・・・久方ぶりの更新でござい。
年内の更新はこれで最後に成ります。
皆様良いお年を。
―――「セシリアさん・・・待っとったでよ」
「ッ、は・・・春樹さん・・・!?」
イギリス上陸前夜。
秘匿任務の合間を縫い、気分転換を兼ねたドイツ観光から帰って来たセシリアを待って居たのは一人のレプタリアン・・・・・もとい世界で二番目の男性IS適正者、清瀬 春樹。
暗い部屋にボゥッと灯る彼の琥珀色の瞳は実に不気味で、実に幻想的であったろう。
そんな突如として現れた男に対してセシリアは「お、驚かさないで下さいまし!!」と、さも当然な半ば悲鳴の抗議文を叫んだ。
「もし、これが私ではなくて鈴さんや箒さんだったらどうしていたんですの?!
あの二人なら間違いなく実力行使をしているところですわ!!」
「悪ぃ悪ぃ。
会長閣下の真似をしてみたちょっとしたサプライズでよ」
「楯無さんの真似?
あの方、こんな子供っぽいマネをするんですの?」
「じゃーじゃー。
普段から年上ぶるくせして、やる事が幼稚な時があるんよアレは」
そう言って「阿破破ノ破!」といつもの奇天烈な笑い声を発する春樹なのだが・・・何故かセシリアは彼の雰囲気がいつもと違うと感じた。
「春樹さん・・・
なにかあったんですの?」
ドイツ軍所属黒兎部隊部隊員達がガイドするドイツ観光を楽しんでいたセシリア達とは打って変わり、春樹と彼の恋人にして黒兎部隊隊長のラウラは別行動をとっていたのである。
セシリアは彼等がドイツ軍将校と共に何処を訪れたかは知らぬ。だが、春樹の目が異様に鋭くなっている事は明白。
そして、こんな目をしている時の彼は総じて
「・・・・・セシリアさん。
人生で
「大切な日、ですか?」
「じゃー。
ある
「
そんないつにも増して異様で不気味な彼の様子に対し、セシリアの表情が強張る。
・・・しかし、其の表情が恐怖にも似た感情で染まる事が起こった。
「セシリアさん・・・・・
俺が何にも気付いてないとでも?」
ギョロリ剥いた琥珀の四白眼とニッカリ三日月に歪んだ口元。
其の狂気的な凶器の様な表情を向けられたもんだから、セシリアは思わず「ひッ・・・!?」と息を呑む。
そして、自分が此処に居る事が偶然ではなく
「な・・・なにを・・・・・
私がなにを隠しているというのですかッ?」
「其れは君が一番良う知っとるじゃろう?
バレるとるんじゃよ、セシリアさん?」
春樹の猟奇的な笑顔にセシリアはクラッと後退りしてしまいそうになるが、
だが、そうはさせまいと春樹はワザとらしい大仰な一歩で彼女の顔面を除くが如く距離を詰めて彼女を壁際へと追い遣った。
其の様子はまるで此れから獲物を丸呑みせんと舌なめずりをする蛇だ。
「ッ、ご・・・ごめんなさい・・・!
ごめんなさいッ、春樹さん!!
ごめんなさい、ごめんなさい!!」
恐ろしい形相を向けられ、逃げ場もない状況にセシリアは半ばパニック状態で謝罪の言葉を紡ぐ。
そんな涙を流すあどけない少女の両頬を白髪金眼の蛇顔男はそっと優しく自分の両掌を添えると共に彼女の青い瞳を覗いた。
「あぁ御免、御免よ。
別に君を責め立てようって訳じゃないんじゃ。
其の様子じゃと、君は何にも知らないみたいじゃな?
じゃあ・・・やっぱり
春樹の口から述べられた『彼女』とは、セシリア、もといオルコット家に仕えるメイド、『チェルシー・ブランケット』の事である。
彼にとって噴飯ものの出来事である『初デート襲撃事件』。
其の事件の際、襲撃実行犯たるクロエ・クロニクルの逃亡を手助けするチェルシーを春樹は確認していたのだ。
しかし、春樹はチェルシーとの面識はない筈。なれば何故に春樹は彼女の顔を知っていたのか?
其れは初デート襲撃事件以前に起こった『ワールドパージ事件』において、セシリアがチェルシーに
だが、春樹としてもクロエのナイフ刺突による痛みと刃に塗り込まれていた毒によって朦朧としていた為にハッキリとした確信は持っていなかった。
だが、セシリアの態度を見る限りでは彼の勘は的中していた様である。
「・・・ようもようもやってくれたもんじゃ。
さてさて、どう落とし前を着けてくれようかのぉ?」
「ッ、や・・・やめて・・・!
やめてくださいまし!!」
四白眼で上の空を見上げ、
何故ならば彼女は知っていたからだ。目の前で楽しい事を想像する様に口端を吊り上げる男が、どれ程迄に残酷で冷酷な事を然も平然と出来るかを。
きっと此の男は、ワールドパージ事件において学園内へ不法侵入し、当時学園防衛を担っていた楯無へ暴行を働いた悪漢共の骨を砕き、肉を潰し、皮を剥いだ事と同等の事をするに違いないとセシリアは察したのだ。
「彼女は・・・彼女は、チェルシーはこんな事をするような人ではありません!
きっと・・・きっとこれにはなにか、なにかきっと深い訳があるはずですの!!」
「深い訳?
一体どんな訳があれば、俺のド頭を吹っ飛ばそうとした下手人の逃亡をほう助するんじゃ?」
「そ、そ・・・それは・・・ッ!!」
復讐に燃える金色の瞳にセシリアは思わず視線を一瞬逸らしてしまうが、一拍置いて彼女はキッと目を三角にして鼻頭を突き上げた。
「私は・・・私は信じます!
チェルシーは些細な理由で、その様な事をする人間ではありません!!」
「阿破・・・阿ーッ破ッ破ッ破ッ破ッ破ッ!!」
身体をカタカタ震わせながらもサファイアブルーの力強い瞳を差し向けるセシリア。
そんな彼女に対し、蟒蛇は刹那の真顔になったと思えば、耳まで裂ける程に手放しであの奇天烈な笑い声と一緒に口端を再び釣り上げる。
「そーじゃよなー、そーじゃよな。
チェルシー・ブランケットの行動は実に
絶対に何か裏があるじゃろうな」
「し、信じていただけますの?」
「応とも。
セシリアさん、君がブランケットさんの事をそう信じるんなら俺もそう信じるでよ」
「阿破破ノ破!」と呵々大笑を決める春樹に対し、セシリアは複雑な感情を抱きつつ不思議と自分を信じてくれる春樹を好意的に感じた。
尚且つ、自分へ向けてくれる其の笑顔に彼女はこれまた何故か思わずごくりっと生唾を飲んだ。
・・・・・其れが彼の
「なぁ、セシリアさん?
ブランケットさんの一件なんじゃが・・・俺に任せてもらえん?」
「え?」
「ほらッ、俺って今ん所、日本で意識不明の重体で寝てる
此処でピンピンしとるのを知っとるのって、ごく僅かの人らぁだけじゃしぃ」
確かに彼の云う通り、世界で二番目の男性IS適正者が日本でテロ事件に巻き込まれて意識不明の重体だと云う事は公然の秘密となっているが、実際は異国の地で奇天烈な笑い声を上げている。
しかも此処に来るまでに日本で自分を襲った襲撃者をボコし、ロシアでガチレズパイロットとドンパチを繰り広げた上でだ。
「じゃけん、秘密裏に俺って動ける訳なのよ」
「つまり・・・私達がイギリスで任務を遂行している間、春樹さんはチェルシーの真相を探ってくれるというつもりですの?」
「さっすがはオルコット家の当主様!
察しが良くて助かるでよ。
今回の一件、どうも英国政府の”ダークサイド”的な危険な香りがするんじゃ。
おぉ、臭ぇ臭ぇ!」
「ダークサイドって・・・私の祖国、イギリスにそんなものなど!!」
「まぁ、そうカッカせんでや。
とりま俺は
なぁ?」
「ッ、は・・・はい」
「ほいじゃあ頼むわぁ」とギンギンギラギラ目を輝かせた春樹のいつも以上に狂気的な笑みにドキりッと胸を締め付けられるような不可思議な感覚を味わいつつ、セシリアは絞る様な声で肯定の受け答えを述べたのだが・・・・・
―――◆◆◆―――
「・・・・・春樹さぁああん・・・!!」
現在、イギリスに上陸した彼女は渋柿と苦虫を同時に嚙み潰した様な苦渋の表情を心の中で浮かべて恨み節を唸っていた。
―◆◆◆―
フランスとドイツ、二つのルートを通ってイギリスへ入国した二つのグループは無事に英国政府が用意した施設において合流を果たす事が出来た。
・・・果たしたのであるが。
「ねぇ・・・・・ねぇ・・・ねぇ、セシリア?
春樹は・・・春樹は・・・・・どこにいるのかなぁ?」
「ひィっ・・・!?」
セシリアは現在進行形で詰められていた。其れも萬力の力でガッチリ両肩を掴まれ、息もかかる距離まで顔を寄せられてだ。
まるで尋問が如く彼女へ静かなれども鬼気とした疑問符を捻じ込む様に問い掛けるのは、まるっきり光が消え失せた四白眼を揺らす学友にして戦友とも云えるフランスの代表候補生、シャルロット・デュノア。
其の中性的な美少年とも見て取れる端正で整った顔立ちは、今や焦燥感によって酷く曇っていた。
・・・だが、セシリアを悩ませるのは彼女
「そうだな・・・私も聞きたい。
おい、オルコット・・・あの大馬鹿者はどこへ行った?」
「あわわッ・・・!!」
もう一人、セシリアに疑問符を投げ掛けるのは、フランスルート進行部隊を率いていた世界最強ブリュンヒルデの二つ名を持つIS学園学年主任、織斑 千冬。
シャルロットとは違い、セシリアとの間に距離はあるのだが、なにぶんと彼女の放つ殺気の混じったオーラが尋常ならざる存在感を放っている。
其の人を潰してしまいそうな精神的圧力に思わずセシリアは半泣き状態となり、助けを請う様に周囲へ視線を向けるのだが・・・・・
「(ごめんセシリア・・・無理」
「(許せッ、セシリア・・・!」
「(あれはお姉さんでもキツいわぁ・・・」
誰も目を合わせてくれないし、誰もがセシリアから目を逸らす。
ドイツルートの引率役であった山田教諭に至ってはアワアワ泡を喰うばかり。
そんな薄情な彼女達から目を逸らせば―――――
「・・・・・マジむりッ」チーン
―――其処にはゲッソリして魂が半分抜けた様な人物が一人、糸の切れた操り人形が如くぐったりした様子で佇んで居る。
彼女こそフランスルートで唯一春樹の任務参加を知っていた日本代表候補生の更識 簪その人。
其の様子はどう見てもシャルロットと千冬に春樹についてコッテリ絞られた事は明白であった。
そんな状態の彼女を見てセシリアは今度は我が身かと固唾を飲む。
さて、こんな状態になったのも春樹が忽然と
途中まではドイツルートチームと一緒にドイツ軍所属の黒兎部隊に護衛されながらイギリスへと入国したのだが・・・
「あ、悪ぃ。
俺、ちょっと本場もんのフィッシュアンドチップスを肴にイギリスビール飲んでから行かぁ」
・・・と、合流する直前に訳の分からん事を言って姿をくらませたのである。
無論、彼と公私ともにパートナーであるラウラ・ボーデヴィッヒも一緒になっての雲隠れだ。
そんな好き勝手している男の説明を状況説明が一番鮮明なセシリアが不幸にも請け負う事になってしまった。
こんな事ならば、楯無や山田教諭と一緒に大酒を喰らって二日酔いにでもなれば良かったと心底思ったか、自分の優秀さを憎く思った事だろう。
・・・しかし、此処で意外な人物が彼女に助け舟を出す。
「おい、もうその辺にしたらどうだフランス女?
それに
「「あ?」」
鬼気とした二人がギョロリ目を向ければ、其処に居たのは腕を組んで呆れた表情をする千冬の少し幼くしたような面影を持つ人物が一人。
元国際過激派テロ組織メンバーであり、千冬のクローンとの噂もある織斑 マドカであった。
「清瀬 春樹・・・やつにも考えがあるのだろう。
それに瀕死と聞いていたが・・・・・
フッ・・・流石は私の慕う男だな」
「ッ・・・なに春樹を知った様な口をきいているのかな?
ぼ、ボクだって・・・ボクだって春樹が無事な事ぐらいわかってたよ!
ぜんぜん心配なんてしてなかったんだからね!!」
「フンッ、どうだか・・・
まぁ、いい。
それよりも姉さん・・・
そう言ってマドカが親指で示す先に対し、千冬は珍しく苦い表情を晒す。
何故に彼女がそんな表情を晒したのか?
其れは春樹の復活など馬耳東風で酷く憔悴しきった様子でブツブツ譫言を並べている人間に対してだ。
「違う・・・ちがう、チガウッ・・・!
俺はッ、俺はあんなヤツなんかに・・・!!」
精神異常を引き起こした様に大きく肩を落とすのは、春樹が瀕死の重傷を負った事を一番喜んでいた
現在、彼はフランス滞在時に簪から春樹への
一夏にとって清瀬 春樹とは、残虐非道で暴虐無人の『悪党』。
其の悪党から
だが、過去に自分が守ろうとしていた決めていた存在であったシャルロットから傲慢だと否定されてしまった為に自分を見失ってしまっていたのであった。
「ッ、一夏!
貴様、いつまでウジウジしているつもりだ!!」
「うぁ・・・ッ」
無論、そんな状態の彼を見たファースト幼馴染である篠ノ之 箒が黙っている訳がない。
彼女は両手で顔を覆って項垂れる一夏を叱咤激励する為か、無理矢理立たせようと少々乱暴に彼の片腕を引っ張る。
けれども、そんな箒に対して「やめなさいよ!!」と酷く憤った声色で制止する者が一人。
一夏のセカンド幼馴染である凰 鈴音は叩き落とす様に箒の手を彼から振り解くと間へ割って入った。
勿論、此れに箒は驚きと共に不機嫌を露わにする。
「ッ、なにをする鈴!?」
「それはこっちのセリフ!
箒、あんたもうちょっと一夏に優しくできない訳ッ?」
以前より精神不安状態であった一夏を
「ふん!
これから重大な任務が待っているが待っているんだぞ?
こんな弱気な状態で大事が成せるか!
私は一夏の為を思ってだな!!」
「一夏の為を思ってとか・・・
あんた今の一夏を見て何とも思わない訳?
どう見ても今はそんな声をかけるべきじゃないわ!」
「なんだと!?」
鈴としては個人的に今回の一件へ一夏が参加する事は反対であったのだが、彼の強い決意によって参戦となってしまった。
おかげで精神的不安定のマイナス異常を抱える一夏の処遇に対し、箒と鈴の二人は対立する様になったのである。
しかし、そんな険悪ムードの二人から漁夫の利を得ようとする者が一人・・・
「いい加減にしてちょうだい二人とも。
一夏の迷惑でしょう?」
「「ッ!」」
二人を尻目にいつの間にやら病人の様な表情な一夏を胸に抱いていたのは、彼を
「一夏、大丈夫?」
「サラ・・・」
「ッ、おい貴様!
なに気安く一夏を抱き寄せているのだ!!」
「そうよ!
だいたいあんたのせいで一夏が―――――」
「いい加減にせんか貴様ら!!」
様々な思惑とマイナス感情で険悪になった雰囲気を払拭するかの様な鶴の一声。
視線を向ければ、其処にはキッと眉間に皺と目を三角にしている鬼面の千冬が腕組みをしているではないか。
流石に彼女に対して反論する者は現状誰もいない様で、現場は一瞬にして静寂に包まれた・・・調度其の時。
「お待たせ申し訳ありません。
IS学園の皆様、どうぞこちらへ」
ノックの後に室内へ入って来たのは一人の女性制服士官。
部外者の登場に千冬は一つ咳き込むと「この話は後で詳しくだ。行くぞ」と一行を率いて女性士官の案内を受けた。
其のまま一行が案内されたのは、映画のワンシーンにでも出て来そうな地下にある如何にもと云う感じの広間。
其の中央に置かれた大きな円卓には、これまた如何にもと云う政府の重役らしき人物達は並んでいる。
「・・・来たか」
「ほう、あれが『クーフリンの花嫁達』か」
「やはり、皆若いな」
入室した千冬達を品定めする円卓一同。
彼等のそんな視線に対し、眉間をひそませながらもIS学園専用機所有者達は円卓中央へ招かれた。
「コッホン・・・
遠路はるばるよく来てくれたクーフーリンの花嫁達と名高きIS学園専用機所有者達の皆さん。
君達の名声は此処英国においても高く聞き及んで―――――」
「前口上は結構。
早く本題の方をお聞かせいただきたい」
「織斑先生・・・!」
早々に円卓側の口上を断ち切った千冬にセシリアは固唾を飲む。
其れも其の筈。円卓に座していたのは、彼女よりも格上の爵位を有する重鎮貴族達。
其の彼等を一蹴するかの様な千冬の態度にセシリアの内心はバックバクのドッキドキである。
一方、千冬の威圧するかの如き態度にピクリこめかみをヒクつかせつつ円卓側は
「・・・今から二週間前、我が英国が保有していた衛星『エクスカリバー』が衛星軌道を離脱し、制御不能状態となり、本国を攻撃目標に設定している。
私達としては君達にこの暴走した衛星の鎮圧、または破壊を要請したい」
「・・・え?
それだけ?
其れだけの為に私達呼ばれたの?」
思わず疑問符を呟いてしまったのは、訝し気な表情を浮かべる鈴だった。
確かに軌道から外れた衛星の処理など幾らでも方法がある。
其れこそ大気圏へ突入させて燃焼消滅させるも良し、ミサイルで木っ端微塵に撃墜させるも良しだ。
「フン・・・
そんな事が出来たなら、とっくの昔にやっているわ」
「え?」
「鈴さん・・・そんな簡単な訳ない」
渋い顔で愚痴を呟く円卓貴族と簪の云う通り、事はそう単純ではない。
進行役の円卓貴族は勿体ぶりを見せつつも苦い表情で事情を口にする。
「ここだけの話なのだが・・・
この衛星エクスカリバーは
早い話が衛星軌道上から標的に向けて攻撃が行えると思ってもらっていい」
「・・・・・という事は・・・迎撃システムや迎撃武装が組み込まれてるって事、ですか?」
「そう言う事だ。
解ってもらえたかな?
中華のお嬢さん?」
「ふーん・・・
でも、迎撃武装って言っても機銃やミサイルぐらいでしょ?
補給も出来ない宇宙空間にいるなら、相手が弾切れになるまで地上から攻撃しまくればいいじゃない」
「・・・・・ハァーッ・・・!」と大きな溜息が何処からか漏れた。「何にも解ってないな、この小娘は」と言いたげな大きな大きな呆れたため息が漏れた。
勿論、自分が馬鹿にされている事を察した鈴はムカッと「私、別に間違っちゃないでしょ?!」と不愉快を露わにする。
「フッ・・・
わかってないな、鈴」
「な・・・なによ、箒?
なら、一体どういう事なのよ?」
「鈴、つまりはね、そのエクスカリバーって衛星には鈴の言った武装
そう言う事だよね、箒?」
「そうだ。
わかったか、鈴?」
何処か自慢げな箒が面白くない鈴はへの字に口を曲げた後、自分の気恥ずかしさを誤魔化す様に「そうなの?」と円卓貴族に疑問符を投げつけた。
すると彼等は「此れを見てくれ」と言わんばかりに一行の前へプロジェクターを展開すれば、其処には武装が外された一隻の駆逐艦が映写された・・・次の瞬間。
ボッジュゥウウワァアアッ!!
『『『なッ!!?』』』
強烈な閃光と衝撃音が画面いっぱいに広がったと思えば、先程まで映写されていた駆逐艦が赤く
昨今の特撮映画にドラマでもやらない様な展開に皆はギョッと目を丸くして顔を交互に見合わせる。
唯一人、千冬だけは眉間に大きくしわを寄せて黙想していた。
「・・・・・ご覧の通りだ。
エクスカリバーには通常の迎撃武装の他に主要武装として超高性能高火力の大型荷電粒子砲が装備されている。
因みに・・・先程の威力は実験段階での映像であり、出力は
「ッ、じゅ・・・じゅ、じゅじゅ・・・十%!?
あれで十%!!?」
「おかしいんじゃないかな?!
たったの一割で、どうして船が焼け融けた鉄屑になるって言うのさ!!?」
「いくら・・・ISに絶対防御があると言っても、あんな熱線をまともにもらったら・・・!」
まさかまさかの驚愕の光景と事実に一行は目をパチクリ白黒とさせ、またしても互いに顔を見合わせて口をあんぐり開ける。
先程と違っている点は、見合わせた顔が血色の悪い青白の表情だった事だ。
相対する面倒事が想像の上をいく強力で大規模な事に一行へ大きな動揺が奔り、そんな狼狽える彼女等に対して円卓の貴族達は暗転した表情をへの字に曲げた。
しかし、「こんな小娘達には事態解決など無理だな」と言う不満気な鼻息が室内に木魂している時、闘志の焔が目へ灯った者が唯一人いたのだ。
「大丈夫だぜッ、みんな!!」
『『『!』』』
落ち込んだ暗い雰囲気の中で溌溂とした声が響き渡る。
其の声の主が即座に理解できたある者は「あー・・・やっぱり?」と呆れた溜息と疑問符を垂れ流す。
「エクスカリバーだか何だか知らねーけど、俺達なら絶対にできる筈だ!
今までだって、俺達はどんな困難も乗り越えて来たじゃねぇか!!」
病人の様に項垂れていた姿から一転し、意気揚々と熱い演説をする一夏に対して「良く言ったぞ、一夏!!」と彼を称賛する箒。
・・・だが、其の他の者達はと言えば―――――
「えッ・・・あ、あぁ・・・そうだ、ね?」
「一夏・・・あんたって男は本当に・・・!」
「・・・ッチ、また?」
肯定とは違う疑問符を浮かべる者、呆れて顔を覆う者、不愉快に舌打ちをする者と云った具合に渋い表情をする。
其の中でも特に顕著に不満感を露わにする者が一人。
「・・・本当に救えないバカだな、貴様は」
養豚場の豚・・・いや、道端の干からびたミミズを見る様な視線を一夏に向けるのは、IS学園専用機所有者達とは一線を画すマドカである。
「自分の実力がどの程度なものかわからないのか?
さては貴様、頭に脳味噌が入っていないのか?
姉さん・・・やはりこの男は邪魔だ、邪魔にしかならん。
清瀬 春樹がいない今、こんな無謀な作戦に参加するべきではない」
「何だと貴様!!」
歯に着せぬマドカの発言に食って掛かる箒だったが、意外にも憤る彼女を「やめてくれ!」と抑え込んだのは一夏だった。
「わかってる・・・
わかってんだよ、そんな事!」
「い、一夏?」
「でもッ、俺達がここに呼ばれたって事は、もう後がないってことだろ?!
この人達は俺達しか頼る人間がいないって事だろッ?!
だったら・・・だったら俺達がなんとかするしかねぇんじゃねーか?!!
頼むッ、みんな手を貸してくれ!!」
熱い言葉を発して頭を下げる一夏。
まさか彼がこんな事をするとは思ってもみなかった一同は目をパチクリとさせるが、マドカだけは不服そうに鼻を鳴らす。
すると、暗い奥の方からコツコツと云った足音と共にテンポの遅い拍手が木魂した。
「熱い・・・実に熱いわねぇ。
やっぱり男の子はこうでなくてはね」
『『『!!?』』』
薄暗い通路からやって来た新たな来訪者に対し、一行の表情が一気に強張る。
特にマドカは「ッ・・・なるほどな」の言葉と共に眉間へ深いシワを刻んだ。
「
中々、おもしろいじゃない」
砂金の粒子を集めた様な美しいブロンド髪を揺らして現れたのは、IS学園専用機所有者達の宿敵である過激派テロリスト集団ファントム・タスクの部隊長、スコール・ミューゼル其の人であった。
「ッ、スコール・ミューゼル!?」
「どうしてアンタがここにいるのよ?!」
彼女の顔と正体を知る者達はすぐさま臨戦態勢をとるが、其れに対してスコールは両手を上げて掌を見せる。
「待ちなさい、お嬢さん達。
今の私達は共に作戦遂行に当たる
「な、仲間ッ?」
「冗談でしょ!
誰がアンタ達なんかと!!」
「あら・・・?
ちょっと・・・聞いてた話と違うんじゃない?」
どうやら話がかみ合ってない此の状況に対し、またしても新たな来訪者が登場する。
ただし、スコールとは違って大いに
「ちぃ―――――ちゃぁあ―――ン!!」
「ッ、こ・・・この声は、まさか・・・!!?」
スコールの隣を光の速度で通り過ぎる白い人影は、一直線に千冬へと突っ込んで行く。
そんな目も追えぬ速度の謎の人物に対して千冬は下から上へと腕を振るえば、「ぎゃぼーん!」と珍妙な声と共に吹っ飛んで体操選手も顔負けな綺麗な着地を行ったではないか。
「もーッ酷いよ、ちーちゃん!
折角の再会にハグハグじゃなくて、グーをブチ当てて来るなんて!
照れ隠しにも程があるゾ☆」
ハイテンションで「キラッ☆」とポーズをとるのはウサ耳カチューシャを着けた不思議の国のアリス的服装に身を包んだ紫髪の人物。
国際指名手配中で、今やファントム・タスクの一員であるISを発明した大天才科学者、篠ノ之 束である。
「し、篠ノ之博士!?
どうしてあなたがここに?!」
「どうしても何も・・・この世紀の大
察しが悪いゾ、
「ちゃん!?」
空気を全く読まない相変わらずのハイテンションと親しい人間以外の者を認識しない彼女がセシリアへ親し気に話しかけて来た事に現場は余計に混乱してしまう。
そんな混沌とした現状を打破せんと千冬は眉間に拳を当てながら重々しく口を開いた。
「今回の作戦・・・作戦名を聖剣奪壊、ソードブレイカーはファントム・タスクと共同で行う事になっている。
・・・今だけは仲良くしろ」
「みんな、よろぴくー☆」
『『『・・・・・・・・は???』』』
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
極東は田舎生まれの蟒蛇くんの進化ルート
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ジークフリート
-
ファフニール
-
俵 藤太