
俺は真っすぐに野郎の目を睨みつける。
「なにアイツ・・・」
「織斑くんに対して、態度悪くない?」
「顔コワッ」
ガヤが何か言ってるが、知るか。
本当はヘッドバットをコイツの綺麗な顔面にめり込ませたい気分なんだからな。
「・・・ちょっといいか」
「あ”ぁ?(・・・あれ? コイツは・・・)」
そんな一方的な敵意を元凶に対して剥き出しにしてると、一人の女子が話しかけて来た。
俺はその女子に見覚えがあった。記憶の片隅にかすかに残る原作知識の中に彼女の事がある事を覚えていた。
「(確か・・・篠ノ之・・・)」
「・・・箒?」
「・・・・・」
『篠ノ之 箒』。ISを発明したイタい兎の妹かなんかで、確かヒロインの一人だったような・・・気がする。
まぁ、そんなこたぁどうでもいい。
「彼女、どう見たってオメェに用があるみたいなんだが?」
「あ、ああ・・・それで、何の用だ?」
「廊下でいいか?」
「お、おう」
そのまま篠ノ之は野郎を連れて教室の外へと出ていく。
良いね良いね、青春だね!青い春だね!俺も前の世界であんな事やってみたかったね、糞ッ!
・・・あぁ、コッチに来てから妬みと嫉みの感情が乱高下してる気がする。
あー、マジで息してるだけでゲンナリしちまうな。
承太郎さん風に言うとこれだな、『ヤレヤレだぜ』。
「ちょっとよろしくて?」
「あ?」
そんな時、俺の元へ二人目の招かれぬ客が現れた。
一言で言うと”美少女”。詳しく言うと縦ロールのあるパツキンロングに透き通るような綺麗な碧眼、非常に整った容姿に魅力的なスタイルの美少女だ。
「何ですの、そのお返事は!?」
「・・・はぁ・・・ッ!」
だがまぁ・・・高圧的な態度の通り、 今の世の中では珍しくもない面倒な輩のカテゴリーに分類される人間のようだ。
最強の戦力であるISは女にしか扱えないから女の方が偉いとかいう便所の鼠の糞以下みたいな風潮のせいで都市部はこんなヤツらばっかだ。
あぁ、地元が恋しいよぉ・・・母ちゃぁん、父ちゃぁん・・・!
「私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度と言う物があるんではないかしら?」
「すいませぇん。なにぶんと君みたいな別嬪さんから声を掛けられる事なんてないから、緊張しちゃってね。確か・・・イギリス代表候補生のオルコットさんだったよね」
『セシリア・オルコット』。確かヒロインの一人で、『チョロイン』なんて不名誉な称号を欲しいままにしていたキャラだったような・・・気がする。
ま、よくある『噛ませキャラ』だろう。
「ふんッ、私の事を存じ上げているのならば及第点を差し上げますわ」
「あ・・・そりゃあどうも」
「清瀬 春樹さんでしたわね。分からない事があれば、このセシリア・オルコットが教えて差し上げますわよ?」
「え、マジで? そりゃあ良い。なにぶんと俺は田舎者でね、ISの知識なんて素人以下のトーシロなんだ。お願いできるかな?」
「えぇ、勿論いいですわよ。エリートとして当然のことですわ」
オルコットはご満悦に鼻を鳴らす。
こういうプライドが高い輩は下手に出てれば、波風立てずに済む。触らぬホニャララに祟りなしだ。
そんな事を考えているとキンコンカンと予鈴が鳴る。
俺的にはもう五分前に鳴っていて欲しかったが、贅沢は言わない。漸くこれで面倒事が向こうに行ってくれる。
そろそろ気持ちの悪い作り笑いも限界なんだよ。
「あら、もうそんな時間ですのね。とりあえずここまでにしておきましょう」
「えぇ、ホント。楽しい時間はすぐに過ぎ去るものですね(早く向こうに行きやがれ、コノヤロウ)」
「次もまたあとで来ますわ。よくって?」
「・・・は・・・ッ!?」
そう言って面倒事はドレスのように改造された制服のスカートを翻し、背を向けて颯爽と去っていく。
最低に最悪だ。こんな嬉しくない次回予告は本当に久々だ!
あぁ、もうやだ。お家帰りたいよ~・・・
―――――――
「―――――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ―――――」
IS学園最初の授業が始まった。ISに関する基本的な情報と機体データの授業だ。
「では、ここまでで質問がある人はいますか?」
「はい。いいですか、山田先生」
「なんでしょう、清瀬くん?」
「ISの国家認証なんですが、ここは各国によって違いが―――」
先程まで嘆き心の中でべそをかいていた春樹も熱心にノートをとり、質問をしている。
元来彼はまじめに授業を受けるタイプのようだ。
そんな彼の隣で・・・頭を抱え唸る男が一人。
「織斑君は何かありますか? 質問があれば遠慮せずに聞いてくださいね。何せ私は先生なんですから!」
「・・・山田先生!」
「はい、織斑君!」
「ほとんど全部わかりません!!」
「ええぇッ!!? 全部ですか?!」
余りの突然の宣言に驚きと困惑を隠せない山田教諭は思わず声が上ずる。
「・・・織斑、入学前の参考書は読んだか?」
彼の宣言に一組の担任で、一夏の姉である『織斑 千冬』は険しい表情と低い声色で問いかける。
「・・・分厚い辞書みたいなやつですか?」
「そうだ」
「古い電話帳と間違えて捨てました」
スパァアッンと乾いた音が教室に木魂する。彼女の伝家の宝刀”出席簿”が一夏の頭に炸裂したのだ。
その痛みに彼は悶絶し、机に突っ伏す。
「必読と書いてあっただろうが馬鹿者。まあいい、後で再発行してやるから一週間で覚えろ」
「え・・・一週間であの分厚さはちょっと・・・」
「やれと言っている」
「・・・はい・・・」
「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしたいための基礎知識と訓練だ。理解が出来なくても答えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」
「はぁ・・・」
「織斑、『自分は望んでここにいるわけではない』と思っているな? 望む望まざるにもかかわらず、人は集団の中で生きてなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな」
「・・・ッ・・・はい」
教師にして、自分の姉である千冬に怒られて意気消沈している一夏。
そんな彼に浴びせられた言葉に対して、この男は・・・・・
「(あぁ~、めっちゃ石仮面ほしい。人間やめたい・・・『俺は人間をやめるぞ、ジョジョ―――ッ!!』的な事めっちゃやりたい!!)」
とんでもなくくだらない事を考えていた。
・・・はい。という訳でリハビリ投稿でした。